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『花粉症の季節がやって参りました』 作者: 五朗葉
「ふぇ、ふぇ、ふぇ……っくしょん!」
クシャミの音がひまわり畑に響き渡る。
季節外れなひまわり畑にいるのはこの幻想郷にただ一人。
風見幽香である。
「ぅう……あー目が痒い」
今度は目をこすっている。
先ほどのクシャミと目のかゆみ。この症状で、彼女が何を患っているか分かる人はわかるだろう。
そう、花粉症である。
彼女は花粉症持ちでありながら花粉の元凶を操る能力を持ってしまっている。難儀なことだ。
ズズーッ、と鼻水をティッシュですする音が響く。
自称、最強の妖怪で、それに見合う力をもった妖怪がこれだと言われて誰が信じるだろう。
「あああああイラつく!」
誰も居ないことをいいことに、叫びながらまた目をこする。
擦りながら、幽香は妖怪の山へと体と視線を向けた。
そこに見えるは大量の花粉を放つ杉の木の群れ。
つまるところ、彼女を苦しませているのはこれである。
風が一際強く吹く。黄色い波が、風となって幽香の元めがけて飛んでくる。そして――
「っくしょん!」
再び幽香のクシャミを誘発した。
屋内にいても花粉は入ってくるというのに、屋外にいたらその倍以上の花粉をダイレクトに受けることになる。
その違いを、幽香はその身を犠牲にして証明していた。
「……許さないわ」
言いながら、幽香が特性の日傘を閉じ、妖怪の山に差し向ける。
「その花粉の元凶、へし折ってやる!」
普段浮かべている余裕の笑みはどこへやら。
再びクシャミをした後、幽香は妖怪の山へと飛んでいった。
射命丸文はパトロールに向かっていた。
パトロール、と言うよりは現場急行だろうか。
上司から、「山を破壊している者がいる」という連絡を受けたのである。
毎年のことなので慣れているが、さすがに止めに入らないわけにはいかない。
毎年のごとく遺言状と記事の処分を敢えてはたてに任せ、文は飛んできた。
「……っと、また貴方ですか」
現場には、予想と違わずいつもどおりのやつがそこにいた。
幽香である。
幽香は、伐採作業真っ最中といった体制だった。
日傘をバットのように勢い良く振りぬき、杉の木を恐るべき力で叩ききっている。
正直、日傘の原材料はなんなんだと問いたい。
「……、なによっへっくち!」
暫くたってから、クシャミをしながらの返答が返ってくる。
今、幽香の機嫌は最高に悪い。
自然、文は臨戦態勢をとった。
「いえね。毎年毎年こうも伐採されるとこちらとしても困るもので」
「花粉症の人間も妖怪も困ってるわよ」
「いえ、それは自然の脅威ということでー、多少は我慢をですねぇ、していただかない……っと!」
文が新聞記者らしく流暢に言葉を連ねている途中で、邪魔が入る。
幽香の日傘が杉を薙ぐのをやめ、文めがけて突かれたのだ。
腹を貫かれてはたまらない、と文は勢い良く後方に飛び退いて避ける。
「……今、機嫌が悪いの。帰ってもらえる?」
ずず、と鼻を啜りながら言われてもなあ。
文は少し苦笑しながら、その最速の足で地面を勢い良く蹴った。
ガンッ、カンッ、グスッ、ベキッ。
両者一進一退の攻防が獣道で繰り広げられる。
文が足を突き出せば幽香が傘で弾き返し、幽香が傘を突き出せばアクロバティックな動きで文が避け。
時に攻撃を受けながらも、さほど支障をきたすことなく戦いは続いていた。
「いい加減、捕まりなさい!」
「誰が!」
幽香が苛立ちを混ぜた声で叫ぶ。
花粉の真っ只中にいるのが辛いのだろう。
それをわかっているから、文は敢えて止めを刺さず持久戦に持ち込んだ。
「はぁっ!」
日傘、ついで足が回し蹴りの要領で振り抜かれる。
文は上方に飛び退くことでそれを避けると、目にも留まらぬ速さで幽香の右肩めがけて急降下した。
「がぁっ!?」
右肩に急にかかった負荷に、幽香が悲鳴を上げる。
落下速度はそのまま重さに比例する。
音速以上で、通常の女性並の体重が一点に集中すればどうなるかはご想像の通り。
幽香の肩は、辛うじて骨が残った程度で、肉は綺麗に砕かれた。
ぷしゃぁああ、と血飛沫が上がる。
その飛沫は肩に乗せられたままの文の細い足にもかかり、薄い肌色を朱く染めた。
「はっ、はぁ、っは……らぁっ!」
もはや神経など残っていない右肩で息をしながら、傘を左手でつきだしてくる。
威力は右肩の怪我を考慮すれば、右手と同じくらいだろう。怪我を考慮すれば、だが。
しかし、文にとっては静止してるも同然だった。軽々と、スキップをするように避ける。
諦めてください、とか、そろそろ、とか終わらせるための言葉を言わないのは、この妖怪が激昂してしまうのを知っているから。
相手も感情のある妖怪、飽きるまで付きあえば自然帰る。
「っ、ぅううあああああああああああ!!」
ぐす、となりふり構わず袖で鼻水を拭いながら、幽香が渾身の突きを突き出す。
予想外の勢いに、文は一瞬驚きを見せたが動きを鈍らせることはせず。
避けるのはやめ、少しだけ自分の脇を通過した所で日傘をガシりとつかんだ。
「……ああ、反撃するならどうぞ。貴方にとって、この状況はひどくつまらないものでしょうから」
「っの、離せ……っくしょん!つぅ……!」
クシャミが肩に響くようで、幽香が苦痛に顔をゆがめる。
文は、何の感慨も浮かばぬ目でそれを見ていた。
「……聞き分けていただけないようなので、強制排除とさせて頂きます。……間違って、三途の川の向こうの花畑にいかないでくださいね!」
ニヤリと笑うと、文は傘を話し速攻で地面をたたきけった。
瞬時に加速され、文字通り音だけが聞こえる速度になる。
ビュンビュンと風を強く切る音だけが幽香の鼓膜に届く。
そして、目が痒いなと、目をこすった瞬間――
「っあ……!?あぁっ!」
幽香は勢い良く道の外にはじき飛ばされた。
腹部に、速度はそのままで文が蹴りを叩き込んだのである。
その衝撃で二三秒目は開けられず、気づいた時には上空で。
幽香が体制を立て直す間も無く、勢いは殺されぬまま斜めに落下した。
「いっ……っくし……ぅ……!」
むく、と体を起こす。
くしゃみが出る。身体中に響き、痛みが痛覚を襲った。
声こそ出せないものの、上体が起こせるだけでバケモノである。
あれだけ勢い良く地面に落ちたというのに、見た目上はなんら変化がない。
並の人間だったら、破裂している。
「……」
声を出すだけでも体に響く。
きっと、身体中の骨が折れているのだろう。
というか、呼吸をするだけでも痛い。軋む。
暫くはここで休まなければ、と幽香は思った。
幸い、近づいてきた妖怪や人間を追い払うだけの妖気は放てるし、能力も扱える。
ゆっくりと、微かに動く左手を支えにして地面に倒れこむ。
「っう……!」
激痛が走り、思わず呻き声が漏れる。
情けない、情けない、情けない。
最強の妖怪が、こんなザマとは。
全ての元凶は何だ?花粉症だ。
花粉はやはり許せないと、フラワーマスターにあるまじき思想を抱いた所で幽香の意識は途絶えた。
fin
その後、面倒見のいいあややがひまわり畑まで運んでくれましたとさ。
ゆうかりんはあややに一目惚れしましたとさ。
こんにちは、ゆうかりんと同じように花粉症で苦しんでいる五朗葉です。
家に引き篭っていても目が痒くて鼻水出るなんて……!
ティッシュ4袋、いや箱ティッシュ1箱は常備です。
ないと追いつかないです。もう春やだ!リリーなんて、大好き!
五朗葉
作品情報
作品集:
2
投稿日時:
2012/03/08 12:14:00
更新日時:
2012/03/08 21:14:00
評価:
5/6
POINT:
530
Rate:
15.86
分類
グロ
花粉症
バトル
ゆうかりんの能力で何とかならんのか!!
あややにとって、ゆうかりんの大暴れ&一目惚れは、最早春の行事となっているのでしょうね……。
花粉症辛いですまじ辛いです私毎年花粉症重いです
花粉は花の子供を作る元なのに……
難しいですね…見えないってのも
こんなに暴れるほど辛いものなのか......
花粉症のみならず風邪引いた時も無性にイラつきやすくなる
と、そんなことはどうでもよくて
鼻すすってるゆうかりんかわいいよ
あややも花粉症になって仲良くしてろ。