[3666] 風神の業  
■凱旋丸  投稿日:2019/11/24 (Sun) 23:43    
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 あの子供は誰だろう。
 細くて脆い骨の上に薄く白い皮を被っている。
 腕も首も弛緩し、ぐでりとしている。丸で化け物の見た目だ。
 遠くて明瞭とは判らないが、長い黒髪を見るに恐らく女児だろう。

 能く見えぬ。一歩前に出た。

 泣いている。
 咽び泣いて此方に何か伝えようとしている。
 口を動かしているのは判るが、どうにも遠くて音が聞こえない。何か聞こえたような気もしたが、それが幻聴かどうかの判断もつかぬ。
 何度も繰り返し、同じように口を動かす。
 判らない。何と云っているのか。
 もう少し大きな声で云ってくれないと、何と云っているのか────、

 言葉が判らぬ。一歩前に出た。

 瞳が大きく赤い。
 充血しているのもあるのだろうが、元元赤色の瞳なのだろう。
 小さく痩せこけた白顔と均衡が合っていない。歪である。
 赤い孔の様な瞳から、止め処なく水が滴る。
 矢張り泣いている。

 未だ声は聞こえぬ。一歩前に出た。

 子供の腕がゆっくりと動いた。
 自らの腹に指を押しつける。皮と皮、その下の骨と骨が触れ合い、軋んだ音が聞こえそうである。
 子供は指で左右の肋骨辺りの皮を摘む。

 声は矢張り聞こえない。一歩前に出た。

 摘まれた皮が、
 丁度真ん中から、裂け────、
 腹の中が開いた。

「かあさま」

 声が漸く聞こえた。壊れた鈴の様な声である。
 腹が徐々に開かれる。

「おなかが、」

 腹の中は虚無で充たされている。
 あの中は屹度心地が好い。

「お腹が空きました」

 そう云うと子供は一層泣き出した。
 可哀想だ。あんなに小さな体にこんな大きな虚無を抱え。
 埋めてやらねばならぬ。腹を充たしてやらねば。
 あの腹の中に────私が入れば。
 屹度彼女は充たされる。

 充たしに行こう。

 一歩前に。


■暇な人  -2019/11/25 (Mon) 21:54
一歩前に進むたび高まる緊張感が堪らん、新境地開拓されそう///

 -2019/11/28 (Thu) 10:55
コレ絶対捕食されてるよね

■zero  -2019/12/02 (Mon) 22:30
飢餓や餓死の恐ろしさが表れている・・・。

■あぶぶ  -2019/12/09 (Mon) 00:18
土気色の肌がゾンビや餓鬼を連想させる。こわいです
 


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