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『産廃創想話例大祭『八苦を滅した尼公』』 作者: まいん

産廃創想話例大祭『八苦を滅した尼公』

作品集: 3 投稿日時: 2012/04/30 15:28:23 更新日時: 2012/06/01 00:44:19 評価: 13/16 POINT: 970 Rate: 12.44
注意、この物語は東方projectの二次創作です。
   オリ設定が存在する可能性があります。





寅丸星は部屋でナズーリンと寺の庶務の処理に追われていた。
部屋に響くのは墨を擦る音、筆を滑らす音。
珍しく部屋の窓際にオブジェクトとして置かれた宝塔はそんな二人の業務を見守る様に静かに佇んでいた。

今年の夏は一言で灼熱と言い表せる程に暑く、人里では何人かの人妖が診療所や永遠亭に担ぎ込まれる事があった。
その中で助けを求めて寺に駆け込む人も少なくは無かった。
そんな暑さもすっかりなりを潜め、外では真っ赤に身体を染めたトンボが飛び始め、
端から枯れ始めた草原では秋の虫々が残された季節を必死に生き抜いていた。

涼しいそよ風の吹く中、尚も彼女たちは業務を続ける。
時々伸びをしたり茶を持ってきたりしているが、終始無言で黙々と処理していった。
とその時突然宝塔が光を発する。
今まで白や黄色に発光させる事は数あれど、今回の様に真っ赤な光を放つ事は無かった。
いつもの様な毘沙門天の強力な力を感じる事も無く、ただ何かを知らせる様にぼんやりと光を発する。

その光に気付いた星はゆっくりと顔を上げて立ち上がり、自身の部下の名を呼びつつ宝塔を手に取り首を傾げた。

「ナズーリン、今までこの様な光り方を見た事がありますか?」

「いや、私も始めてみる。 力の無いこの光は一体なんだろうか……」

宝塔の持ち主で、これを取り扱う二人は記憶を呼び起こしながら、この光の正体は何だろう? と考えを巡らした。
といえど本当に記憶に無く、始めて見るこの光に二人の考えは堂々巡りを続ける輪に迷い込んでしまう。
その様子に埒が開かないと思ったナズーリンは主人に対して提案をする。

「ご主人、この状態は始めて見る。
ここは先入観を持っている私達よりも
宝塔に関して余り知らない皆に意見を聞いてみると良いと思う」

成る程、と星は手を叩く。
二人して業務を中断して光を発し続ける宝塔を持ち居間に向けて移動を始めた。

居間に到着した二人が見回すと、丁度都合良く聖を除く全員が集まっていた。
ワイワイガヤガヤと互いが話す中、手を鳴らして割って入っていく。

「皆さ〜ん、少し知恵を借りたいのですが……」

「まずはこれを見てくれ」

星が切り出し、ナズーリンが宝塔を皆に見せる。
全員の注目が宝塔に集まった所で更に話を続ける。

「今までこういった事はまったくなかったんだ……
そこで原因を知りたいのだが……ご主人も私もさっぱりでな……
心当たりがあったら教えて欲しいという訳なんだ。 ぬえとマミゾウ、何か知らないか?」

悪戯と考えるなら、変化の出来るこの二人をおいて他にいない……
とカマをかけて話を振ってみる。

「ちょ、ちょっと待ってくれよ、悪戯だって思うなら見当違いも甚だしいぜ」

「今回、儂等は何もしておらんぞ」

その言葉を受けて、違ったかと表情を変えずに心で頷く。
そして誤解を与えた事を弁解するかの様に話を続けた。

「そういう意味ではないんだ、変化をさせる二人なら判るかと思ったんだ」

と話を続けた所で、やはり分からないものは分からないとばかりに話しは続く。
三人寄れば文殊の知恵と言うが、ここに居る七人をもっても原因の究明には至らなかった。
その時、廊下にドタドタと騒がしく足音をたてて部屋に近づく者が現れた。
ここに居らず、寺に来て、更に騒がしい者といえば……皆の頭に茄子色の唐傘お化けの姿が浮かぶ。
バタンと襖が開かれ、現れた者に対して一様に同じ言葉が投げられる。

「こが……」

皆が同じ言葉を投げたが、皆が同じ所で言葉に詰まり……
そして皆が現れた者を確認して止まってしまった。
現れたのは寺の住職、そして皆の心の支柱といってもよい人物、聖白蓮だったからだ。



「皆さ〜ん、おはようございま〜す」

その返事に真っ当に応えられたのは響子だけだった。
普段は大きな足音を立てれば注意する、笑顔は絶やさぬものの静かな物腰は母親の様、
襖を開け閉めする動作も清楚の一言に尽きる。
その人物が普段からは想像の出来ないテンションで挨拶をし、更には廊下を大足音を上げて疾走し、
あまつさえ僧にあらざる勢いで部屋に入って来た。
普段をよく知る皆が固まるのは仕方の無い事である。
その様子をなんら気にする事無く先の星達と同様に部屋を見回すと、よしよしと小さく呟きながら数回頷き
満面の笑みで部屋に居る皆に対してとんでもない宣言をした。

「皆、聞いて頂戴。 私がもうすぐ死ぬと天啓を受けたわ」

その言葉に先程と違う空気が流れるものの反応は変わらずに固まったままである。
それから実際には大した時間では無い程短い時間であったが、体感にすれば永遠とも思える時間を切り裂いて
現実の時が皆の絶叫や悲鳴と言う形で再び刻み始められる。

「そんなに驚かないの……いずれ人は死ぬのだから珍しくも無いでしょ」

各々が喚き散らす中、一際大きい声で真っ向から反論したのは一輪であった。

「死ぬって、姐さんは妖怪でしょう、まだまだ早すぎる。
それに死んでしまったら誰がこの寺を引っ張っていくんですか?」

「そうねぇ、一番付き合いが長い貴女に継いでもらうわ。
元々そのつもりだったから丁度良いわ」

パンと前で手を打ち鳴らし、何と良い意見と言いたげな表情だ。
もともと笑顔であるのはこの際無視をしよう……。

「さぁ、今日から忙しいわよ。 死ぬのにも力が要るわ。
普段の生活と死んだ時の準備、両方やらなきゃいけないのが死に挑む者の辛い所ね」

皆が皆バラバラに質問を浴びせる中、半ば無視する形で聖は部屋から出て行った。
その中、先程の一輪の様に星の大きな声が一つ通る声で放たれた。

「聖! どうして貴女はそんなに笑顔でいられるんですか!」

返って来た言葉は一言、五陰盛苦。
それを言った時の彼女の顔は変わらない満面の笑みであった。

星とナズーリンの持つ宝塔は変わらずに赤く儚い色を発し続けていた。

〜〜

朝、昨日の騒ぎが嘘の様に静かな寺。
昨日とは違い静かに足音を立てずに歩く様はいつもの聖。
本堂に入って毘沙門天の木像の前に平伏し、その後背筋を伸ばした正座の姿勢に戻る。
おもむろに合掌し、そのまま目を瞑って暗記している経をいつもの様に唱え始めた。

「摩訶般若波羅密多心経……」

一定の速さ、一定の音程。
寺全体に響くその声は陰りを感じさせる事は無く、それを聞いた皆はフッと胸を撫で下ろす事が出来るのであった。
門前で掃除をしていた響子は同じくいつもと変わらぬ調子で聖の経をオウム返しで唱えていた。

「……ぎゃ〜て〜ぎゃ〜て〜はらぎゃ〜て〜はらそ〜ぎゃ〜て〜ぼ〜じ〜そわか〜、はんにゃ〜し〜んぎょ〜」

唱え終わった聖は又も平伏して、すっと立ち上がる。
振り向き本堂から出る際、小さく一言呟いた。

「門前の小僧、習わぬ経を読む……か」

寺に来てから習う機会は多く、彼女も多くを学んだ筈と思ったものの
彼女が経典を持ち実際に読んで学んでいたかと考え
自身の記憶に無いと自覚しながら、履物を履いて門前に向かって歩む。

「おはよう響子」

手招きをする聖、その言葉に気付き挨拶をしながらトタトタと近づいて来る。

「おはよ〜ございます、聖〜」

「響子、貴女に渡したい物があります。 付いて来なさい」

その言葉を聞いて響子は聖の後に続く。
暫く歩いて着いた場所は聖の部屋。
小さな机を挟んで座った響子の前に薄い本が静かに置かれる。

「私の記憶では貴女が経を唱える事はあっても、経典を見ていた事はありません。
この経典を差し上げます。
これを見て正しい経を唱え、その意味を知る様になさい」

聖の言葉を目を見て聞いていた響子であったが話の途中で段々と下を向き
短いであろう話の終わりの頃には完全に俯いてしまった。
返事は? と聞く聖。
その言葉に返って来たのは山彦では無い、彼女自身の感情の篭った言葉であった。

「いやだ! 私は経典なんか読まない……分かるよ、私は未熟だもん。
だから聖の言葉を聞いてそのまま言ってたんだ。
……私は絶対に経典なんか読まない!
だから教えてよ、これからも私に経を教えてよ……未熟な私を導いてよ……」

そのまま顔を手で覆う、彼女からは必死で耐えていたであろう声が隙間から漏れていく。
その突然の事に聖はアラアラと困った表情を浮かべる。

知恵を求めなさい、完全な知恵にしなさい、完成し完全となった知恵で悟り、幸せになりなさい。
彼女の心に妖怪向けに考えた一文が浮かんだ。

〜〜

何とか響子を宥めた聖は彼女に今日は休むように言う。
泣き疲れた彼女は手を引かれて部屋まで戻された。

彼女が泣き疲れて、子供か?と笑う者もいるとかもしれないが
肉体より精神に依存する妖怪にとって心の支柱である人物の死というものが
それだけ精神的に疲弊するものである、とここに補足させて貰いたい。

響子を送り終えた聖は昼から買出しがあると思い出し、一輪の元へしっかりとした歩みで向かって行った。
歩きながら今日の献立はどうしようかしら? 等と考えて
ふふと笑みをこぼしている内に目的の部屋の前に到着して、
一呼吸置いてから勢い良く襖を開いた。

「姐さん、一体何の用ですか?」

彼女としては用事を忘れてはいないであろうが
微笑み瞬きせずに凝視された瞳は彼女の肩を震わすには十分な迫力を持っていた。

「何って、買出しに行くのです。 今日の昼頃に出発の予定でしょう」

「ああ、それでいらしたのですか。 申し訳ありません、すぐに準備しますので……」

書き物をしていた一輪はパタンと冊子状の本を閉じ筆記に使っていた筆をしまう。
外用の薄い外套を二人して羽織ると人里に向けて出発した。

どの位昔の事か、寺へと向かう道には野盗が屯していた事がある。
当然妖怪である彼女達にとっては大した問題にならなかったが……
それでも、道を通り過ぎる人々が笑顔を崩さずに挨拶が出来る世を思うと聖は幻想郷に来て良かったと思う事が出来た。
勿論、その話は幻想郷に来る前の話であるのだが……。

里に来ては買出しの物を二人で一緒に探していく。
朝市はとうの昔に終わり、行き来する人もまばらになってきていた。
朝一で取引される最良の物は売り切れ、残った物といえば三流品か眼鏡に叶わなかった物ばかりである。
それでも彼女達には関係の無い事、寺の食事は精進料理が主で贅沢な一級品を集める必要が無いのだ。

探す物、買う物はいつもと同じだが様子が違い明るく楽しそうな聖。
その無邪気な子供の様な表情に当てられ、一輪も買物を楽しんだ。
日が出ている内にすべての物が揃え終わり、帰路につく二人。
荷物は両手一杯に雲山が持っている。

「雲山、いつもありがとうね」

一輪が礼を言いつつ来た道を戻って行く二人(と入道一人)。
昼はまだまだ暑いとはいえ、太陽が沈み始め秋風が優しく吹くと流石に涼しく感じる。
と唐突に聖は何も出っ張りのない場所で躓き、手と両膝を着いてしまった。

「姐さん、一体どうしたんですか? まったく姐さんらしくもな……」

一輪が転んだ聖を見ると、肩が激しく上下して普段は聞こえる筈の無い息切れをしている音が聞こえた。
姐さん! そう叫んで跪いている聖の肩を掴む。

「はぁ、はぁ……ごめんなさい……少し休めば良くなるわ。 休んでも良いかしら?」

「そうならそうと言って下さい。 死ぬと宣言した人が無理なんてするもんじゃないですよ」

そう言って肩を貸して支えながら近くの木陰に座らせ休ませる。
息遣いの荒かった聖も休んでいく内に段々と穏やなものに戻っていき、真っ青であった顔色も血色の良さが戻っていった。

「一体突然どうしたんですか?」

「ふふ、歳を取るというのも随分昔の様に感じるわ。
魔法が使えないとここまで違うのね……
今までどれだけ楽をしていたか分かってしまう、私は僧侶失格ね……」

「まさか……」

「いえ、魔法はまだ使えるわ。
でもね、遅かれ早かれこうなるのよ」

二人の間にえも言えない空気が流れ沈黙が続いた。
一輪は言葉を言い出せない気まずさがあったが、当の聖は落ち着き目を瞑って涼やかな風を感じていた。
それから短い時間が経ち休憩が終わる。
待たせてごめんなさいね、と聖が言うと二人は今度こそ寺への帰路についた。

寺へ帰ると二人はそのまま夕食の準備を行った。
電気やガスの無い幻想郷、下拵えや下準備は当番で行ってくれている。
調理や仕上げは二人の仕事だ。

「それじゃあ、後はよろしく」

挨拶を終えて交代をする。
食材で下拵えのいらない野菜などはこの時に細かく切られ調理をされる。
タンタンタン、と小気味良い音とリズムで葉野菜を切っていく。
殆ど終わっているので調理も簡単、そう思って調理していた一輪の耳に小さな悲鳴が入った。

「きゃっ……」

一輪は自分の調理を中断して慌てて聖の元に駆けつける。

「姐さん!……指を切ったんですか? らしくもない……」

ここ数百年、というか一輪は調理中に聖が指を切るのを始めてみた。
大した事がなくて胸を撫で下ろすと同時に治癒魔法も得意な聖ならば、この程度の傷をすぐに治せると彼女は思う。
だが聖の次の行動に違和感を感じ驚いてしまう。

「あら? 絆創膏を取ってくるわ」

「え? 治癒魔法で治せばいいと思うのですが……」

「いいのよ、切り傷なんて放っておけばすぐに治るわ、魔法を使うまでもないわよ」

絆創膏を貼って戻って来た聖。
それから調理は滞りなく進み、食事も時間通りに始まったものの、
一輪が彼女の顔を注意深く見てみると目尻や口元、顔のいたる所に細かな皺がある事に気付いてしまう。

〜〜〜

「あっ、ナズちゃん。 ちょっと良いかしら?」

「なんですか?」

聖の部屋の前で声を掛けられたナズーリン。
彼女は呼ばれた事に返事をしてから聖の部屋に足を踏み入れる。

「探している物が見つからなくて、悪いけど一緒に探してくれないかしら?」

「まあいいけど……ご主人みたいな事を言うとは聖らしくもない……で一体何を探しているんだい?」

「う〜ん、何だったかしら?」

その言葉にナズーリンは転んだ、派手に転んだ。
イタタと呟き立ち上がった彼女は無言で聖を見つめるが
当の本人はその視線を特に気にする事もなく、探し物の事を考えながら別の事を話す。

「う〜ん、今まで探し続けていたから少し休もう、うん。 今お茶を煎れて来るから少し待っていてね」

言葉を挟む間も無く、矢継ぎ早に話し続ける聖。
その為にナズーリンは一人で聖の部屋に取り残される事になってしまった。
ふと目を机に移すと、聖と男性の写った写真が写真立てに収められていた。

「これは? 命蓮殿か? しかし探している物とは一体?」

何の疑問も持たずに写真立てを見続ける。
と聖が急須と湯飲み等を盆に載せて戻って来た。
ああ、お帰りと言うナズーリン、彼女の持っている物に気付いた聖は大きな声を上げてしまう。
その突然の声にびっくりしてしまい、ナズーリンは肩を大きく上げ心拍数も大きく跳ね上がる。

「す、すまない、つい目に入って……」

「違いますよ。 それです、そうですそうです、私が探していたのはアルバムなのです」

へっ? と間抜けな声を上げてしまうが
気を取り直して自慢の能力で数分も掛からぬ内に目的の物を探し出す。

「これで良かったかい?」

「ええ、ありがとうございます」

「しかし、何だってこんな物を……」

「人間はすぐに忘れてしまう……だからこうやって記録として残し、忘れても確かな物として取っておく。
でも駄目ね折角残した所で保存した場所を忘れてしまうなんて……」

「聖、貴女はまさか……」

「求めた物は簡単には手に入らない、でも求めた物を覚えていなければ苦にも思えない。
私は幸せだと思っているわ」

幸せそうに笑顔を浮かべる彼女。
その表情にナズーリンは目を瞑り、強く歯を食いしばって俯くしかない。
居た堪れなくなって、ごめんと一言言って、部屋から出て行った。



朝のお勤めを終え、朝食を摂ってから今まで聖は部屋で探し物をしていた。
今日は説法も説教も遊説もない。
午後は何をしようかしら?そう思って改めて寺を見回ろうとするが、花に水を撒いている村紗と出会った事で中断する事になる。

「村紗、こんにちは」

「やぁ、聖。 珍しいね」

「今日は何も無いですから……午前中は探し物で大変でしたし……所で聞きたい事があるのですが、良いですか?」

「いいよ、でも私より物知りの聖に話す事なんてあるのかな?」

「そうですね……私と出会った時の事をおぼえていますか?」

「そんな大切な事を忘れる訳無いじゃん。
覚えていると思うけど言わせてもらうよ。聖から振ったんだからね。
いくよ、聖が法界に封印される前、外の世界の荒海で、
その海域に自縛してしまった私の元に現れた聖が私を救う為の方法を教えに現れたんだよ」

表情を変えずにニコニコしたまま、彼女は一方的に話す村紗の話を聞き入っていた。

「私は聖を突っぱねた。
でも聖はその場に居続けて、私を救うと言い続けてくれたのよ。
聖と出会って最初に出会った船を私が沈めた時、貴女は犠牲になった者々の悲鳴と断末魔を淡々と話していた、
私の心に響くものは何も無かったけどね。
それからも次々に船を沈め続けた。その度に貴女は断末魔を教えてくれた。
何時だったか、自らに圧し掛かる罪に耐える事が出来なくなって貴女に救いを求めた。
覚えてるでしょ? 私が貴女に縋った時、泣きながら悔いながら、助けてって言ったよ。
分からないけど顔はグシャグシャだったと思うよ。
その時さ、そんな私に聖は何て言ったと思う?
貴女は分厚い本を出現させて、貴女の犠牲になった者々はこの程度ではないでしょう?と言ったのよ……」

感情が昂ぶり、彼女の目からは涙が際限なく流れていた。
呼吸もおかしくなっており、息切れを起こしたまま話を続けていた。

「でも、私は貴女の事を恨んでなんかいない……
私が以前沈めた者達の最後の未練を朗読する間もずっと泣き続けて、
辛く哀しい思いはしたけれど、それが自分のした罪なんだって理解できた……」

話していた時間は短かったかもしれない、
だが俯いている村紗の顔は自身が話していた話の内容の様に涙や鼻水でグシャグシャになっていた。
流石に自分で話を振った事に罪の意識を感じた聖は神妙な面持ちで顔を伏せてしまい、口から一言言葉が自然に出てしまう。

「村紗……ごめんなさい……」

その言葉に村紗はバッと顔を上げる、上げた顔は無理に笑顔を作っているものの明らかな泣き顔であり、
思い出した事が如何に辛い事であるかを物語っていた。

「違うんだ、私は聖に救われたんだ。
確かに朗読している時は辛くて辛くて仕方が無かった、何故すぐに読み終えて開放されないか悩み続けていた。
簡単ではない苦行が私に大切な事を私の罪の深刻さを教えてくれたんだ」

そのまま、聖に抱きつき周りを憚らずに大きな泣き声を上げる村紗。
聖は驚いたものの優しく頭を撫で、礼を言い続ける彼女を抱き締め返していた。
同時に彼女の頭にふと浮かんだ言葉があった。

得ようとも、得られぬ苦しさ……彼女はその苦行に真っ向から打ち勝った。
それは私と同じ、でも重要なのは彼女……私はその苦行に立ち向かう事も出来ない。
何故なら私は日に日に得たいものさえも己の中に留めて置けなくなって来ている。

〜〜〜〜

聖が死を宣言してから三日目、定刻に起きて経を読み、お勤めを行う。
日々変わらぬ日常、寺の皆は弱っていく聖を見ても、その声を聞けば安心が出来た。
だが朝食の時に聖の顔を見た一同は固まってしまう。
今まで注意深く見なければ見えなかった皺が広がり、顔中にビッシリと刻まれていたのだ。
この状態には悪戯好きの、ぬえでさえ言葉に詰まり、目線を逸らしてしまう程であった。

朝食が終わり、説法の時間となり寺の一同に対して説法を行う。
その姿は少し弱弱しくなった様に見えるが、変わらない聖の姿。
四半刻を過ぎない短い説法、無駄に長すぎると話は心に残らない、聖はその点に注意をして話を纏めていた。
その短い説法が終わって彼女は部屋を出るのだが、その日は星を伴って出て行く。
部屋に残された幾人は声を上げずに静かに泣いていた。

聖は星に調子が悪いから午後は横になると言って自室に戻って行った。
心なしか彼女の背中が丸くなっている様に見えた。

午後
昼食を摂った後、自室で横になっていた聖の元を星が尋ねた。

「聖、入ってもよろしいですか?」

襖の奥からは、聖の声で優しく、返事が返って来た。
襖を開けて膝を上手に使い無作法の無い様に部屋に入っていく。
襖を閉めて聖の脇に正座すると、深々と頭を下げてから上半身を起こし神妙に真面目な表情で聖に向いた。

「相談があります」

静かだが決心固く目の奥に静かな炎が灯っている、冷静な強さを伴う声であった。

「我々妖怪は存在を精神に依存しています。
私が思うに聖は一時の感情に左右され、普段の冷静な判断がつかない状況にあります。
それもこれも聖が見たと言う、天啓という名のでたらめな夢の所為です。
この状況を脱するのは簡単です。
我々妖怪が精神に依存していると先程言った通り、生きたいと心の底から思えば良いのです……」

頬もやつれ、朝よりも心なしか弱弱しく眼光にも力の無くなった聖は、それで私にどうして欲しいの? と弱弱しく返した。
星は再び土下座の姿勢になり、語気を荒げ話しを続けた。

「簡単です! 生きたいと思えば良いのです。
お願いです宣言して下さい……
私は未熟な弟子を置いて召される訳にはいかないと……お願いです、お願いです……」

星の悲痛な叫び、彼女に提案をしているのであるが、
その内容は星の願望であり寺に居る聖の弟子達の願いである。 何度も何度も星は願う。
この程度の事であれば恥にもならない、
大切な人が健在になってくれるならどんなに辛くても良い、何度でも何遍でも言ってやる。
確かな意思と決心を持って言葉を繰り返す。
その星に返された言葉は彼女にとって最悪の残酷な言葉であった。

「星、星……生まれ、別れて、苦しむ。
憎んで、恨んで、それでも得がたく、老いて、病に苦しみ、死んで逝く。
それは太古の昔から変わらぬ人の営み、今更慌てる事も無いでしょう……
星、私が居なくなったら寺をお願いします……」

その言葉に星は泣いた。 何か言葉を吐いた。
哀しくて、苦しくて言葉にならなかった。叫んだ、唯叫んだ。
自分の存在が無くなる程に喚いた、その姿は駄々を捏ねる子供や赤ん坊と同じであった。

「星、いらっしゃい……」

弱弱しい声に誘われ胸元に飛び込む。
彼女は愛しい、母と言ってもおかしくない者の胸で泣き続けた。

〜〜〜〜〜


その日はいつも通りの読経は無かった。
代わりに一輪が読んだものの、起こしに行くまで聖は眠ったままだった。
寺の皆は疲れているのだろうということで全会一致して、各自分担して寺の業務に就く事にした。
しかし、皆心では納得したく無くとも聖がもう長くないという事を悟っていた。

午前の聖は縁側で茶を啜っていた。
その場所にマミゾウが現れ、脈絡も無く哀しそうに聖に話しかけた。
だが、先に話を始めたのは聖であった。

「おや? お婆ちゃん、久しぶりねぇ……孫は元気かね?」

その言葉に一瞬と惑うものの話合わせて続けようとする。

「おう、当然じゃ。 佐渡に残してきた一万を超える一族は今も健在じゃ」

「それは良かったですね。孫が沢山いれば、一族の将来も安定です。 そうだ私の自慢の娘達の話を聞いて行って下さい……」

聖は殆ど思い出せない頭でしっかりとした口調で思い出話を始めた。
孫ほどに見た目の離れた入道使いとの話、
未練の為に自身の罪に縛り付けられた船幽霊の話、
自身の信仰故に送られてきた毘沙門天の代理とその部下の話。
そして、封印された自身を助ける娘達の話。
午後の時間はすべてその話で終わった。
その話の間、彼女は大切な大事なと……如何にそういった存在かを強調して話していたが、
ついぞ最後まで彼女の口から具体的な名前は出ず、話も本人達から聞けば、所々欠けている事が分かってしまう程に欠けていた。

話の間、マミゾウは老いという病気でここまで弱弱しくなってしまう事に衝撃を受け、涙を堪える事で精一杯であった。






電気の無い命蓮寺にとって夕食の後は眠るだけである。
その夕食から睡眠までの短い時間に聖の元をぬえが訪れた。
顔を俯かせたまま、部屋に入り、後ろ手で静かに襖を閉め、立ったまま話を切り出す。

「今日さ……皿を落として割っちゃった……」

「あらあら、怪我は無かったの?」

「聖が大切にしていた……花を活ける壷も割っちゃった……」

「それは大変だわ、でも怪我は無い様ね……」

「命蓮の形見って言っていた、陶器も割ってやったわ……」

「それでも、貴女が怪我をしていなくて本当に良かったわ」

「……ッッッ、どうして、どうしてなの? どうしていつもの様に怒らないの?
嘘でも聖の大切な物を壊そうとしたんだよ?
そりゃ、私は正体不明だけどさ……嬉しくないよ! 私を見てよ、いつもみたいに見てよ!
こんなに苦しいのに哀しいのに、正体不明でいないといけない私をいつもの様に叱ってよ!」

大声で泣く、大声で叫ぶ、大声で取り乱す。
悪戯に身を捧げ正体不明を理由に者々を恐怖に陥れ続けたツケがここに回って来た。
彼女は過去や現代にある自身の罪を省みる事は無いが自信の運命を呪った。
尚も大声で泣き続け、跪いて腕で目を隠し、男の様に雄叫び、泣き続ける。
聖にもどうして良いか解らぬ程の泣きっぷりであった。

その声を聞いてやってきたのは彼女の親友マミゾウ。
彼女は大声で取り乱し、泣き喚き続けるぬえを宥めて落ち着かせると、
彼女を背負い一言すまぬと声を掛けて部屋から出て行った。

哀しみに暮れる皆と違い、出て行く二人を見ていた聖の顔は笑顔であった。

〜〜〜〜〜〜



地面はある、だがそれが何だというのか……辺りは一面白の空間。
ある物は時計、それも筒に目盛りが書いてあり経過時間が分かるだけの粗末なもので、
えらく原始的な物であり、外の世界の人間では一見で理解の及ばぬ物である。



時計には何も無い。
生まれてから成人までの時間かしら?
生まれたのは私かな? 何年か遅れて生まれたのは命蓮君でしょうね。
あの頃は私が守っていたのね、想像もつかないわ。
やっぱりそうね……あっという間に大きくなって、今度は私が命蓮君に守られる番になったわ。
それから、ずっと二人で暮らしていたんだわ。
あっ一輪だ、小さくてかわいい……最初は人間に苛められていたのね……
それで寺に来て……そうか、こんなにも長い間支えててくれたのか……。



時計の目盛りが少し増える。
この頃が一番良かったのかもしれないわね、老人期に三人で何とか寺を運営して、困った人妖を助けていたわね。
最も助けていたのは法力を使えた命蓮君だったけど……。
ああ、この頃ね星が来て、ナズーリンが来て……寺が一度に明るくなったわ。



時計の目盛りが更に増える。
死体ね……いつの世も人が争い、戦い、殺し合う事は止め様がない。
でも死体に縋って泣いているのは、私ね……
だとしたら、死体は……うん、うん、みょうれん君?
どうして、何で? あの子は……
逆恨みで人に殺される様な事は何もしていなかったのに……
ただ、一人でも多くの人妖を助けたかっただけなのに……。
この頃に村紗と出会った筈なのに……なのに辛くて辛くて、思い出せない……思い出したいのに……。



時計の目盛りが漸く5分の1程に到達した。

イヤァァァァァァァ!!! やめて! やめてください!!!

辛く哀しい事は命蓮君の死なのに、でも、でも一番哀しくて、心の奥にずっと閉まって、
思い出したくも無い事はこっちだったんだ……酷い姉だよね……。
私の最後が辛くて酷いのは恐らくその所為だよ。

尼さん、俺達も極楽に連れてって下さい。
どうせ封印するんだ、それまで好き勝手犯らせてもらうぜ。

そんなものは極楽でも何でもありません、皆さん目を覚まして下さい。

尼さん、あんたは退治を頼んだ妖怪を匿ったばかりか外法に手を染めていたそうだね?
そんな輩を許すと思うか?
長老はあんたを封印するように皆に言ったのさ、さぁ観念するんだ。

やめ……イヤァァァァァァァ!!!

彼女の見たものは、法衣を引き裂かれ無数の人間に輪姦陵辱の限りを尽くされている、若返った嘗ての自身の姿。
大小様々な人間に犯されていき、果ては牛や馬、獣にまで犯される。
散々な目に遭わされた彼女を待っていたのは、
信じ守っていた人間自身に法界へ封印されるという事実であった。



時計の目盛りは凄まじい勢いで増えていく。
法界に封印され、瞬く間に時間は過ぎていく。
募るのは人間への憎しみ、望むのは人間の滅亡、聞きたいのは人間が命乞いをし無様に死んで逝く悲鳴。
黒く、黒く己の感情が染められていくのが良く理解できた。
それでも僧として生きた私はそれを否定し続けた。

結果的にはそれでも良かった。
その数百年後に私を救い出してくれた弟子達の顔が私の葛藤を晴らしてくれたようだったから。



目盛りは増えていく、増えていく……。
彼女は今までの寺での出来事を映画の様に目まぐるしく見続けさせられた。
果ては目盛りを増やしていた物が溢れ始めた。
彼女に見せられる映像は無くなり、辺りは再び白一面の世界に戻っていた。

死にたくない……死にたくないよ……まだまだ皆と一緒に生きたいよ……。

彼女は膝を抱え、時を知らせる物の横で顔を伏せて目を静かに瞑った。

〜〜〜〜〜〜〜



丸一日、昏睡を続けていた聖が目を覚ました。
だが、目を覚ましただけで視線は天井の一点を見続け動く事は無かった。
その虚ろな瞳の聖にそれぞれの思いがぶつけられていた。
一輪は自身の不甲斐なさを訴え、星とナズーリンは自身の未熟さを訴えた。
ぬえとマミゾウは悪戯を悔い、響子は聖に指摘された学ぶ事を誓った。
そして、村紗は自身の様な存在を増やさない事を叫んだ。

すべての者が言った事は違ったが、その願いは一様に同じ、聖にもっと長く生きて欲しい、届く筈の無い願いに縋っていた。





動かない筈の聖の目が動き、彼女は最後の言葉を搾り出す。

「一輪、貴女なら大丈夫です、長い付き合いの私が言うのです、大丈夫です。 私を信じて下さい。
星、ナズちゃん、貴女達なら何の問題もありません、自分の力を信じるのです。
ぬえにマミゾウさん。 貴女達は悪戯に寄って沢山の人妖を悲しませた事は反省しなければいけません、
しかし悪戯で救い喜ばせたという点は伸ばして下さい。
響子、貴女の妖生は始まったばかりです、慌てず確実に学んで下さい。 時間はたっぷりあります。
村紗、貴女ならきっと出来ます。 一時の感情に左右されず一人でも多くの者を救って下さい」

聖の言葉に皆は耳を傾け気付けば皆が皆、頬を濡らしていた。
話し終えた聖は片手を虚空に向けて上げ、皆と同じく頬を濡らしながら話を始めた。

「……命蓮君、久しぶりね……見て頂戴……貴方の知っている子と知らない子、今では立派になったわ。 皆、私の娘も……」

唐突に蝋燭の灯が消える様に腕が落ち、言葉も途中で切られた。
一瞬にして時が止まる。飲み込めなくとも解る、今の状況が解る。
唇を数人が震わせて強く拳を握った。

時間を止めた張本人は言葉が途中であったにもかかわらず、永遠ともいえる寝顔は満足の笑顔であった。

星の部屋にある宝塔は同じく蝋燭が消えた様に光を失った。

〜〜〜〜〜〜〜〜

聖が亡くなったのは午前中、それから丸半日が経過した。
皆の反応は一様に同じ、それは泣き腫らした目を見れば一目瞭然である。
それが今度は一様に膝を抱きかかえ暗い部屋に静かに座り呆然としている。

極度の衝撃を受けると同じ空間の者は一様に同じ行動を取る事がある。
彼女達の精神的な動揺は相当のものであったのだろう。
その空間において星は少し前からブツブツと独り言を続けていた。

「……生まれ、別れて、苦しむ。 憎んで、恨んで、それでも得がたく、老いて、病に苦しみ、死んで逝く……」

同じ言葉を繰り替えす星、突然何かを閃き宝塔を呼び寄せ、淡く儚い黄色に発光させる。
立ち上がり片手で宝塔を抱えている為、空いた手で襖を両方向に開く。
外は秋の満月に煌々と照らされていた。

「そうか、そういう事だったんですか、聖。
私は悲しくありません! 悲しくなんかちっともありません!」

そう言うと部屋から飛び出し雪洞の様に灯した宝塔を右肩、左肩に担ぎ直しては笑い、バラバラの足運びで踊り始めた。
その様子を見て、呆れた様に冷静さを取り戻したナズーリンは自身の主人に対して、気でも狂ったのか? と言おうとした。
その声を止める様に立ち上がり、一歩前に出たのはマミゾウと村紗であった。

「こりゃ、星! 何じゃ? その足運びは……儂が佐渡仕込みの踊りを教えてやる!」

「そっちが佐渡ならこっちは海軍式だ! 死が何だ! こちとら何百年も幽霊やってんだ、死ぬ事が悲しい訳ないだろ!」

外に出て、てんでバラバラに大声を上げて呑み、歌い、踊る三人。
それに更に二人が続いた。

「先輩方、歌がなっていませんよ……山彦の私が歌でリズムを取って差し上げますよ〜」

「あんた達、これからは私が住職だ……除け者にするなんていい度胸ね」

部屋の入口で突っ立ったままのナズーリンはその光景に安心したかのような溜息を吐くと……
今だ座ったまま悲しみに暮れている、ぬえの手を引っ張って外へと誘った。

「おお〜い、私達を忘れるなよ〜」

満月の下、皆で思い思いに踊り、酒を飲み、歌を歌って、てんでバラバラに脚を運ぶ。
皆の顔は一様に笑顔だが皆が皆、空元気で涙を流している。
それはこの場の者すべてが知っている事だから何の問題も無い。

空に一際輝く大きな大きな満月のお月様、雲一つ無い夜空には億を超える星々が散らばっていた。
その中で位置の変わらない北極星と北斗七星、その間に一層強く輝く赤い星。
その赤い星に手を掲げ強い意志を込めた瞳を向けて、一言言い放った。

「いってらっしゃい、またね! 聖!」

赤い星はその言葉を了承したかの様に長い尾をなびかせて流れていった。
部屋で永遠の眠りに就いている聖の表情は若干笑っている様に見えた。





それから……

「また今日も墓参り? 飽きないね〜」

墓地に住み着き、人や妖怪を驚かせたりしている唐傘お化けの九十九神、多々良小傘。
彼女は寺の住人にして墓参りの客、雲居一輪に話しかけていた。
墓参りを終わらせ帰ろうとしていた一輪は軽く会釈をして何も会話をせずに帰路へと着いた。
その様子を見送り、一輪の姿が見えなくなってから彼女はつまらなそうに独り言を呟き始めた。

「あ〜、つまんない、つまんなあい……
あいつもあの時から一緒に悪戯してくれなくなったし……
寺の連中は何処と無く暗いし……」

そう呟いた後、今日も墓参りの客が来ない、と半ば諦めの表情で溜息を吐いた。



夜の墓場に何処と無く薄気味悪い雰囲気があるのは古今東西変わらない事である。
小傘は墓場を徘徊して間抜けな人間……特に肝試しをしている者がいないかと期待をしていた。
徘徊していた彼女の視界にボヤ〜っと立ち尽くしている者が見えた。
彼女は逸る気持ちを抑えて足音、気配を立てずに目標の後方にこっそりと移動をした。

「うらめしや〜! 驚け!」

驚かせようと突然飛び出し大声を上げた。

だが、目標は驚かず、ゆっくりと小傘に対して振り向く。
その様子に彼女は逆に驚かされてしまった上に相手の姿を確認してさらに驚いてしまう。

「え? 死装束? 透けて……る? ま、まさか……わきゃ〜〜〜〜〜〜〜!!! 幽霊だ!!!」

叫び声を上げて逃げる小傘。

その様子を見ていた幽霊は微笑みながらその場に佇んでいた。
この話を読んで貴方はこう思う筈です。
荒唐無稽なストーリーに基本の出来ていない文、支離滅裂な文脈。
これなら、俺の方が良い作品が作れる。 そう思う事が正常です。
私の作品よりも素晴らしい作品が多数投稿される事を私は望みます。

採点期間終了につき、コメント返信。

>全般1
好評のコメントを下さった方ありがとうございます。
これからの励みにしたいと思います。

>全般2
指摘、意見、改善点、真摯に受け止め後々に生かしていきたいと思います。

>1様
型に囚われないと新徒のようなモノになります。

>2様
たまにはグロ無しでも良いですよね?

>3様
改行修正しました。

>5様
私は手を抜いているつもりはありません。
各話、コレがまいんの本気だと見て評価して下さい。

>NutsIn先任曹長様
彼女の未練は死の間際に愛別離苦の感情を目覚めさせた事です。

>8様
すみません、読めません。

>山蜥蜴様
人間が死ぬ時はドラマチックな事が起こる事は無いと私は思いました。
それが今作のテーマ、人間の平穏な死です。
貴方様の掲げた答えでは”聖の我侭に寺面子が振り回された”が一番近い答えになります。

>んh様
文章すべては衰える聖との対比で書いていました。
エロやグロ、推理モノとして書いていなかった為この様になりました。

>紅魚群様
後書きを書き直して、当SSは引き続き残します。

>12様
基本は出来ていますか。発想が並? 気付くのが遅すぎではありませんか?

>木質様
安易な延命は他の連中の特権なので……。
最後が僅かな救いに見えるなら、とても嬉しいです。

>あぶぶ様
結構な時間が経っている風に書いたのですが、やはりそう感じましたか。

>15様
結構な余裕を持って完成したんですがね。

>pnp様
伏線無し、推理無し、にしました。
当作ではスッキリ終わらせたかったので良いかと思いました。
まいん
作品情報
作品集:
3
投稿日時:
2012/04/30 15:28:23
更新日時:
2012/06/01 00:44:19
評価:
13/16
POINT:
970
Rate:
12.44
分類
産廃創想話例大祭
命蓮寺
八苦
村紗水蜜
改行修正
6/1コメント返信
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0. 60点 匿名評価 投稿数: 2
1. 70 名無し ■2012/05/01 03:43:17
あなたの作品はいつも高水準ですね。すごいです。

しかし、武器になるような面白さにかけていると思いました。型にとらわれないでください。
2. 70 名無し ■2012/05/01 08:50:09
身構えていたけど、普通にいい話だった。
3. 60 名無し ■2012/05/01 22:44:25
文章が少しくどい
それと改行をもう少し何とかできたはず
結果的にかなり読みにくいですよ
いや、がんばっているのは伝わりますがね
5. 50 名無し ■2012/05/04 23:34:15
斥候でしょうか?いいえ伝令です。産廃例大祭開幕を告げるために巻き巻きスピード施工だったのでしょうたぶん。

寺一同の話 聖の一生の話 両者は交差せず、全体的に若干ブレている
全体的に誰視点なのか分かりにくい。一人称なのか三人称なのか場面場面で決まっておらず、視点がぼやける
話の入りは唐突かつ 聖入滅の理由やら過去やら掘り下げられそうな部分があるのにそこはスルー 

貴方の作品は読むたびに何か物足りない気分になる…
どれもこれも少しだけ欠けている。しかし修練を積み、いずれも十分になれば一段階ではなく数段飛ばしで進歩する そんな予感がしています。
だからこれからもチェックを続けます
7. 70 NutsIn先任曹長 ■2012/05/06 09:57:10
白蓮は、超人となっても聖人と呼ばれても、最期は人並みに命を惜しみ、まあ、普通に逝きましたね。
彼女の弟子達も、妖怪であるにもかかわらず、人並みに悲しみ、それを乗り越えようとしていましたね。

聖 白蓮、貴女は何が心残りなのですか?
8. 80 キY擇、キ ■2012/05/09 02:38:18
、ノ、、ロ、ノ、ホチヲ、オテ、ニ、簪、キ、ニアワ、ア、鬢、ハ、、タマ、、、ネ、ス、ウ、ォ、鯊M、ャ、ヒタ。」
、ス、、ソヨ、、ニイサヒタ、ヒ、ハ、、ヲ、ネ、キ、ソト皃篆Yセヨ、マイカ、゙、テ、ソ。」
、タ、ャヒタ、ャイタ、、、ホ、ヌ、マ、ハ、、。」ミトイミ、熙ヌネ・、、ウ、ネ、ャイタ、、、ホ、タ。」
ヒタ、フヒイ馮、ヒミヲ、ィ、ソルFナョ、マ。「アセオア、ヒヒタ、ャイタ、ォ、テ、ソ、ヌ、ケ、ォ」ソ

チシ、、、ェヤ彫ヌ、キ、ソ。」モ、ムヤ、ィ、ミヒシ、、ウヤ彫、筅ヲノル、キツ└ュ、ソ、ォ、テ、ソ、ヌ、ケ。」
9. 60 山蜥蜴 ■2012/05/09 18:32:26
冒険もの探偵もの恋愛もの、等の展開で魅せる系、官能、スプラッタ、アクション、の絵面で魅せる系……
どれに当たるのか、ちょっと分からなかったです。人情もの?
夢十夜の女みたいに「もう死にます」「だって死ぬんですもの、仕方がないわ」といった具合じゃ、聖の我侭に寺面子が振り回された様な印象といいますか。
感動を与えるならば、何か価値あるものの犠牲になる、世の不条理に圧殺される無常、又はドラマチックで派手な死に様、なんかが必要では無いでしょうか。
明日のジョーの力石、北斗の拳のラオウやレイやアイン、ヘルシングのベルナドット、トライガンのウルフウッド、弁慶や五右衛門、硫黄島、女王陛下のユリシーズ号の船員達の様な。
長期連載で読者が愛着を抱いているキャラならば、穏やかな衰弱死でも或いは泣けるかも知れませんが、SSの特性上それは難しく思いますので。
『お前は偉そうな事言える様な文章を自分は書けてんのか!』って言われちゃ平謝りするしかありませんが……

とはいえ、場面々々は良いシーンが多く楽しめました。根幹に何かズドーンとテーマ柱が立っていれば、より深みが出て、納得出来たと思います。
10. 70 んh ■2012/05/09 21:36:08
 テーマがすごく面白いです。
 親しい誰かが死ぬ時、周りのみんなはどうするか? というネタは咲夜さん筆頭に定番ですが、白蓮は初めて見ました。ああ、こうなるよなあと興味深く読めました。

 ただ、やはりトータルとしてバラバラな印象がしました。一番気になったのが序盤登場した宝塔のギミックが、あまり活きていないことです。
 最後、あれは白蓮の命の象徴であったことが明示されるのですが、なぜ白蓮の死期が迫ると宝塔が光るのか? が分からないままです。なので冒頭の星とナズーリンの疑問が、後の白蓮との会話と深く繋がって来ません。
 せっかくラスト白蓮のトラウマという美味しいネタが出てくるのだから、これと光った理由と絡めたりしてもっと宝塔という小道具を使い倒して欲しかったなと思いました。
 そうすると、二幕での、宝塔が光った理由について命蓮時メンバーがあれこれ詮索している部分でもっと伏線はって、のちの白蓮と彼女ら個々の会話のシーンにそれらを反映させてくこともできたように感じました。

 繰り返し申しますがやっぱりこのテーマは新鮮だと思うし、もっと掘れると思ったので、それだけに惜しく感じました。
11. 80 紅魚群 ■2012/05/11 17:24:29
こういった話は大好きです。白蓮が衰えこの世を去るというシンプルなストーリーの中に、徐々に弱っていく彼女とその寺の仲間たちとの間にある信頼関係や優しさ、そして悲しみがよく練りこまれており切ない気持ちにさせられました。特にぬえが印象的。
作者様が書きたかったものは伝わりましたが、所々説明不足な部分があるようにも感じました。次回作、期待しています。

個人的な要望だけど、せっかく頑張って書いて公開したんだし、SSの削除はしてほしくないなぁ…。
12. フリーレス 名無し ■2012/05/20 23:04:46
後書きをみて思います。
あなた、基本は出来てますよね。ただ、発想が並みですよね?
13. 100 木質 ■2012/05/21 22:41:34
徐々に老いていく白蓮と残された者達との心暖まる交流。
一人一人との別れがじっくりと描かれており、個性的な命連寺の住人全員にスポットがしっかり当たった、非常に丁寧な物語だと感じました。
細部まで拘った精巧な文章。いつか私もここまで作り込まれた文が書けるようになりたいです。

聖延命というご都合主義な展開にならなかったのが良いです。
だからこそ『老い』や『死』という言葉が本来持っている重みが、ずっしりと伝わってきました。
白蓮の死後、皆でドンチャン騒ぐ場面ではコチラが励まされたような気分になりました。

僅かな救いが残る最後って良いですね。
14. 70 あぶぶ ■2012/05/23 19:03:10
今回一番感動した作品だった
ただ聖の死から幽霊になって現れるまでの展開が早急すぎた気がします。
15. 60 名無し ■2012/05/28 07:12:24
ストーリーは個人的には好きです。
しかしながら、展開が何処か切羽詰まった感じを受けました。
もう少し余裕があれば、更に良いものになったと思われます。
16. 70 pnp ■2012/05/28 20:24:51
晴々しいというか、何と言うか。あなたのSSは後味がすっきりする気がするのです。
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