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『「魔理沙に腹パンできるお札を一枚下さい」「十枚セットもあるわよ」「じゃあそれで」』 作者: R

「魔理沙に腹パンできるお札を一枚下さい」「十枚セットもあるわよ」「じゃあそれで」

作品集: 4 投稿日時: 2012/05/31 17:13:54 更新日時: 2012/06/01 18:59:22 評価: 9/13 POINT: 970 Rate: 14.21
 霊夢は困っていた。お金がないのはいつものことだけど、今回は本当になかったのだ。もしかしたら誰かが盗んでいってしまったのかもしれないと思ったほどだった。霊夢は賽銭箱を覗き込んだ。賽銭箱を覗き込んでも、勿論お金が増えるはずもない。振ってもからからと音さえ鳴らなかった。戯れに引っ繰り返してみた。疲れて、お腹が余計に空いただけだった。霊夢はそのまま寝転んだ。もうどうなってもいいや、と思った。
 何かの紙が、霊夢の頬に触れる。霊夢は紙幣じゃない紙に用など無いと思ったけれど、紙なら食べられると思って拾い上げた。何か書いてあった。

“魔理沙ちゃんに腹パンがしたいです”

 したければすればいいじゃない。霊夢はそう思った。何だってしたいなんて神社にお願いをするのだ。何か行動がむかつくとか言って殴ればいいじゃないか。どこの誰だか知らないけど、魔理沙はただの少女だから、それより弱い奴なんて想像もつかない。
 むしゃむしゃ紙を食べながら、そう言えばその手のお願いはやたらと多いことを、霊夢は思い出した。絵馬に書いてあったり、賽銭を入れてからやたらと大声で土下座して祈りを捧げてみたり、する輩は多い。馬鹿らしい、と思っていたけど。

「おい霊夢、何やってるんだ?」

 魔理沙がいた。霊夢は起き上がった。




 霊夢は魔理沙を木に吊した。両手を上に、爪先立ちにして抵抗出来ないようにして。横に看板を置いておいた。『殴ると御利益のある魔理沙神の御腹』

「おい冗談だろ霊夢」

 ごめんね魔理沙。
 参拝客が増えて、賽銭も増えた。霊夢は食いつなぐことが出来た。ありがとう魔理沙とお礼を言いに行くと、いなかった。吐瀉物と尿の臭いだけが残っていた。誰かが哀れに思って逃がしたに違いない。でも、霊夢はそれを特別憤ったりすることはなかった。しばらく食べていけるのだから、霊夢は満足だった。



 また、お金が尽きた。今度は霊夢はお札を刷った。『魔理沙に腹パンができるお札』だ。当然魔理沙に許可を貰っていないので、魔理沙が大人しく腹を殴らせるはずもなかった。殴れないとありがたみがなくなる。霊夢は、変に几帳面だったので、一つ一つに魔理沙の動きを封じる封印をかけた。本当は、何度でも使えるようにできたけれど、それじゃ儲からないと思って一度使うと壊れるようにした。最初は、子供の小遣い程度の値段で売っていたけれど、ものすごく売れるので、倍にした。それでも売れた。また倍にした。そうして、最初の値段の50倍にしても、まだ売れた。あまりに買いすぎて、中毒みたいになって、破産してしまったり、飢えて死にそうになったり、した家や人間があると聞いた時は、さすがに霊夢は可哀想に思った。

「ごめんね魔理沙、今日はこれだけ売れたの」

 近頃、魔理沙は諦めたのか、また神社に来るようになった。どこでもお札を持ってくる奴がいるのだから、神社に来ても一緒だった。それに、魔理沙には霊夢の他に友達がいなかったのだ。魔理沙は霊夢に縋るほかに精神を保つ方法はなかった。

「あぁ。もう、かなり数を減らしてるから、このくらいなら大丈夫だぜ」

 魔理沙はお札を翳してみせる。効力がなくなって、封印できないお札だ。それを数えることによって、今月は後何回殴られるのかを数えているのだった。
 霊夢はお札を受け取った。それは再び霊力を込めると再利用できるのだった。魔理沙は自分を殴るお札を平淡に眺めている。どうせ返さなくっても、霊夢は刷るのだ。返したら、無駄がなくって、原料費がかからなくって、霊夢が喜ぶ。魔理沙にとって霊夢の他に信じられるものがなかった。魔理沙は霊夢を恨みつつ依存しているのだった。

「ありがと、魔理沙。……ごめんね、魔理沙。……でも、もう売るのを止めることなんてできないわ。今売るのを止めたら、幻想郷で暴動が起きて、おかしくなっちゃうわ」
「あぁ分かってるよ。それより、どうだ、儲けは。かなり儲かったか?」
「えぇ魔理沙、この通りよ」

 急激にお金を儲けた霊夢は、毎日三食食べられるようになったどころか、三食別のものが食べられるので感動していた。ちゃぶ台はずっと足が一本割れていて、巻いた段ボールで立てていたのも新調したし、靴下も二足しかなくて、一週間は洗わないまま使い回しだったのに換えを一足増やせたし、下着も同じだった。
 そんなに使っても、お金はまだまだ、まだまだ残っていた。ちなみに霊夢の最高資産は、幻想郷で使われる生活費の、数百倍はあったが、霊夢は使ったお金の残りは全て里に寄付した。里の人間は巨大すぎる寄付に狂喜した。里には学校が増えた。貧しい人達に配っても、まだまだ余りがあったので、沢山の人が横領したけど、まだまだ残ってた。霊夢も毎日宴会ができたし、誰も不幸にはならなかった。

「近頃、すごく助かっているの。魔理沙のお陰で。本当にありがとう、魔理沙。今度里においしいものでも食べに行きましょう」

 はは、と魔理沙は乾いた笑いを立てた。おいしいものを食べても、どうせ吐いてしまうのだと思った。でも霊夢にそんなことを言ったら悪いから、黙っていた。

「……あぁ……来たみたいだ、悪いな、こんなとこで」

 神社の縁側を、知らない男が覗き込んでいた。魔理沙は立ち上がった。分かっているのだ。魔理沙は手を伸ばして、お札を受け取ろうとしたけれど、男は渡さなかった。魔理沙は諦めて手を下ろした。大人しくしているのを殴っても仕方ないと、思う人間も多いのだ。魔理沙はそれを経験から分かり始めていた。
 男は魔理沙の手を取った。胸倉を掴んで、睨み付けた。魔理沙は平静だった。箍が外れるまでの恐怖感にも、心は慣れ始めている。男が魔理沙の頬を打った。う、と小さく呻いて、魔理沙が男を見返した。男は満足していないように見えた。
 男が胸倉を掴んだまま、拳を作って振りかぶった。拳が腹にめり込んだ時、魔理沙は獣のような呻き声を上げた。呼吸が止まり、かふ、かひゅ、と舌を突き出して、息を吸おうとした。鳩尾に走ったに違いない激痛を思い、男は悦楽に身もだえた。
 は、は、と荒い息をつきながら、魔理沙は男の腕を掴んだ。立っていられないのに、胸倉を掴まれていて、膝を突くこともできないのだ。支えを求めて、男の腕を掴んでいた。男は構わず、二度目の拳を叩き込んだ。
 衝撃の後、魔理沙の喉から苦くて酸いものが上がって来て、胃の中が裏返るような感覚の後、喉から胃液を吐き出した。男が手を放し、魔理沙は地面の上に倒れ込んだ。自分の吐瀉物にまみれて、二度、三度と痛みに耐えかねて吐き出そうとしたが、裏返るような感覚だけで、楽になることはなかった。男が魔理沙の紙を掴み、その目を見た。魔理沙は涙を流していて、許してくれ、とは言わなかったが、その目は許しを請うていた。勿論、男は許すつもりもなかった。


 霊夢は、魔理沙が殴られるのを見るのが嫌だったので、さっさと神社の中に逃げ込んでいた。




 魔理沙は毎日殴られ続けたが、幻想郷は平和そのものだった。魔理沙は、平和とはこういう犠牲のために成り立っていたのだなと思うと、何も知らず平和を謳歌していた頃を懐かしく、大切に思った。

「しかし、それが普通のことなら、何で霊夢は殴られてないんだ。おかしいぜ」

 魔理沙はそう思うと、マジックアイテムの改造を始めた。霊夢みたいに封印は使えないから、マジックアームが相手を拘束する仕様である。魔理沙なりの『霊夢を殴るマジックアイテム』だった。霊夢のことを大切にしているのにどうして霊夢が殴られるように仕向けようとしたのか、誰にも分からない。もしかしたら魔理沙はちょっとおかしくなっていたのかもしれなかった。
 霊夢が作るのよりも長い時間を掛けて作り上げると、さっそくそれを持って里に出掛けた。そして、「巫女を殴れるアイテムだぜ。安いぜ」と声をかけ始めた。実際霊夢の売っているお札よりも遙かに安かった。でも、誰も寄りつこうとはしなかった。寄ってくるのはお札を持っている連中だけだった。持っていない連中も、殴られる様子を見ようと、人だかりになって見物した。やがて、騒ぎを聞いて霊夢が来て、真ん中の魔理沙を見た。

「何をやってるの、魔理沙」
「あぁ、霊夢。お前と同じものを売ろうと思ってな」

 霊夢は、『霊夢を殴れるマジックアイテム』を一瞥して、魔理沙を軽蔑し切った目で見下ろした。他人を殴らせようとするなんて最低な奴だ、と思った。殴られて喜ぶ奴なんているはずがないのに、魔理沙はちょっと頭がおかしいのではないかと霊夢は思った。魔理沙はおかしくなっているのかもしれない。可哀想だ、ずっと一緒にいてあげよう、と霊夢は思った。

「すいません」

 人混みの中から一人の青年が歩み出て二人に話しかけた。二人が青年を見た。

「そのマジックアイテムを譲って頂きたいのですが。値段は言い値で結構です」
「売るぜ! すぐにでも売ってやるぜ」
「あんたね、そんなアイテムに頼らないと私を殴ることもできないの?自分から、真っ直ぐにぶつかってみようって気はないの?」

 霊夢は魔理沙を無視し、そう言った。青年は黙り込んだ。霊夢の言う通りだと思った。

「霊夢さん! あなたの、柔らかそうで触ったら気持ちよさそうなお腹を、殴らせて下さい!」
「やだ」

 にべもなかった。霊夢はそう言い放つと、電話を取りだした。

「すいません、裁判所の人ですか。違法な商売をしている人がいるんです、すぐ来てくれますか」

 霊夢は、魔理沙のことは可哀想だけど、罪は罪だと思った。小町は距離を操れるのですぐに来る。

「お待たせしました! これが犯人ですか」

 小町はへたり込んでいる魔理沙を掴み上げると、そのまま連れてどこかへ行ってしまった。近頃、地獄では鉄拳制裁を取り入れ始めたので、サボりがちの死神もよく働くようになったのだ。何が良くて、何が悪いか、分からないと霊夢は思った。
 ちなみに小町は真面目に働いていても、どうしてか殴られた。以前の素行のせいで、どう頑張っても、本当に頑張っているとは見られないのだ。可哀想だ。




「おかしいぜ。霊夢だって同じものを売っていたぜ」
「霊夢は神社で売っていましたが、あなたは路上でした。許可は取っていましたか?」
「霊夢はとっているのか?」
「とっていようといまいと、あなたには関係のないことです。今はあなたの話をしているのです」
「私が殴られるんなら、霊夢が殴られたっていいはずだぜ」
「霊夢に確認を取りましたが、霊夢が拒んだと言っています。あなたは受け入れたんでしょう。なら、もう諦めて下さい」

 有罪、と映姫は言った。即時即裁判即判決である。地獄に弁護士はいないので、当然弁護はない。自分の正しさを証明するのは自分しかなく、そして被告の発言は有効と見なされることは有り得なかった。

「とは言っても、今あなたを牢屋に放り込んでしまっては幻想郷のバランスが崩れますね。と言うわけで、今後違法な販売を禁じるだけにします。良かったですね」
「あぁ、分かったぜ。販売じゃなきゃいいんだな」

 魔理沙は映姫の腹を殴った。何が起きたか分からないまま映姫は顔を歪め胃液を全部吐き出した。もろに被って、魔理沙は臭いし汚い、と思った。それから、魔理沙は何度も殴った。腹を滅多打ちにして、起き上がれなくなるまでした。見張りをしていた小町は可哀想だなと思ったが、自分も制裁を何度も受けているので、止めようとはしなかった。動かなくなると、魔理沙は映姫を担ぎ上げてどこかへ行ってしまった。小町はしばらく平穏になるな、と思いながら見送った。




 映姫が目を覚ますと、妙に暗くて広い部屋の中心に、腕を吊り下げられて拘束されている映姫自身を見つけた。スポットライトのように映貴には光が当てられ、周りには多くの人間の気配を感じた。

「さあ、目を覚ましたようだぜ。お楽しみだぜ!」

 マイクを持った魔理沙が現れて、声高にそう言った。アイテムを売るのが駄目なら、その場でなら問題ないだろうと考えたのだ。実際、それを裁く者はいなかったので、ある意味正しいと言えた。お金は前金で貰ってあって、がっぽりと儲けていた。魔理沙はこうして霊夢にお金を渡してあげれば、もう殴られなくて済むのじゃないかなと考えた。

「ま、魔理沙、ほどいて逃がすというのなら、司法取引に応じても構いませんよ」
「何を言ってるんだ? もうお金は貰っちゃったぜ。じゃあ一番の人、どうぞだぜ!」

 大工の見習いをしている男が歩み出てきて、映姫の前に立った。映貴よりも背が、頭二つ分は高い。映姫がひ、と怯えた声を上げる間もなく、男は映姫の腹を殴った。うごぉぉ、と呻き声を上げて、映姫は戻した。「おっと吐いたぜ。汚いぜ」と魔理沙は実況して盛り上げた。誰も可哀想とは言わなかった。今から殴るのに、そんなことを言える人間がいたら見てみたい。誰も可哀想とは思わなかった。思ってはいけなかった。
「やだ、やだ、あぁぁ! もう、やめてぇぇ!」
 映姫は喚いた。魔理沙は懐かしいなああいう頃があったぜと思った。醜いぜとも思った。
「その声がいつまで保つか、皆楽しみにしていると思うぜ! 二番の人に交代だぜ」
 二人目の男が現れると、映姫はあぁぁ! やめてやめてやめてぇととますます声を上げた。近寄ると、何を言っているのか分からないような金切り声になった。拳が入ると、もっとやかましくなった。魔理沙は片耳を塞いでも、うるさくて、嫌になって、隣にいた男にマイクを渡してしまった。「後は任せるぜ」そう言って、部屋を出ようとした。
 その腕を掴まれた。

「魔理沙ちゃん、俺お札持ってるんだよね」

 魔理沙は諦めた。しかたなしに、腹を捲りあげた。男は抵抗されないとつまらない派だった。というより、大半はそうだ。魔理沙は封印によって動けないまま殴られ、嘔吐した。スポットライトに照らされて映姫が殴られてぐったりとしている。誰も、休ませるつもりはないみたいだった。誰も、助けないのだ。そういうものだ。




 魔理沙は胃液にまみれながら、霊夢とご飯に行く約束をしたことを思い出した。霊夢はいつご飯を食べに連れってくれるかな、と考えていた。
 産廃を見ていたら熱が籠もってしまいました
 もっとパッションに任せて勢いで書いた方がらしかったかもしれませんが、今となっては詮無きこと
 霊夢がまじきちなのか正しいのか、僕にも良く分かりません

 名前修正しました。指摘ありがとうございました
R
作品情報
作品集:
4
投稿日時:
2012/05/31 17:13:54
更新日時:
2012/06/01 18:59:22
評価:
9/13
POINT:
970
Rate:
14.21
分類
霊夢
魔理沙
映姫
腹パン
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POINT
0. 120点 匿名評価 投稿数: 4
1. 100 穀潰し ■2012/06/01 03:25:10
淡々と進む内容。
人並みの幸せを求めた巫女と友人を優先した魔女。
イイハナシダナー。
そして裁判長はどうでもいい。
しかし『映姫』じゃなかったですかね。
2. 100 名無し ■2012/06/01 06:31:16
安定のクズ霊夢
3. 90 名無し ■2012/06/01 06:35:12
幻想郷の産廃住民の経済力はスゴい!
淡々と進んでるがここの魔理沙タフすぎる。久しぶりに排水溝魔理沙に純粋な意味で感心しました。

あと映季です 季節です
4. 80 名無し ■2012/06/03 01:21:58
友人は大切にするのに、他人には容赦しないんだな。
5. 100 おにく ■2012/06/03 11:27:44
腹パン大好き
6. 90 名無し ■2012/06/04 17:02:07
抵抗されないと燃えない派なのでもっと初期の足掻いている魔理沙も見たかった
7. 100 名無し ■2012/06/04 18:17:24
あのー、100点しか持ってないけどお札買えますか?
10. 100 ギョウヘルインニ ■2012/06/28 01:52:23
 ここは、横領した寄付金でもう一回お札を買って利益をだして、また寄付された寄付金を横領してお札を買うしかありませんね。永久機関です。
12. 90 んh ■2012/07/28 09:25:03
やっぱりこういうレイマリが一番だね
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