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『東方破壊抄』 作者: トゥデンス
東方破壊抄
ここは永遠亭の一室。
「姫様・・・これが今月の生活費です。」
封筒に入れられたわずかな紙幣と小銭。
一目見て、明らかに薄いと感じるその封筒の中を、永遠亭の主の蓬莱山輝夜は覗き込んだ。
「そう・・・これだけなの・・・。」
寂しそうに、それでいてどこか申し訳なさそうに言った。
「申し訳ありません・・・姫様。」
姫様と呼んだ女性は、顔を深く下げて謝った。
「謝るのはこっちだ。すまない・・・私の身勝手でこんなことになってしまって・・・。」
姫様と呼ばれた方の女性は、自分をそう呼んだ方よりもさらに頭を深く下げて謝った。
「姫様、どうか顔をあげてください。」
「永琳・・・だが・・・。」
永琳は静かに輝夜に近寄ると、抱きついてこう言った。
「大丈夫です。私が、いいえ我々があなたを飢えさせはしません。」
「ありがとう・・・永琳。」
輝夜は永琳の手を撫でながら、一筋の涙を垂らしていた。
永遠亭。
そこに住む蓬莱山輝夜はかつて禁忌の薬に手を出してしまい、地上への流刑となった。
ある日、彼女を連れ戻しにきた月の使者たちの要請をも拒み、使者の1人とともに他の使者を皆殺しにして、その後は幻想郷で暮らしていた。
しかし、お姫様生活を抜け出すことのできなかった輝夜は、逃亡中やその後も贅沢な生活を送っていた。1000以上もの間、彼女は贅沢な暮しを続けてきていた。しかしその実、永琳や鈴仙、てゐが水面下で努力をしていた。主に貧しい生活をおくらせぬように彼女達は働き続けたが、それでも資金は減っていき、ついにはそこを尽きかけていた。
そして、永琳達は生活費がそこを尽きかけてから、そのことを初めて輝夜に話したのであった。
「決めたぞ。私も今日から働く。」
「ええっ!」
輝夜の一言に、永琳達は驚く。
無理もない。これまで彼女達が目にしてきた輝夜は、好きな時に起き、好きな時に食べ、好きな時に寝るという生活を送っていた。そんな様を見た為か、彼女達は今までになく驚いた。
「で、ですが姫様に働かせるなど、我ら従者の恥。」
「もうそんなことを言っていられるときではないぞ。」
輝夜はすっと立ち上がると、こう言った。
「今までお前達が私に苦労をかけまいと、配慮してくれたことは嬉しいぞ。しかし、私が迷惑をかけてきてしまっていたことに気づけず、結果お前たちを苦しめてしまっている。これは私なりの罪滅ぼしでもあるんだ。もちろん、家計を助けたいってこともあるがな。」
「姫様・・・。」
輝夜を見上げながら、永琳達は一筋の涙を流した。
「さ、そうと決まれば善は急げだ。早速働き口を見つけに行くぞ。」
そう言って輝夜は街へと繰り出した。
それからというもの、私は来る日も来る日も仕事を求めて探し続けた。
だが、いっこうに見つからぬ。
考えてみれば当然のことだった。
この地に逃げてきてからというもの、永遠亭に引きこもり毎日遊び呆けて、たまに外出したといっても娯楽のため・・・。
これで職を見つけようとする方がおかしいのかもな。
永琳のように薬学に詳しいわけでもないし、鈴仙のように武器の扱いに長けているわけでもない。弾幕勝負は得意だが、それが就職活動にたいして役立つわけもない。
なんてことだ・・・。
これでは私は本当にダメな姫じゃないか。
ともかく、今日はもう遅いから永遠亭に帰ろう。
「む、永琳。どうしたんだ?こんな時間に。」
「あ、姫様・・・薬品を売ってきたのです。」
輝夜は驚いていた。
永琳にとって大切なもののひとつである薬品を売るその行為に驚いていた。
「今日は少しは高く売れましたので・・・これが売上です。」
そう言いながら永琳は数枚の札を差し出した。
「これで・・・どうか就職活動用にスーツでも買ってください。」
永琳の差し出したお札を輝夜は震える手で握った。
「永琳・・・お前はこれほどになっても私に尽くしてくれるのか。今まで遊び呆けていた愚かな私に、まだ尽くしてくれるのか?」
「だって・・・私の主ですもの。私が従うのは姫様だけと心に誓ったその日から、私の主は姫様だけです。」
輝夜は涙を流していた。それも大粒の涙を。
「うう・・・ありがとう、永琳。これほどみじめになった私をまだ慕ってくれるなんて・・・。」
その場に泣き崩れる輝夜を永琳は優しく抱きあげた。
「姫様・・・。私は例えこの身が粉になってもあなたに尽くしますよ。ですからどうか、そんなに悲しまないでください。」
永琳の励ましに、輝夜は勇気づけられたのかすっくと立ち上がった。
そして勇気に満ちた瞳でこう言った。
「ありがとう永琳!私はかならず職を見つけてみせるよ。」
そう啖呵を切ったまではよかったものの、あいかわらず職探しは芳しくなかった。
スーツを着て写真を撮り、履歴書を書いて持っていくが、訪問した会の人事の担当者は社皆それを一瞥するなり、「帰ってください」の一言だった。
この不景気のご時世、単に学校を卒業したというだけではどこも採用してくれないのだろう。
今日も進展は無しか・・・。
寂しく路地を歩く自分が情けないな。
・・・たまには近道で行くか。
確かこの廃ビルの裏の路地を行けば、近道になるはずだ。
薄暗くていやなところだな。
おまけにじめじめする。
やはりやめておけばよかったかな・・・。
ん?なんだあれは?
こんな路地裏にドアがある。
しかも明らかに使った形跡があるドアだ。
他の汚れた壁と比べて明らかに綺麗だし、なにより生活感がある。
少し気になるな・・・。
調べてみるか。
それにしても、このドアに貼ってある張り紙が気になるな。
「内臓高く買います。」
一体これは何だ?
内臓というのは、胃や腸といった消化器官のことか?
これを売買する商売でもあるのだろうか?
何か怖いが・・・気になるな。
怖いもの見たさとはこういうことをいうのだろう・・・。
私はそう思いながらドアを開けた。
中には数人の男達。
皆“怪しい”という言葉がぴったりとあてはまる様相だ。
「いきなり入ってきて、なんだ。この女は。」
アロハシャツを着て、サングラスをつけたいかにもガラの悪そうな男が輝夜に詰め寄ってきた。
「ここは内臓を買ってくれるのか?」
物怖じせずにいつも通りの口調でそのガラの悪い男に聞く輝夜。
「おい?てめえ。いきなり入ってきてなに偉そうに聞いているんだ?」
そのアロハシャツの男は沸点が低いのか、やや怒りながら輝夜の襟首をつかんだ。
「やめなさい。」
後ろでスーツを着た男がアロハシャツの男に制止の声をかけた。
アロハシャツの男はそのスーツの男より立場が下なのか、素直にしたがった。
「部下の者が申し訳ない。で、あなたは一体なにをしに来たのです?」
礼儀正しく、しかし鋭い目つきをしたスーツの男は輝夜に聞いた。
「本当に内臓を買い取ってくれるのかと聞いているのだ。」
あくまでも毅然とした態度を崩さない輝夜に、そのスーツの男は質問を続ける。
「あなたはそれを聞いて、どうしたいのです?」
「もし買い取ってくれるのなら・・・売りたい。」
その場にいた男たちはどよめきながら輝夜を見た。
一方輝夜の目は、嘘偽りを感じさせぬほど透き通っていた。
「それはつまり・・・あなたの内臓を我々に売りたいということですか?」
「そうだ。」
スーツの男の問いにも、何も迷うことなく即答する輝夜だった。
「では・・・その内臓はどこで取り出すのです?」
「・・・2,3日待っていてくれ。」
そう言い残した輝夜は、そのドアをしめて家に帰った。
永遠亭にて。
輝夜は急いで永琳がいる部屋に向かった。
部屋につき戸を開けた輝夜は、そこにいる永琳にこう言った。
「永琳。私の内臓を売ってくれ。」
「永琳。私の内臓を売ってくれ。」
部屋に入ってくるなり、開口一番そう言った輝夜に対して、永琳は驚いた。
「ひ、姫様!いったいなにをおっしゃるのです!?」
永琳は驚愕の表情のまま、そう返した。
「だから永琳。私の内臓を、私の身体から取り出して売ってほしいのだ。」
一方の輝夜はひどく冷静な態度のまま、さらに永琳を驚かせることを平然と言った。
「どうやら高く売れるらしいのだ。なあ、永琳。私は不死身だ。内臓を取り出しても、すぐに新しいのが出来上がるだろう。死ぬことはないさ。さ、肝臓でも腎臓でも売れそうなところを切り取ってくれ。」
淡々と臓器を売る計画を話す輝夜の言葉を、永琳は顔を伏せて肩を震わせながら聞いていた。
そして、畳の上にはぽたぽたと液体が落ちていた。
「姫様・・・そんなことを簡単におっしゃらないでください。私にあなたを壊すだなんて・・・とてもできません。」
聞こえないかというほど、小さく震えた声で永琳は呟いた。
「永琳。私が物理的に壊れるわけないだろう。なんたって不老不死だ。それに、今まで遊び呆けてきたのだから、せめて金銭的にでも罪滅ぼししたいんだ。」
「で、ですがその不老不死も・・・!」
「心配しないで。大丈夫だ。それに・・・あの薬を飲もうと最終的に決めたのは私だ。そのことはもう気にしないでくれ。」
「ううぅ。うあああああああああああああああああああああああ。」
まるでタガが外れたかのように、永琳はその場に泣き伏せた。
今までの苦労が涙となって溢れ出たのか、その涙はしばらく止まらなかった。
治療室。
そこでベッドに寝た輝夜を見ながら、永琳は思い出していた。
永遠亭には永琳が開いた診療所があった。
かつては人の里からよく患者が来たものだったが、人の里の科学や医学が発達するにつれて、人間達はこの診療所を訪れなくなった。
治療だけでなく、談笑の場でもあったこの診療所は、次第にさびれていった。
そしていつしか、閑古鳥が鳴くようになっていた。
それでも永琳は輝夜に貧しい思いをさせまいと訪問診療をしたりしていたが、それでも儲けは少なく、ついには自前の薬品を売って生計を立てていた。
「姫様・・・、麻酔は全て売ってしまいました。それでも本当によろしいのですか?」
「ああ、かまわないさ。それに・・・今までお前達にかけてきた迷惑を考えれば、一時の痛みなんて大したことは無い。」
「姫様・・・。」
永琳の最後の確認にも、輝夜は物怖じすることもなく返答した。
「・・・では。」
覚悟を決めたのか、永琳はメスを手に取る。
「・・・っ!できませんっ!姫様ぁ、手が動きませんっ!」
永琳はメスを持ちながらも震える自分の手を押さえて、泣きながら言った。
「アアァ!やっぱり私に姫様の身体を傷つけることなんて無理ですっ!」
輝夜は永琳の震える手を優しく抑えて、撫でながらこう言った。
「大丈夫さ。私は死なない。」
輝夜は永琳の手を掴んだ。
そしてメスを腹に突き刺した。
刃に付く赤い血を見た永琳は、顔を真っ青にして叫んだ。
「姫様っ!いったい何をっ!」
「永琳が悩んでいるから・・・、ウグッ・・・。後押ししてあげたんだ。さあ、内臓を切り取ってくれ・・・。グゥッ。」
冷や汗を垂らしながら輝夜は永琳を励ました。
「さあ、やってくれ・・・。」
そう言った直後、輝夜は意識を失った。
「っ!!」
永琳は声にならない悲鳴をあげると、まるで何かに取りつかれたかのようにメスを動かし始めた。
あの後・・・いったいどうなったのかしら?
姫様が意識を失ってからなにも覚えていないわ。
気が付いたらあたりは血だらけ・・・。
鼻に突き刺さる鉄のにおいと、手には柔らかく温かい感触。
私は姫様の内臓を持っていた。
そしてベッドの上には、腹から大量の血を出している姫様・・・。
小刻みに痙攣し、口からは泡を吹き、白目を剥いている姫様・・・。
いやっ!思い出したくないっ!
もうそのあとはわからない!
あのあとはもう、無我夢中だったわね・・・。
悲鳴をあげながら姫様の傷を縫ったような気がしたけど・・・。
気が付いたら、目の前には腹部を糸で縫われた姫様と、培養液に入れられた姫様の内臓。
そして手術台に横たわる姫様は呼吸をしていたわ。
姫様の吐息を確認して思ったわ。
よかったわ・・・。
生きているってね。
その後、輝夜は1日足らずで回復した。
たった24時間弱で腹部の傷跡もすっかり消えて、歩行可能となっていた。
「永琳。すまない・・・。従者であるお前に辛いことをさせてしまったな・・・。」
座敷の部屋にて、回復した輝夜は永琳の肩を撫でながら苦労をねぎらった。
「姫様・・・申し訳ありません。」
目に涙を浮かべて謝罪する永琳を、輝夜は抱きしめる。
「あやまるのはこちらの方さ。今まで散々迷惑をかけてきたのに、永琳を苦しめるような形でしか恩返しできないとは・・・情けない限りだ。」
「うう・・・ひめさまぁ。」
自分の肩で号泣する永琳を輝夜は優しく抱きしめた。
「ありがとう、永琳。」
「ところで永琳。内臓は一体どれくらいとれたんだ?」
永琳が落ち着いたところで、輝夜は自分から取り出された内臓について聞いた。
「釣りから帰ってきた人みたいに言わないでください。えーとですねえ。私も無我夢中でしたから実は取り出した時のことはよく覚えていないんです。けれど、無意識に培養液に入れていたみたいで・・・。」
目線をそらしながら自分が聞いたことをなかなか言わない永琳に、輝夜は少し怒気を込めた声で再度聞く。
「永琳。隠さないで話してくれ。」
急に低くなった主の声に、永琳はそらしていた目線を主と合わせて話し始めた。
「姫様から取り出した臓器はですね・・・、肝臓、腎臓の2つです。」
「なんだ。」
永琳の告白を聞いた輝夜は、ふぅとため息をつきながら安堵の表情を浮かべつつ言った。
「心臓から胃から、直腸まで全て取られたのかと思ったぞ。まあ、全部取られたらさすがに1日では回復しないだろうがな。」
笑いながら輝夜は言った。
「そんな、姫様・・・。こっちは生きた心地がしなかったんですよ。」
「ハッハッハ。すまない。まあ、こうして内臓は手に入ったわけだし、あとはこれを売りに行こうじゃないか。」
永琳の愚痴を軽く笑い飛ばし、すぐさま内臓を売りに行こうと催促する輝夜だった。
「姫様・・・そのことで1つ提案したいことがあります。」
永琳は立ち上がると輝夜に耳打ちをした。
それも、彼女の口元まで近寄らないと聞こえないほどの小さい声で。
「その内臓を買い取る業者はおそらく非合法の会社です。そこで、売りに行くついでに、その者たちを脅してやるのですよ。警察を呼ばれたくなければ、今までの儲けを全部よこせとね。きっとそういう連中は不正な手段でたんまりもうけているはずです。そのお金を頂いても、何も悪いことは無いはずです。」
「永琳・・・。さすがは月の頭脳だな。しかし、相手は銃を持っているかも知れんぞ。」
永琳の提案に感心しつつ、輝夜は懸念を口にした。
「ご安心ください、姫様。目には目を、歯には歯を、銃には銃を・・・ですよ。ね!鈴仙。」
そう言いながら、永琳はふすまを開けた。
そこにはするどい目つきをした鈴仙・優曇華院・イナバが立っていた。
「永琳!これはどういうこと?」
輝夜は彼女らしくもなく狼狽した声を発した。
「姫様・・・もうしわけございません。この作戦には、戦いに長けている者がひつようでして・・・。勝手ながら、鈴仙に事情を説明しておりました。」
「姫様・・・。」
驚く輝夜に鈴仙は静かに言った。
「姫様を汚そうとするやつら・・・許せません。必ず・・・蜂の巣にしてやります。」
「ちょ、ちょっと鈴仙!殺しちゃだめよ。あくまでも脅しで・・・。」
「鈴仙!無駄な殺生はいけないわ。」
輝夜が鈴仙を止めようとする言葉をさえぎりながら、永琳は鈴仙に忠告をした。
「う、すみません。師匠。」
「わかればよろしい。さて、では出陣といきますか。」
「う、うむ。」
鈴仙への忠告もほどほどに、永琳は輝夜に内臓を売りに行く確認を取りつつ立ち上がって座敷を出た。
数日後。
人間の里にて。
いつものごとく、ビルの巨大スクリーンにニュースが流れていた。
「さて、続いてのニュースは殺人事件です。本日未明、廃ビルとなった1階にある倉庫と思われる部屋で、4人の男性の遺体が発見されました。4人はいずれも体中に銃で撃ち抜かれたようなあとがあり、警察はこの部屋で銃撃戦があったとみています。また、この4人は違法な借金業を行っていると、現場で見つかった書類から明らかになっています。しかも借金を返すことができなかった人に対して、臓器を売り渡すように強要するなどをしていたことがその書類からも明らかになっています。そのため警察は、暴力組織同士の争いなどが原因として、捜査を進めているようです。」
ちょいと前に書いたものです。こちらにも投稿してみます。モブですがオリキャラありです。
トゥデンス
- 作品情報
- 作品集:
- 1
- 投稿日時:
- 2011/12/12 09:51:13
- 更新日時:
- 2011/12/12 18:51:13
- 評価:
- 1/8
- POINT:
- 180
- Rate:
- 6.83
- 分類
- 永琳
- 輝夜
- オリジナル
そそわでも今日見かけたわ