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『骨まで全て』 作者: いろは
ぐじゅり。
レミリアの肩の肉が爪によってえぐられ、大量の血が滲む。
彼女の白い肌に紅い華を散らしているのは、妹のフランドールだった。
レミリアに馬乗りになった彼女は、唇をきれいに湾曲させ、瞳を細めている。
普段のあどけなさとはかけ離れた、妖艶さを感じさせた。
肩の痛みを気にせずにそう思う自分は、フランに負けず劣らず狂っていると思う。
「あら、残念。外しちゃった」
いうほど残念に思っていない言い方で、フランがつぶやく。
肩に食い込んだままの爪を引き抜くと、血が吹き出し、フランの手に付着した。
「今度は外せないね」
口の端から吸血鬼特有の鋭く尖った犬歯が除く。
ああ、綺麗だ。
レミリアは、表情にはおくびも出さずに胸中でつぶやいた。
フランの手がレミリアの首に伸び、やんわりと爪が立てられる。
きっと自分はここで、妹に殺されるのであろう。最愛の妹であり最低の人殺しでもある彼女に。
首の違和感は徐々に痛みとなり、痛覚を刺激する。
ガリ、と引っかかれる。焼けるようなしびれが首を襲う。
こんな状況にもかかわらず、レミリアの心は落ち着いていた。静かだった。夜空のように。
私の死体が、明日咲夜によって発見されたらあのメイドはどうするだろうか。
愛する妹を咎めるだろうか。そして、恐怖のあまり殺そうとするだろうか。
ダイイングメッセージでも残しておこうか。フランがやったのではありません、と。
だけど、それはフランが許してくれなさそうな気がする。
私が息を引き取ったあとに、フランはそれを消すだろう。
結局何をやっても無意味。
ならば、せめて息がある間、この首の感触を味わっていよう。
レミリアは穏やかな笑みを浮かべると、フランの頬に手を添えた。
フランがそれに応じるように、ニッコリと、先ほどまでとは違う歳相応の笑顔で笑う。
愛してる。
レミリアが口の形だけで言ったそれを、フランが読み取る。
その瞬間、首の痛みが強くなる。
レミリアは、もう悔いはないと言わんばかりに目を静かに閉じた。
じゅっ、と血が滲み、そして肉を裂く音が響く。
レミリアの頬に冷たい液体が落ちた。
しかし、レミリアがそれを理解することはなかった。
レミリアは命の糸を手放していた。
これから先、いくらでも続いていたであろう運命の糸を。
彼女は、自らの能力をもってして、復活する術を断った。
「お姉様……」
フランがぽつりと、愛おしげにレミリアを呼ぶ。
彼女は首に立てていた爪を引きぬくと、その手を静かにレミリアの右手に絡ませた。
力を失ったそれは、すでに冷え始めている。
握り返されない代わりに、フランはいつもよりも強く握りしめた。
フランが、えぐれている首元の皮をそっと剥ぎ始める。
鶏を捌くかの様な手つきで、そっと剥がす。
剥がした先に見えたのは、いくつも筋が入った筋肉だった。
それに勢い良く爪をたて、引き裂き、皮と同じように剥ぐ。
グチュ、と血と肉のこすれあう粘着質な音がした。
きれいに剥ぎ終わると、さらに気管や食道などが見えた。
「綺麗……」
フランがねつにうかされた様な声色でつぶやく。
グロテスクなそれをフランはこれまた丁寧に切り裂いていった。
じゅ、じゅぶ、ぐちゅ、ぐち。
フランは部屋に血と臓器の特有の匂いが充満するも気にせずに、まるでおもちゃと戯れるかのように
レミリアの首元を犯していった。
「……あぁ……」
フランが頬を朱に染める。
愛する人の内面。内側。それを見れたことによる心の昂ぶりからだった。
ひとしきり分解を終えた首元には、白い骨だけが残っていた。
頭部と体をつなぐその部位だけが、白く目立っている。
変わり果てた恋人のその姿にどうしようもなく興奮する自分は気が触れている。
つくづく、妹には欲しくない性格だ。
現に私は姉を殺し、そして首元の皮膚から肉からなにまで剥ぎとって骨を鑑賞しているのだから。
血と肉片がこびりついたそれに、そっと唇を寄せる。
舌でそっとなぞると、鉄の味が味覚を刺激した。
ぺろぺろと、付着した肉片を舐めとっていく。
愛する人の肉片が舌にのり、味が広がるたびフランは心が満たされていくのを感じた。
その勢いで骨をしゃぶる。舌で舐めただけでは取りきれない肉片や血を取るために。
骨までしゃぶる、という言葉がある。
本来はこんな意味ではないのだろうが、今の状況にはぴったりの言葉だと思った。
フランが握りしめたままの手に爪を立て、肉を引き裂く。
全身に同じ事をするために。
「骨までしゃぶってあげる」
フランはそうつぶやくと、にこりとレミリアの死体に微笑み、
体の解剖を始めた。
大好きな人の、体の内側が見たいから。
嫌というほど見た顔も、何度も触れた唇も。
幾度と無くつないだ右手も、じゃれあうたびからませた両足も。
喧嘩をするたび激しく動き呼吸を支えた肺も、命をつなげていた心臓も、
再生のたびにフル活用された脳もそれを湿らせる脳髄も。
全て剥ぎとり自らの身体に収めた暁には――
骨を、自分の唾液で綺麗にして、宝箱に収めたい。
fin
排水口紳士の皆様こんにちは、五郎葉です。
今回はお姉さまを愛しすぎて全部食べたい!なフランちゃんを書いて見ました。
骨までしゃぶるっていうセリフをどこぞで見て思いつきました。こういうことじゃない?知ってます。
インフルエンザB型だったよ!
いろは
- 作品情報
- 作品集:
- 2
- 投稿日時:
- 2012/02/11 07:17:32
- 更新日時:
- 2012/02/11 20:39:23
- 評価:
- 5/5
- POINT:
- 500
- Rate:
- 17.50
- 分類
- レミフラ
- カニバリズム
美しい姉妹愛を魅せる、ボーンコレクター・フランドール。
愛極まりて食欲となり
てゆうフレーズを聴いた事があるよーな…ないよーな
文句の付け所がありません!100点!
何とも愛に満ち溢れた話しでした。