早苗さんは悲しいことがあっても人前では泣かないんだけど
たとえば学校で悲しいことがあったとき、帰り道、独りになったとき、
不意に学校であったことを思い出して涙をこぼしてしまうのだ泣きながら歩くんだけど、
人や車が通りかかると目にゴミが入ったかのようなフリをして
それをごまかすんだけど、
ふと、路上駐車されている車の窓ガラスに映る、自分の泣き顔を見て、
“あれ、泣いてる私、可愛いじゃん……”と思ってしまって、
悲しいのに、涙はとまらないのに、なんだか、おかしくなってしまって、
自分がとても愛しく思ってしまって、「にへへ……」と声を出して笑ってしまうのだ
それを自転車に乗った通行人に怪訝な顔で見られ、恥ずかしさのあまり、
なんだか死にたい気持ちになってしまう早苗さんは、
今日も今日とて、
いつか幻想郷に行けると良いなあ……と夢見て、
アスファルトに小さな水溜りをこぼすのでしたとさ