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『産廃創想話例大祭 神綺「行くのよ勇者アリスちゃん! 魔界神復活を阻止するのよ!」』 作者: 木質
しゅじんこう を けってい してください
霊夢
魔理沙
⇒アリス
アリス で よろしいですか?
⇒はい
いいえ
―― GAME START ――
■プロローグ
半径数十キロにも及ぶ町の中心にそびえ立つ立派な城。その王の間にアリスはいた。
「良く来てくれたわねアリスちゃん」
玉座に座る女性は、自身の娘に朗らかなに笑みを向ける。
「今、この世界に魔王・・・・じゃなくて魔界神が復活しようとしているらしいわ。魔界神が復活したら世界は混沌に包まれてしまう。そこでアリスちゃんには魔界神の復活を阻止して欲しいの」
「はぁ?」
「行きなさい勇者アリスちゃん! この世界に平和をもたらすのよ!」
「あの、ちょっといいかしら母さん?」
小さくアリスは手を挙げた。
「何かしら?」
「この世界は何? 明らかに幻想郷とも魔界とも違うみたいだけれど?」
アリスは自宅で人形の衣装の裁縫中に突然意識を失い、気付いたらここに立っていた。
何が何なのか全く分からない状態だった。
「そうねぇ、ちょっとメタい発言をさせてもらうと」
コホンと咳払いをする神綺。
「ここは私が新たに作り出した世界よ」
「なにRPGツクール感覚で世界創造してるのよ」
「だって最近暇だったから。魔界の統治は夢子ちゃんに任せておけば滞りなく回るし」
「そんな理由で私を巻き込まないでよ」
軽く眉間を押さえる。昔からこの母に関わると、頭痛に苛まれるのが常だった。
「で、どうやったら帰れるの?」
「ゲームをクリアすれば帰してあげるわ」
「どうしたらゲームクリアなの?」
「魔界神をなんとかしたらエンディングよ」
「その魔界神って、母さんのことじゃないの?」
「・・・・」
神綺が一瞬だけ固まる。
「なんで知ってるの? 『国王とラスボスが同一人物だった。実は裏で通じていた』という今までに無い斬新なオチなのに。ひょっとして2周目?強くてニューゲーム?」
「いやいやいやいや」
宝箱がアリスに手渡される。
開けると中には金貨が入っていた。
「5000Gあるわ、大事に使ってね」
「ちなみにGってどういう読み?」
「『グロテスク』よ」
「・・・・」
――――――――【アリス ステータス】――――――――
職業:魔法使い
体力:35
魔力:40
攻撃:15
防御:13
すばやさ:11
かしこさ:20
きようさ:23
技:なし
スキル:なし
―――――――――――――――――――――――――――
第一章 〜(半強制的に)導かれし者達〜
《城下町》
城を出たアリスは、ある場所を探して城下町を歩いていた。
「確かこの辺に・・・あの看板かしら?」
手にしている地図と同じ場所か確認してから、ドアを開けて中に入った。
《ローレライの酒場》
「いらっしゃい・・・・おや、勇者様でしたか。ようこそローレライの酒場へ。私はここのマスターのミスティア・ローレライです」
カウンターでグラスを拭きながらアリスを出迎えた。
「ここに来ればパーティのメンバーが集められるって聞いたのだけれど」
「どうぞこちらへ」
マスターに促され、正面のカウンターに座った。
「こちらがリストになります」
出されたファイルを受け取る。
「選べるのは二人までです。慎重にお選びください」
――――――――――【パーティ リスト】――――――――――
・霧雨魔理沙【魔法使い】
・パチュリー・ノーレッジ【魔法使い】
・フランドール・スカーレット【魔法使い】
・聖白蓮【僧侶】
・寅丸星【僧侶】
・物部布都【魔法使い】
・霍青娥【僧侶】
――――――――――――――――――――――――――――――
(ほとんど、私の知ってる名前ね)
ミスティアを見た時から薄々勘付いていたが、この世界の登場人物はどうやら幻想郷の住人をそのままベースにしているらしい。
(まあ、お陰でキャラクターの特性をいちいち読み解く手間が省けるから良いか)
全員のステータスを流し見てから、リストをミスティアに戻した。
「次は前衛タイプの職業のリストを見せて頂戴」
「それで全部ですけど?」
シェイカーを振りながら答える。
「え?」
呆気にとられるアリス。この時、彼女の中では【剣士】や【武道家】といった前衛二人と、【魔法使い】である自分が後方支援する形の陣形を考えていた。
「そんなわけないでしょ? そんな偏った面子でパーティ組むなんて・・・」
選べるのが【魔法使い】と【僧侶】では、明らかにバランスが悪い。
「まぁまぁ落ち着いてください。どうぞ」
ミスティアはカクテルを差し出してきた。
「頼んでないけど?」
「あちらのお客様からです」
マスターの視線を追うと、カウンターの端で、サングラスを掛けたままストローでオレンジジュースを飲む神綺が居た。
「こんな所で何しているの王様?」
「しー。お忍びで来ているんだから大きな声出しちゃ駄目よ」
「そんなことよりも」
「うん?」
「どうして初期メンバーで選択可能なのが後衛タイプしかいないの?」
「ふふふ」
「な、何よ?」
突然、不敵な笑みを浮かべる神綺に軽く身構える。
「パーティメンバーを考えるのが思ったより面倒臭かったのよ」
「そんな理由で?」
「そんなとは何よ! ステータス考えたり、レベルが上がって覚える技考えたり、適正する職業考えたり、途中でダレたわ!」
「魔界創造してんだからそれくらい根気持ってやりなさいよ! 魔界に何千万種類も魔界虫いるでしょうが! ガッツ見せないよ!」
「私が考えたのなんてせいぜい5、6種類よ! あとは勝手に進化したり派生して増えてったのよ! そもそもママ虫嫌いだし!」
「あのー、そろそろ決まりましたか?」
ミスティアがおずおずと尋ねてきた。
「そうね取りあえずフランドール・スカーレットと聖白蓮を」
ステータスの高さから彼女らを選定した。
「彼女たちを選ぶとはお目が高い。では仲介料をいただきます」
「いくら?」
「フランドール・スカーレットが8億G、聖白蓮が7億Gです」
「高っ!」
「そりゃあステータスの高いキャラは特別ですので」
神綺から貰った5000Gだけではとても届かない。
「ちなみに。一番安いのは?」
「あーこれですね。霧雨魔理沙」
「いくら?」
「0Gです」
「タダってこと?」
「はい。コイツはもともとコソ泥の罪人で、更正するチャンスとして置いているのですが未だに誘いが無く、来週にでも処刑するんですよ」
「・・・」
アリスは無言で魔理沙の名前を指差した。
「彼女を」
「かしこまりました。0G頂きます」
5000G ⇒ 5000G
>>魔理沙が仲間になった。
――――――――【魔理沙 ステータス】――――――――
職業:魔法使い
体力:43
魔力:30
攻撃:18
防御:14
すばやさ:16
かしこさ:16
きようさ:14
技:なし
スキル:なし
―――――――――――――――――――――――――――
「ちなみに、魔理沙の次に安いのは誰かしら?」
「パチュリー・ノーレッジですね。体が弱いから今ちょうどワゴンセール中で、3000Gで仲介しますよ」
(まぁ、全然知らない奴をメンバーにするのも面倒ね)
パチュリーの欄に指を置く。
「彼女を」
「かしこまりました」
5000G ⇒ 2000G
>>パチュリーが仲間になった。
――――――――【パチュリー ステータス】――――――――
職業:魔法使い
体力:27
魔力:50
攻撃:12
防御:11
すばやさ:8
かしこさ:24
きようさ:19
技:なし
スキル:なし
―――――――――――――――――――――――――――――
(全員が【魔法使い】。ちょっと早まったかしら?)
改めて気付くバランスの悪さ。
「ふふ、良いパーティじゃない」
「張っ倒すわよ?」
「ちなみに、ここで選ばれなかった子は、この後のシナリオでCPUとして普通に登場するから」
「どういうこと?」
「最初に選んだパーティによって、アリスちゃんの旅の内容・・・・つまりシナリオが変わってくるってことよ」
「連れてきました勇者様」
ミスティアの後ろに、これから苦楽を共にする仲間の姿があった。
「よろしくねアリス、私はパチュリー・ノーレッ・・・・ゴホッゴホッ・・・・ゲフッ・・・ヒューヒュー」
自己紹介の途中で咳き込み、そのまま蹲ってしまったパチュリー。
「ううぅ・・・・助かった、助かったぜ・・・・良かったぁ、生きてる・・・私生きてる・・・グスッ」
処刑される運命を免れて、顔を汗と涙と鼻水でぐしゃぐしゃにする魔理沙。
「・・・・」
一抹の不安を覚えながら、三人の旅が始まった。
⇒⇒⇒⇒ NEXT STAGE
第二章 〜里と竹林と干し柿と呪われし姫君〜
《道中》
三人は、城下町から数十キロ離れた里を目指して歩いていた。
「へぇ魔理沙はもともとは良い所の出のお嬢さんだったのね」
「そうだぜ、まあ餓鬼の頃に親父と魔法絡みで喧嘩してな、それで家を飛び出して魔法の研究を始めたんだ」
「でも窃盗は良くないわ」
「いや、死んだらちゃんと返すつもりだったんだぜ?」
魔理沙は最初こそ萎縮していたが、話すにつれてだんだんと明るくなり、気付けば、アリスが普段知っている魔理沙と同じ表情になっていた。
「パチュリーも魔法の研究を?」
「ええ。自分の工房を持って、五行に錬金術、魔法や魔術に関わるものには一通り手をつけたわ」
「熱心なのね」
「これでも百年以上生きてるわ。時間だけは無駄にあるのよ。読書は良い暇つぶしになるわ」
喘息のせいなのか気だるそうに自身の半生を語るパチュリー、しかし魔法について語る彼女の目はどこか楽しそうだった。
(やっぱり人格や身体的特徴は、幻想郷のオリジナに似てるのね)
どうしても彼女らを『作り物』という目で見ることが出来なかった。
彼女たちが魔界神に創造されたれっきとした『命』であることを再認識した瞬間であった。
城下町から歩いて半日が経った頃、ようやく目的地の集落が見えてきた。
《はじまりの里》
(人間の里と雰囲気が似てるわね)
よく訪ねる幻想郷の里と町並みが似ており、その見慣れた景色に、何故か安心感を覚える。
「ん、あれは?」
大通りで道具屋と書かれた看板を見つけて、アリスは足を止める。
(そういえば、今って私達何も装備してないのよね)
二人の前で店の看板を指差す。
「入ってみましょうか?」
「いいぜ。何か掘り出し物があるかもな」
「構わないわ。歩くの疲れたし」
二人の合意を得て、店のドアを開けた。
「いらっしゃい。ようこそ香霖堂はじまりの村支店へ」
眼鏡をかけた青年が出迎えた。彼のこともアリスはある程度知っていた。
「僕は森近霖之助。香霖堂のオーナーさ、気が済むまで商品を見ていくと良い」
――――――――【アイテム一覧】――――――――
ダガーナイフ:武器。
ひのきの棒:武器。
薬草:体力が回復する。
きのこ:魔力が回復する。
永遠亭の薬:異常状態を治す。
ハシシ:使用した戦闘中、攻撃力アップして、かしこさがダウンする。
拳銃:武器。
博麗の御札(弱):ザコ妖怪、ザコ妖精、毛玉に貼り付けると無力化できる。
コンドーム:レイプされても妊娠しない。
――――――――――――――――――――――――
「なんか明らかに場違いなものが何個かある気が・・・・拳銃っていくらするのよ?」
「30万Gだよ」
(普通に高い。どう考えても二週目からのアイテムね)
とりあえず、今最低限必要になるアイテムを考える。
「パチュリー、これから何が必要になると思う?」
「私達は今素手だし、レベルが上がって魔法とか覚えるまでは自力でなんとかしないと」
「そうね」
パチュリーの意見にアリスは頷く。
「じゃあダガーナイフなんてどうだ? 軽いから私達でも扱えるだろ」
「店主さん、ダガーナイフはいくら?」
「500Gだよ」
「それなら買えるわね。三つ貰うわ」
「毎度」
2000G ⇒ 500G
>>アリスはダガーナイフを装備した。
>>魔理沙はダガーナイフを装備した。
>>パチュリーはダガーナイフを装備した。
店を出て大通りをさらに散策する三人。時刻はそろそろ夕方になろうとしていた。
「なぁ、そろそろ今夜泊まるところ探そうぜ」
しばらくぶらついたが大してめぼしい物が見つからず、退屈になった魔理沙がそう提案する。
「私も久しぶりにこんな長いこと歩いたから疲れたわ」
パチュリーも魔理沙に賛同した。
「そうねえ、じゃあここの宿に・・・・あ」
たまたま目の前にあった宿屋の料金表を見て、アリスは間抜けな声を出した。
「今夜野宿だわ私達」
宿屋の料金は600Gで設定されていた。
「なんだよそれ」
「仕方ないでしょ。あと100G足りないんだから」
「ナイフを返品するとか?」
「それじゃあ買い損だろ。もっと建設的に考えろよ」
「なんですって?」
「もし、そこのお三方」
口論に発展する直前に声を掛けられた。
振り向くと、一人の女性が立っていた。
「突然すまない。もしかして貴女方は、王からの任を受けた勇者一行か?」
「そうだけどあなたは?」
幻想郷では一応知っている顔だったが、念のため尋ねた。
「失礼した。私は上白沢慧音。この里の長をやっている者だ。ここで立ち話もなんだ、良ければ私の家にこないか?」
こうして三人は里長の家に招かれた。
「この里もあまり裕福ではないのでな、こんな持て成ししかできずに申し訳ない」
そう言いつつも、三人の前には十分に豪勢な食事が並んでいた。
「こんな事してくれなくても良いのに」
「そうはいかない。貴女方は我々にとって希望だ、出来ることがあるのなら何でもしたい」
「じゃあ、ご好意に甘えるとするぜ」
「あ、ちょっと魔理沙」
魔理沙が箸を付けたのを皮切りに、四人での食事が始まった。
「魔界神が復活の予兆が出たと聞いて、里の者達は怯えている」
食事をしながら、慧音は里の現状について話し始めた。
「いがみ合っていた人間と妖怪が和解し、共存するようになって早100年が経とうとしているが、まだ一部では人間と妖怪が争いを続けている地域もある。まだまだ人間と妖怪の関係は不安定だ。そんな中で魔界神が復活したとなれば、世界はまた混乱の渦だ」
(そんな世界観なのね)
神綺の考えた設定に相槌を打ちながら、アリスは箸を進める。
「この里は王国に近いのと、心強い守り手がいてくれるお陰で野良妖怪や盗賊の被害は少なかったが、これからはもっと自衛の力を強化していこうと考えている」
「守り手?」
「藤原妹紅という少女だ。里には住まず、ここから西にある竹林の中で暮らしている。良い奴なんだが、少々人見知りが激しい子でな」
(妹紅・・・・か、ますます幻想郷ね)
「今夜はゆっくりして、旅の疲れを癒して欲しい」
「ありがとう。恩に着るわ」
今日の寝床が確保できて安堵したその時、部屋の戸が勢い良く開け放たれた。
「慧音様大変です!」
現れたのは血相を変えた家の侍女だった。
「阿求様が発作を起こしまして!」
「本当か!? 発作を抑える薬は?」
「それが全て使ってしまいまして、予定では明日の朝一で永遠亭の方がお届けにいらっしゃるのですが・・・」
「そんなの悠長に待っていられるか!」
慧音は立ち上がり、タンスを開けて、出掛ける支度をする。
「急いでるところ御免なさい。その阿求っていう子は?」
「生まれつき体が弱い子でな。永遠亭の薬がないと危険な体なんだ」
「お待ちください慧音様! こんな夜中に藤原様の案内もなく竹林に行くなど危険です! 慧音様にもしものことがあってはこの里は!」
「彼女のような賢い子がこの里には必要だ、失うわけにはいかない。だから行かせてくれ」
「なりません!」
玄関に向かおうとする慧音に侍女はすがりつき、思いとどまるように説得を始めた。
「おいどーするアリス?」
魔理沙が小声で話しかけてくる。
「一宿一飯の恩というし、私は構わないけど」
パチュリーはどうやら行く気満々なようだった。
(おつかいイベントかぁ)
アリスは廊下で問答を繰り返す二人に、代わりに竹林へ向かう事を申し出るのだった。
《迷いの竹林》
暗い竹林の中を三人は松明を手に進んでいた。
「暗いわ」
「夜だからな」
「一応、地図と目印になるものは教えてもらったから。迷わずに行けると思うけど」
その時、藪がざわめき一匹の獣が飛び出してきた。
>>妖怪うさぎが現れた。
「初エンカウントだわ」
「うさぎだけあって、よく見ると可愛いな」
「でも大きいわね。イノシシくらいあるわ」
妖怪うさぎは険しい目で三人を見ている。
「コイツひょっとして、私達を餌として見てるんじゃないか?」
「獲物を狙う目をしてるわね」
妖怪うさぎは弾幕を放った。
「ひっ」
「危ねっ」
「むぎゅぅ!」
アリスと魔理沙は回避したが、パチュリーは腹に弾幕を受けて悶絶する。
「大丈夫パチュリー!?」
パチュリーを気遣うために視線を逸らした隙を見逃さす、妖怪うさぎはアリスに体当たりを仕掛けてきた。
「ぐっ!」
そのまま組み付かれて押し倒されるアリス。
「このぉ! 行きなさい上海!」
しかし、何も起こらない。
(しまった! いつもの癖でっ)
妖怪うさぎは、アリスの首筋に前歯を突き立てた。
「ガッ!!」
アリスの首から勢い良く血が滴っていく。
(ま、ずい)
力は獣のそれであり、非力なアリスではとてもじゃないが押し返せない。
「この、アリスを離せ!」
魔理沙は毛で覆われた背中にダガーナイフを突き立てた。刃先が3センチほど食い込んだところで、ウサギの後ろ蹴りを受けて吹き飛んだ。
「ぐぁ!」
しかしその動きのお陰でアリスの腕が自由になり、圧し掛かるその首筋にダガーナイフに刃を当てて押し込んだ。僅かに食い込んだ刃が、妖怪うさぎの動脈を傷つけた。
「!?」
アリスの攻撃に命に危険を感じたのか、ウサギはアリスから跳び退いた。
「オラア!!」
魔理沙は背後から再度ナイフで襲いかかり、再び背中にナイフを入れる。
妖怪うさぎは首の出血を気にしているのか、動きがずっと鈍くなっていた。それを好機と見て、魔理沙は何度も刺した。
「でりゃ!」
さらにアリスも加勢、ウサギのわき腹を突く。
「ごめんみんな。もう大丈夫よ」
そしてそこに悶絶から回復したパチュリーも加わり、三方向から妖怪うさぎを滅多刺しにする。
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
妖怪うさぎが完全に死んだのを確認してから、三人は地面に座り込む。
全員、手が返り血で真っ赤になっていた。
(なんというか・・・・勇者らしさが、微塵もない)
初勝利の喜びよりもそちらの方が大きいのが正直な感想だった。
「コイツの皮や肉、売れないかしら?」
「良いアイデアだな」
そんなアリスを余所に、二人は死体から剥ぎ取りを始めた。
>>妖怪うさぎの皮を手に入れた。
>>妖怪うさぎの肉を手に入れた。
戦利品を袋詰めしてから三人は先を急いだ。
しばらく歩くと三人の前に、古風なお屋敷の屋根が見えてきた。
戸を叩くと、そう待つことなく鍵が開けられて、中に通された。
《永遠亭》
「なるほど、阿求さんの容態が急変したのね」
医者を名乗る永琳という女性に事情を説明する。
「わかったわ。ウドンゲ、出掛けるから急いで支度なさい」
「はい、ししょ・・・」
「駄目よ永琳」
薬箱を取りに行こうとする兎耳の女性の前に立ちはだかる者が現れた。
「誰だお前?」
魔理沙が妨害者を睨む。
「名乗るならまず自分からでしょう、育ちの悪い子ね。まあいいわ、私は蓬莱山輝夜。ここの主よ・・・ふぁぁ」
名乗ってから、大きく欠伸をした。
「輝夜、里の阿求さんの容態が急変したそうです、通していただけませんか?」
「それはのっぴきならない状況ね」
「ええ、だからすぐに向かわないと」
「でもねぇ」
袖で口元を隠し、輝夜は妖しく笑う。
「こんな夜中に叩き起こされて、はいそうですかっていうのも癪だと思わない?」
「あなた正気? 人の命がかかってるのよ?」
パチュリーが軽蔑の目を向けた。
「私って今、寝起きで機嫌が悪いのよ。機嫌が直れば正常な判断が下せると思うわ」
その目は明らかに何かを要求していた。
「私らに何させようってんだ?」
「そう構えないで、簡単なことよ。ここから少し離れた所に藤原妹紅っていうホームレスがいてね。その家にぶら下がってる干し柿を持ってきて欲しいのよ。一つで良いわ」
一刻を争う状況で、三人に拒否権は無かった。
《迷いの竹林 −奥地−》
「ここか?」
「間違いないと思う。あいつが話してた特徴と一致してるし」
角材を骨組みにしたその上にトタンやベニヤ板を貼り付けた、家と呼ぶにはいささかお粗末な造りの建造物があった。
「干し柿がぶら下がってるわね」
「さっさと持ってこうぜ」
家に近づいた時だった。
「そこで何してる!!」
篭を担いだ赤いモンペの少女が獣道から現れた。どうやらちょうど今帰ってきたところのようだった。
「見間違いかな? 今、その柿盗ろうとしてた?」
「実は・・・」
急ぎ、その場で事情を話す。
「へぇ・・・・柿を持ってくれば阿求の診療に行くって?」
「だから頂けないかしら? 一個でいいの」
「うーん。輝夜の奴を喜ぶと思うと、なんか気が進まないなぁ」
妹紅自身、譲ることはやぶさかではないが、どうも納得いかないという表情だった。
「じゃあ交換だ」
魔理沙は道具袋を開けた。
「妖怪うさぎ丸々一頭の肉と、干し柿一個だ。破格の条件だろ?」
「まあそれなら別に良・・・」
「あらあら、人命が関わってるのに、たかだか干し柿一個でゴネるなんて、相変わらず卑しいわね」
「その声ッ・・・ぁぐっ!」
妹紅は振り向き様、手の痛みを感じた。
「これは・・・」
手の甲を、一本の矢が刺し抜いていた。
「その矢には痺れ薬がたっぷり塗ってあるからしばらくは動けないわよ」
藪の中から輝夜、それに付き従うように永琳が出てきた。どうやら矢を放ったのは永琳だったようで、その手には弓が握られている。
「妹紅の気を逸らしてくれてありがとう」
つかつかと家の前までやってきた輝夜は、干し柿を一つ千切り取った。
「貴女達が直接取ったわけじゃないけど、依頼をこなしたことにしてあげる。永琳、イナバを連れて阿求の元へ向かいなさい」
「御意」
永琳の姿が完全に見えなくなったのを確認してから、輝夜は妹紅の髪を掴み、無理矢理立たせた。
「さぁ。今日は何して遊ぼうかしら?」
「離せこの! ぁがッ!」
鳩尾を殴りつけ、妹紅を黙らせる。
「貴女達退屈でしょ? 退屈しのぎにこいつの生い立ちを教えてあげるわ」
「や、めろ」
「いいじゃない話したって? もしかしたら三人が同情して助けてくれるかもよ? まあレベルが低そうだから、私に挑んでも無駄でしょうけど」
意地悪く笑ってからアリス達を見た。彼女の言うとおり、力の差が歴然である今、下手に動くことはできず、ただ見ていることしか出来なかった。
「コイツは貴族の生まれだったんだけど、望まれない子でね。幼少のころからずっと座敷牢の中で過ごしていたのよ」
説明しながら、妹紅を掘っ立て小屋の壁に、うつ伏せになる形で体を押し付けた。
「唯一の心の拠り所が、たまにしか様子を見に来ない親父。いつも素っ気無い態度しか取らない親父でも、この子馬鹿だから大好きだったのよね」
頭を壁に強く押し付けて、ベニヤのささくれに頬を擦らせる。
「その親父に私がちょっと難癖吹っかけてプライド潰してやったら、その事がこの子の耳に入ったらしく、生まれて初めて座敷牢を脱走して私を殺しに来たのよ。すぐに取り押さえられけど」
髪をひっぱり、自分の方を向かせる。
「悔しかったんでしょ? 嫉妬してたんでしょ? 父親の愛情を一身に受けた私に。愛情のあの字も与えられなかった自分が惨めで」
「黙れ!!」
妹紅の袖から、事前に仕込んでいた一本の苦無が飛び出す、それを輝夜の喉笛に目掛けて振った。
「っぴゅ」
刃先が血管を大きく傷つけて、蛇口を捻ったかのような勢いで血が溢れ出てくる。
「まだ、動けるなんて大し、た執念ね」
口から逆流する血を零しながらも平然と喋る輝夜に、アリス以外の二人は驚愕した。
(やっぱりコイツも幻想郷のと同じ)
「驚いた? 実は私って不老不死なのよ。昔、ちょっとヤバイ薬に手を出したら呪われちゃってこの様」
段々と出血の量が少なくなっていく。
「えーと。どこまで話したかしら? そうそう、殺しに来たコイツを捕らえたって所からよね」
この時点で血は止まり、傷が塞がっていた。
「身の程も弁えずに私の屋敷に土足で入った餓鬼。ムカついたから私と同じ呪いをかけたのよ。不老不死」
壁に押し付けるのが飽きたのか、今度は妹紅を地面に引きずり倒した。
「体が徐々に腐るだとか、運気が下がるとか、悪霊にとり憑かれるなんていうのも考えたけど、今思えば不老不死にして正解ね。こうして何百年とかけて楽しむことができるのだから」
「くっそ!」
「どうやらさっき動けたのが最後の力だったみたいね」
満足に体を動かせない宿敵の様子を見て、にんまりと笑う。
「すぐには殺さないわよ。死んだら折角の痺れ薬の効果が切れちゃうから」
蹴って仰向けにさせて、腹の上に輝夜は座る。
「コレ、永琳の御用達だけあって良く切れるのよ」
取り出したのは一本の手術用メスだった。
「さっきみたいなこともあるし、確実に動けないようにしておきましょうか」
右手首をとりメスを入れる、生命活動に重要な血管を傷つけないように細心の注意を払いながら、慣れた手つきで筋を切断する。
「〜〜ッ」
目を大きく見開き、妹紅はその痛みを耐えた。
「歯を噛み締めちゃって可愛い♪ 叫んで良いのよ? 無様に泣き喚いていいのよ? 私を楽しませて良いのよ?」
左手の筋を絶ちながらそう言った。これで彼女の両手は死ぬまで動かなくなった。
「誰がお前なんかを」
「ふーん」
服の上から胸をメスで真一文字に素早くなぞった。数秒遅れて、メスの軌跡に血が滲む。
「あッあああ゛ッァアァア!!」
神経の集中する箇所を損傷して、思わず慟哭する。
「やれば出来るじゃない」
彼女の衣服のボタンを引き千切り、その柔肌を外気に晒させた。
「あらら、結構深く切っちゃったのね。ごめんごめん。にしても何時見ても貧相な胸ね。座敷牢の中じゃ良い物を食べさせて貰えなかったのかしら?」
「・・・」
妹紅は答えず、横を向いた。心なしか赤面しているように見えた。
「そうそう、もう一個面白い話があったわ」
言って再び三人の方を向く。その狂気に染まった笑みに全員が怖気を感じた。
「実はこの子、8歳の時に処女喪失してるのよ。相手は腹違いの兄。処女を失ってからは他の兄弟からも犯されて、父親は見てみぬふりをしてたらしいわ。すっごいビッチね」
「やめ、言う・・・ぶっ!」
妹紅の顔に、拳を落とした。
「肉便器がいっちょ前に羞恥心持ってんじゃないわよ!!」
さらにもう一発。妹紅の鼻の骨は完全にへし折れた。それでも容赦なく輝夜は顔を何度も殴りつける。
「あはははは! 悲惨よね、12歳の頃にはもう子供産めない体認定受けてたんだから! チンポ以外にも色々と無茶なモノ突っ込まれたんでしょ! 子供って好奇心旺盛で残酷だから!! 私だったら自殺してるわ!」
暴力は止まらない。ただ輝夜の気まぐれで際限なく繰り返される。
「ヒューヒュー」
輝夜の手が止まったのは、その顔が誰のものか判別できないほど膨れ上がった頃だった。
「はい、『私は爛れマンコです』『ファザコンの肉便器です』『一回10Gでヤれます』『悪臭の塊です』っと」
殴られ続けて意識の朦朧とする妹紅、その胸や腹に罵詈雑言の落書きをメスで刻んでいく。
「仕上げにっと」
メスの先で下腹部をなぞる。
「ここは大腸、ここは肝臓、ここは膀胱、そんでもってここが」
ある一点でメスがピタリと止まった。
「赤ちゃんのお部屋♪」
「ッ!!!!」
柄がほとんど見えなくなるほど深く、メスを刺した。
「本当は膣に直刺したいんだけど、痛みでショック死したら、体力全回復した状態で復活しちゃうし」
「・・・・・ぉ、コ、、ァ・・・」
腫れ上がった唇から空気が漏れる。
ひとしきりやって満足したのか、輝夜は妹紅の体から離れた。
「そのまま苦しみながら緩やかに死になさい」
干し柿を手の中で遊ばせながら散々弄んだ背を向ける。
「あなた達も、こいつに八つ当たりされたくなかったら、さっさとこの竹林から出て行くことね。ああ、今日は楽しかった」
そう言って輝夜は茂みの向こうへ消えていった。
「ちょっと大丈夫?」
アリスは妹紅に駆け寄った。
「オ、イ・・・・」
「 ? 」
なんともか細い声だった。
「なに?」
耳を傾けて聞き取ろうとする。
「コ・・・・・ロ、セ。ワ、タ・・・しヲ」
「わ、わかったわ」
アリスは妹紅の介錯の依頼を引き受けた。
「正気か? コイツが不死っていうのは輝夜の出任せだったらどうするんだよ! 殺人だぞ!?」
「大丈夫、きっと彼女は本当に不老不死よ」
アリジナルを知るアリスにはその確信があった。
「殺してあげる前に約束して、輝夜を追わないで。復讐したいのは痛いほどわかるけど、負けたらもっと酷い目に遭わされる」
「・・・・」
しかし、妹紅は同意する様子を見せない。その瞳の奥が輝夜に対する殺意で煮えたぎってるのが見えた。
「ああもうっ、勝手にしなさい!」
心臓にダガーナイフを突き立てた。
すると、無惨だった妹紅の体は何事も無いように全快し、平然と起き上がった。
「感謝するよ。嫌なこと頼んでごめんね」
肩をぐるぐると回す妹紅。先ほどのことなどまるで覚えていなかったかのように上機嫌だった。
「輝夜に挑む気?」
「当然」
「無茶よ。返り討ちにされたら」
「手は打ってある」
「ぎやあアアアアアアアアアアああああああああああああああああ!!」
突然、先ほど輝夜が去っていた方向から叫び声が聞こえた。
「ガ、ガ・・・・ハァ・・・・」
駆けつけると、首を両手で押さえてのた打ち回る輝夜の姿があった。
「勝手に人のものを食うからだよバーカ!」
輝夜の顔を足蹴にする。
地面には、食べかけの干し柿が落ちていた。
「まさか、毒?」
「死ぬにはいたらなけど、行動不能にさせるには持って来いのヤツをね。何回も盗まれれば流石に私も学習するわ」
輝夜の髪を掴み、妹紅は自分の家の方に引張っていく。
「今度は私の番だ。夜はまだまだ始まったばかり。気が済むまでヤろうじゃない」
二人の姿は、闇の中に溶けて、見えなくなった。
「帰りましょうか」
「だな」
「ええ」
必死に助けを求める輝夜の視線を何度か受けてたような気がしたが、気のせいだということにした。
《はじまりの里》
竹林を出た三人は上白沢邸に戻り就寝。夜が明けたころ、阿求が快調したという知らせを聞いた。
永琳に昨晩の顛末を話すと「いつものことよ」と呆れながら溜息をついて、助手と共に永遠亭に帰っていった。
「お陰で、阿求の容態は回復した。なんと礼を言っていいか」
「気にしないで。一宿一飯の恩よ」
「阿求がお礼を言いたいそうだ。ぜひ会ってやって欲しい」
慧音に案内されて、三人は阿求のいる部屋に通される。
「この度は、命を救ってくださいまして、本当にありがとうございます」
今にも散りそうな花を連想させる病弱そうな少女が、布団から身を起こし頭を下げた。
「こちら、ほんの気持ちです」
>>10000Gを手に入れた。
500G ⇒ 10500G
「ありがとう、大事に使わせてもらうわね」
「先を急ぐ身なのに申し訳ありません。でも、どうしてもお伝えしたいことがあって」
「何かしら?」
阿求は巻物を一つ取り出した。
「これは私の先々代が残した手記です。魔界神復活について記されています。もしかしたらお役に立つかと思い。お読みしてもよろしいですか?」
「お願いするわ」
重要そうな項目だけを抜き出して阿求は読み上げる。
「魔界神復活には儀式を執り行う必要があるようです。大勢の命を生贄に捧げる残酷な儀式だとか」
「つまり今、この世界のどこかで魔界神の手下が生贄を集めて主を復活させようと暗躍してるってこと?」
「いいえ。魔界神に手下がいるという記述はどこにもありません。魔界神を復活させるのはこの世界の住人にしか出来ないと書かれています」
「何の得があって魔界神なんて呼び出すんだ? 復活したら世界が大混乱なんだろ? 誰も魔界神なんて呼び出したがらないぜ?」
「魔界神は、自身を復活させた者の願いを一つだけ叶えてくれるそうです」
「願いを?」
怪訝な表情でパチュリーが訊いた。
「魔界神の力を持ってすれば、死者を蘇らせることも、過去に戻ることも、新しい世界を作り出すことも可能だとか」
「確かにそれは魅力的ね。賢者の石を持ってしても到底叶えることのできない事ばかり。欲に目がくらんだ愚者なら、やりかねないわ」
得心いったとパチュリーは頷く。
「じゃあ私達の旅の目的は、魔界神を復活させようとしている組織をぶっ潰せばいいわけだな?」
「魔界神の儀式には『大勢の生贄』と『強い力を持った女性』を捧げる必要があるそうです」
「なら誘拐が多発する地域を重点的に調査していけばいいのか?」
なんとなく、今後の行動が見えてきた。
「調査するって言っても今の私達の実力じゃあ・・・」
妖怪うさぎ一匹に苦戦したことをアリスは思い出し、少し落ち込む。
「ところで、貴女方はダーマ神霊廟に行かれたことはありますか?」
「ダーマ神霊廟?」
「この里から北の方角にある建物です。そこに行くと今とは違う職業にクラスチェンジできるとか」
「へぇ。それは是が非でも行かないと」
全員が【魔法使い】であることをネックに感じていたアリスには、有難い情報だった。
「そこの神官は、相手の本質を見抜き、その者にあった職業を教えてくれるとか。必ず適正する職が見つかるかと」
「ありがとう。さっそく立ち寄ってみるわ」
魔界神に関する有力な情報を得て、三人は里を出た。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
「ん?」
里を出たとき、アリスの脳内に軽やかな音楽が演奏された。
『魔理沙は マジックミサイル を覚えた』
――――――――【魔理沙 ステータス】――――――――
職業:魔法使い
体力:46
魔力:35
攻撃:20
防御:16
すばやさ:18
かしこさ:17
きようさ:18
持ち物:ダガーナイフ。
技:マジックミサイル。
スキル:なし
―――――――――――――――――――――――――――
『パチュリーは アグニシャイン を覚えた』
――――――――【パチュリー ステータス】――――――――
職業:魔法使い
体力:28
魔力:56
攻撃:13
防御:12
すばやさ:9
かしこさ:30
きようさ:23
持ち物:ダガーナイフ。
技:火符「アグニシャイン」。
スキル:なし
―――――――――――――――――――――――――――――
アリスの頭にそんな言葉と情報が流れ込んできた。
「なにこれ? ねえ今の音聞こえた?」
「・・・・」
「・・・・」
「どうしたの二人共、急に黙っちゃって?」
魔理沙とパチュリーは突っ立ったまま、動こうとしない。
「もしもーし?」
顔の前で手を振ってみるが、瞬き一つしない。
「どういうこと? 人形みたいに動かない」
「それは、アリスちゃん以外の時間が止まっているからよ」
真上から声がしてアリスは空を仰ぐ。
「レベルアップおめでとうアリスちゃん」
神綺がアリスの目の前に降りてきた。
「ストーリーの区切りごとで、その頑張りに応じた分、レベルがアップするのよ」
「なんで私だけ動けるの?」
「だってアリスちゃんは主人公で特別な存在だからよ」
「ところで私、何も覚えていないんだけど?」
「それを決めるのがこの空間よ」
「はい?」
神綺が指を鳴らすと、空から大きなボードが落ちてきて、地面に直立した。
「今回、アリスちゃんの覚えられる技の候補はこちら!」
ボードに書かれている文字を指差した。
@人形操作(上海人形):上海人形を操れる。
A人形操作(モブ人形3体):名無し人形を操れる(リトルレギオンが使用可能に)。
B毒きり:口から緑色の毒霧を吐く。稀に相手を毒状態にする。
「アリスちゃんがどの技を習得できるわかは。神のみぞ知ります」
「あの? え、どういうこと?」
「それ!」
アリスの疑問を無視して、神綺はダーツを投げる。
ダーツはBと書かれた枠に刺さる。
「おめでとうアリスちゃんは毒きりを覚えたわ!」
――――――――【アリス ステータス】――――――――
職業:魔法使い
体力:39
魔力:45
攻撃:17
防御:15
すばやさ:13
かしこさ:27
きようさ:26
持ち物:ダガーナイフ。
技:毒きり。
スキル:なし
―――――――――――――――――――――――――――
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
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第三章 〜エデンの戦死たち〜
《命蓮寺》
「ナズーリンが何者かに殺されました」
本堂の真ん中に黒い棺が置かれている。
棺の周りには、聖白蓮、寅丸星、村紗水蜜の幹部が集結していた。
「皆に見て欲しいものがあります」
そう言って星は懐からネズミを一匹、大事にそうに取り出した。
「それは、いつもナズーリンの傍にいた?」
「見てください、背中におかしな模様があります」
ネズミの背中には『点』と『線』が並んでいる。
「モールス信号ってやつだと思います。きっとナズーリンが今際の際に残してくれたのでしょう」
「・・・・」
死ぬ間際まで使命を全うした仲間の棺に、賞賛の意味をこめて視線を送った。
「ちなみに、モールス信号が読める方は? 私は読めません」
「「・・・」」
白蓮と村紗は同時に星から目を逸らした。
「えっと・・・・・誰もいないんですか!?」
「手旗信号なら出来るんだけど」
「ごめんなさい、私もモールス信号はちょっと」
どうやら全員、解読できないようだった。
「ナズーリン。これ何て読むんですか?」
星は棺をノックした。
「駄目じゃないかご主人。私は死んでいるのだから無闇に話かけてはいけない」
棺の蓋がわずかに上がり、そこからナズーリンは顔を半分出す。彼女の眉間には穴が開いており、向こう側の景色が見えている。
「そうおっしゃらず。モースル信号だってことはわかったんだから教えてくださいよ」
「霍青娥にやれたんだよ。巷の妖怪狩りの犯人は豊聡耳神子を中心とした道教の連中だったんだよ」
ここ最近、野良妖怪も無害な妖怪も区別なく手当たり次第に襲われる事案が発生し、その調査をナズーリンは行っていた。
「妖怪を殺すことに特化した符や武器を奴等が配って回っているのを突き止めたんだが、青娥に見つかってしまってね。ドジを踏んでしまった」
「大儀でしたナズーリン。ゆっくり休んでください」
「休むもなにももう死んでるし・・・・そう思うのならさっさと博麗神社に・・・」
「皆さん。ナズーリンの死を無駄にしてはいけません」
「弔い合戦ね」
「目にモノ見せてやりましょう」
「「おおー!」」
「・・・おーい? それよりも早く復活を・・・」
《道中》
ダーマ神霊廟を目指す勇者アリス一行。
>>野生の妖精が現れた。
>>野生の毛玉が現れた。
「アグニシャイン」
パチュリーが詠唱すると複数の火球が発生し、毛玉たちを焼いていく。
「喰らいやがれ!」
魔理沙のマジックミサイルが妖精を撃墜する。
「毒きり!」
アリスの口から漏れ出た緑色の霧が、生き残った敵の行動を不能にする。
「「・・・・」」
冷たい視線がアリスを貫く。
「やめて! そんな目で見ないで!!」
アリス達は勝利した。
>>妖精は200Gを落としていった
10500G ⇒ 10700G
「でもこれで、ようやくまともに戦えるようになったわね」
しばらく歩くと建物らしき物体が遠くに見えてきた。
「あそこがダーマ神霊廟かしら?」
「なんか安っいパルテノン神殿みたいだな」
《ダーマ神霊廟》
「見てください豊聡耳様。芳香ちゃんカスタムです。妖怪討伐に特化させてみました」
霍青娥は神霊廟の主人、豊聡耳神子の前に、自身が使役するキョンシーを連れてきていた。
「今までの彼女とドコが違うのです?」
「はい、体中に起爆札を埋め込みました」
「なぜそのようなことを?」
「妖怪は噛み付きや爪による引掻きが主な攻撃方法です。つまり、芳香の腕を噛み千切った妖怪は・・・ボンッです」
「効果的かもしれませんが、芳香さんがいささか気の毒では?」
「この子は私のもの、どう使おうと私の自由ではありませんか?」
芳香を抱きかかえて「ねー?」と同意を求める。そんな主人に芳香は「おー?」と曖昧な返事を返すのだった。
「まったく、いくら死んでいるからといって、死者の体を玩具のように・・・」
「あの、よろしいですか太子様?」
神子に足早に近づいてくる者がいた。
「どうしました布都?」
「職業の変更の為に、太子様に謁見を望む者が」
「普段どおり、あなたか屠自古が応対すればよろしいのでは?」
「それが王国から魔界神復活阻止の任を受けた者たちですので、我々で応対してしまっても良いか迷いまして」
「王国の・・・では私が直々に出向かねば無礼ですね。案内してください」
「は、こちらです」
アリス達が物部布都と名乗る神官の少女を待つこと数分。
ようやく指名した人物を連れてきた。
「ようこそいらっしゃいました勇者ご一行様。私はここの大神官、豊聡耳神子と申します」
落ち着いた物腰でうやうやしく頭を垂れた。
「なにやら転職を希望されていると?」
「ええ、かなり偏ってるから」
「なるほど、パーティ全員が魔法使いなんて前代未聞ですね。女子高生の修学旅行の班決めじゃないんですから」
「文句なら神様に言ってもらえるかしら?」
パチュリーが最初に面談を受ける。
「あなたはすでに【魔法使い】を極めている。【僧侶】に転職してはいかがでしょう? 回復魔法が使えるようになりますよ」
「【僧侶】になったメリットは?」
「【魔法使い】と【僧侶】を極めれば。【賢者】へとクラスアップできます。大魔法が使えるようになりますよ」
「それは魅力的だけど、私でも前衛タイプになれたりしないかしら? ちょっと憧れてたのよ、【武道家】とか【戦士】に」
「三人の中で、一番不適合な気がするのですが」
「今は無理かもしれないけど、将来的にどれだけ経験を積めば転職可能なのかしら?」
「余命を言えと?」
それからパチュリーは二人に説得され、結局【僧侶】にクラスチェンジした。
――――――――【パチュリー ステータス】――――――――
職業:僧侶
体力:34
魔力:75
攻撃:15
防御:14
すばやさ:13
かしこさ:35
きようさ:26
持ち物:ダガーナイフ。
技:火符「アグニシャイン」。
スキル:神の加護(回復魔法・防御障壁が使用可能)
―――――――――――――――――――――――――――――
今度は魔理沙が面談を受ける。
「貴女が魔法使い以外に適正のある最適な職業は・・・・・・盗賊ですね」
「盗賊だぁ?」
「手癖悪いでしょ? すぐ嘘をつくでしょ? 」
「・・・・・」
否定できない魔理沙。
「ちなみに盗賊ってどんな特徴だ?」
「洞窟探索や、アイテム探しに役立つスキルが多いですね。あと素早さにも特化してます。一応前衛タイプです」
「なんだ思ったよりも悪くないな」
「でも防御が紙です。パーティで真っ先に死にます」
「・・・・」
――――――――【魔理沙 ステータス】――――――――
職業:盗賊
体力:56
魔力:32
攻撃:30
防御:17
すばやさ:38
かしこさ:20
きようさ:28
持ち物:ダガーナイフ。
技:マジックミサイル。
スキル:盗賊の勘(隠し通路の探知・ピッキングが使用可能)
―――――――――――――――――――――――――――
アリスの番が回ってきた。
「あなたは・・・・旅芸人ですね」
「あひゃひゃひゃひゃ!」
後ろにいた魔理沙が盛大に笑う。
「私の能力がそう判断したのですが、何か心当たりは?」
(そりゃ人里で人形劇やって御ひねり貰うような事してればそうなるわね)
悔しいが納得してしまう。
「で、旅芸人の特徴は?」
「そうですね。ステータスは平凡ですが、器用さが特化された職業ですね。玄人向けの職業です」
(人形を操作するなら役に立ちそうね)
――――――――【アリス ステータス】――――――――
職業:旅芸人
体力:50
魔力:42
攻撃:19
防御:19
すばやさ:20
かしこさ:25
きようさ:32
持ち物:ダガーナイフ。
技:毒きり
スキル:エンターテイナー(操作する人形の性能がワンランクアップ)
―――――――――――――――――――――――――――
全員の転職が終了した。
「さて、皆さん他に何か・・・」
突如、突然建物が大きく揺れた。
「なんだ、地震か!?」
「豊聡耳様!」
青娥が聖堂に走ってきた。
「青娥、これは何事です!!」
「命蓮寺の連中です! やつらがここに襲撃を!! 今のは船からの砲撃です!」
「なんてことをっ!」
「(先日、始末したネズミの件での報復でしょうか?)」
青娥がそっと耳打ちする。
「今はそれを考えている場合ではありません・・・・・・皆さんこちらへ! 地下道がありますので私について来てください!!」
全員が神子の後に続いた。
「ぜーぜーむぎゅ。ぜーぜーむぎゅ」
「大丈夫パチュリー?」
パチュリーの背中に手を添えて、アリスは心配する。
「もう少しです、頑張って!」
倒れてきた柱や、降って来る欠片に気をつけながら走っていると、開けた場所に出た。
「ひょっとして隠し通路があるのって、あの辺りか?」
なんとなく勘で、ある箇所を指差した。
「素晴らしい。やはり君は盗賊の才能がある」
「手放しで喜べないぜ」
とある石像が置かれている台の裏手に回る。
「一緒に押してください! この石像の下に隠し通路があります」
「わかったぜ」
「体使うの苦手なんだけど」
「芳香も手伝って」
「おー」
「せーのっ!」
神子、青娥、芳香、アリス、魔理沙、パチュリーに押されて、台が少しずつ前に進んでいく。
徐々に地下に続く階段が見えてきた。
《ダーマ神霊廟上空》
「倒壊までの推定時間、5分」
船の舵を取りながら村紗が指令席に座る白蓮へ報告する。
「聖徳太子が外に逃げた様子は?」
「未だ確認されていません」
「瓦礫の下敷きになったのでしょうか?」
計器やメーターに監視の目を光らせながら星は言った。
「あの聖人がそんなアクシデントで死ぬとは思えませんね」
数秒、白蓮は考えこんでから顔を上げた。
「熱源反応・・・・サーモグラフで下を見ることは出来ますか?」
「可能です。余り低い温度はムリですが」
「人の体温は?」
「それなら大丈夫です」
「では三人以上で行動し、なおかつ出口とは逆方向へ向かう熱源を探してください」
「了解」
「どうするつもりです?」
白蓮指示の意図が読めず、星が訊いた。
「きっと安全な抜け道があるのでしょう。それを使う気です」
「なるほど」
「いました。熱源は5つ」
「轟沈アンカーを落とします。星、操作権限を譲渡します」
「はい!」
《ダーマ神霊廟 −広場−》
崩れつつあるダーマ神霊廟の広間。ついに隠し通路の全貌が明らかになった。
「早くこの中へ」
「狭いな」
「頑丈さは保障します。私が先頭、殿は青娥が務めます。さあ急い・・・」
神子の言葉は途中で切られた。
《ダーマ神霊廟上空》
「轟沈アンカー! 真下の熱源反応に命中!」
「やりましたよナズーリン!」
星は歓喜の声を上げた。
《ダーマ神霊廟 −広場−》
「ひっ!」
「うっぷ」
聖輦船からの錨の直撃を受け頭の潰れた神子は、すり足で2歩前に歩いてから倒れた。
「・・・・ア・・・・・・ゥ・・・・」
神子の隣にいた青娥は、直撃こそ免れたものの、右腕をごっそり持っていかれており、右側のわき腹からはヌラヌラと光沢を放つ腸がはみ出ていた。
「せーが様どうしたー?」
虫の息となった主人を覗き込む。
「おい、早く逃げるぞ! もう一発くる!」
鎖に引張られて上空へ登っていく錨を見て、魔理沙は芳香の腕を引こうとする。
「せーが様?」
「残念だけど、こうなっては彼女は手遅れよ」
パチュリーが芳香の肩に手を置く。
「よし・・・ぁ」
絶え絶えの息で自身のキョンシーの名を呼んだ。
「なんだー?」
「******」
顔を近づけてきた芳香の耳元で囁いた。
「でき・・・る?」
「やってみるぞー」
「お、ね・・・が、いね」
その言葉の後、二撃目の錨が落ちてきた。
《ダーマ神霊廟上空》
「二撃目外しました。申し訳ありません」
「いいえ。十分です。今の攻撃で脱出路を破壊しているハズです。攻撃を続けなさい」
「アンカー収納確認。いつでも落とせま・・・・・・ぐぅぅぅ!!!!」
「うわっ!」
船が大きく揺れた。
「何事です!?」
「アンカーを収納していた船の左側面に大きな損傷。なんらかの爆発が起きたと思われます!」
「なぜです!? あの箇所に火器の類は一切置いて無かったはず!!」
「船のバランスが! みんな衝撃に備えて。堕ちる!!」
《ダーマ神霊廟 −広場−》
上空から聞こえてきた炸裂音にアリス達は耳を塞いだ。
「あんた自分のキョンシーになんて命令してんのよ!!」
床を粉砕した第二撃目の錨、その鎖にしがみついた芳香は、錨と共に船内に収納されたと同時に体の起爆札を起動させた。
「ふっ・・・・ふふ・・・・ふ、ぅ」
ひとしきり笑った後、彼女の目から、生気の光が消え。顔が横を向いた。
「死んだ」
直後、天井が割れてそこから現れた聖輦船がアリス達に向かって落下してきた。
「みんな生きてる?」
「なんとか」
「むぎゅゴッホ、むぎゅゴッホ」
運良く瓦礫が三角となり、三人はその隙間にいた。
「しっかし、一体何が起きたんだ? 地震かと思ったら錨が落ちてきて、ついには船まで落ちてきやがった」
瓦礫から這い出すと、目の前に巨大な船の底があった。
「それは聖輦船。命蓮寺の寺が変形したものです」
すぐ近くから声がした。アリスは声がした方を向くと、棺が落ちているのに気付いた。
「なんでこんなことろに棺おけが・・・・・わっ!?」
蓋を開けると胴体と首の分かれた神子が入っていた。
「私達の抗争に巻き込んでしまって申し訳ありません」
しかし神子は首だけでありながら普通に喋っていた。
(え? なに? どういうこと?)
死者が平然としていることに戸惑いを隠せないアリス。
「なんで船がここに落ちてきたんだぜ?」
魔理沙はそんなことに全く違和感を感じることなく、神子の生首に話しかける。
「私達と命蓮寺は現在水面下で抗争をしておりまして、我々は人間擁護派、彼女らは妖怪擁護派で昔から衝突を繰り返しているのです。きっと今回の件は青娥が幹部を殺したことへの報復でしょうね」
首の無い胴体が、少し離れた場所にあった棺を指さした。どうやらあの中に青娥がいるようだった。
(どういうこと? 死者が、生首が動いてる?)
いまだに現状が呑み込めないアリス。
「あの、ちょっといいかし・・・」
「このあたりはいつ倒壊するか分かりません。揺れが収まるまであの船の中に避難しておいた方が良いでしょう」
「だな、行くぞアリス」
「え、待って、この状況の説明を・・・」
「状況なら今聞いただろ」
「そうじゃなくて」
アリスは疑問を抱えたまま、芳香によって破壊された船の側面の穴に入っていった。
「この肉って・・・」
「あの子の体よね」
「手も足も胴体も。嫌なにおい」
「じゃあもうちょっと奥に行くか?」
バラバラになった芳香の肉片を踏まないように、船内を目指す。この時、芳香の首がないことに三人は気付いていなかった。
「なんかマジックハウスを歩くみたいだな」
壁が床となり、床が壁となった廊下を三人は進んでいった。
「太子様。こちらにいらしたのですか」
両足が霊魂になっている少女が漂いながら、神子の棺おけに近づいてきた。
「屠自古、無事だったのですね」
「霊体ですので」
「布都を探してください。あなた一人では私と青娥を博麗神社まで運べないでしょう?」
「物部様なら、落下した船の中に、いの一番に飛び込んで行くのを見ましたけど?」
棺を開けて、右腕の無い青娥が報告した。
「え?」
するとゴウゴウとエンジンの駆動音がして、彼女らが見ている前で聖輦船は船体を起こした。
《聖輦船の操舵室》
「まさか聖も星も今の衝撃で死ぬなんて」
村紗は二つの棺を見て眉間を押さえる。
「面目ないです」
胸に割れたガラスが刺さって死んだ白蓮。
「うっかりしてました」
落下の衝撃で首の骨が折れた星。二人とも棺の中からすまなそうに言った。
「取りあえず、一度寺の敷地に戻りますよ」
唯一生き残った村紗が手元のレバーを操作すると、再び船が浮遊を始めた。
「行けそうですか?」
「なんとか飛べます」
座標を寺にセットして、舵を切りだした。
《聖輦船の船内》
「おい! 急に傾いたぞ! どうなってる!!」
「知らないわよ!」
船が起き上がったことで床と壁が正位置に戻る。
三人は壁から生えていた鉄パイプを咄嗟に掴んで体を支えた。
その際、廊下の窓から外を見ることが出来た。
「げぇ、船が浮かんでる」
「この高さじゃ降りられないわね」
どんどん地上から遠ざかっている。
着陸するのを待つ他なさそうだった。
《聖輦船の操舵室》
操舵室で村紗は鼻歌を歌いながら舵を切っていた。
「〜♪ 〜♪」
「あとどれくらいで到着しますか?」
棺の中から白蓮が尋ねる。
「30分ってところだよ」
船は気流に乗り、順調にルートをなぞっていた。
「しかし、聖に星、ナズーリンの三人を復活させるとなると、結構な散財になるね」
「すみません村紗。私の能力で必ずや挽回しますから」
首が曲がった星が、僅かに開いた棺の隙間から申し訳なさそうに村紗を見る。
「その必要はないぞ貴様ら!」
「ッ!!」
部屋の扉を蹴破り、布都が乱入してきた。両手で芳香の首を抱えている。
「クッ! 油断した。最も気の緩んだこのタイミングで仕掛けてくるなんて」
最も隙が出来る時を見計らい現れた相手に歯噛みした。
「それは違うな」
「なに?」
「本当はすぐに殴りこみにきたかったが、迷い続けて今ようやく辿り着いたのじゃ!」
自信満々にそう言ってのけた。
「あ、そっすか」
「よくも太子様を、貴様らは終わりじゃ!! 死なばもろとも!」
布都は芳香の頭に詰まっていた、起爆札を起動させた。
⇒⇒⇒⇒ NEXT STAGE
第四章 〜天界の花嫁〜
《???》
「魔理沙。起きなさい魔理沙」
体を揺すられて、魔理沙の意識が覚醒した。
「う・・・・ん・・・・」
「気がついたかしら?」
目を開けると、アリスとパチュリーがこちらを覗き込んでいた。
「よかった。脳死状態になったのかと心配したわ」
「脳死? そうだ、私達は!!」
全てを思い出して体を勢い良く起こした。
落下してくる瓦礫から逃れるために避難した聖輦船。
しかし、彼女らが乗り込んですぐ、船は傾いていた船体を戻して浮上を開始した。
浮上した船が着陸するまでする事が無いからと、甲板に出てその景色を堪能している最中、突然船の一部が爆発を起こして、その衝撃で甲板から放り出されたのだった。
魔理沙は自分の両手を見た。怪我らしい怪我は無い。
「どうして私は無事なんだ?」
あれだけの高さから落ちて、無傷で居られたのが信じられなかった。
「周りを良く見てみると良いわ」
「周りって・・・・なんだココ!! 雲の上じゃないか!」
すぐ近くに浮かぶ雲、視界一杯に広がる青空。
地面に手をつくと、手に柔らかい感触を残しながらゆっくりと沈んでいった。
「船から振り落とされた私達は、運良くこの雲の上に落下したみたいね」
柔らかい雲がクッションとなり、体への衝撃が大きく軽減された。
「ここは天国ってオチじゃないよな?」
運が良すぎて、死後の世界に来た気がしてならない魔理沙。
「いいえ違うわ。ここは天界と呼ばれる所よ」
魔理沙がこの場所が天界だとパチュリーに告げられた時だった。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
アリスの脳内に、一度聞いたことのある軽やかな音楽が演奏された。
『魔理沙は イリュージョンレーザー を覚えた』
――――――――【魔理沙 ステータス】――――――――
職業:盗賊
体力:60
魔力:37
攻撃:34
防御:20
すばやさ:45
かしこさ:23
きようさ:33
持ち物:ダガーナイフ。
技:マジックミサイル。イリュージョンレーザー。
スキル:盗賊の勘(隠し通路の探知・ピッキングが使用可能)
―――――――――――――――――――――――――――
『パチュリーは プリンセスウンディネ を覚えた』
――――――――【パチュリー ステータス】――――――――
職業:僧侶
体力:37
魔力:82
攻撃:17
防御:16
すばやさ:16
かしこさ:41
きようさ:30
持ち物:ダガーナイフ。
技:火符「アグニシャイン」。水符「プリンセスウンディネ」。
スキル:神の加護(回復魔法・防御障壁が使用可能)
―――――――――――――――――――――――――――――
「レベルアップおめでとー」
空からふわふわと降りてくる神綺。
「さあ、アリスちゃんの取得スキルを決める時間がきたわよ」
「その前に一つ確認したいのだけれど?」
「なにかしら?」
「この世界の“死”という概念についてだけど」
「ああ、それのこと」
死んでも、棺おけの中で悠長にしゃべる死体についてだった。
「RPGの世界を忠実に再現しようとしたら、ああなっちゃったのよ。ほら、あの世界ってザオリクで一発じゃない?」
「ゾンビでもなければ幽霊でもない。便宜上死んでいるのに生きている。不気味すぎるわ」
「一応、復活するまで『棺おけから一歩も外に出てはいけない』『むやみに生者と会話してはいけない』なんて暗黙のルールはあるわ、慣れれば愉快よ」
「慣れるかしら?」
「さあ気を取り直して本題よ!」
ボードを指さす。
「今回アリスちゃんが覚えられるスキルはこれ!」
@人形操作(上海人形):上海人形を操れる。
A人形操作(モブ人形3体):名無し人形を操れる(リトルレギオンが使用可能に)。
B肉体言語:すべての関節技を体得する。
「さあ、いざ投擲」
「ちょっと待って! 明らかにおかしいスキルがある! 毒きりといいBといい、何、私を悪役レスラーにでもしたいの!?」
「そーれ!」
ダーツがボードに刺さる。ダーツは@に止まっていた。
「アリスちゃんは・・・・・上海人形を操作できるようになった・・・・・ハァ・・・・」
「なんでそんな不服そんな顔してるのよ?」
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
《天界道中》
>>低級の鳥型妖怪が現れた。
「プリンセスウンディネ」
パチュリーが詠唱を終えると、上空に水の塊が発生し、鳥型妖怪を押しつぶす。
「そこだ!!」
魔理沙のイリュージョンレーザーが怪鳥の羽を撃ち抜き落としていく。
「上海!!」
「ココロエタ」
ランスで突出した上海が地面に落下して動けない鳥妖怪に止めを刺す。
「シシテシカバネヒロウモノ、ナシ」
(なんだろう。この上海、私が知ってるのと微妙に違う)
>>アリスたちは 怪鳥の肉 を手に入れた。
>>アリスたちは 怪鳥の羽 を手に入れた。
《天界の集落》
「やっと人が住んでるところまで来れたわね」
「ここは主に天人とその部下や召使が暮らすところよ」
「詳しいのね」
「全部、本の中の知識よ。来るのは初めてだわ」
「おっ。ここにも道具屋があるぞ」
「入ってみましょうか」
ドアを開けて中に入った。
「いらっしゃい。僕は森近霖太郎、霖之助の兄だよ」
「何も訊いてないのに勝手に自己紹介しやがった」
――――――――【アイテム一覧】――――――――
針金:武器(盗賊が装備できる。攻撃した相手からアイテムを稀に盗むことが出来る)
杖:武器(魔法使い、僧侶が装備できる。魔力がUPする)
透明な糸:武器(旅芸人が装備できる。器用さがUPする)
薬草:体力が回復する。
聖水:魔力が回復する。
天界の桃:使用した戦闘時のみ防御力が2倍になる。
ライフル:武器。
博麗の御札(弱):ザコ妖怪、ザコ妖精、毛玉に貼り付けると無力化できる。
博麗の御札(中):野良妖怪、強い妖精、低級の神に貼り付けると無力化できる。
―――――――――――――――――――――――――
「針金と杖、透明な糸を頂戴」
「針金は300G、杖は300G、透明な糸は300Gだよ。いいかい?」
「買うわ」
「毎度」
10700G ⇒ 9800G
>>アリスは透明な糸を装備した。
>>魔理沙は針金を装備した。
>>パチュリーは杖を装備した。
「このダガーナイフがいらなくなったから買い取って欲しいのだけど」
「一つ200Gだけどいいかな? 使用者である君達の顔写真と一緒に売ることを許可してくれたら、一つ2000Gで買い取るけど?」
「なにそれ怖い」
9800G ⇒ 10400G
「あと、妖怪うさぎの皮と肉、鳥妖怪の羽やら肉やらあるんだけど、買い取ってくれるかしら?」
「全部で600Gだけどいいかい?」
「お願いするわ」
10400G ⇒ 11000G
店を出て集落をぶらついてみる。
「どうやって地上に帰ろうかしら」
「だよなー」
「地上に降りるためのアイテムとかないのかしら」
「ごめんなさい、そこまでは本になかったわ」
そんな時、アリスは前から走ってくる少女とぶつかった。
「ちょっと! どこ見てんのよ!!」
帽子に桃を乗せた少女がヒステリックな声を上げる。
(この子って確か・・・)
幻想郷で知っている顔だった。
「総領娘さまー? どこですかー?」
少し離れた所、女性が誰かを探しているようだった。
「まずッ!」
その声に焦ったのか、彼女は道端に落ちていたダンボールを拾ってかぶり、壁際に寄った。
「ビラビラの女が来たら『知らない』って言って」
「ビラビラ女って何? 痴女?」
首を傾げている三人向かい、羽衣を纏った女性が話しかけてきた。
「すみません。この辺りで帽子に桃を乗せた奇抜な女の子を見かけませんでしたか?」
「さぁ、『知らない』わね」
「そうですか。ああ、一体どちらに行かれたのでしょうか。挙式まで日が少ないというのに・・・・・総領娘さまー? どこですかー?」
困り顔で女性は人ごみに向かい歩いていった。
「行った?」
ダンボールから少女は顔を出す。
「ええ」
「はー、助かった」
「何で追われてるんだ? お前犯罪者か?」
「違うわよ。いいわ話してあげる、場所を変えましょう」
《天界某所》
「ここは私の秘密基地よ」
集落から外れた場所に建てられた小さな小屋だった。
「さて、自己紹介が遅れたわね。私は比那名居天子。天人よ」
「アリスよ、こっちが魔理沙とパチュリー」
「よろしくだぜ」
「よろしく」
幻想郷にいるオリジナルとは、アリスは面識があった。
口調や性格などは、こっちの世界でも変わらないようだった。
「あんた達、地上の住人でしょ?」
「ええ、なんでわかったの?」
「だって名門比那名居家のご令嬢である私を知らないなんてモグリもいいトコよ」
「じゃあどうして、そのご令嬢様があんなコソコソと逃げ回ってたんだ?」
「私ね、結婚させらるのよ。無理矢理。もう最悪」
部屋にあるベッドに腰掛けて頬杖をついて、大きく溜息を吐いた。
「相手は貴女のことどう思ってるの?」
「好かれてるわよ。お陰であれよあれよという間に挙式間近よ・・・あ、そうだ」
何かを思いついたのか、ベットから立ち上がりアリスに視線を送る。
「そういえばあんた、私にぶつかる直前『地上に戻りたいって』って口にしてたわよね?」
「聞こえてたの?」
「本来、地上の人間が天界に来るには、特別な手続きや莫大な資金が必要になるんだけど。あんた達はどう考えても不法入国よね?」
「不可抗力というやつよ」
「ここから地上に帰る方法はたった一つ、天界が管理している空を飛べる聖獣に乗ること」
「あなたの権限で乗せてくれるの?」
「残念だけどそこまでの力はないわ。でもそれ以外の方法で降りる裏技がある。知りたい?」
「ええ、教えて頂戴」
「私のお願いを聞いてくれたらね」
「お願い?」
「私の結婚をご破算にさせてくれれば。やる?」
「ご破算にするって言われても」
「別になんでもいいわ。式で暴れても、結婚相手を再起不能にさせても・・・・最悪、式の日が数日遅れるだけでも構わないわ」
三人は顔を見合わせるが、すぐに天子を見た
「いいわ。引き受けましょう。他に手は無さそうだし」
「取引成立ね」
「ところで、その相手っていうのは・・・」
『見つけたぞー天子ー』
地鳴りのような声がして、僅かに開いていた小屋の窓の隙間から黒い靄(もや)が入り込んでくる。
靄は天子の体を取り巻き、やがて一つの塊になった。
「こんな所で何やってるんだい? ひょっとしてお友達と結婚式のスピーチの打ち合わせかな?」
黒い靄は、頭から二本の角を生やした童女へと姿を変え、天子に抱きついていた。
彼女の登場で、部屋の中が急にアルコール臭くなった。
「い、伊吹萃香ッ!」
アリスは思わずその名を叫んだ
「お。さすが天子の友達、知っててくれたかい。いかにも私は伊吹萃香。天子を娶る鬼さ」
「勝手に言ってなさい! 私はあんたの妻になんかなる気はないから!!」
「もぉー素直じゃないなぁー、まぁそんなトコロが可愛いんだけど」
萃香の手が天子の胸や尻を撫で回す。
「貧相だけど、張りのある良い身体してる。こりゃ毎晩楽しそうだ」
「触るな! 私は何が何でもあんたとは一緒にならない!」
「大丈夫さ、今は好きじゃなくても、一緒に暮らすようになれば自ずと情も湧くさ」
萃香の手枷の鎖が延びて天子の体を縛り、萃香の体が徐々に霧状になっていく。
「ちょっと場所を変えようか。今一度二人っきりでじっくり話しをしようじゃないか。私がどれだけ天子のことを愛してるか知って欲しいんだ」
どうやら、天子を連れてこの場から離れるらしい。
「あんた達聞いて! この部屋は私の秘密基地!」
黒い靄に包まれながら、天子は三人に必死に訴えかける。
「だから色んなものがある! それを使ってコイツをッ! ど・・・ぅ・・・・・・ぁ・・・・・!」
最後のほうは良く聞き取ることが出来なかった。
靄が消えるとそこには何もなく、アリス達だけが残された。
「行っちまったな」
「助けないと」
「だな。でないと地上に帰れない」
「あの子、去り際に何か言ってたわね」
パチュリーが思い出したかのように言う
「なんだっけ、『この部屋の〜』って、良く聞こえなかったけど」
「この部屋に何かあるのかしら?」
「調べてみましょうか」
アリスはタンスの中を調べた
「これは・・・」
>>天界の桃を30個手に入れた
「まだ何かあるかも」
「探してみよう」
>>博麗の御札(中)を15枚手に入れた
>>薬草を20個手に入れた
>>永遠亭の薬を3個手に入れた。
「すごいな、どんどん出てくる。そっちはどうだパチュリー?」
「うーん、うーん」
パチュリーが棚の引き出しと必死に格闘していた。
「お前でどんなけ非力なんだよ」
「違うわ。鍵がかかってるのよ」
「魔理沙。あなたピッキングスキルとかなかった?」
「一応やってみるけど、そんな上手に・・・・・あ」
針金を取り出して鍵穴に差し込んで捻ると、カチリと心地よい音がした。
出てきたのは一本の剣だった。
「緋想の剣」
その剣の名をアリスは知っていた。
(それにしてもこの世界)
アリスは神綺が新たに創造したこの世界を思う。
(同性結婚が普通にOKなのね)
「ちょっと離しなさいよ!」
集落から離れた場所。雲と空の境界線に鬼と天人はいた。
天子は萃香の鎖に縛られて身動きが取れないでいた。
「解け変態!」
「なんでそんなにも嫌がるんだよー、こんなにも天子のこと愛してるのにー」
「私は好きでもなんでもない! なのになんで結婚なんしてしなくちゃいけないのよ!」
「何度も説明したじゃないないか。勝てば『娘を譲る』、負ければ『比那名居家の部下になる』という条件でお前の親父さんと飲み比べ勝負をして勝ったって」
天子の父は、天界における比那名居家の地位をより磐石とすべく、強い力を持った協力者を探していた。
そんな時、ある鬼が娘に恋をしていると耳にして、その鬼を招き飲み比べ勝負をしかけた。
勝てば御の字。負けても娘と結婚するため、今後自分の駒として使うことが出来る。
そういう打算が背景にあった。
「とにかく! 私は絶対にあんたと一緒になんかならない!」
「もう! ちょっとは話を聞いてくれたっていいじゃないか!!」
ついカッとなって天子を縛っていた鎖に力を込めた。
「ご、がっ・・・」
体を締め上げられた天子は限界まで目を見開いてから、ゆっくりとまぶたを下ろした。
「あれ? 天子? どうしたの天子?」
慌てて鎖を取り払い、仰向けに寝かせる。
「死んじゃったの? 嘘だよね!? 生きてるよね!?」
胸元を破き、顕わになったキャミソールの上に手を当てる、ちゃんと心臓は動いていた。
「良かった。気を失ってるだけだ」
強いショックによる失神だとわかり安堵する。
「天子・・・まだブラしてないんだ」
はだけた胸元、キャミソールから浮き出た二つのぽっちが目に付き、萃香はゴクリと唾を呑み込んだ。
「違うんだよ、最初は天子が心配になって胸元を開かせたんだよ? いかがわしいことするつもりなんてこれっぽちも無かったんだよ? 可愛い天子の身体が私を誘ったんだよ」
誰にでもなくそう言い訳しながら、キャミソールを上にずらす。
「これが天子の、綺麗だ、桃色だ。あむっ」
衝動的に口に含んだ。
「甘い、美味しい。コリコリしてて弾力があって、一年中舐めていたい」
吸い、舌で転がし、細心の注意を払いながら甘噛みする。
(こっち、こっちはどうなってるんだろう?)
十分に味わってから口を離すと、天子の下半身を凝視した。
「夫婦になるんだ、これから妻になる女の身体を調べたって、別にいいよね?」
ロングスカートを捲り上げて、下着をずり下ろして右側の足首に引っ掛けさせる。
「ちょっと失礼するよ」
両方の太ももを前に押すように持ち上げて足を開かせた。頭の左右の角が彼女の足に引っ掛かるのを気をつけながら一点を凝視する。
「まっさらだ、毛もなくて、びらびらもはみ出してない。これはもしかしてっ・・・・・・これはもしかしてっ!」
期待に胸躍らせながら、唾をつけた指で天子の肉壁を左右に開いた。
「うわああ、膜だ、ちゃんと膜がある! すごい、綺麗だ。観音様だ!」
感激し、自身で気付かないうちに泣いていた。
「私のために大事にとっておいてくれたんだ、嬉しいなぁ!!」
あまりに嬉しくて、いったん顔を離して瓢箪の中の酒を一気にあおった。
飲み終えたら、自然と自らの下腹部に手が伸びる。
「んっ・・・」
十分なほどに、そこは濡れそぼっていた。
「結婚式が終わるまで、初夜を迎えるまで我慢しようと思ったけどやめた! 今時、ヴァージンロードをヴァージンで歩く花嫁なんていないもんね!」
秘所に舌を這わせる。
(いままで色んな銘酒飲んできたけど、こんなにも酔えるの初めて。この豆だったらずっと触ってられる)
味を心行くまで堪能して口を離すと、手のひらに自身の分身を作り出した。
「ごめんよ」
そしてその首思い切り引き千切った。
「ピギィ!」
(許して分身! 私と天子が一つになるためなんだ!)
頭と二本の角になった分身。その角を萃香は口に含み濡らし始めた。
「んっ、ちゅ、はむ・・・・・ん」
二本とも十分に濡らしたら、その一本を自分の秘所にあてがう。
「んんっ・・・・くぅ、あ、入った」
角を自分の奥まで差し込む。
「天人の体は硬いから、きっと処女膜も固いんだろうな」
自分に挿入っていない、反対側の角を天子にもあてがう。
「大事にしたいんだけど、手加減無しでやるからね!」
その言葉通り、容赦なく腰を突き上げた。
「んくぅぅぅ・・・・・入っ、たぁぁぁ」
勢い良く挿入し過ぎたせいなのか、処女喪失で出たとは思えない血の量が二人の股を汚す。
「貰っちゃった、天子の初めて貰ちゃった! これで天子は私のもんだ! 誰にも渡すもんか!」
「そこまでよ子鬼!!」
アリス達が駆けつけてきた。
「ひょっとして手遅れだったかしら?」
パチュリーが手を口に当てる。
「斬首、レズ、眠姦、処女消失、性器破壊・・・・・数え役満だな」
「取りあえず止めさせないと、ちょっと萃香!」
アリスが萃香の肩を叩いた。
「今いい所だから邪魔しないで」
そんな三人に構わず腰を振り続ける。
「天子が気を失っているみたいだけど何をしたの? 生きてるの?」
「触るな気が散る! すっごい気持ちいいんだからさぁ」
猿のように一心不乱に腰を動かす。
「そもそもなんでここが分かった! どっかいけよ!」
「なんでってそりゃぁ」
アリスが親指を立てると、天子の被っている帽子が動いた。
「スリカエテオイタノサッ!」
帽子の中から上海人形が姿を現した。
「この子の糸を辿ったらここについたのよ」
「おいチビ鬼。いい加減に止まれよ。天子の中ズタズタになってるぞ」
地面には小さな血の水溜りができていた。
「やだね!」
「なら力ずくで止めさせるわ」
「出来るもんならやってみろ! お前ら三人なんて、弱すぎて全然相手になんないぞ!」
警告を受けても夢中で腰を突き動かし、終わる気配はない。
「はいっ!」
「いでっ!」
突然アリスは萃香の背中を平手で張った
「んだよっ! 邪魔すんナ!!」
「オラ!」
「むぎゅ!」
魔理沙とパチュリーも萃香の背中を張る。
「もう怒った! 上等だぁ、お前らザコなんて繋がったまま・・・・あれ? なんだこれ?」
萃香は急にその場にへたれこんだ。
「どうしてだ? 力が抜ける」
「あなたの背中にこれを貼らせてもらったわ」
パチュリーが種明かしをする。
「御札?」
「博麗の御札(中)よ。一枚ぽっちじゃあなたはどうにもならないけど、何枚も貼られたら流石に厳しいみたいね」
言いながら残りの御札を貼り付けている。
「じぐじょー、ちからがはいらないー」
全てを貼り終えたころには、萃香はぐったりして動かなくなった。
「取りあえず天子を」
「そうね」
パチュリーが天子の陰部に手をかざして回復の呪文を唱える。
「ん、あれ? 私・・・・・いぎぃぃぃぃあああぁぁっぁぁああぁあああああ!!!!」
意識を取り戻すと同時に、天子は今まで生きてきた中で最も強烈な痛みを味わった。
「ジっとしてて、膣が破けてるから」
「い゛っっっだっっ!! だに゛ごれぇ゛ぇ」
真っ赤に充血した目で、キッと萃香を睨みつける。
「お前がや゛ったの゛か糞鬼゛ぃ!!」
「待って、まだ動いちゃ!」
起き上がりアリスが持ってきた緋想の剣を奪い、萃香の頭を思いっきり殴打した。
「死ね! 死ね! 砕けろ! 潰れろ! 塵になれ!」
一発では終わらない、二度、三度、四度よ何度も殴打する。
「待って、ぎっ、ア゛ッ、お゛っ! やめっ、許しっ!」
「消えろ! 果てろ! 腐れ! 死ね!」
「おいよせ、死ぬぞそいつ!」
「死ねばいいのよこんなやつ!」
魔理沙に羽交い絞めされても、それを振りほどいてなおも剣を振るう。
「落ちろ!」
下から掬い上げるように剣を振るい。萃香を雲の外へ飛ばした。
地上へ真っ逆さまに鬼は落ちていった。
「二度とくるな!!」
言って、天子はうつ伏せに倒れこんだ。
「ああああ痛い!! 痛い!! 痛い!!」
萃香がその場から消えたことで、怒りもいくぶんか鎮まり、痛みを感じる余裕がでてきた。
「血を流しすぎたのだから、動いちゃだめよ」
パチュリーが回復を再開させた。
数日後
「せっかく婚約解消させてやったのにこの仕打ちはあんまりだろ!?」
「それについては感謝してるわ。でも、しょうがないでしょ。あんた達が地上へ帰る方法なんてこれくらいしかないわ」
結局萃香が行方不明となったことで、式は中止となり、そのまま婚約の話もなし崩しに消滅した。
そして今日、「地上への帰り方を教える」という約束を天子が果たす日であった。
「お前、私達が間に合わなかったこと根に持ってるだろ?」
「いいから飛び降りなさいよ」
天界の端に彼女らはやってきていた。
「飛び降りるってお前、どれだけ標高あると思ってんだよ。町が豆粒より小さいんだぞ?」
「大丈夫よ。桃たくさん食べたでしょ? だから今の体は鋼鉄よりも硬いわ。地上の落下の衝撃にも耐えうるはずよ」
「これで死んだら恨むからな畜生」
意を決して、三人は地上に向けて跳んだ。
《地上》
「おい、生きてるか?」
自分が落ちたことによって出来た穴から這い出る魔理沙は、隣の穴の中にいるアリスに手を差し出した。
「なんとか。パチュリーは?」
穴から出たアリスはパチュリーがいると思われる穴を覗き込んだ。
「・・・・」
返事が無い。ただの屍のようだ。
⇒⇒⇒⇒ NEXT STAGE
第五章 〜目覚めし残念な種族〜
パチュリーが棺おけになったのを確認したとき、何度か聞いたことのある音がした。
アリス以外の時間が止まる。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
『魔理沙は ミルキーウェイ を覚えた』
――――――――【魔理沙 ステータス】――――――――
職業:盗賊
体力:60
魔力:37
攻撃:34
防御:20
すばやさ:45
かしこさ:23
きようさ:33
持ち物:針金。
技:マジックミサイル。イリュージョンレーザー。ミルキーウェイ。
スキル:盗賊の勘(隠し通路の探知・ピッキングが使用可能)
―――――――――――――――――――――――――――
『パチュリーは シルフィホルン を覚えた』
――――――――【パチュリー ステータス】――――――――
職業:僧侶
体力:40
魔力:89
攻撃:20
防御:19
すばやさ:20
かしこさ:50
きようさ:34
持ち物:杖。
技:火符「アグニシャイン」。水符「プリンセスウンディネ」。木符「シルフィホルン」
スキル:神の加護(回復魔法・防御障壁が使用可能)
―――――――――――――――――――――――――――――
「さあさあ、お楽しみタイムがやってきたわ」
ダーツを手にした神綺が、ボードと一緒に降りてくる。
「さーて、今日のスキルは?」
「その前に聞きたいのだけれど」
「また?」
「死んだ仲間は、どうやったら生き返せるの?」
旅を続けるには、パチュリーを復活させせければならない。
「博麗神社に行くといいわ。そこの巫女に頼むのが唯一の復活方法よ」
「霊夢に会えばいいのね?」
彼女の中で、次に目指す場所が決まった。
「それじゃあ気を取り直して、今回のスキル一覧はこちら、じゃん!!」
@人形操作(蓬莱人形):蓬莱人形を操れる。
A人形操作(モブ人形3体):名無し人形を操れる(リトルレギオンが使用可能に)。
B特殊スキル:異性と性交するたびに15000G手に入る。
「ちょっと待って! おかしい! Bのスキルがおかしい!! なんで毎回Bが変なの!?」
「んーと」
片目を閉じて照準を絞る
「あからさまにBを狙うな!!」
「もー、集中できないでしょ」
神綺が指を鳴らすと、地面から生えてきたイスにアリスは縄で括り付けられ、口にはハンカチが巻かれた。
「んー! んー!」
「てりゃっ!」
(お願い! 蓬莱人形来て!! モブ人形でも良い! B以外!)
思わず目を瞑って祈った。
「決まったわよアリスちゃん!」
神綺がダーツの刺さったボードを掲げる。
「おめでとう! アリスちゃんは『特殊スキル:異性と性交するたびに15000G手に入る』を手に入れたわ」
――――――――【アリス ステータス】――――――――
職業:旅芸人
体力:65
魔力:52
攻撃:26
防御:26
すばやさ:29
かしこさ:36
きようさ:49
持ち物:透明な糸。
技:毒きり。上海人形操作。
スキル:エンターテイナー(操作する人形の性能がワンランクアップ)
異性と性交するたびに15000G手に入る。
―――――――――――――――――――――――――――
「んんーーー!」
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
《山道》
パチュリーの入った棺を引き摺って進むアリスと魔理沙。
「取りあえずパチュリーを復活させましょう。博麗神社に行けば生き返らせてもらえるんでしょ?」
「確かそのハズだぜ。金をごっそり持ってかれるらしいが」
「復活できない状況ってあるの?」
「“病死”と“寿命”、“肉体が残らないほど跡形も無く消失する”以外なら復活できるらしいぞ。一回死んだらそれまでの種族も一部例外でいるけど」
ちなみに棺おけの中にいるパチュリーは、落下の衝撃で全身がペースト状に四散しており、意識はあるが、口が無いため意思疎通ができない状態だった。
意識のある証拠として肉の海の中に浮いている眼球はグルグルと元気に動いている。
パチュリーが復活するまで、アリスは棺の蓋を開けるつもりはなかった。
「なあアリス、私はさっきミルキーウェイっていう技を覚えたんだが、お前は何を覚えたんだ? また毒関係か?」
「・・・」
「おい無視かよ、教え・・・ん?」
>>山賊×6が現れた。
「よし、新技の試し撃ちにはもってこいの敵だ・・・・・ミルキーウェイ!」
星型の弾幕の洪水が敵を全体に襲い掛かる。
それにより2人が直撃を受け、倒れた。
「この技は複数相手にもって来いだな」
弾幕の雨を掻い潜った山賊Aが魔理沙に殴りかかる。
「くっ」
腕を交差して受け止める。
「そんなパンチ効く・・・・・か?」
魔理沙は自分の腕に何かが付着したのを感じた。
「これって?」
その札には見覚えがあった。先日、自分達が萃香に使ったのを同じものだった。
「力が出な・・・」
そのまま二人は山賊たちに組み敷かれる。
アリスも魔理沙に起きた変化に動揺している隙に札を貼り付けられた。
「殺しゃしねーよ。ちょっと気持ちよくなってもらうだけだ」
山賊たちのイチモツはいきり立っていた。
二人が解放されたのは二時間後のことだった。
「ぺっ」
アリスは口の中に残っていた苦い白濁液を吐き出して、口元を手の甲で拭った。
「クソっ、あいつら」
内股から精液を零しながら、魔理沙は苦虫を噛み潰す。
「意外ね、てっきり生娘かと思ったわ」
魔理沙の態度を見る限り、どうやら初めてというわけではなさそうだった。
「お前は違うのかよ?」
「それなりに魔法使いやってると色々あるのよ、まあ今は【旅芸人】だけど」
「私だって魔法使いだったからな、今は【盗賊】やってるが」
魔理沙は帽子から薬草を取り出して擦れて痛む局部にあてがった。
「道具に薬草なんて残ってたっけ?」
内股に滴る液体を拭い、乱れた服を戻しながら訊いた。
「盗んだんだよ、あいつらから。他にも色々」
帽子の中からアイテムがボロボロ出てきた。犯されている最中に無意識で掠め取ったものだった。
「やるじゃない盗賊さん」
>>魔理沙は 薬草×7 を盗んだ
>>魔理沙は 聖水×3 を盗んだ
>>魔理沙は 永遠亭の薬×2 を盗んだ
アリスは所持金を確認した。
11000G ⇒ 71000G
(4人相手にしたから、一気に増えたわね)
嬉しいような、虚しいような、複雑な心境だった。
「あいつら死んだと思うか?」
「解毒の仕方とか知らないだろうから、明日の昼には全員お陀仏よ」
「へっ、ザマーミロ」
犯されている最中、僅かに札が剥がれて少しだけ力が戻ったアリスは、目の前にいた男に接吻を求めるふりをして毒きりを吐きかけた、体が密着していたお陰で他の者も毒を吸い、血相を変えて退散していった。
「急ぎましょう、こんな所で道草なんてしてられないわ」
「だな」
盗んだアイテムで体と精神を癒してから二人は再出発した。
《博麗神社》
「良く来たわね。私はこの神社の巫女、霊夢よ」
「この棺の子を生き返らせて欲しいのだけど」
「25000G貰うけどいいかしら?」
「お願いするわ」
71000G ⇒ 46000G
>>パチュリーは復活した。
霊夢が祈祷を終えると棺が消え、五体満足のパチュリーが立っていた。
「苦労を掛けたわね」
「まったくだよ畜生」
「これでようやく旅を再開できるわね」
「そうそうあんた達」
霊夢はお払い棒で肩をトントンと叩きながら、去ろうとする三人を呼び止めた。
「これからドコに行くか知らないけど、東の方角に行くのはやめておきなさい」
「どうして?」
「紅魔館という屋敷から、不穏な空気を感じるわ。私の勘がそう言ってる」
パチュリーは眉根を寄せた。
「勘って、あなたふざけてるの?」
「私は信じるわよ」
「アリス?」
「よくわかってるじゃない」
ふん、と鼻を鳴らす霊夢
「あっちの世界じゃ、その勘を武器に規格外の化物と渡り合ってるものね」
「 ? 」
パチュリー復活の用件も終わり、アリス達は神社を後にした。
「露店だわ」
神社の石段を降りた先、小さな屋台があった。
「そういえば来る途中であったな。棺おけ引きずってたから気に留めなかったが」
並べてあるものを眺めてみる。
「やぁ、ようこそ香霖堂博麗神社支店へ。僕は森近霖次郎。霖之助の弟さ」
「こいつも訊いてもないのに自己紹介しやがった」
――――――――【アイテム一覧】――――――――
八卦路:装飾品(霧雨魔理沙が装備できる。これがないとマスタースパークが使用できない)
魔術の本:武器(魔法使い、僧侶が装備できる。呪文を使った攻撃の威力がUPする)
マジシャンの糸:武器(旅芸人が装備できる。器用さがUPする)
薬草:体力が回復する。
聖水:魔力が回復する。
河童ダムぬいぐるみ:持っていると幸運が上昇する(妖怪が落とすGが1.2倍になる)
ロケットランチャー:武器。
博麗の御札(弱):ザコ妖怪、妖精、毛玉までなら貼り付けると無力化できる。
博麗の御札(中):野良妖怪、強い妖精、低級の神までなら貼り付けると無力化できる。
博麗の御札(強):幹部クラスの妖怪、中級の神までなら貼り付けると無力化できる。
―――――――――――――――――――――――――
「八卦路と、魔術の本と、マジシャンの糸を頂戴」
「全部で5600Gだけどいいかな」
「ええ」
46000G ⇒ 40400G
「これ貰っていいかしら?」
「どうぞ。もともとそのつもりだから」
「ありがとう、大事に読ませてもらうわ」
>>パチュリーは魔術の本を装備した。
「ほら魔理沙。これ持ってなさい」
「なんだこりゃ? こんなガラクタいらないぜ」
「いいから持ってなさい。その内に役に立つわ」
>>魔理沙は八卦路を装備した。
「私はこれを」
>>アリスはマジシャンの糸を装備した
「今まで使っていた、杖と透明な糸を売りたいのだけど」
「二つで700Gだよ」
「構わないわ」
40400G ⇒ 41100G
「でも相変わらずピンハネするなこの店は」
魔理沙が買い取り額に難癖をつける。
「こういうものは劣化するのが早いから、どうしてもこの値段になってしまうんだよ」
「じゃあ何売れば高く買い取ってくれるんだよ」
「君たち、肝臓とか病気したことないかな?」
「さあ行くわよみんな!」
アリスはその場から逃げ出した。
これから目指すのは、霊夢が忠告した紅魔館。
《紅魔館》
屋敷の門を潜った三人は、広い庭を歩いていた。
「すんなり入れたわね」
「こんなでかい屋敷なのに門がフリーパスとは無用心だぜ」
「おかしいわね、本当なら門番がいるはずなのよ・・・サボってるのかしら?」
パチュリーは愁眉を歪め、あたりを見渡す。
「お前、ここの事何か知ってるのか?」
「昔、ここで客人として暮らしてたのよ。館の主人に気に入られてね」
(その辺の設定も中途半端に引き継いでいるのね)
到着した玄関には鍵が掛かっていた。
「こんなデカい屋敷に住めてたのに、なんで出て行ったんだ? なんかポカでもやらかしたか?」
魔理沙は針金を鍵穴に差し込みつつ尋ねる。この動作がすっかり板についてきた。
「自分の意思で出て行ったのよ」
「そりゃまたなんで?」
「十年ほど前に、優秀なメイド長がいたんだけど、若い内に死んじゃったの。主人は自分のせいで彼女が死んだと責任を強く感じて、酷く落ち込んじゃったのよ」
「『腑抜けた主人に愛想尽かせた』ってヤツか?」
「いいえ。しばらくの間は落ち込んでたけど、他の従者や妹の励ましで持ち直したわ」
「じゃあなんでお前は出て行ったんだ?」
「私がいると負担が増えると思ったの。私の面倒を見てくれていたのはメイド長だったから」
「なるほどな・・・・・良し開いた。お邪魔しまーすと」
解錠された扉を魔理沙は開いた。
真っ赤な絨毯を踏みしめて進む。
「さっきの話の続きだが、死んだなら復活させれば良かったじゃないか? 金なら腐るほどあるだろ? 病死か?」
「その子、人間なのに特殊な力を持っていてね。その能力を使いすぎた反動で、肉体そのものが消滅してしまったのよ」
「なるほど、そうなれば蘇生は不可能だな。しかし、誰もいないどころか、誰かが生活してる形跡すら無いのはどういうことだ?」
廊下の途中にある部屋を全て覗きこんだが、どの部屋も埃と煤が溜まっていた。
「しばらく来てない間に何があったのかしら?」
「全員でバカンスにでも行ってるとか?」
「魔理沙、後ろ!」
アリスの呼びかけと同時に、背筋に冷たい感覚を覚えた魔理沙は咄嗟に身を翻した。
たった今まで魔理沙の頭があった位置を、しなる脚が通過した。
「チッ!」
長く赤い髪を持ち、民族風の衣装を纏った女性は、仕留め損なったことに舌打ちをする。
「貴様ら! 誰の許可を得て紅魔館に入っ・・・・パチュリー様?」
「あなた、美鈴?」
「お前ら、知り合いなのか?」
魔理沙が襲撃者と仲間の顔を交互に見る。
「彼女は紅美鈴。ここの門番。職業は【バトルマスター】よ」
美鈴は重心を低くした構えを取り、三人の様子を窺っている。
「教えて美鈴、ここで何があったの? レミィは? 妹様は?」
「貴女が」
硬く握った拳が震えている。
「貴女がここを出ていかなければ!! お嬢様は!!」
「どういうこと? わかるように言いって頂戴」
「もう手遅れなんです!!」
パチュリーの疑問に応えることなく、美鈴は踵を返した。
「待って美鈴!」
「追いましょう」
「ああ」
三人は彼女を追跡した。
「いない」
廊下を曲がったところで、彼女の姿を見失った。
「遠くに行ったワケじゃない。多分どこかに隠し通路があるのよ。この館には有事に備えて色々な所に隠し通路がある。きっと彼女はそれで」
「有事って言うが、何か疚(やま)しいことがないと、隠し通路なんて自分の家に作んないだろ・・・・ん?」
期待の篭った視線が向けられていることに魔理沙は気づく。
「どうしたんだよ二人共」
「あなた盗賊でしょ? 盗賊のスキルで隠し通路とか探知できないの?」
「お前、そんな便利なことが・・・・おっ、おっ、おっ」
魔理沙の体が傾き、まるで何かに引張られるように壁際まで移動する。
「そこに何かあるの?」
「わからない。足が勝手にココまで」
おもむろに壁を叩いてみると、空洞を叩くのを同じ感触が返ってきた。
「よっと」
壁に思われていた一部がスライドした。
地下へと続く長い階段を下っていく。
「こんな通路があるなんて知らなかったわ」
「壁もそれほど汚れてないから、割と最近みたいだな」
程なくして出口となり、そこから顔を僅かに出して、様子を窺う。
「すげえなこりゃ」
大きな広場だった。そこに大勢の人間や妖怪、妖精が立ち尽くしていた。
縦も横も綺麗に揃えた規則正しく並びだった。
「これから校長先生の朝礼でも始まるのか?」
「馬鹿なこと言ってんじゃな・・・・パチュリー?」
パチュリーは並んでいる者たちに向かい歩き出し、棒立ちする妖精の前に立つと、その顔を覗き込んだ。
「ちょっと、何してるのよ!」
「大丈夫よ。見てみなさい」
手招きして二人を呼ぶ。
「チャームされてる。ここにいる全員が、催眠術で意識を飛ばされているわ」
アリス達も顔を覗き込む。妖精の目に、一切の生気が宿っていないのがわかった。
「妖精はここで働いていたメイド、人間や妖怪は近隣の町や里から攫ってきたのでしょうね」
「こんなにも集めてどうするんだ?」
「足元を見てみなさい」
魔理沙が下を向くと、地面に線が引かれているのに気付いた。
アリスには見覚えがあった。
「対象を無理矢理溶かして魔力に変換する陣?」
アリスは自身が所有しているグリモアに、似たような魔法陣があるのを思い出し、口にした。
「そうよ。この子達は全員。この魔法陣によって体を魔力に変えられる予定の生贄みたい」
「生贄って、おい。じゃあココは」
「お察しの通り。ここは魔界神を復活させるための儀式場よ」
幼いながらも凛とした声が、地下の広場に響いた。
「おかえりさないパチェ」
白いキャップを被った少女が、天井へ続く長い階段から降りてきた。
「餓鬼じゃないか」
「ただの子供なんかじゃないわ。チャームを受けている者たちの首筋を見なさい」
パチュリーに言われ、魔理沙は近くに居た人間の女性の首を凝視する。
「なんだ、小さな穴が二つ?」
「私はレミリア・スカーレット。吸血鬼よ。しっかり脳みそに刻みなさい餓鬼ンチョ」
自己紹介を終えると同時に、背中に畳んでいた羽を大きく広げ飛翔、三人の前に降り立った。
「会いに来てくれてうれしいわパチェ。言ってくれたら紅茶を用意して待っていたのに。あれから私、紅茶を淹れるのも大分上手になったのよ。咲夜には到底及ばないけど」
「まさかレミィの願いって」
「そう、十六夜咲夜の復活。これ以外に何を望めというの?」
「乗り越えたんじゃないの?」
「そのつもりだったわ。でも、無理だった。時間が経つにつれ、苦しさが増してきた。あの子はもう私の半身も同然だった。あの子がいない毎日なんて棺おけの中にいるのと同じよ」
そして魔界神復活という話を耳にして、実行に移した。
「まさか復活のもう一つの条件『強い力を持った女性』って」
「ええ、妹のフランドールを“使った”わ」
「咲夜とたいして交流の無かった妹様が、進んで自分の身を差し出すとは思えないけど?」
「だから強制的に協力してもらうことにしたの」
「まだ間に合う、考え直しなさい」
「もう誰にも止められないわ。言ったでしょう“使った”って」
レミリアは自分が降りてきた階段の先を指すと、周囲を漂う魔力が震え、大気が脈打つのを感じた。
「まさかっ! もう儀式を!?」
「ええ、侵入者が来たと聞いたから急いでね。もう全ての手順を終えた。あとは魔界神がフランドールの腹を突き破って産まれるのを待つだけ」
「アリス、魔理沙! レミィは私が止める。二人は祭壇を壊して!」
「でも、ソイツを1人でなんて!」
レミリアがどれくらい強いかを、アリスは嫌というほど知っていた。だからパチュリー1人を残すのは気が引けた。
「大丈夫よ、今の彼女は弱体化してる。おそらく儀式の執行に相当な魔力を消費したみたいね。足止めくらいならできるわ」
「わかった。魔理沙」
「おう!」
階段に向かい、走り出す。
「邪魔はさせない」
「行かせないわよレミィ」
二人を追いかけようとしたレミリアに背中に、パチュリーは呪文を唱えた。
「祭壇を壊せって言われたけど、具体的に何したらいいんだ?」
駆け上がりながら魔理沙は自身の頭上に疑問符を浮かべた。
「知らないわよ。とにかく壊せるものは全部破壊して、魔法陣は全部消す」
「把握したぜ」
相談が終わる頃には登りきっていた。
「こいつがフランドールか?」
祭壇の上。両手両足が壁に埋め込まれている幼い少女の姿がそこにあった。
衣服は身に着けておらず、体中に奇妙な刻印が施されている。
不自然に膨らんだその腹は、まるで心臓のように一定の間隔を刻みながら大きく躍動していた。
「この子を開放したら魔界神は復活できないんじゃないか?」
「みたいね。彼女の周りの結界さえ壊せれば」
「私がそれを許すと思うか?」
フランドールの前に美鈴が立ちはだかる。
「貴女、主人の妹を犠牲にしてまで同僚を生き返らせたいの? 門番どころか従者失格ね。クズもいいとこだわ」
オリジナルの性格を知っているだけに、こっちの世界の彼女が取った行動が不愉快で仕方なかった。
「妹様は、最強の吸血鬼。腹が破れて絶命するほど軟な御方ではない」
「でも無理矢理に協力させるのはよろしくねーと思うが?」
魔理沙も彼女に侮蔑の視線を送る。
「咲夜さんがこの紅魔館にとってどれだけ掛替えの無い存在だったか、妹様も必ずやご理解して頂ける日がくるはず」
「メイド長が蘇って貴女達はハッピーエンドかもしれないけど、私達にはいい迷惑なのよ。だから邪魔させてもらうわ」
「やってみろ」
美鈴は疾走し、アリスとの距離を一瞬でつめて、腹に正拳突きを叩き込む。
「上海!!」
「ココハトオサネーゼ」
上海人形で拳を受け止める。
しかし、
「阿ッ」
美鈴の怒号の後、触れていないはずなのに、腹に強い衝撃を受けた。
「っおぐゥ!」
「スマネーマスター、ドジフンジマッタ」
吹き飛ばされて、仰向けに倒れたアリス。
「ぅぷ」
自分の意思とは関係なくせり上がって来た吐瀉物に顔を汚し、そのまま気絶した。
「今の『遠当て』ってスキルか? こっちはお前よりもずっとレベルが低いんだから手加減して欲しいぜ」
「時間が無い。全力でいかせてもらう」
「時間が無いのはこっちも同じだ!」
魔理沙はミルキーウェイを放った。大量の星型弾幕が美鈴に殺到する。
「こんなものか」
まるで歩くような足取りで美鈴は弾幕の雨をすり抜け、魔理沙の胸に拳をトンと当てた
「嘘だろ・・・」
それだけで魔理沙の足が動かなくなり、無様に膝をつく。
「話にならない弱さだな」
「美鈴、そっちは終わったの?」
「はいお嬢様」
満身創痍のパチュリーを抱えたレミリアが翼を使い飛翔し、祭壇に降り立った。
「今日は記念すべき日になるわよパチェ」
祭壇の安全な場所にパチュリーを放り投げた。
「ぐっ」
「咲夜が蘇る日に、貴女まで帰ってきてくれた。どうして運命はいつも私に対してこんなにも紳士的なのかしら?」
「どうかしてるわレミィ、魔界神が復活したら世界が・・・」
「一緒に祈りましょう、咲夜の蘇生を、魔界神の復活を」
生贄の地面に描かれた魔法陣が輝きだす。
「生贄によって生成された膨大な魔力が、フランドールの胎内と魔界の門を繋ぐ。もうすぐよ」
異常に膨張した妹の腹を愛おしそうに撫でる。
「またあの楽しかった日々が戻ってくるわ」
「それはよろしゅうございます」
傍らの美鈴は優しく微笑む。
「なに他人事みたいに言ってるのよ。あなたもその中に・・・」
「いいえ、紅魔館の門番紅美鈴はここで暇を頂戴致します。今までありがとうございました」
深く頭を下げた。
「何を言ってるの美鈴?」
「私も微力ながら、儀式のお手伝いをさせて頂きます」
美鈴は腕をまくると、地面に描かれているのと同じ魔法陣があった。
「何のつもり? そんなことをしたら貴女まで」
「忘れないでくださいお嬢様。私達は咲夜さん復活のために多くの者を犠牲にしたという事を。これから多くの恨みを買い、業を背負っていくという事を」
「今すぐにそれを消しなさい! でないと!!」
「多くの者を不幸にして、お嬢様は幸せになる。どうかその事実を忘れないでください。忘れない限り、その幸せは永遠に続くはずです」
敬愛してやまない主人のために自分がしてやれる最後の事。最愛の者を失って狂い暴君となった主人にどうしても伝えたかった事。それらを成す為に彼女は自らを犠牲にする。
「止めなさい! これは命令よ!」
「スカーレット家の繁栄を、心から願っています」
「いくな!!」
レミリアが手を伸ばそうとしたその時、目も開けられぬほど眩く広場が輝いた。
「くっ・・・」
ようやく目が開けられたレミリアは、すぐ近くに異質な気配を放つ者がいることに気付いた。
「強い魔力に惹かれてみれば、なかなか面白そうな世界ですね」
「貴様が魔界神か?」
背中に自分と同じような羽を持つ女性に尋ねる。
レミリアにはわかった。目の前にいる者が異世界からやって来た存在だということを。
しかし、彼女の喜びは一瞬で絶望に反転しすることになる。
「私が魔界神なんて、とんでもない。ただの野良悪魔ですよ。名も無き小悪魔、それが私です」
赤髪の悪魔の返答にレミリアは愕然とした。
「馬鹿な! 私は魔界神降臨の儀式をしたんだぞ! どうして貴様なんかが!!」
「えーと、そうですねぇ」
小悪魔は人差し指を唇に当てながら考え込む。
「母体にした女の子は合格。中々通りやすかったですよ」
腹の破れたフランドールを見て、親指と人差し指で輪を作る。
「しかし他がまるで成っていない」
下の無人となった広場を見下ろしながら言う。
「生贄の質が全体的に低い、捧げた人数も少ない、魔法陣は稚拙。はい駄目、こんなんじゃ駄目ですね。ゴミですゴミ。私を呼べた事がもう奇跡です」
頭上のハエでも追い払うかのように手をぶんぶんと振った。
「そんなはずは無い! 私は教えられた通りにやった! 手順も! 生贄の数も! 寸分違わすに実行した!」
「じゃあそれが最初からハズレだったんじゃないですか?」
「そんな、じゃあ私は何の為に・・・・・美鈴」
自失し、彼女は膝をついた。
「そう気を落とさず。魔術の素人が独学でやったにしては上出来だと思いますよ?」
「・・・・」
「おや?」
小悪魔の手がレミリアに触れる。その力だけで彼女はうつ伏せに倒れた。
「ハァ・・・・・ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・」
だただた浅い呼吸を繰り返す。
「おやおや?」
小悪魔は自分の手を見る。自身の体が徐々に透けていくのがわかった。
「もしかして死んじゃうんですか? 召喚失敗の反動って結構大きいですもんね。肉体的にも精神的にも。しかし弱りましたね」
腕を組み、ムムムと考え始める。
「呼び出した貴女が死んでしまえば、私はこちら側に留まれなくなる。少し残念ですが帰るとしま・・・・・おや、ソコの貴女」
小悪魔はパチュリーを見た。
「さぞ名のある大賢者様とお見受けします。どうでしょう、私と契約しませんか? 一定の魔力を供給していただければ今なら・・・」
「さっさと消えなさい、腐れ外道」
パチュリーがシルフィホルンを唱えると、大量の木の葉が一斉に小悪魔へと降り注ぎ、彼女の体を裁断していった。
「それは至極残念。ではおとなしく帰るとしましょう」
木の葉が積もった場所には、何も残ってはいなかった。
「死ぬ前に答えてレミィ」
息も絶え絶えのレミリアにパチュリーは這いずって近づく。
「あれが指摘したように、それほど魔術や魔法に精通していなかった貴女が、十年に満たない独学でここまで準備できるわけが無い。誰の入れ知恵?」
「咲夜、どこ・・・・私は、ここよ」
うつろな目に、パチュリーの姿は映っていなかった。
「教えて。貴女は利用されたのよ。毒見役にされたのよ。儀式に必要なものを最終確認するための捨石として唆されたのよ。悔しくないの?」
「ああ、咲夜。やっと会えた、あのね、私、1人でいろいろできるようになったのよ? もう、あなたに負担をかけなくても済むように・・・」
彼女の体は、まるで石膏のように干からびて、最後には灰となった。
「馬鹿レミィ・・・」
「おい、コッチはまだ息があるぞ」
体の自由が戻った魔理沙は磔にされたままのフランドールの傍にいた。パチュリーも足を引きずりながら駆け寄る。
「妹様はレミィを唆した奴を見たの?」
彼女に回復魔法を掛けながら問いかけた。
「ぜはぁぁ、ぜはぁぁl」
零れる内臓を振り子のように揺らしながら、彼女は懸命を呼吸を繰り返していた。
「答えなさい、知っていることを全部言わないと回復を止めるわよ」
「おい重傷者だぞ! 労ってやれよ!」
「・・・・め・・・」
フランドールの口が僅かに動いたのを、パチュリーは見逃さなかった。
「なに?」
「みつめの女のひと」
そこでフランドールは気を失った。
「オイ! しっかりしろ! オイ!」
「まだ体の形を保っている。生きてるわ。ここまでやれば後は自然治癒だけでも大丈夫」
吸血鬼の再生能力により、内臓が体の中に戻り始めていた。
「良かった」
「でも長くは生きられないわ。長い時間、体の刻印に苛まれていたみたいだから」
安堵する魔理沙にパチュリーは隠すことなく事実を告げた。
「そうか」
思わず魔理沙は帽子を深く被って、目線を下ろした。
「魔界神を復活させようとしている団体はまだいるみたいね」
「それが『みつめの女のひと』か?」
「許さない、レミィを唆した奴等も、元凶である魔界神も」
パチュリーは血が滲むほど強く拳を握った。
そこで二人の時間は止まった。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
恒例の音楽がアリスの頭に響く
『魔理沙は マスタースパーク を覚えた』
――――――――【魔理沙 ステータス】――――――――
職業:盗賊
体力:66
魔力:41
攻撃:39
防御:25
すばやさ:52
かしこさ:26
きようさ:39
持ち物:針金。八卦路。
技:マジックミサイル。イリュージョンレーザー。ミルキーウェイ。
マスタースパーク。
スキル:盗賊の勘。(隠し通路の探知・ピッキングが使用可能)
―――――――――――――――――――――――――――
『パチュリーは レイジィトリリトン を覚えた』
――――――――【パチュリー ステータス】――――――――
職業:僧侶
体力:45
魔力:90
攻撃:23
防御:22
すばやさ:24
かしこさ:59
きようさ:39
持ち物:魔術の書。
技:火符「アグニシャイン」。水符「プリンセスウンディネ」。木符「シルフィホルン」。
土符「レイジィトリリトン」。
スキル:神の加護(回復魔法・防御障壁が使用可能)
――――――――――――――――――――――――――――
「え? なに? 終わったの?」
美鈴の遠当てを受けて気絶していたアリスはようやく目を覚ました。
魔理沙とパチュリーの動きが完全に静止しているのを見て、恒例の時間が訪れたことを理解する。
「アリスちゃん、今回すっごく空気だったわね」
「うっさい」
「じゃあ気を取り直して行ってみましょう! 今回のスキルはこちら!」
@人形操作:アーティフルサクリファイスが使用可能に。
A人形操作(モブ人形3体):名無し人形を操れる(リトルレギオンが使用可能に)。
Bパルプンテ:何が起きるかわからない。
「なんか今まで一番怖い項目が出てきたんだけど」
神綺はボードの前でストレッチをする。
「さあ、何が出るかな♪ 何が出るかな♪ えいやぁっ!」
「あ」
「これは」
ダーツはBの的に当たった。
「どうなるの? ねぇこれどうなるの!?」
「わかんないわ! ママもこれは予測不可能なのよ!」
>>アリスは メディスン・メランコリー の魂を手に入れた
――――――――【アリス ステータス】――――――――
職業:旅芸人⇒メディスン・メランコリー
体力:30
魔力:21
攻撃:12
防御:11
すばやさ:15
かしこさ:8
きようさ:8
持ち物:マジシャンの糸。
技:毒きり。上海人形操作。
スキル:操作する人形が毒きり使用可能。
―――――――――――――――――――――――――――
「スーさん! 私、人形開放のために頑張るよ!」
アリスは、魂を持った人形にその姿を変えた。
「うわぁ、やちゃった・・・」
これには流石の神綺も苦笑い他なかった。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□
⇒⇒⇒⇒ NEXT STAGE
第六章 〜幻の大ちゃん〜
《道中》
>>野良妖怪×4が現れた。
「マスタァァァスパーク!!」
魔理沙が構えた八卦路から放たれた魔砲が正面の敵を一掃する。
「なんだろうなこのアリスがくれたこの八卦路ってやつ。これを媒体にしてレーザーを撃つと、威力が何倍にもなる」
不思議と手に馴染む感覚があった。
「レイジィトリリトン」
パチュリーが詠唱を終えると、辺りの土が津波のように盛り上がり、残りの相手に圧し掛かった。
「コンパロコンパロ〜♪」
瀕死の敵をメディスンの毒が一網打尽にする。
「アハハハハハ。楽しいねスーさん!」
「毒きりの威力が格段に上がっているな」
「有効範囲も相当広がってるわ」
楽しそうに笑いながら、右へ左へパタパタと駆け回る自立人形。
「どーすんだよコレ」
パチュリーに肘をつく。
「どうするって言われても」
紅魔館での決着がついた矢先に起きたアリスの異変に二人は戸惑っていた。
「呪いの類ならとっくに解呪してるわよ」
「それ以外の理由って事か?」
「博麗神社へ行けばなんとかなると思うんだけど」
「じゃあ、この道を真っ直ぐだな」
《太陽の畑》
左右に広がるヒマワリ畑を眺めながら進む二人と一体。
「キレイだねスーさん!」
「ハナハチルカラコソ、メデルカチガアル」
先頭を大手を振って歩くのはメディスン。
「こうして歩いてるとピクニックにでも来た気分だ」
「ここはそんな陽気なところじゃないわ。出来ることなら迂回したいくらいよ」
「何でだ?」
「ここには『伝説の妖精』が出没するという噂よ」
パチュリーはかつて、太陽の畑について書かれている本の記述を、記憶の底から掘り起こした。
「仲間を守る為に戦い続けてレベル99に到達。その影響で妖怪化した妖精がいるらしいわ。強い力を持ちすぎたから妖精の住みかを離れ、今はここで一人ひっそりと暮らしているそうよ」
「なんて名前なんだ?」
「昔は『大妖精』という名だったけれど、今は『風見幽香』と名乗っているわ。危険度は極高」
「そこまで知っていて足を踏み入れるなんていい度胸じゃない」
「ッ!?」
突如目の前に現れた、チェック柄の衣装の女性。
「ごきげんよう。ここに虫以外の生き物が入り込むなんて何年ぶりかしら?」
「貴女が風見幽香、なるほど噂に違わぬ威圧か・・・」
パチュリーは最後まで言うことが出来なかった。
気付けば真横にいる幽香。
「ッ!?」
咄嗟に手に魔力を集中させる。
「遅い」
わき腹を蹴飛ばされた。
「ぐぅう」
パチュリーは地に足がついたまま5mも地面を滑った。
「へぇ、咄嗟に肉体に魔力を流し、障壁を張って防御したのね」
「ごっ、ふ」
膝をついて吐血するパチュリー。
「あらごめんなさい。十分手加減してあげたつもりなんだけど」
愉悦に顔を歪ませ、蹲る彼女の頭に靴底を置いた。
「てめぇよくも!」
魔理沙は八卦路を幽香に向ける。
パチュリーに当たらぬよう気をつけながら魔砲を放った。
「どうだ!」
「なにそれ?」
撃ち終えた場には無傷な幽香が佇んでいた。
「避けるまでもないわね」
ゆるやかな足取りにも関わらず、何故か魔理沙との距離が瞬く間に零になる。
驚愕する魔理沙の喉輪を掴み、持ち上げた。
「どう苦しみながら死にたいかしら?」
周囲のヒマワリが突然、不自然な成長をはじめ、魔理沙とパチュリーを取り囲む。
「土に返って向日葵の肥料になるか、食べられて直接養分になるか。好きな方を選ばせてあげる」
「ねぇねぇお姉さん?」
「ん?」
殺伐とした雰囲気の中。悪魔と見紛う幽香の袖を引く者がいた。
「ここのお花ってスーさん?」
自分達を囲う花を指差して尋ねた。
「スー何? えっと違うわ。これは向日葵という花よ」
「ひまわり? スーさんとは違うの?」
不思議そうな表情を浮かべて、首を傾げる。
「スーさんっていうのは何かしら?」
「えっとね、赤くてね、先がぽわぽわしてるの。それがスーさん!」
「赤くて、先がぽわぽわ、それでいて『ス』・・・・・・ひょっとして鈴蘭のことかしら?」
「うんそれ!」
当てられて嬉しかったのか。花が咲いたような明るい表情になった。
(なんだろう、この子の瞳、まるで川底が見える清流のようなどこまでも澄んだ色。どこでだろう、これと同じものを大昔にも見たような)
メディスンのまぶしい笑顔を見た時、まだ自分が妖精だった頃の遠い記憶が胸に去来する。
(そうだ。かつていた。一人、これと同じ目を持った子が)
氷を自在に作り出す妖精。
悪戯好きではあったが、他人の不幸を見過ごすことのできない心根の優しい子だった。
誰よりも幼稚で、無邪気で、無垢な妖精。
時に守り、時に守られて。時に教え、時に教えられた。姉妹のような掛替えのない存在だった。
笑ったり、怒ったり、泣いたり、いじけたり、ころころと表情の変わる子だった。
その氷精と、目の前にいる少女の姿が重なった。
(この瞳に、世界のありとあらゆる理不尽を、暴力を映してはいけない)
幽香は魔理沙を下ろし、怪物化したヒマワリを元の姿に戻した。
「ふーん、魔界神復活の阻止ねぇ」
幽香の家に招かれた一行は、そこで旅の目的を話した。
「こんな無垢な子に、そんな危ないことさせるなんて、王様も大概ね・・・・・いやこんな子だからこそ、世界を救えるのかもしれないわね」
メディスンを膝の上で抱える幽香。メディスンははしゃぎ過ぎて疲れたのか、静かに寝息を立てている。
「その子なんだけど、今はちょっとした異常状態なの」
「そうみたいね。この子の体に、もう一つの魂が入り込んでる」
「異常の原因がわかるの?」
頭を撫でながら幽香は無言で頷いた。
「この子の中にもう一つ。旅芸人の女の魂が侵入して、この体の主導権を奪おうと暴れまわっているわ」
(そっちの方が本体なんだけど・・・)
「どうやったら戻せるんだぜ?」
「地底に行かないと無理ね。あそこには悪霊や霊魂、深層心理の扱いに長けている覚り妖怪がいる。それに頼めばきっと剥がせるわ」
「そうか、地底か」
「善は急げね」
次の目的地がはっきりとした二人は、荷物をまとめ始める。
「待ちなさい」
「 ? 」
「今のレベルで地底に向かう気? そんなんじゃ入って三分で全滅よ。よくダンジョンの入り口で骨になってるのいるでしょ? ああなるわよ?」
「じゃあどうしろってんだよ?」
「ここで特訓しなさい。最低でも一週間。こんな頼りないお供じゃ、この子を安心して地底に送り出せないわ」
「私達を鍛えてくれるの?」
「ええ」
薄く微笑み肯定した。
「ハッ、誰がお前なんかの所で・・・」
「お願いするわ」
「おいパチュリー?」
断る気満々だった魔理沙は仲間の言葉に耳を疑った。
「私達はこの旅で何も出来なかった。特に紅魔館の一件で私は自分の無力さを痛感した。魔理沙もそうじゃない?」
「そりゃそうだけど・・・」
「決まりね。今日はもう寝なさい。早速明日から始めるわよ」
「おい、私はまだやるなんて!」
「五月蝿いわね、メディが起きるでしょ? 外に放り出すわよ」
「くっ」
歯噛みして、魔理沙は布団を頭まで被った。
翌日
比較的ヒマワリの群生が少ない、見通しの良い場所に魔理沙と幽香はやってきた。
「魔理沙って、言ったかしら? あんたは特に厳しくいくから」
「なんでだよ?」
「私と最初に対峙した時に使った技があるでしょ?」
「あん? マスタースパークのことか?」
全く効かなかったことを思い出して顔をしかめる。
「困るのよね」
「なにがだ?」
「あんたがショボイせいで、同じ系統の技を持つ私までショボイと思われるじゃない。あんなスッカスカの魔砲が許されるのは6歳までよ」
「言っとくがあれは本来の10分の1の力で・・・」
「御託はいいから始めるわよ」
そう言って空に指を差した。
「マスタースパークを空に向かって撃ちなさい。そうねぇ300発撃てば今日は終わりにしてあげる」
「そんなに撃てるか! そもそも魔力が足りないぜ!」
「そう言うと思って」
手の平から種があふれ出して土の上に落ちる。
種は一瞬で発芽して、水晶のような透明な花弁を持つ花になった。
「はい、魔力が回復する花。命の危険を感じた時だけ食べなさい」
「こんな不気味な花なんて食えるわけないだろ」
「食べるのが嫌なら根っこを血管に直接刺す方法も効果あるのよ? やってあげましょうか?」
「わかったよ! やれば良いんだろやれば!!」
「真面目にやりなさいよ。空を見ればサボってるかどうかなんてすぐわかるから」
「お前を超えすぎて後悔してもしらねーからな!」
悪態をつきながら空に八卦路をかざし、さっそく撃ち始めた魔理沙の姿を見届けてから、パチュリーの元に向かった
魔理沙が特訓を積んでいる場所以上に広い場所で、パチュリーは彼女を待っていた。
「あなただけど、向こうの白黒みたいに素振りしてれば強くなれるタイプじゃないでしょ?」
「そうね」
「じゃあ実戦形式が一番かしら?」
「相手になってくれるの?」
「でも私って、相手を甚振るのが大好きだから。泣いても止めないからそのつもりで」
「望むところよ」
こうしてそれぞれの修行が始まった。
「今日も300発か?」
「いいえ、今日は500発よ」
「なっ!」
「アンタ詠唱時間が長過ぎ」
「そんなこと言ってもコッチは喘息持ちだから」
「泣き言は聞きたくないわ。今から10秒後にマスタースパークを撃つから、障壁を張って防ぎなさい」
「むぎゅ!? そんなの出来るわけ・・・」
「死にたくなかったらさっさと唱える。はい1、2・・・」
「今日は何発だ? 600か? 700か?」
「じゃあ1000発いってみましょうか」
「はぁ!?」
「昨日よりも詠唱は早くなったけど、技にキレがないわね」
「そう?」
「基礎体力に問題があるかもしれないわ」
「こればっかりはどうしようも」
「少し走りましょうか。ちょっと待ってね、足の早い人食い植物を召喚するから」
「むぎゅぁぁぁ!」
「レーザーの線が細いわ。何発撃てても威力が無きゃお話にならないわよ」
「どうしろってんだ?」
「ちょうど真上に雲があるでしょ? アレに穴を開けなさい」
「届くわけないだろ!」
「出来なきゃ、今晩は夕食抜き」
「上等だ! やってやるよ!」
「今から1分間。手加減無しで攻めるから生き残りなさい」
「こうなりゃヤケよ! 来なさい!」
「あんたの一番の欠点は集中力が足りない所ね?」
「集中? それなら得意分野だぜ?」
「じゃあこの種が植えられてから芽を出すまでのおおよそ三時間、途切れることなく撃ち続けてもらいましょうか?」
「何ィ!!」
「今からひたすら守りに徹してあげるから、私に一発でもいれてみなさい。そしたら今日は終わりよ」
「後悔しても知らないわよ」
そして、瞬く間に一週間が過ぎた。
「今のアンタ達なら、地底に行っても足を失う程度で済むでしょ」
遠まわしな言い方で二人に太鼓判を押した。
「本当になんてお礼を言えばいいのかしら」
「まぁなんだ・・・・・寝床と飯食わせてもらった事に関しては礼を言うぜ」
「勘違いしないで、私はメディのためにあんた達を鍛えたまでよ」
「ふふ。じゃあ、そういうことにしてあげるわ」
出立の準備を終わらせ、玄関を出て一同は振り返る。
「また遊んでねゆーか!」
「旅が終わって暇になったら来てやるよ」
「また強くなりたいと思ったら来てもいいかしら?」
「ええ、期待しないで待てるわ」
この時、二人は初めて彼女の屈託の無い笑顔を見た。
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『魔理沙は ファイナルスパーク を覚えた』
『魔理沙は ブレイジングスター を覚えた(ただし条件未達成のため現在使用不可』
――――――――【魔理沙 ステータス】――――――――
職業:盗賊
体力:101
魔力:63
攻撃:52
防御:34
すばやさ:81
かしこさ:37
きようさ:63
持ち物:針金。八卦路。
技:マジックミサイル。イリュージョンレーザー。ミルキーウェイ。
マスタースパーク。ファイナルスパーク。ブレイジングスター。
スキル:盗賊の勘(隠し通路の探知・ピッキングが使用可能)
―――――――――――――――――――――――――――
『パチュリーは メタルファティーグ を覚えた』
『パチュリーは 賢者 にクラスアップした』
――――――――【パチュリー ステータス】――――――――
職業:僧侶⇒賢者
体力:65
魔力:134
攻撃:27
防御:29
すばやさ:32
かしこさ:79
きようさ:51
持ち物:魔術の書。
技:火符「アグニシャイン」。水符「プリンセスウンディネ」。木符「シルフィホルン」。
土符「レイジィトリリトン」。金符「メタルファティーグ」。
スキル:2種類の符を組み合わせた複合術が使用可能になる。
火水木土金「賢者の石」が使用可能になる。
―――――――――――――――――――――――――――――
「さて、今回はアリスちゃん以外がレベルアップしちゃったわけだけど」
「・・・・・」
メディスンが不思議そうな表情で神綺を見る。
「とりあえず、投げるだけ投げましょうか? えーと今回、アリスちゃんが習得できるスキルは」
@人形操作:アーティフルサクリファイスが使用可能になる。
A人形操作(モブ人形3体):名無し人形を操れる(リトルレギオンが使用可能に)。
B特殊スキル:同性と性交するたびに20000G手に入る。
「そいや!」
ダーツは@を捉えた。
「おめでとう。アリスちゃんはアーティフルサクリファイスを使えるようになったわ」
「なーにそれ?」
「うーん、メディちゃん的には嬉しくない技かも」
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⇒⇒⇒⇒ NEXT STAGE
最終章(前編) 〜地底の守り人〜
《道中》
「マスタースパーク!!」
「メタルファティーグ」
「二人共すごーい!」
襲い来る敵を跡形も無く消し飛ばしながら地底の最深部を目指す。
「なんだ、地底っていっても全然大したことないじゃないか」
「風見幽香に感謝ね」
そしてついに、目的の建物が見えてきた。
《地霊殿》
「ようこそいらっしゃいました。私がここの主、古明地さとりです」
目的の人物はすぐに見つかった。
この建物のすぐ入り口にいた少女に声を掛けると、彼女こそが覚り妖怪だった。
「あなたに見てもらい人がいるの」
「そのお人形ですか。なるほど、彼女の中に入り込んでいる魂を引き剥がしたいと」
「話が早くて助かるわ」
「流石は覚り妖怪だぜ。心を読めるってのは便利だな」
「奥へどうぞ」
覚り妖怪と呼ばれた際、彼女の表情が一瞬だけ翳ったのを二人は見逃していた。
「では、いきますよ?」
メディスンの前に立って目を閉じて精神集中。深呼吸を数回繰り返してから目をカッと見開いた。
「さとりパンチ!!」
「ぎゃん!」
ボディブローがメディスンを打った。
「あれ? 私・・・・・今まで?」
幼子を模った人形の姿はドコにも無く、腹を押させるアリスだけがいた。
「お、やっと元の姿に戻ったぞ」
「久しぶりね」
――――――――【アリス ステータス】――――――――
職業:旅芸人
体力:65
魔力:52
攻撃:26
防御:26
すばやさ:29
かしこさ:36
きようさ:49
持ち物:マジシャンの糸。
技:毒きり。上海人形操作。アーティフルサクリファイス。
スキル:エンターテイナー(操作する人形の性能がワンランクアップ)
異性と性交するたびに15000G手に入る
操作する人形が毒きり使用可能。
―――――――――――――――――――――――――――
「へぇ、風見幽香のところで特訓を」
二人はアリスが不在時に起きていた事を話した。
「死に掛けたわ。私も魔理沙も」
「まぁなんだかんだで、面倒見の良い妖怪だったな」
「ふふ、そうなの?」
大妖精と風見幽香が同一人物という設定を知り、アリスは苦笑した。
「ごめんなさいね、さとり。貴女にまで迷惑をかけてしまったみたい」
「いえ、あのくらい容易いことです。困ったことがあればまたいらしてください」
「しかしずいぶんと広いな。一人でここに住んでるのか?」
「いいえ、ペット達もおります」
「ご家族は?」
アリスの記憶では、彼女には妹がいるはずなので訊いてみた。
「亡くなりました。100年ほど前にあった、人間と妖怪の大戦争に巻き込まれて。復活できないほど無残な姿で」
「ごめんなさい」
「いえ、お気になさらず」
気まずい空気のまま、三人は地霊殿を後にした。
「せっかく地底まで来たんだ、どうせなら地上に戻る前に旧都を見ておこうぜ」
魔理沙は遠くに見える明かりを指差して言った。
《旧都》
「意外と賑わってるな」
「そうね。地底というから町も御通夜みたいな雰囲気なのかと思ったけど、活気があるわね」
「あっ」
見知った看板があり、アリスは足を止める。
「ここにもあるのね」
早速入ることにした。
「ようこそ、香霖堂旧都支店へ。僕は森近霖三郎。霖之助の弟さ」
「こいつも訊いてもないのに自己紹介してきた。一族の習性なのか?」
――――――――【アイテム一覧】――――――――
魔法の箒:装飾品(霧雨魔理沙が装備できる。これがないとブレイジングスターが使用できない)
魔導書:武器(魔法使い、僧侶が装備できる。呪文を使った攻撃の威力がUPする)
魔法の糸:武器(旅芸人が装備できる。器用さがUPする)
薬草:体力が回復する。
聖水:魔力が回復する。
戦車:武器。
博麗の御札(弱):ザコ妖怪、ザコ妖精、毛玉に貼り付けると無力化できる。
博麗の御札(中):野良妖怪、強い妖精、低級の神に貼り付けると無力化できる。
博麗の御札(強):幹部クラスの妖怪、中級の神に貼り付けると無力化できる。
博麗の御札(極):全ての者に使用可能。貼り付けると無力化できる。
―――――――――――――――――――――――――――
「魔法の箒と魔道書、魔法の糸をいただけないかしら?」
「合計で11100Gだよ」
「お願い」
「毎度」
41100G ⇒ 30000G
「ほら魔理沙これ」
「なんだこりゃ」
「いいから装備して」
「お、おう」
>>魔理沙は魔法の箒を装備した。
「お、なんだ。この箒を持ったら急にインスピレーションが」
>>魔理沙はブレイジングスターが使用可能になった。
「この本いただくわね」
「どうぞ」
>>パチュリーは魔導書を装備した。
「じゃあ私はこれを」
>>アリスは魔法の糸を装備した。
「魔術の書と、マジシャンの糸を買い取って欲しいのだけれど」
「合計で1000Gだけどいいかな」
「ええ」
30000G ⇒ 31000G
「他に何かあるかい?」
「特にはないわ」
「そうかい。また来ておくれ」
三人は店を出た。
「ん? お前らここらじゃ見ない顔だな?」
旧都のはずれにある、地上へ続く道を目指して歩いていると、彼女らは呼び止められた。
「そのナリだと、観光客ってとこか?」
声を掛けたのは、額から角を生やした女性だった。
「まぁそんなところだぜ」
「そうか。ようこそ地底へ、歓迎するよ!」
「イテェ! 痛いってば!」
豪快に笑って魔理沙の背中を叩いた。
「おっとすまない。人間と妖怪の争いが終わっても、ここは相変わらず忌み嫌われてるからね。少しでも興味を持ってもらえたのが嬉しくてね」
むせる魔理沙の背中を擦ってやる。
その時、勇儀の腕を見て、パチュリーは目を細めた。
「あなたそれ・・・」
腕には見覚えのある魔法陣が描かれていた。
「あ、こ、これか? カッコつけだよカッコつけ! 刺青と違って楽に消せるから、旧都で流行ってるお洒落なんだ」
手を空中でバタバタとさせ、しどろもどろになって答える勇儀。
「そ、そーだ。お前ら温泉は行ったか!? あそこは地底で一番の名所だ、時間があったら行くと良い! それじゃあ!」
まくし立てる様に言ってから、足早に去っていった。
「あの魔法陣って確か」
確信を持ってアリスはパチュリーを見た。
「もしかしたら、ここが旅の終着になるかもね」
勇儀の腕に刻まれていたのは、紅魔館でレミリアが使っていたのを同じモノだった。
アリスは見上げ、地底の天井に浮かぶ擬似太陽を見て時刻を測る。
「バラバラで聞き込みしましょう。あの太陽が45度の角度になったらここに集合でいいかしら?」
「いいぜ」
「わかったわアリス」
それぞれが違う方向へ歩き情報収集を開始した。
約束の時間。
最初で別れた場所に三人は集まった。
「パチュリーどうだった?」
「地霊殿の周辺にいた殆どの動物の体にあの魔法陣があったわ」
「私はあの鬼が勧めた温泉に行って、脱衣所をしばらく観察したが、体にあの魔法陣を持った奴が何人もいたぞ。むしろしてない奴の方が圧倒的に少なかった」
パチュリーの魔理沙の話を聞く限り、地霊殿にいる殆どの者が、体にあの魔法陣を刻んでいるようだった。
「けど肝心の魔法陣刻んだ者の正体は掴めなかったわ」
動物ばかりを見ていたため、パチュリーは調べることが出来なかった。
「私んトコもあんまり喋ってくれなかったぜ。アリスはどうだった?」
「腕にしてた居酒屋の店長に訊いてみたわ。余り詳しくは語らなかったけど古明地さとりが、このブームの発端だそうよ」
《地霊殿》
「おや、まだ地底にいらしたのですね?」
再度、地霊殿にいるさとりを訪ね、最初に言われたのがそれだった。
「折角来たから地底を探索しようと思ったんだぜ」
「つまらなかったでしょう? ここには特に見るようなものがありませんから」
「だから魔界神でも呼んで、ここを観光地にでもしようと思ったのかしら?」
パチュリーが詰問するような強い口調で言った。
「仰ってる意味が?」
「とぼけても無駄よ。心の読める貴女ならなおのこと。私達の言いたいことがわかるわよね?」
「・・・・・なるほど、全部お見通しというわけですか」
溜息を吐いて、さとりは近くにあった安楽椅子に腰を下ろした。
「内密にやっていたのに、どこからそんな情報を仕入れたのですか?」
「偶々よ。アリスがメディスン・メランコリーにならなかったらココに来ることは無かったし、魔理沙が旧都に行こうと言わなければそのまま帰っていたわ」
「はぁ、どうして運というのは昔から私に味方してくれないのでしょうね」
やれやれと呆れ、その身をさらに深く椅子に預けた。
「認めるのね。魔界神復活の儀式を画策していることに」
「ええ、ちなみに紅魔館の主人を唆したのも私です」
「やっぱり。妹様が言っていた『みつめの女の人』って貴女のことだったのね?」
「紅魔館の主人、魔界神復活の方法を教えてあげると『これで咲夜と一緒に居られる!』って喜んでいましたよ。結果は骨折り損だったそうですが」
「このっ・・・!」
パチュリーは反射的に殴っていた。座っている椅子ごとさとりは倒れこむ。さとりの頬に赤みが残った。
「驚きました。あなたが一番冷静沈着だと感じたのに、突発的な衝動で手が出るんですね。賢者でありながら」
「親友を破滅においやった張本人が目の前にいれば、誰だって愚者にもなるわ」
「わかりますその気持ち。つらいでしょう? 苦しいでしょう? 馬鹿正直に秩序なんて守っていられないでしょう?」
「ッ、その口二度と使えないように!」
「おい待てパチュリー!」
慌てて魔理沙が割って入る。咄嗟にパチュリーは手を下ろした。
「ごめんなさいアリス。今の私じゃコイツとはまともに会話できそうにないわ」
「わかった。後は任せて」
パチュリーに代わり、アリスが会話を進める。
「でもそれだと解せないわ。もしも紅魔館の儀式が成功して魔界神を復活させていたら、あなたの願いは叶えられなかったのよ?」
「何か勘違いしているようですね勇者様? 私は魔界神そのものに用があるんです」
「百年前に亡くなった妹さんを生き返らせるのが、望みじゃないの?」
咲夜という前例があったため、アリスはそう思い込んでいた。
「はじめはそのつもりでした」
さとりは体を起こして口の中に溜まった血を、ポケットから出したハンカチに吐き出して立ち上がる。
「この世は三種類の生き物で回っています。『覚り妖怪を気味悪がる者』『覚り妖怪の力を利用しようと目論む者』『覚り妖怪のことなど何とも思わない者』。私達覚り妖怪の居場所なんてどこにもないんです。
そんな世界に妹を呼び戻すというのは、いささか酷だとは思いませんか?」
「今はこうして地霊殿で悪霊の管理をしているじゃない。居場所も地位もある。どこに不満があるの?」
「目まぐるしく変わる地上の余波で、地底も少しずつ変わってきている。雇われの身である私の地位は、上の意思一つであっさり崩れるものなんですよ。ここを解任された私は、ピラニアの水槽に投げ込まれた肉も同然」
「それじゃあ貴女は魔界神そのものに何を望むの?」
「決まってるじゃないですか、それは・・・」
「どういうことださとり!」
告げようとした時、その場に血相を変えて走ってくる者がいた。星熊勇儀だった。
「ヤマメやパルスィ、キスメが突然消えたぞ! この魔法陣が光った瞬間にだっ! これは持ち主の微量な魔力しか吸収しないんじゃなかったのか!?」
「あなたまさかっ!」
勇儀の言葉を聞いたアリスは、目を大きく見開いた。
「ええ、レミリアさんの時と同じです。貴女方が来たので、予定より少し早いですが儀式を行うことにしました」
旧都の方を見ると、青白い光が現れては消えてを繰り返していた。
勇儀がさとりの胸倉を掴む。
「魔界神を復活させ、人間と妖怪の共通の敵を作り出すことで、地底の復権を画策すると言ったじゃないか!? その為に皆の体から少しずつ魔力を供給して欲しいと、だからみんな体にこれを刻んだんだぞ!」
まさに鬼の形相で問い質した。
「鬼というにはタフですね。本当なら一瞬で分解されてしまうのに、鬼の力がその魔法陣に抗っているのでしょうね」
「騙したのか!? 地底のみんなともう一度青空の下に出ようと誓ったじゃないか! あの演説でお前が流した涙は嘘だったのか!?」
「これほど自分の能力に感謝したのは、今まで生きてきて初めてです。なんせ相手がちゃんと騙せているか、疑っているか、手に取るようにわかるのですから」
「鬼を・・・・地底の皆を欺いた罪はでかいぞ!」
クスクスと笑うさとりの胸を、鬼の拳が捉えた。
「ごぅ!」
小柄なさとりの体はまるで枕のように軽々と地面の上を跳ねて、建物の柱にぶつかるまで止まらなかった。
「とどめだ!」
しかし、勇儀の拳が届くことは無かった。
拳がさとりの頭に到達する前に、勇儀はその場で霧散した。
アリスは目と耳と鼻、口から血を流すさとりに駆け寄ると、無理矢理起こして揺すった。
「言いなさいさとり! 母体になってる女の子はどこ!?」
「ごほっ、ごほっ・・・・・・母体にしてるお空は、旧灼熱地獄。ここからじゃ間に合わない。魔界神が復活する。もう誰にも止められない」
地底が眩い光に包まれた。
「私の勝ちです」
まるで太陽のような強烈な光が、地底を一分以上照らしだした。
ようやく光が治まる。
「や、やっと目が開けられ・・・・・たっ!?」
六枚の羽を持ち、髪を片側だけ結わえた女性が目の前にいることにアリスは仰天した。
「やっぱり女の子の体を破って出てくるって、ビジュアル的に微妙な気がしてきたわ。登場の方法を変えようかしら? 空からゴンドラで降りてくる感じで・・・・いや、それよりも暗闇がだんだんと私のシルエットになっていく方がカッコいいかしら?」
女性は腕を組み、体を傾けながらぶつくさ独り言を話していた。
「空間を斬り裂いてその隙間から這い出てくる演出も捨てがたいし、ああ、どうしよう決められない!・・・・・・・・あら?」
目の前にいる娘と目が合い、ポンっと両手を叩く。
「もしかして、もう復活させられちゃってる?」
魔界神神綺が復活した瞬間だった。
⇒⇒⇒⇒ NEXT STAGE
「ゴホンッ」
その場の空気を取り繕うように咳払いをする赤面した魔界神。
傍らで倒れこむさとりに目を向けた。
「あなたが私を呼んでくれたの?」
さとりを膝枕する。
「心が・・・・読めない」
「当然よ。破壊と創造に定評のある魔界神ですもの」
「成功したのですね私は」
余命いくばくもないさとりに、優しく微笑みかけた。
「こちらに連れてきてくれたお礼よ、何でも願いを叶えてあげるわ」
「では、お願いです。この世界を、滅ぼしてください」
「それはなぜ?」
「復讐です。妹を殺し、居場所を奪い続けたこの世界に対する」
「ええわかったわ。というか元よりそのつもりよ。あとの事は任せて頂戴」
「ありがとう、ご、ざい、ま・・・・す」
さとりは静かに息を引き取った。
「じゃあさっそく、この子の願いでもある世界滅亡を・・・」
直後、神綺の顔のスレスレの位置を、火球が通りすぎた。
飛んできた方を見ると、魔導書を抱え、怒りの表情で魔界神を見据えるパチュリーがいた。
「あなたのせいで大勢の人と妖怪が不幸になった」
「挑む気? 私に?」
「ああそうだぜ」
魔理沙が八卦路を持ち、パチュリーの横に立つ。
「復活したばかりで体がなまっているから、準備運動にはちょうど良いわ」
「言ってろ! 井の中蛙ってことを教えてやるよ!」
「こっちに来たばかりで悪いけど、今すぐ地獄に行ってくれないかしら?」
(まずいわ。私、またなんか空気になってる)
こうして最後の戦いが始まった。
最終章(後編) 〜そして産廃へ〜
「先手必勝だ!!」
魔理沙は八卦路からマスタースパークを放った。
「レイジィトリリトン」
せり上がった土が神綺に迫る。
「よいしょっと」
しかし、神綺が軽く手を振ると、それらは掻き消えた。
「この程度? 今度はこっちの番よ」
神綺の羽が輝くと、周囲が青い炎の塊がいくつも出現する。
「そーれっ!」
「二人共私の近くに!」
パチュリーは水符を展開させて、爆風と熱から自分達を守った。
「なんて威力」
視界が鮮明さを取り戻すと、あたり一面焼け野原になっていた。
「あー良かった。アリスちゃん達無事だった。今のでゲームオーバーだったらどうしようかとちょっと焦ったわ」
ほうと胸を撫で下ろす。
(余裕綽々ねアイツ)
「おいアリス?」
「なに?」
「時間稼げるか?」
「何する気?」
「一発、ドデカいのを撃つ。幽香仕込のマスタースパークだ。パチュリーにも協力してもらって更に威力を上げる」
その作戦を聞いたパチュリーはコクリと無言で頷き、アリスの決断を待った。
「わかった」
一人、魔界神の方へと向かっていく。
「あら? アリスちゃん一人で大丈夫?」
「これってラストステージ? それとも負けイベント?」
「どっちだと思う?」
「私としては、さっさと終わらせて元の世界に帰りたいのだけれど」
「じゃあ、ここで私を倒すことね。まあここで負けてもシナオリが分岐するだけだから、今すぐ降伏したら痛い目みないですむかも?」
「余裕かましてると足元掬われるわよ・・・・上海!」
「アソビハオワリダ」
ランスを構えた上海人形が吶喊する。
「ぬるいわ」
軽々と人形を掴まれてしまう。しかしそれこそがアリスの狙いだった。
「上海、毒きり!」
「イイタイコトモイエナイコンナヨノナカジャ」
パカリと開いた人形の口から緑色の毒液が霧状に噴出する。
メディスンになって会得したスキルだった。
「ぎゃあああああああああ! 目がッ! 目がぁ〜!!」
両手で顔を押さえて転げまわる。
「うぐぐぐ、まさか勇者が毒きりを使ってくるなんて盲点だったわ。なんて勇者っぽくない技」
「アンタが付与した能力でしょうが! ついでにコイツも食らいなさい!」
上海が、もんどりを打つ神綺の体にしがみ付く。
「アーティフルサクリファイス!」
「ニンム、カンリョウ」
「ぎゃっ!」
小爆発が起きて、神綺の体が地面を転がる。
(指一本でも使えなくなればいいんだけど)
「うぅ・・・毒きりが鼻にもちょっと入ってる」
しかし、目を擦りながら身を起こす無傷の魔界神。
(やっぱり無傷か)
「あ、ようやく目が開けられそう」
(でも目的は達成した)
アリスは後ろを向いた、八卦路を構える魔理沙とその隣で詠唱するパチュリーの姿があった。
「でかしたアリス!」
「待たせたわね」
八卦路が今までにない強い光を放つ。
「いっけええええええええええ!!」
パチュリーの助力により、さらに威力の上がったファイナルスパークが神綺を呑み込む。
魔界神を呑み込んだ光は五分間消えることはなかった。
「はぁーはぁー・・・・・どうだ?」
魔力がほぼ底をつき、膝から崩れ落ちる。
撃ち終えた跡の地面はめくりあがり、魔砲が直撃した地底の崖は50m堀進められ、焼けた表面はその高熱によりガラス状に化学変化を起こしていた。
神綺がいた位置には黒い物体が蹲るだけだった。
(これは流石に死んでいるわよね?)
上海にランスで物体を突かせた。
「わっ、びっくりした!」
黒い物体は一瞬で神綺の姿になった、黒い部分は神綺の背中の羽だった。それが彼女を包み込み、魔砲から守っていた。
「なんで今ので無事なのよ!」
「でも、流石に焦ったわ。身を守るのに体力も結構つかちゃったし、お腹も減っちゃったし」
神綺は舌なめずりして、近づいていたアリスを見た。
「ッ!」
その神綺の表情に、アリスはかつて無い恐怖を覚える。
「そんな顔しないでアリスちゃん。余計にいじめたくなっちゃうでしょう?」
後ずさろうとした所で、手を掴まれる。
「ッ!?」
「怯えないで。痛くしないから」
アリスの体から力が抜ける。
「くっ、何をッ!」
「ラスボスなら大体持ってる技よ、敵の魔力を吸いとってるの」
「アリスッ!!」
箒に跨った魔理沙が二人の間に割って入るように突っ込み、アリスを救出すると地面に転がった。
「くそっ本調子のブレイジングスターなら、アイツの腹に風穴を開けてやれたんだが」
「馬鹿、こんな無茶して。さっきので魔力ほとんど使ってたんでしょうが!」
「助けてやってなんだその言い草は!?」
「仲良く喧嘩するのはいいけど」
パチュリーが口論する二人を庇うように神綺の間に立った。
「降参したらパチュリーちゃん? 今なら見逃してあげるわ。一ヶ月くらいレベル上げしてからまたいらっしゃい?」
「丁重にお断りするわ!」
七色の石が地面から出現する。
「火水土木金の属性を極めた者にのみ使うことを許された賢者の石。魔界神を倒すのには持って来いだわ」
「なるほど、それが奥の手というわけね」
「二人共」
神綺を睨みつけたまま、戦友の名を呼んだ。
「私は諦めない。私が戦っている間に、こいつを倒す手段を考えて」
その言葉を皮切りに、賢者と魔界神の撃ちあいが始まる。
上空で無数と炸裂音と爆発が展開された。
(無理よ・・・・今の私たちじゃ母さんには勝てない)
どれだけ足掻こうと力の差は歴然だった。手持ちのカードは全て使い切った、パチュリーの賢者の石で神綺に勝てるとは思えない。
(やっぱりこれは負けイベントだ)
ここは一度退いて、神綺が言った通り、レベルを上げて再挑戦するしかないと思った。
彼女に勝つためにどれだけ膨大な時間を費やすのかはわからないが。
「どうする? 二人の魔力を合わせてマスタースパークでも撃つか?」
「いいえ。何をしたってもう・・・・・ん?」
勝利を諦めずそう提案してきた魔理沙を見た時、アリスはあることに気付いた。
「魔理沙、それ?」
魔理沙が箒と一緒に何かを抱えていた。
「あ? ん、なんだこりゃ?」
本人は自覚が無かったのか、指摘されてようやく気付いた。
「さっきアイツとぶつかった時に盗賊のスキルが発動して盗んだみたいだ」
これも神綺のシナリオなのか、それとも偶然の産物か。考えている暇はアリスにはなかった。
それに賭ける以外の選択肢を彼女は持ち合わせていない。
「魔理沙、手伝って! それ持ってこっちに来て!」
「おい何なんだこれ!?」
スキルの書かれたボードと、ダーツを手にアリスはその場から離れた。
「すごいわパチュリーちゃん! 魔界にもここまで出来る子はなかなかいないわ!」
パチュリーが繰り出す魔法に感嘆し、戦いの手を止めて拍手する。
「どう? 私の方に付かない? 今なら世界の半分をあげるわ。白熊かペンギン、好きな方を選びなさい」
「お断りよ」
「そうなの、残念」
神綺の前に魔法陣が浮かび上がる。浮かび上がったのは一つではなく、二つ三つと段々と増えていき、気付けば天井を覆うほど大量の魔法陣が出現していた。
「じゃあ少しだけ、棺おけになっててもらえるかしら?」
しかしその魔法陣が発動することは無かった。
「ッ!?」
神綺は咄嗟に振り返り、右手を空にかざす。手から展開された障壁が超重量の一撃を受け止めた。術がキャンセルされた事により周囲にあった魔法陣は消失した。
「これは?」
自身に襲い掛かってきたソレを見て思わず呟く。
ソレを人形と呼ぶにはあまりにも巨大だった。
左右の手に一本ずつ重厚の大剣を握る神話の巨人が、神綺を見下ろしていた。
「いきなさいゴリアテ人形!!」
巨人の足が神綺の体を蹴飛ばす。
「うわっっと、どうやってこの人形を!?」
「魔理沙が盗んでくれたスキル決定ダーツのお陰よ」
ちなみにそのボードとダーツは一度使用すると、その場から消えてしまった。
「魔理沙、パチュリーを連れてここから出来るだけ離れて」
「立てるかパチュリー?」
「なんとか」
魔理沙に肩を借りてパチュリーは立ち上がり、地霊殿の入り口に向かった。
「その人形でどこまで出来るか計らせてもらうわ。この戦いで改善点が見つかるといいわね」
「いいえ、ここがラストステージよ!」
地面と水平に振るわれた大剣。
「おっと」
それを跳んでよける神綺。
「そこ!」
「 ? 」
真上からすぐ、もう一本の剣が振り下ろされた。剣が羽を叩く。
「ぐっ!」
叩き落された神綺は地面に膝をついた。
「まだまだ!!」
人形はその身を独楽のように回すと、その勢いを利用して二本の剣先で神綺のいる地面ごと抉った。
「わひゃっ!」
神綺は後方に飛ぶことで、これを寸での所で回避する。
「逃がさない!」
地面を蹴り上げ、先ほどの一撃で生まれた岩石を砲弾のように飛ばし追撃をかける。
「すごいわねアリスちゃん!」
手の平で爆発を起こして迫り来る岩石を粉砕する。
「気のせいかしら? 心なしか動きにキレがあるわね?」
神綺の知る限りゴリアテは試作人形で、アリス自身操作に慣れたとは言い難いはずだった。
「当たり前よ。職業【旅芸人】によって、人形操作の技巧を磨いた! 今の私は人形の性能を100%出し切れる!」
両手を交差し、神綺を挟むように剣を繰り出す。
「そしてメディスンメランコリーになったことで人形の心を理解した。彼女達の思いを汲み取り、私の思いを重ね同調することで、更なる高みへ登った!」
マリオネット使いならば誰もが目指し、しかし誰も辿り着けなかった領域に、アリスは今到達した。
「娘だからって、甘く見ないことね!」
二刀流を極めた剣豪のような立ち振る舞いに、神綺は後退を余儀無くされる。
「このまま押し切る!」
一本を回避すると、すぐに二本目が襲ってくるため、神綺には攻撃する暇が無かった。
「おっとっと」
着地した足場が割れて、バランスを崩す。
「そこよ!!」
神綺の動きに僅かな綻びが生じた。アリスがずっと待っていた瞬間だった。
(ここで決める!!)
剣を寝かせ、まるで虫でも擦り潰すかのように振り落とす。
「あわわ・・・・あら?」
神綺の背中が壁にぶつかった。
「これで」
巨人は片手でそれぞえ持っていた剣を重ね、一つの剣として柄を握りこむ。
「最後ッ!」
跳躍し飛び上がった人形は剣に己の全体重が掛かるように、大上段を神綺に叩き込んだ。
「まだよ!」
神綺の前に光の塊が生まれて、剣と衝突する。
光の塊は消えて、二本の剣は粉々に砕けた。
「まだまだぁ!!」
迷うことなく柄だけなった剣を捨て、鋼鉄のように硬い巨大な拳を神綺に浴びせる。
「ぶっ!」
拳と岩の壁に挟まれて神綺はカエルが潰れたような声を漏らす。
「ハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
浴びせる拳は一発ではない。左右の拳で何度も殴りつける。
人間なら『筋肉』や『関節』、『溜め』により必ず動きに無駄が出るが、人形にはそれが無い。
いかに鍛錬を積んだ達人でさえ繰り出せぬ高速のラッシュが魔界神に向けて振るわれていた。
「うっ・・・ぐ」
とうとうアリスの指に限界が来て、人形の動きが止まる。
拳によって壁にはクレータが出来ていた。
(これで倒れていてくれないと)
もうあと何度も人形は動かせない。
「いたたた」
そんなアリスの心の声をあざ笑うかのように、無傷な神綺がひょっこりと顔を出す。
「張り切り過ぎよアリスちゃん。これ絶対にたんこぶできてる」
「これからが本番よ」
「ん?」
クレーターから出ようとした神綺の頭を、ゴリアテ人形の手のひらが押さえつけてそれを邪魔する。
「あの、アリスちゃん? これは一体? 出たいんだけど?」
「ゴリアテ人形! 毒きり!!」
巨人は自らの手に接吻。手の隙間から緑色のきりをクレーターの中に吹き込んだ。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!!」
クレータの中が毒きりに満たされる
「沁みる! 目に沁みる! それに臭い! バジル臭い! うわぁなんか心まで沁みてきたぁ!」
クレーターの中で悶絶する神綺。
「あああああああ!! もう!!」
中で神綺が力を使ったらしく、穴を押さえつけていたゴリアテ人形の両手が砕けて、その亀裂は腕全体へと伝わり、あっという間に腕は鉄くずとなり胴体から崩れ落ちた。
その衝撃はアリスの指にも伝わって、左手の指を全て吹き飛ばした。
「うう・・・・・お風呂に入りたい」
押さえつけるものがなくなり、そこから神綺が飛び出してきた。
「なんか魔界に帰りたくなってき・・・・ッ!?」
気を抜いた神綺をゴリアテ人形が呑み込んだ。
(これが最後で最期。これで駄目だったなら、目の前が真っ暗になるわ)
まだ無事な方の右手を天にかざした。
「勇者兼旅芸人アリスの最後の演目よ! ゴリアテ人形!! アーティフルサクリファイス!!」
五本の指を強く握りこんだ。
「うおっ! なんだ!!」
かつてダーマ神霊廟で感じた衝撃と同じものを感じた。
「あの二人がいたところから」
「戻るか?」
「ええ」
二人は地霊殿へと引き返した。
「これは・・・」
千人単位で戦争でもしたのかと思えるほど、地霊殿の中は荒廃の限りを尽くしていた。
地霊殿の最深部にたどり着くと、衣服以外は無傷な神綺と、満身創痍になって倒れるアリスの姿があった。
アリスの体には自らの人形の破片が刺さっており、右足は膝から下が無かった。
「頑張ったわねアリスちゃん。これだけボロボロにされたの久しぶり」
とぼとぼと三人のところまで歩いて来た。
魔理沙は八卦路を、パチュリーは魔導書を掲げ、神綺に向けた。二人共、奥が恐怖でカチカチと鳴っていた。
「お洋服が破れちゃったから、今日は帰るわ。その子にそう伝えといて」
「え?」
「あとついでに、さとりちゃんとの契約が不履行になっちゃから、私がらみの騒動で死んじゃった子は全員生き返らせとくわ。紅魔館とか帰りに寄ってみなさい」
足元に闇が現れると、神綺はその中に沈んでいった。
「二人とも・・・」
微かにアリスの口が動く。
「大丈夫か! オイ!!」
「しっかりして、今、回復させるわ」
「魔界神・・・は?」
「大ダメージを追って、魔界に逃げ帰ったぞ。私らの勝ちだ」
「流石は勇者ね」
「そっか・・・」
「おい! 目なんか閉じるな! パチュリー、もっとガンガン回復させろ!!」
「やってる! でも血が止まらない!」
「二人とも・・・幻想郷にいる二人には、絶対に言わないんだけどね」
一度言葉を切り、呼吸を整えてから再度口を開く。
「ありがとう。大好き」
それだけを告げて、アリスは目を閉じた。
⇒ GAME CLEAR
ここまでの冒険を記録しますか?
⇒はい
いいえ
■プロローグ
半径数十キロにも及ぶ町の中心にそびえ立つ立派な城、その王の間にアリスはいた。
「良く来てくれたわねアリスちゃん」
王の間の玉座に座る女性は、自身の娘に朗らかなに笑みを向ける。
「今、この世界に魔王・・・・じゃなくて魔界神が復活しようとしているらしいわ。魔界神が復活したら世界は混沌に包まれてしまう。そこでアリスちゃんには魔界神の復活を阻止して欲しいの」
「え? え?」
「行きなさい勇者アリスちゃん! この世界に平和をもたらすのよ!」
「あの、ちょっと!? 母さん?」
「どうしたの?」
「私、ゲームクリアしたわよね?」
「さっきのアリスちゃんの頑張りを見て、ママすごく感動したの、それで」
「それで?」
「私を完全撃破するハッピーエンドルートを迎える時を終わりとすることに変更したの」
「はあああああ!!!??」
「スキルと所持金、アイテムは引継ぎだから頑張ってね」
冒険を再開しますか?
はい
いいえ
ドールマスターアリス (最終回)
《ローレライの酒場》
ミスティア「いらっしゃい」
アリス「15億Gあるわ。これでフランドールと聖白蓮を」
神綺「アリスちゃん、どうやってそんな大金を?まだ2週目よね?」
アリス「ダーツで付与された『特殊スキル:異性と性交するたびに15000G手に入る』をお忘れかしら?」
神綺「まさか、10万人の男とセックスしたというの!?」
《最終ステージ》
神綺「城下町を出てすぐ直接魔界に乗り込んでくるとは思わなかったわ」
白蓮「聖輦船ならここに来れますから」
アリス「あいつが黒幕です。やっちゃってくださいフランドール先生」
フランドール「きゅっとしてどかーん」
神綺「やーらーれーたー! この世界で不幸になってる子は全員生き返らせたりして、色々と救済しますぅぅぅ!」
HAPPY END
※んh様 誤字のご指摘をくださいましてありがとうございます。訂正致しました。読み辛い箇所も徐々に修正していきます。
木質
http://mokusitsu.blog118.fc2.com/
作品情報
作品集:
3
投稿日時:
2012/05/06 14:46:29
更新日時:
2012/05/11 22:47:37
評価:
20/28
POINT:
2110
Rate:
14.72
分類
産廃創想話例大祭
アリス
魔理沙
パチュリー
神綺
産廃クエスト
イロモノ路線に進んでいくと思ったアリスがねぇ…伏線の散らし方も職人芸ですね。
だがコンドームの伏線は回収されなかった…
さんざ苦労した一周目で冷静に分析し尽くして二週目で華麗にクリアするアリス姉貴は魔女の鑑(迫真
10万人セックスで盛大に笑い、そういや魔女にとってセックスって繰り返しただけ格を上げる代物なんだよな確か……でも魔界人だから純正魔女とはまた違うのかな……なんて考えつつ、流石にそんな規模のセックスなんてしたら普通はトラウマもんだろうところを、このアリスなら元の世界に戻ってからCOOLに記憶を埋没させることができそうで、そういういじめ時空の力に抗い得るキャラの魅力を書こうとしているのは素晴らしいな、と思いました。
スクロールバーの小ささから読むのに時間がかかりそうだと思っていたのに、いつの間にか読み終えてました。
大変面白かったです!ありがとうございました!
最後のフランちゃん最高!!
キャラのバランスは滅茶苦茶だから、クリアに時間がかかるか一発かとなってるし……。
クリア時の『継承』がなければ、やってられませんね。
ディケイドの旅する世界のようにアレンジされた世界観はなかなかでした。
欠点を言えば、ちょっと冗長だったかな。
最終章の最後でウルッときたのに最後の最後で打ち切り臭のする最後に……
返して、私の感動を返して。
コンドーム買ってないから二周目終わる頃にはつわりはじまるよね
10万人とセックスしたアリスに免じて100点にしてあげてもいいわ!
相手が居ないからむしろ辛いか
神綺さまがラスボスでアリスが主人公だから、なんとなく最終的にはハッピーエンドなんだろうなーって想像できちゃってその通りだったから、お約束感はある・・・いや、これが王道の力か!
あと、脱字とかわりと多かったんで10点ひきました。細かいところ気にしちゃってすいません。
もしかして書き溜めておいたネタを再構成して書いたのでしょうか? なんとなく読んでいて個々のイベントがバラバラな感じがしたので(特にてるもこ)。ひとつひとつの話はどれも大変面白いんですが、一続きのゲームというより短篇集的な読感がややありました。ファンディスク的なRPGのノリを狙ったのかなとも思い直したのですが。
御札は置いといて、コンドームは特殊スキルと合わせてオチに絡みそうだと読みながら思ったので(あの時コンドーム買っとけば……みたいな展開)どっかで使って欲しかったです。でもそういうゲームのしての作りの適当さが、最後のゴリアテ降臨へと繋がってるわけで、そこは思わず膝を打ちました。
一つだけ、命蓮寺と神霊廟の辺り、会話文の続く部分が少し読みづらかったです。特に死んだと書かれている白蓮と村紗?が会話してるところ。
ここではまだゲームでの死の概念が書かれてないので、しばしスクロールが止まって2、3度読み返しました。
元が大変読みやすく、スルスルいける文なので余計。
テンポが死なない範囲で構わないので、誰が言ったかみたいな一文が欲しかったです。
誤字は基本気にしないのですが、「パルシィ」はまずいかなと思ったので報告しときます。
でも、トータルでは大変楽しい読書の時間を過ごさせて頂きました。長文ご苦労様です。
意外だったのが、フランちゃんが登場していながらほんのちょい役だったこと。最初のメンバー選択で「まあフランちゃん来るわな……と思ったら金が足りないだとっ!?」と少し驚かされました。でも、未熟で不器用な魔理沙とパチェだったからこそ、この達成感と感動のあるストーリーを描けたのかもしれませんね。
ユーモアあふれ読みやすい文章、これだけの長文でありながら丁寧なストーリーと構成、愉快で魅力的なキャラクター。ところどころ誤字や脱字も気になりましたが、それでも100点じゃ足りないくらいです。
木質さんの作品には、いつも本当に楽しませてもらっています。次回も笑いあり涙ありな素敵な作品を期待してます。
あと第四章の存在意義が個人的に感じられませんでした。本筋と関係ないし、展開もあっさりしてすぎだし、萃香が悪い意味でキモくて、あっけらかんとした作品全体の雰囲気にあってないと感じますし。
何かいろいろ言ってしまいましたが、全体からビシビシ伝わる「面白いクソゲー」感は本当にすばらしく、このゲームやってみたい!! 絶対クソゲーだけど、だからこそやってみたい!! という気持ちになることができるとても楽しい作品でした。筆力もさることながら、しっかりとこのゲームを完成させた労力に感謝します。ありがとうございました!!
あと美鈴が自害するシーンかっこよすぎてもうどうしようかと思いました。
しかし一番笑ったのは繰り返される森近兄弟だというのは秘密だ!
木質さんじゃなかったら素直にすげーとか思ってたんだろうな。
出来れば続きを作って欲しいけど、作者さんの労力を考えるとどうしよっかなーって感じです。
色々完璧過ぎて書くことない
次にこいしちゃんが死んでたので−150000000点。そしてアリスの扱いと面白さで+150000000。
そんなわけで、200点にしたいのですが実装してもらえませんかねぇ…
こう無駄なところが無駄ではなく、必死なところが無駄なところが大好きです。
最後にアリスw
輝夜のSっぷりと、それからあっさり復活するもこたんに驚愕です。
アリスの2週間に10万人って一体。こんな素敵なアリスなら立候補したいですね。