主がいなくなって数百回目の春が来た。腹の巨大な『眼』は、満開の西行妖を見つめる。半人半霊だった名残の、今は殆ど機能しない二つの『目』からは赤い、錆のような涙を流す。毎年春になると起こる不具合であったが、機能に影響は無いので、妖夢は今年もそのまま放置した。