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『黒の世界』 作者: 零雨
私が目を覚ますと、そこは暗闇だった。
「おかしいな……?私は確か明かりをつけて寝るはずなのに……。」
「ようこそ!黒の世界にいらっしゃいませ!」
ファンファーレの音とともに部屋が明るくなり、小悪魔が登場した。
部屋が明るなったおかげでここが自分の家ではないどこか別の空間にいるらしいことが分かった。
周りには黒い壁と白い扉、そして私と小悪魔だけ。
どうして明るくなったのかは分からないが魔法か何かだろう。
「おい、小悪魔。ここは何だ?」
「さっき言ったでしょう、ここは黒の世界です。」
「だから何だ?その黒の世界とやらは。」
「では、私小悪魔がお馬鹿な低級魔法使いにも分かるよう簡単に説明して差し上げましょう!まず、ここは魔法で出来た空間です。そして、ここでの時間は幻想郷には関係しません。ここで何年過ごそうが、幻想郷では一秒にも満たない時間として扱われます。そして、この空間は私以外の魔法を基本的には受け付けません!パチュリー様は例外ですがね。あと、幻想郷の賢者様やお嬢様、冥界の姫に永遠亭の薬師など、私より遥かに強い力を持つ方々ならこの世界でも力を使えます。まあ、あなたには関係ありませんが。説明はこれぐらいですかね。」
「肝心なことが抜けてるぞ。私がここにいる理由と、ここから出る方法がな。」
「ああ!それを忘れてましたね。しかし、あなたがここにいる理由は言わなくても分かるでしょう?」
「分からないから聞いてるんだ。さっさと教えろよ。」
「はぁ……。まさかここまで馬鹿だとは思っていませんでしたよ。」
「おい!馬鹿とは何だ!私は優秀だ!」
「はいはい、優秀な魔理沙さん。あなたがここにいる理由は、罰ですよ。」
「罰だと?私はなにもしていないぞ!」
「分かってませんねぇ、魔理沙さん。何もしていないならあなたがこんなところに連れてこられるわけないでしょう?」
「じゃあ私がなにをしたってんだ?」
「ここまで無自覚だと逆に素晴らしいですね!本当に分かってないんですか?……。仕方ありません、説明して差し上げましょう。窃盗の常習犯で、酷いときは強盗。不法侵入に器物破損。罪を数えればキリがない!これだけやっておいて私が何をしたですって?」
「おいおい、大袈裟だな。窃盗だって?私はただ借りているだけだぜ?それよりどうすればここを出られるのか教えろよ。」
「……。ここから出る方法は簡単です。私が許可をすれば出られますから。」
「じゃあ、早くここから出してくれよ。」
「まだこの状況を理解できていないみたいですね魔理沙さん。私がさっき言ったことを覚えていますか?これは罰なんです。
私が許可を出すまであなたは出られません。そして私は許可を出す気はありません。」
「は?おい、ちょっと待てよ。お前は何を言ってるんだ?」
「じゃあ、頑張ってくださいね!」
そう言うと小悪魔は消えてしまった。
残されたのは私だけ。
この空間でずっと1人で過ごせってのか……?
冗談じゃない!
「おい!出て来い小悪魔!」
私が叫んでも、小悪魔は出てこなかった。
待てよ?この空間には扉があったじゃないか!
そこを壊して出ればいいだけじゃないか。
そうと決まれば早速実行だぜ。
「ふうむ、案外硬いな。体当たりじゃ辛いか?」
試しに数回体当たりしてみたが白い扉はびくともしなかった。
おいおい、これじゃあ出れないじゃないか……。
なあ、冗談なんだろ?
実はアリスとパチュリーが考えたドッキリなんだろ?
私には分かってるんだ……。ネタばらしするなら今のうちだぞ?
「アリス、パチュリー、見てるんだろ……?今なら…笑って、許して…やるよ。なぁ、本当にっ…今の…うちにドッキリだって…認めろよ……。」
何かが込み上げてくる。
でも、私はそれを認めない。
だってこれはドッキリなんだから。
悲しくなんてない。
だってまたみんなで楽しく過ごすことが出来るから。
私は悪くない。
だってあれらは好意の裏返しだったから。
「うぅ……。みんなぁ……。」
なぜもっと素直になれなかったのか。
私にとっては照れ隠しでも相手から見たら鬱陶しいに決まっている。
なんで、そのことにもっと早く気がつかなかったのか。
悔しさと自分に対する怒りがグルグルと体を巡る。
行き場のない感情がお腹から吐しゃ物となって吐き出される。
「おぇえぇ……。はぁ…ゲホッ……。」
胃にあったものは戻せても、過ぎた時間は戻せない。
この空間に1人取り残されてから、そんなに時間は経っていないはずなのに、私の心はズタズタだった。
「やり直したい……。もう一回、みんなに謝って最初から……。」
「ハァ……。仕方ないですねぇ。魔理沙さん、あなたにチャンスをあげましょう。」
小悪魔がいきなり現れてそんなことを言った。
「本当に……?もう一回やり直せるのか……?」
「それはあなたしだいですけどね。では、これから私が少し質問します。あなたはそれに答えてください。全て終わればここから出して差し上げましょう。」
「それだけでいいのか……?それで、私はここから出られるのか……!?」
「ええ、この空間から解放されますよ。あなたの返答しだいですが。」
「じゃあ、早く質問してくれ…してください。」
「では、早速質問しますよ。あなたの目の前にアリスさんと八卦炉があるとしましょう。あなたはどちらを取りますか?」
小悪魔の質問の意図がよく分からない。
アリスと八卦炉?
今までの私だったら、多分八卦炉を選んでいただろう。
でも、今は違う。私はもう一度やり直すんだ。
って、たとえ話に真剣になりすぎだな、私。
こんなんじゃ、みんなに笑われちまうぜ。
希望が見えて、私の心も戻ってきたぜ。
「私は、アリスを選ぶぜ。」
「そうですか!さすがは魔理沙さん。じゃあ、コレはもう必要ないですよね!」
小悪魔はなぜか私の八卦炉を持っていた。
いま小悪魔はなんと言った?
小悪魔が何かを唱えると八卦炉は爆発してしまった。
「ああぁああああぁっっ!!?」
「結構重かったですね。アレを常に持ち歩いてたとはなかなかすごいですね、魔理沙さん。」
「私の八卦炉がぁあぁ……。どうして……。」
「どうしても何もさっきの質問で魔理沙さんはアリスさんを選んだでしょう?」
「だって、こんなことになるなんて……。」
「さあ、どんどんいきますよ!次の質問です。魔法を考えるのと、薬を調合するのではどちらが好きですか?」
さっきみたいに答えと違うほうが八卦炉みたいになるとしたら……。
魔法なら魔道書で、薬なら材料?
もう何も失いたくないけど、選ばなかったらここから出られない。
どうしよう、どうしよう。
でも、まだやり直せる。もう一度やり直すチャンスはある。
「ま、魔法だぜ……。」
「そうですか!思い切った選択をしますねぇ!魔理沙さん。」
「え、それってどういう意味……?」
「こういうことですよ、っと!」
グチャリと熟れたトマトをつぶしたような音がした。
小悪魔が私の腕を踏み潰した音だ。
「ぎゃああぁあぁあぁあ!!?」
「反対側もいきますよ!それッ!」
「あがああぁあぁぁ!?」
「いい悲鳴ですね!魔理沙さん。ゾクゾクしちゃいます。」
「何で…腕なんだよぉ……。」
「え?だって薬を調合するのには腕が必要でしょう?あ、ちなみに魔法だったら頭でしたよ!」
「そんな……。」
「大丈夫ですよ、魔理沙さん。質問はあと2つです!終わったら解放して差し上げますよ!」
「頑張るんだ…もう一度、やり直すんだ……。」
「その意気です。では、次の質問です!箒と、スペルカード、どちらを選びますか?」
箒…を選んだら手?
スペルカードは何だろう……?頭はないと思いたいけど、小悪魔ならやりかねない。
使い方を考えたら分かるのか?
箒は乗る、スペルカードは宣言する?
宣言!そうだ、危ないところだった。
スペルカードを選ばんければ、小悪魔のことだ、喉もしくは舌が潰されるだろう。
箒、は足か、手になるんだろうな……。
仕方ない、死ぬよりは数倍マシだ。
永琳に治してもらえば、後遺症も残らないはず。
「私は……スペルカードを選ぶぜ……。」
「へぇ、じっくりと考えましたね。まあ、予想はしていたと思いますが、足ですよ。」
「やるなら、一思いにやってくれ……。」
「では、一気にいきますよ!」
小悪魔は飛び上がって思い切り私の足を踏み潰した。
バキバキと骨が砕ける音とともに激しい痛みが襲ってくる。
「あ…ぐうぅっ!あぎぃっ!?」
「おお、綺麗に潰れましたね!骨が飛び出してるのは見栄えが悪いですが、血があまり出てないのはいいですねぇ!」
「早く、最後の…質問を……。」
「おっと、これは失礼しました。ではでは、最後の質問といきましょうか!自分と、自分以外の全て、どちらが大切ですか?魔理沙さん?」
……。
私は、どちらを選べばいいんだ?
今までの質問に意味なんてなかったんじゃないのか?
この質問に全てが込められているんだから。
私を選べば、解放されたとしても私は嫌われ者のままだ。
小悪魔がみんなに報告するだろうから。
私以外を選べば、最後に償いが出来るのかな……。
みんなに私から謝る機会は無くなるけど、小悪魔も遺言ぐらいは伝えてくれるだろう。
それでも、やり直せない。
私は戻れないのか?楽しかったころには戻れないのか?
やり直したい、やり直せない、やり直したい、やり直せない……。
どうしよう……?どうすればいいんだ……?どうしたいの……?
もう考えがまとまらない。
グルグルと頭が掻き回されていく。
いや、最初から答えは決まっていた。
ここに連れてこられて、自分の気持ちと向き合ってから、私の答えは決まっていた。
「どうかしましたか?早く選んでくださいよ。それともチャンスを棒に棒に振る気ですか?」
「あ、ああ。……私は、私は、今までは自分が一番だった。でも、もういい、本当に大事なのは自分の気持ちに素直になることだ!私は、私以外の全てが大事だ!」
「へぇ、意外ですね!本当にそれでいいんですね?」
「ああ、私はもう自分の気持ちに嘘はつかないぜ。さあ、早く殺すなら殺せ。そのかわり、私の代わりにみんなに謝っておいてくれ。」
「何勘違いしてるんです?私は殺すなんて一言も言ってないじゃないですか。」
「え、どういうことだ?」
「最後のは純粋な興味ですよ。では、この空間から出るチャンスを差し上げましょう!今から少しの間だけ、あの扉を開けて差し上げます。そこを通ればこの空間から開放されますよ!……その足でたどり着くことが出来ればですけどね。」
「じゃ、じゃあ、私は、やり直せるのか?もう一度やり直せるのか?」
「さあ、どうでしょうね?そんなことよりいいんですか?早くしないと扉が閉まっちゃいますよ?」
こうしてるあいだにも、扉はゆっくりと閉じようとしていた。
私は、必死に折れた腕で地面を這いながら扉を目指した。
足から飛び出た骨が激しく痛むが、そんなことは気にならない。
あの扉を潜り抜ければ、私はやり直せるのだから。
ゆっくりと、しかし確実に扉は閉まっていく。
私は残った力を全て使うつもりで必死に這う。
それでも、幻想郷最速と言っていたのが馬鹿らしくなるようなのろのろとしたスピードしかでない。
「もう少し、もう少しだ……!」
扉の向こうは暗い闇が広がっているのが見える。
しかし、その先にはきっと希望がある。
それを信じて私は扉を目指す。
手が扉に届いた。
しかし、扉はもうほとんど閉じかかっている。
私は最後の力を振り絞り、思いっきり引っ張った。
それと同時に扉が閉まる。
ミチミチッと肉が千切れる音がする。
私の足首から下が扉に挟まれて千切れた音だ。
でも、もう大丈夫。
だって、扉の先にたどり着いたから。
きっとまたやり直せるはずだから。
でも、現実は違った。
「あ、え、え……?」
扉の先にあったのは限りなく続く闇。
上も下も、右も左も全てが闇に包まれている。
「まさか、本当にここから出られると思ったんですか?だとしたらとんだお笑い種ですねぇ!アハハハッ!私の代わりにみんなに謝っておいてくれ、でしたっけ?いまさら謝ったって遅いんですよ。あなたにやり直すチャンスなんて与えるわけないじゃないですか!」
小悪魔の高笑いが聞こえてくる……。
そして、私の意識はここで…途絶えて……。
深い闇の中に…飲み込まれていった……。
久しぶりに暗めの話を書いた気がします。
上げて、下げる。BADENDっていいですよね。
次は紅魔幼稚園の続きか、人狼SSあたりを書いてみたいと思います。
小悪魔のキャラが全く安定しませんね……。
零雨
- 作品情報
- 作品集:
- 1
- 投稿日時:
- 2011/09/25 04:55:28
- 更新日時:
- 2011/09/25 13:59:22
- 評価:
- 11/15
- POINT:
- 1000
- Rate:
- 12.81
- 分類
- 魔理沙
- 小悪魔
- グロ
そんなに悪い死に方ではなかったんじゃないかなあーと思います。
永遠の須臾である『刑期』を終えた時、はたして魔理沙は真人間になっているだろうか。
無理だな。