パリンは目を覚まして辺りを見回した。 薄暗い石造りの部屋。壁には燭台がいくつかあり、一本だけ蝋燭が立てられ火が灯っていた。 部屋にはいくつか木箱のような物が置かれている。 どこかはわからないが、ここは地下にある倉庫か何かなのだろうか。 「目を覚ましましたか?」 パリンは咄嗟に声のした方を見た。木箱の影から、誰かが立ち上がった。 女性だ、それも若い。パリンほどの子供ではないが、まだ未成年特有の幼さを残した顔立ちだった。 「あなたは誰?ここはどこなの?」 パリンは立ち上がると強い口調で言った。そんなパリンの態度を喜ぶように、その女性はくっくと喉で笑った。 「パリンちゃんは強い子ですね。こんな状況でそんなに肝が座ってる子なんて、そうそういないですよ」 「質問に答えてよ」 「ふふ、いいですよ。私は東風谷早苗。ここは私の家の地下室です」 早苗はそう言うと、手に持っていた何かをパリンに見えるように体の前へとまわした。 「あ、私のドリル!」 「子供がこんなもの振り回したら危ないですよ。ほら」 早苗に握られているドリルの先端がキュイインと音を立てて回転した。 そして早苗はそれを、突然パリンの右足に向かって突き刺した。 『グチィイイ!』 「いぎいいいい!!?」 パリンが悲鳴を上げる。ドリルは深々と突き刺さり、鮮血が冷たい石畳に飛び散った。 パリンは倒れ、その拍子に刺さっていたドリルが足からずぼりと抜けた。 「い…たい…。どうしてこんなこと…するの…?」 涙を浮かべ、パリンが痛みを堪えながら言った。 早苗は無言のまま口元でニヤリと笑うと、再びドリルを回転させて振り上げた。 「やだっ!やめて、やめてよ!」 「どうしてこんなことするのかって?パリンちゃんが可愛いからですよ」 そして振り下ろす。ドリルは、今度はパリンのお腹にぶすりと刺さった。 早苗は体重をかけて、ドリルをさらにその小さな体の奥へと押し込んだ。 「い゙やあああああ、ごぼっ!!!」 ドリルは脂肪や筋肉、体の繊維を巻き込んでぐちゃぐちゃと掻き回しながら尚も回転した。 先ほどとは比べものにならない量の血が吹き出し、たちまち部屋が生臭いにおいで充満した。 「いたいよ……。たすけて……じーちゃん……ママ……」 内臓がぐちゃぐちゃになり腸がずるりとはみ出しても、パリンは生きていた。 早苗は満足げにその様子を眺めながら、ようやくドリルをパリンのお腹から引き抜いた。 「ほらパリンちゃん、おねんねにはまだ早いですよ。今日はパリンちゃんのお友達も連れて来たんですから」 「……ぇ…?」 早苗がすぐそばにあった木箱の蓋をあけた。 そして中に手を入れて何かを引き上げると、パリンの目に見慣れた顔が飛び込んだ。 ちょっとつり目の、金髪で短いツインテールの女の子。 この街に来てから最初の人間の友達、ポポンだった。 「ポp…」 友人の名前を言いかけて、直後パリンは言葉を失った。早苗が箱から引き上げたポポンの顔は、その首から下が無かった。 「ポポンちゃんは剣なんて持ってたんですよ。危ないったらありゃしないんで、お仕置きしときました」 悪びれる様子もなく早苗が言った。パリンはポポンの生首を、ただ目を大きく見開いて見つめていた。 初めて会ったときのこと。一緒にファントムと戦ったこと。お話をしたり、大好きなショートケーキを二人で分けて食べたこと。 そんな楽しい思い出が、無意識にパリンの脳裏に蘇った。 「う…あ…」 「心配しなくても、すぐにポポンちゃんのところに連れて行ってあげますよ」 パリンの両目から、ボロボロと涙が溢れ出した。もうパリンの精神は限界を超えていた。 「やああああああああああ!!!!」 「あれあれ、パリンちゃんそんな大声出して。いつもの棒読みはどうしたんですか?」 早苗は笑いながらそう言うと、かつてポポンの物だった剣を握った。 そして一歩ずつパリンの方へと近づく。 これだけ血を流しておいてどこにそんな力が残っていたのか、パリンは両手を使って必死に後退りをした。 「うぇえん……こないで……こないでよぉ……!!」 「パリンちゃんがマジ泣きしてるとこ見られるなんて、私は幸せ者です」 パリンの背中が、壁にぶつかった。もう退路はなかった。 「三つ編みは切らないように気をつけますから、じっとしててくださいね」 「ぁ……。や……だ……」 パリンはガチガチと恐怖で震えながら、蚊の鳴くような声で言った。 早苗は下品な笑顔を浮かべながら、最後に言った。 「それじゃ、さよならです」 ヒュンと風を切る音がして、パリンの意識はそこで途絶えた。 「これでよしっ…と」 木箱の中には、パリンとポポンの頭が寄り添うように並んでいた。 「これで二人とも、ずっと仲良しですよ。良かったですね」 END 頭腐ってる とりあえずぐるみんは良ゲー