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『自業自得』 作者: Sfinx
魔導書に人形、食料に嗜好品、雑貨に装飾。エトセトラ、エトセトラ。
「死ぬまで借りる」などと嘯き、仮に所有者の目の前であったとしても、自分の欲しい物は持って行く。
初めはパチュリーやアリスなど、知り合いの魔法使いに限定されていたのだが、だんだんと彼女の行動範囲は拡大していった。
人里。
店から堂々と商品を持ち出し、怒鳴られても不敵な笑みを浮かべ、飛び去っていく。
一度や二度は苦笑いで済ましていた人々も、だんだんと腹に据えかねるようになっていた。
しかし、空を逃げられては対処などできない。
客であるならば「売らない」という対応もできるのだが、急に現れて商品を持ち去る相手に、どの様に対応すればよいのか。
作物の不作などにより生活が苦しくなってきていた人々は、慧音に相談することにした。
「慧音さん。あの白黒は何とかならないものですかねえ。」
「そうそう。生活も楽じゃねえってのに、ああも堂々と商品持ってかれちゃあねえ。」
「ふむ。あいつが泥棒紛いのことを行っているとは聞いていたが…そうも酷いのか。」
慧音に聞かれ、店主達は神妙な顔で頷いた。
「泥棒の方がなんぼかマシですよ。こっそり盗っていくんですから。見付けたら捕まえることもできますしね。」
「おまけに住んでる所が魔法の森だ。普通の人間じゃあ、入れやしねえよ。」
「注意しようにも、わしらの話なんて聞いちゃくれんしな。呼び止めただけで逃げちまう。」
人々は口々に嘆く。
慧音としては、ひねくれているようでまっすぐな人間だ、と好感を持っていただけに、残念に思った。
「あいつは本当はまっすぐで、ひたむきなやつなんだ。ちゃんと言い聞かせれば、悔い改めてくれると思うのだが……」
「というわけで、あの白黒を連れて来てもらえないでしょうか。」
ある程度話がまとまったところで、代表らしき男が慧音に言った。
慧音の役割は、店主達が集まった茶屋に魔理沙を連れて行き、話を聞かせる、というものだった。
元来隠し事や嘘が嫌いな慧音にとって、この作戦はあまり好ましくはなかった。
騙し討ちのように感じられるからだ。
慧音の表情があまり良くないことを察したのか、男が丁重に頭を下げた。
――方法は好まないが、人々が困っているのに手伝わないわけには行くまい。
「わかった。茶を奢るとでも言えばすぐについて来るだろう。」
そう言って慧音は頷いた。
そして数日後、慧音は里を歩く魔理沙を見付けた。
代表の男にそれを伝え、魔理沙に声を掛けた。
「魔理沙、ちょっと付き合ってもらえないか。」
「おう慧音、どうしたんだ急に。」
「なに、久しぶりに会ったからな。積もる話もあるだろうし、茶でも一緒にどうかと思ってな。」
「お前の奢りなら付き合うぜ。」
魔理沙は快活に笑った。
そして、店主達と約束していた茶屋に入る。
「みんな、連れて来たぞ。」
男達の歓声が上がる。
「慧音、どういうことだ?」
事情を知らない魔理沙は、怪訝な顔で慧音を見た。
慧音がなんと説明しようかと迷っていると、一人の男が手を挙げた。
「それは私が説明しましょう。魔理沙さん、私達がこうして集まったのは、あなたに言いたいことがあるからなのです。」
男は丁寧な口調で言った。
「言いたいこと?告白ならもっと風情のある状況でやってほしいぜ。」
魔理沙は軽口を叩く。
しかし誰もそれに反応しないのを見て気まずくなったのか、押し黙った。
「あなたは度々、店の商品を持ち去りましたね。」
男はなおも丁寧な口調で、しかし厳しく言った。
「こっちは商売です。あなたに物を持って行かれると、その分生活が苦しくなります。」
「人に迷惑をかけている、ということを理解していますか?」
全員の目が魔理沙に注がれる。
魔理沙は表情を変えず、男を見ていた。
「ですが、別にあなたを罰したいとかそういうわけではありません。これまでの行いを反省して、迷惑を掛けた分を少しずつでも償っていってほしいだけです。」
男の口調は若干優しげになっていた。
「反省、していただけますか?」
そこで言葉を切り、魔理沙を見た。
しばらく黙っていた魔理沙は口を開き、言った。
「は?」
「そもそも、何で私が悪いんだ?持って行かれるような場所に物を置いとくから悪いんだろ。それにさっきから泥棒みたいに言ってるが、私は死んだらちゃんと返すぜ。残ってる物はな。」
魔理沙は普段通りの顔、普段通りの口調でそう言った。
「大体生活が苦しいって、私にちょっと持って行かれたくらいでそんなことになるわけないだろ。なにを大げさに言ってるんだか。それに――」
「わかりました。」
話を遮り、男が言った。
「あなたがそう言うのでしたら、こちらにも考えがある。」
そう言って男は合図を出した。
「考えってなんだよ――」
そう言おうとしたところで、魔理沙の意識は途切れた。
背後から、別な男に殴られたのだ。
気絶した魔理沙を縛ると、男は慧音に言った。
「そもそも、本当は反省などでなく、捕まえたら即罰するつもりだったのです。」
「でもあなたは彼女を庇った。だから最後のチャンスにと、反省する機会を与えたのですが……悔い改めてほしかったですが、仕方ありません……」
先日の話し合いで出た、「魔理沙に反省の色が見られない時の対処」についてである。
「ああ。私も悔い改めてほしかった。……凶作時の窃盗は重罪だ。認めるよ。」
「ありがとうございます。ではみなさん、打ち合わせの通りにお願いします。」
そして男達は「罰」を与える準備を始めた。
魔理沙は目を覚ましたとき、自分を沢山の目が見ているのを感じた。
人に囲まれている理由がわからず起き上がろうとしたが、手足が縛られているためそれは叶わなかった。
「おい、なんで私は縛られてるんだ!」
堪らず叫ぶ。
しかし、周りの人間は誰も答えようとはしなかった。
「おい、冗談はよせ!」
「冗談などではありませんよ。」
答えたのは、茶屋で魔理沙に説教した男だった。
「冗談じゃない?じゃあなんで私は縛られてるんだ!説明しろ!」
「これはあなたに対しての、『罰』です。」
男は、表情を変えずに淡々と話した。
「あなたは何度も、何度も人から物を盗んだ。豊作の時ならまだしも、凶作の時もお構いなしに。」
「物を盗むというのは、腕を切断されるほどの罪なんですよ。知っていますか?」
だんだんと、聞いている魔理沙の表情が青ざめていく。
「ですが、あなたはまだ若い。更正してくれるかもしれない、と慧音さんが言ったのです。ですから先ほど、茶屋で反省する機会を与えたのですが……」
「あなたは、全く反省しませんでしたね?」
「じゃ、じゃあ、私は何をすればいいんだ?」
顔面蒼白になった魔理沙が震えながら聞いた。
「盗んだ物は返すよ。足りなきゃお金貯めて、それで払っていく……」
「先ほどの話で、それを完全に拒否したのはあなたですよ。」
なおも表情を変えずに、男が言った。
「これから行われる『罰』は、内容は簡単なものです。」
言い聞かせるような話し方だった。
「あなたが今まで行ってきた、『堂々と持ち主から物を盗む』ということを、ここを通りかかった人に行ってもらうだけですから。」
魔理沙はそれを聞き、急に明るくなって言った。
「え?じゃあ、物を盗まれるだけで助かるのか!?」
「ええ、そうですよ。」
男が答える。
「ただし、あなたの『物』には、あなたの身体も含まれるんですがね。」
「そこの鋸が見えますか?」
言われて魔理沙は、今まで視線を向けずにいた自身の真横を見る。
そこには、錆びて切れ味の悪そうな鋸が立て掛けられていた。
魔理沙が、声にならない悲鳴を上げた。
数秒の後にようやく言葉を発する。
「そ、それで、私に、いったい、なにをするつもりだって言うんだ!」
先ほどの明るさはすっかり消え、怯えて叫ぶ。
顔は蒼白で血の気が無かったが、それも無理からぬことだろう。
「先ほど言ったつもりですよ。ただ、あなたの身体をもらっていく、おっと、あなたが言うには『死ぬまで借りる』でしたっけ?その際に便利だと思いましてね。」
男はやはり淡々と告げた。
どれほど魔理沙が取り乱そうと、もはや情を移すことはないだろう。
「そんなこと……みんながやるわけないだろう!慧音は、慧音はどうした!こんなことを許すわけが無い!!」
不自由な身体をよじり叫ぶ。
縄が柔肌に食い込み、縛られている部分が赤くなっていた。
「慧音さんは反対なさっていました。ですから、先ほど更正の機会を与えたではありませんか。あれは慧音さんの説得で実現した、あなたの最後のチャンスだったのです。それを棒に振った……」
「この罰を選んだのは、あなた自身なんです。」
「そんな、こと……」
自身の言動を思い返してか、口調が弱くなる。
「お前達は、狂ってる……」
「他人の財産を奪うということに対して、全く罪の意識が無いあなた。やられたことをやり返そうとする私達。狂っているのはどちらなのでしょうか。」
これ以上言い返すだけの気力も論理性も、魔理沙には残っていなかった。
「そろそろ時間です。覚悟を決めてください。」
短く言って、その男は魔理沙の視界から消えた。
「ま、待ってくれ!まだ……」
その言葉が言い終わらないうちに、別な男が現れた。
「事情とかはあいつから聞いたと思うけど。」
その男もやはり、淡々としていた。
眼前にいる魔理沙を、同じ人間だと認識していないかのような態度だ、と彼女は思った。
「覚悟はいいか?」
赤錆の浮いた鋸を手に取り、男は言った。
覚悟なんて、できている筈も無い。
喉よ潰れよと言わんばかりに、声を張り上げて懇願した。
――頼む、許してくれ。何でもする。お願いだ、お願いだから………
「五月蝿い。」
男は吐き捨てる様に言い、魔理沙の右足首に刃を当てた。
足が焼ける。まず魔理沙はそう思った。
斬れ味の悪い鋸が、鋸としての性能半分、男の腕力半分で魔理沙の足を削っていく。
指で触れるだけでも痛い、神経が剥き出しになった肉の中を、鋸が強引に進んでいく。
噴き出る血、骨がごりごりいう音、鉄と錆のにおい。
――そして、自身の絶叫。
自分のどこに隠されていたのだろうかと思うほど、太く、濁った声だった。
男は、作業を止めない。
ようやく骨の半分に差し掛かったころだろうか。
もはや喉が嗄れかけているのか、魔理沙はかすれた声で叫んでいた。
「面倒だな。」
そう呟くと、男は魔理沙のふくらはぎを膝に乗せると、両手で千切れかけた足を掴み、思い切り体重をかけた。
ごきり、と、鈍い音がする。
魔理沙の骨の折れる音だった。
またも、声にならない絶叫が響く。
「あとちょっとか。」
男は気にした様子も無いようで、僅かな肉と皮によってぶら下がった足を、事も無げに捻り切った。
ぶちり、ぐちゃりと、肉をミンチにしているような、そんな生々しい音だった。
「やっと、終わった。」
止血効果のある薬草を魔理沙の傷口に擦り込んだあと、おびただしい血に塗れた男は、身体を念入りに布で拭いた。
「おっと、忘れていたな。」
また別な男に鋸を渡し、入れ替わりざま、男は思い出したように。
彼女の右足を小脇に抱え。
「死ぬまで、借りてくぜ。」
むかーし書いたストレートなやつを新徒から転載。
人のものを盗んじゃいけないよね!
9/8/06:40 転載タグ追加
※一応、過去作品からの転載は可ということでしたので、実験的な意味も含めて投稿させていただきました。
ですが、転載ばかりでこの場所自体の雰囲気が悪くなりそうでしたら、削除させていただきます。
不快に思われた方、誠に申し訳ありません。
Sfinx
- 作品情報
- 作品集:
- 1
- 投稿日時:
- 2011/09/07 17:12:42
- 更新日時:
- 2011/09/08 06:48:15
- 評価:
- 7/11
- POINT:
- 560
- Rate:
- 9.75
- 分類
- 魔理沙
- 転載
私も新作ができるまで、過去作品を加筆修正して転載しようかな……。
魔理沙は、まさにこの作品のタイトル通りの素晴らしい末路を迎えたのでした。
安心と信頼のクズ魔理沙
おう、考えてやるよ。(返すとは言っていない)
それとも切断して終わり?この後の末路も知りたかった