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『うなぎの蒲焼』 作者: ヘルニア
「ミスティア、ご注文の鰻だよぉ」
「いつもありがとう」
今日も屋台で使う生きた鰻を、馴染み漁夫のおっさんが、特注で作った子供なら一人、二人、入りそうな大きな魚篭に入れて持ってきた。
ミスティアが経営する八目鰻の屋台は、いつも大繁盛でたくさん鰻を必要としていた。
特に魚篭の中身を確認したり重さを量ったりはしない。お互いに信頼関係が成り立っているので、漁夫がそれなりに良心的な価格を請求して、それをミスティアは現金で支払った。
これで鰻はミスティアの物になった。
早速ミスティアは鰻を捌くことにした。重たい魚篭を調理場に運んで、魚篭のふたを開けた。中を覗き込んでみるすると中には見覚えのある大きな鰻がいた。
「……やぁ、ミスティア!」
「あれれれれれ? にとりさんみたいな大きな鰻が入っていた、どうやって俎板に乗せよう」
ミスティアは、にとりをにとりみたいな大きな鰻と勘違いした。それから少し困った大きい鰻は小分けにして売るので商売に支障は無いが、捌くのは一苦労だった。しかも今日の鰻はにとり位あって本当に大変だった。
「……違うよ! にとりだよ!」
「へぇ、最近の鰻は、にとりさんみたいに喋るんだすごい! 今夜お客さんとの話題につかえそう」
幻想郷では、こういう現象は良くあると思っているミスティアは鰻が喋りだしたと勘違いしている。
「ちょっと、良くわからないんだけど、この鰻ばかり入っていて気持ちの悪い魚篭から早く出して」
「いくら馬鹿な私でも、鰻には騙されないです。出したら逃げるでしょう。……鰻と喋るなんてちょっとへん」
ちょっとおかしな気分になったミスティアは、気を取り直してとりあえずは他の鰻からと、仕事を再開した。
にとりは出して貰おうと2,3まだ何か言っていたがそれを無視して黙々と鰻を魚篭から出しては捌いていく。
その様子を見ていたにとりは、このままではなんだか勘違いしているミスティアに、捌かれてしまうと思い自力で抜け出そうとした。
ところが、ニルニルした鰻の体液に全身まみれていたので中で滑ってしまいうまく出ることができなかった。
それでもあきらめず魚篭を揺らしたり、内側から叩いたりして何とか出ようとした。
魚篭がしきりに動くのを見たミスティアは思った。……流石は漁夫さん、魚篭の中で暴れてる。こんなに活きの良い鰻を届けてくれるなんて! でも、逃げられたら嫌だから先に捌こう。
ニルニルしたにとりの首をミスティアは片手でつかみ魚篭からだした。手馴れたもので普通ニルニルしている鰻は掴みづらいが簡単にそれを扱った。
俎板には乗せられそうも無いので、地面ににとりの頭を押し付けて的確に捌こうと、にとりの眼に柳刃包丁を突き刺した。
「ぎゃ! 痛い!」
「……ごめんね、鰻さん。これも、商売の為すぐに済むようにするから我慢してね」
今まで喋る鰻を捌いたことの無い、ミスティアは少し可愛そうに思ったが仕事と割り切って済ませることにした。
「ああああ、痛い! あああああ、助けて、うえええええええええええ」
「………………」
眼を突き刺された、にとりはそのときに脳の一部も傷つけられたようでおかしくなってしまった。口からは吐瀉物が出てきた。
「げげっげ」
「………………」
ミスティアはでかい牛刀を持ってきてにとりの背中を無言で突き刺した。背開きにするつもりなのである。
「ぎぐぐぐぐげ」
「……あれ、おかしいな。硬くて切れない」
普通の鰻はもっとやわらかいのになとミスティアは思いながら、牛刀を引き抜いた。無理をして牛刀が刃こぼれしてしまっては困るのである。
そして、どこかに行ってしまった。にとりは、背中を刺されたときに頚椎を損傷していてもはや動くことが出来なくなっていた。口からは、血の混じった体液が滲み出ていた。
「ぶぶぶ?」
「ふふふ、これなら大丈夫!」
ミスティアは調理場の裏手にあった斧を持ってきた。これで、背中をたたき切るつもりなのである。
「せーの!」
「ギュヘ?」
グジャ! と肉が引き裂ける音を最後ににとりは聞いた。
夜になりミスティアは、屋台を始めた。程なくして、漁夫が最初のお客さんとして来た。そして、鰻を注文した。
「それにしてもこの、鰻はいつもよりおいしいねぇ」
酒を飲みながらおいしい鰻を食べ、うれしくなった漁夫は言った。
「漁夫さんの捕まえて着た鰻は活きが良いからですよ」
ミスティアは本音からそう言った。
「ははは、ありがとうねぇ」
「今日なんか喋ったんですよ」
「ああ、あれねぇ。おじさんも捕まえた時に喋ったから驚いたんだよぉ。200年仕事していてあんな鰻は初めてだったよぉ」
醤油とタレの焼ける香ばしい匂いが屋台を中心にして辺りには漂っている。いつもと一味違う鰻のおかげで、ミスティアの屋台は今日も大盛況だった。
にとりは、川に仕掛けられている鰻を捕まえるための長細い罠の中に、鰻が入っているのを見つけた。
悪いこととは知っていても、鰻が食べたくなったので盗むことにした。罠に手を入れて鰻をつかみ出そうとした。ところがニルニルしているので、なかなかつかみ出せない。鰻はどんどん罠の奥のほうに入っていく。
仕方ないので今度は腕まで入れてつかみ出そうとした。ところが捕まえられ無かった。結局、つかむことが出来ず腕を引き抜こうとしたら抜けなくなっていた。
Q、昨日の蒲焼はにとりだったのですが?
漁夫「はい、そうだねぇ。でもねぇ、うなぎようの罠に掛かった時点でうなぎなんだよぉ」
ミスティア「魚篭に入っていた時点で、にとりさんでもうなぎです」
客「うまければいい」
ヘルニア
- 作品情報
- 作品集:
- 3
- 投稿日時:
- 2012/03/25 01:20:43
- 更新日時:
- 2012/03/25 19:17:32
- 評価:
- 10/12
- POINT:
- 1060
- Rate:
- 16.69
- 分類
- ミスティア
- にとり
- 漁夫
絶対こいつらはにとりだと気付いてるよね?
私は心優しいから、料理される前に生きたまま買ってあげます。
拘束して『表面の皮』を剥いだ『うなぎ』を使ったうナニーって、気持ちいいのかな……。
にとりの無視され具合が面白かったぜ!