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『博麗/霊夢』 作者: 名前がありません号
泥の中にいる。
暗い暗い汚物の泥にまみれてなお、自分はひどく冷静だ。
不思議なくらい冷静だ。
人間なのかと疑うほどに。
迂闊といえば迂闊だった。
このところ、平和すぎて日和っていたのは事実だ。
だから、差出人も分からぬ荷物を見つけた時も、何の疑いもなく封を解いたぐらいだ。
気づけば自分は暗い泥の中。おそらくは箱の中に閉じ込められたのだろう。
時間の感覚も分からず、また特に誰の助けが来るわけでもなく、この箱の中にとどまっている。
霊力は使えず、視界は真上に見える光を除いて暗く、身体を動かしもがいても、泥をかくような感触しかない。
頭上に見える光は、外の光に相違ないだろうと思う。
泥をかき、ようやく泥から伸ばした手を光に向けて、必死に伸ばしていた。
そんなことをしても無駄なことぐらい知っている。
それでも身体が光を求めるように必死に手を伸ばしている。
まるで自分の頭と身体を別々にされているような気分だった。
ひどく自分の頭は冷静なくせに、身体の方は必死にもがき、暴れて、錯乱している。
あるいはこの泥のようなものの正体が何かの妖怪で、そういう能力を持っているのかもしれない。
再び身体が沈んでいく。
もがいて、泥から身体を出そうとするたびに、また泥に引き戻される。
体力を無駄に消費するだけでも、必死に動いている。
自分はこんなに生きたがってたんだろうか。
黒い泥が身体の中に侵入してくる。
不思議と息は苦しくなかった。
が、口や耳などありとあらゆる場所から体内へと侵入される感覚は、不快以外の何物でもない。
吐きだそうにも、泥が続々と迫ってくるのでは吐き出せるはずもない。
体内を黒い泥に穢されていく事に、表情が絶望で塗りつぶされていく。
自分はこんな顔もできるんだな、と酷く冷静に自分を見ていた。
やがて大した抵抗も身体はしなくなっていた。
泥の中を漂うように、ただ泥にされるがままになっている。
何の感覚も感じない。ただ、泥の不快な感触だけが身体を支配する。
しかしこの感覚もやがては鈍って、感じなくなってしまうだろう。
自分はまるで死んだ魚のような目をして、泥の中に沈んでいく。
死んだ魚、ではなく、本当に死んだのかもしれない。
しかし自分の意識がはっきりしている事実が酷く奇妙だった。
この泥は一体何がしたいのだろうか、まったくわからなかった。
一体何時間経ったか。
時間の感覚なんて、とうになくなっているものの、
こうずっと泥の中にいるのは飽きてくるものだ。
泥は飽きもせず、私の身体を凌辱していた。
身体の中を泥が行き来する光景は、普通の人が見れば発狂してしまうかもしれない。
じゃあ、今この光景を見ても、冷静でいられる自分は人間なのか?
それともこの泥と同じ妖怪なのか?
助けは来ない。
もともと期待はしていないのだが、来ない事実を改めて認識すると、
思案することは、ここからどう出るかだけだ。
正直、この泥の中の感覚にも慣れてきたが、
これ以上ここに留まるのはさすがに飽きてくるというものだ。
早くここから抜け出して、お茶が飲みたい。
そろそろ抜け出そうと思う。
随分時間は掛かったが、この泥の本体らしきものが顔を出してきた。
恐らくは自らの体内に対象を取り込んで、養分に変える妖怪の類なのだろう。
私は身体を動かし、スペルカードを取り出した。
無意識的に取り出したカードには、何の名前も書かれてはいなかった。
そして黒い泥は跡形もなく、消し飛んだ。
眩しい。
随分と長く感じられたが、外では大して時間が経っているように見えなかった。
巫女服は黒い泥が染みついてひどく重たい。
ふと周りを見渡すと、はじけ飛んだ箱の残骸のようなものを見つけた。
スペルカードの発現と同時に、吹き飛んだ妖怪のなれの果てだろう。
もうあんな思いはごめんである。
とりあえず、服を着替えよう。
にちゃにちゃしていて気持ち悪い。
何より、こんな姿を魔理沙やら天狗に見つかるのはもっと御免だ。
前者には確実に笑われるだろうし、
後者はさらにあることないこと付け加えて、面白く書かれるに決まっている。
私は、一目散に服を取りに向かった。
ふと、考える。
もしあのまま、泥の妖怪がずっと私を凌辱し続けていたら。
私は、ほかの人と同じように死んだのだろうか?
久しぶりに筆を取りました。
意味が分からぬのは仕様とお受け取りください。
誤字脱字等ございましたら、コメントなどでご連絡いただけると助かります。
名前がありません号
作品情報
作品集:
1
投稿日時:
2011/11/27 16:23:20
更新日時:
2011/11/28 01:23:20
評価:
7/11
POINT:
710
Rate:
12.25
分類
博麗
霊夢
いつものように処理しただけ。
無駄な行動をとらず、一撃必殺。
冷めた感情で自分の状況を分析しつつ、的確に対処する。
今までの行いが走馬灯で見ることも無く、ぼんやりと日常を思う。
決め手となった白紙のスペルカードは、何も無いゆえにあらゆる事態に対処できるワイルドカード。
要するに、霊夢自身を象徴するカード(切り札)。
鬱にも躁にもならない平坦な感情を持つ彼女は、人か妖か? どちらでもあり、どちらでもない。
人間と言うより機械。博麗と言う名のシステムの一部。
無感情ってわけじゃなく、ちゃんと苦しんだりもがいたり悲しんだりするけどもそれがすぐに収まって状況もなんとかなっちゃう、みたいな。
きっと「ほかの人と同じような」結末までたどり着くことはないんだろうなー。
絶望的状況というものを理解していながら実は微塵も絶望を感じていない
そしてそういう態度が異様に似合うんだよな、霊夢という存在には…
常人なら死んでいただろう状況から生還しても大した感想すら抱かない霊夢可愛いよ。
ただ、スペルカードってお遊びの弾幕勝負用の物だから、ただルール破った襲い方する妖怪殺すなら必要無いのでは?