「助けてくれ!何でもする!助けてくれ!」 マリサは地べたに這いつくばり、喘いだ。喉がカラカラで思うように声が出ない。 「いやだ、賽銭箱はいやだ…」 おめでたい色の影がしめやかに彼女の前に降り立った。その影は神秘的なミコ装束に身を包み、悠然とアイサツした。 「ドーモ、マリサ=サン。ハクレイノミコです。」 おめでたい影は鋭い眼光を向けた。強固なセイシンテキが備わっていなければ半端な妖怪であれば失禁、もしくは即死するほどの威圧感! 「素敵な賽銭箱はここよ?楽園へ飛べるオーガニック・リーフでもあれば翌月へジャンプしてあげることもやぶさかではないわ。」 楽園を守るミコが危険ドラッグを要求するとは!これもマッポーの世の一側面なのか! 「い、今は手持ちがなくてですね、ハイ…。」 レイムの楽園めいた顔が一変!鬼神めいて厳しくなった! 「テメッコラー!ザッケンナコラー!スッゾコラー!」 「アイエエエ!」 連続ミコスラングだ!コワイ!マリサはたまらず失禁! (なんでこんなことに…じわわ) マリサは年末に神社で行った違法賭博である『オミクジ』を行ったことを心底後悔していた。 神社で振る舞われたオミキに仕込まれた強力な幻覚成分のせいでマリサは正常な判断を欠き、大敗を喫してしまい、その結果レイムから違法な額のお賽銭を要求される羽目になってしまったのだ。 この窮地を乗り切れる可能性を秘めた手持ちはあるにはある。だがそれはつい先日発見したばかりの品種でまともに効果検証を行っていない。 マリサは肚をくくった。仕方ないが、このままではリョナケットめいてネギトロかサシミにされるだけだ。それだけは避けねばならぬ。 「お、オカネは無いですがキノコ!キノコあります!アッパーですが、リーフより遥かに良いですよ!新製品で実際まだ売ってないですし!」 「オーガニック・キノコ?」 「そう、オーガニックです!一般には流さないんですが、実際特別ですよ」 レイムは訝しがっている様子だった。 だが以前にマリサは脱法キノコ『スゴイトブシイタケ』の栽培・量産に成功し暗黒ジンジャ・シュラインに下ろしたことがある。しかも新製品で市場には出回っていないとなればお賽銭回収のジャンプだけでなくあわよくば良いプレゼンテーションになるかもしれない…、と踏んでの賭けだった。 「ならばちょっとだけ味見させなさい、それから考えるわ。」 「ヨロコンデー!」 マリサは水を得た魚とばかりに懐からビニール袋を取り出した。中には萎びたキノコ片が入っている。 レイムはそれを受け取ると驚くべき手際で粉砕し、持参していたオーガニック・リーフとブレンドし一本のジョイントを作り上げたではないか!ゴウランガ!何たるミコ器用さか!そして手際よく火をつけると流れるようなワザマエで一服した。 「ぷはー」 「レイム=サン!実際効き目がすごく強いかもしれないから少しずつにしたほうが…」 「ズガタッキェー!」 「アイエエエ!」 マリサは再度失禁!マリサの股間は決壊したダムめいている!キンパツノコカワイソウ! レイムは構わず吸い続けた。楽園のミコたるレイムにはいかなるものも障害となりはしないのだ! 「ぷはー。遥かにいい…。ウッ!」 レイムは突然頭を押さえ苦しみだした!そして見よ!レイムの目に明らかな狂気が宿っていくではないか!これはいかなる超自然的現象なのだろうか!? 「ハァー!ハァー!……マリサ、マリサ……すべし…」 苦しみに喘ぎながら目に宿る狂気を確かなものにしていくレイム。だがマリサは腰が抜けてしまいまともに逃げるどころか立つことすら出来ない! やがて目に狂気が確かなものになり、レイムはその狂気を発散するべくマリサに向けてカラテを構え、言い放った。 「…マリサ殺すべし」 スシ食べたい