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『存在意義の変わらないただ唯一の妹紅』 作者: box
それは、ある曇りの午後の日のこと。
人里の広場に、妹紅が立っていた。
「やや、あれは、竹藪ホームレスの妹紅さんじゃないか」
そう思った人々は明るく挨拶をしたが、返事は無い。
それどころか、妹紅は彼等彼女等には目もくれず、半開きの目蓋から、一心に虚空を見つめていた。
人々は奇妙に思ったが、各々仕事もあったので放っておいた。
太陽が空を一周し、あっという間に次の日になる。
妹紅は、相変わらず眠気を誘うような半目のまま、そこに立っていた。
人々はまたかと奇妙に思ったが、相変わらず忙しいので放っておいた。
次の日の午後は、どこまでも続く青空だった。
夜のうちに水瓶をひっくり返したような雨が降って、分厚かった雲はどこかへ消えてしまっていた。
多くの人々は雨で荒れた土地を慣らすのに忙しかった。
が、そうでない暇な人々は、しきりに騒ぎ始めた。
妹紅は、一寸も変わることなく、同じ場所に立っていた。
昨夜の風雨に叩きつけられた、ずぶ濡れのままで。
人々も流石にこれには驚き、妹紅と恋仲にある輝夜を呼んだ。
「え?妹紅がずっと突っ立ってる?」
何を馬鹿なと言わんばかりに呟きながら、輝夜は妹紅の前に来た。
輝夜は特別に仕事をしてる訳でもなかったが、人里までいちいち来るのは面倒だったのだ。
「ほら妹紅、馬鹿馬鹿しいことをしてないで行きましょう」
妹紅の肩を軽く叩きながら、輝夜は声をかけた。
しかし、妹紅は身じろぎ一つしない。
「ねえ、まさかこの間羊羹を食べちゃったこと、まだ根に持ってるの?」
その後も、何度も声をかけたが、妹紅はぴくりとも反応することはなかった。
輝夜の声が擦り切れて、遂には涙と嗚咽だけになっても。
『これは、明らかな異変だ』
幻想郷中の人々が、新たな見えない異変に身震いした。
無論、妹紅が何かしてる訳でもないが、何か訳の分からない事象を、人は『異変』と呼ぶのだ。
そのうち、紅白の巫女と白黒の魔法使いが、妹紅の前に現れた。
「何を企んでるのかは知らないけど」
「月の姫に変わってお仕置きだぜ」
そうとだけ吐き捨てると、彼女等二人は一方的に破壊の限りを尽くした。
札が舞い、結界が弾け、光と熱の奔流が辺りを薙払う。
だが、大妖怪ですら塵も残さず消し飛ばす一撃のあとには、一人の蓬莱人が、眠そうに立ってるだけだった。
再び人々は疑問を抱いた。
彼女を巡って、いくつもの噂が流れた。
だが、人々は噂してるだけで済むが、異変を解決する側すれば完全にお手上げ状態である。
半ばやけくそ気味に、あらゆる試みが行われた。
ある者が『新しい流行り病だ』と言えば、永遠邸を召還し科学的な調査が行われた。
亡霊の姫による魂の操作、悟り妖怪のセラピー、果ては博霊神社で祈祷まで行われた。
だが、そのどれもが無駄に終わった。
妹紅は、起きなかった。
そのうち、二、三週め経つと、人々はあまり妹紅のことを気にしなくなった。
どうせ無害なら、無視すれば良いだけなのだ。
白黒の魔法使いは、
「苦労したこっちの身にもなれ、畜生」
と呟いたが、それ以上妹紅に関わることはなかった。
不可能を可能にしてきた彼女にも、出来ないことはあった。
それから、幾分か年がたった。
「あれが妹紅ってやつだよな・・・」
誰もいない新月の夜、一人の少年が抜き足差し足で妹紅に近づいて来た。
少年は、ひとしきり妹紅が目を覚まさぬことを確認すると、恐る恐る自分の作務衣の下をはだけさせる。
思春期特有の、まだ皮の剥けきってないペニスが、破裂しそうなほどに誇張していた。
思春期の、尽きることを知らぬ性欲を鎮めるには、眠り姫は格好の的だったのである。
少年は不安と興奮を抑えかねつつも、妹紅のもんぺを下にずらし、あまり陰毛も無い性器を口に含み始めた。
けして、妹紅を喜ばせんとしてでは無い。
潤滑剤として唾液をまぶすだけである。
そして妹紅の性器付近がそれなりに濡れたことを確認すると、思い切り勃起した一物を、妹紅の中へ後ろから突き立てた。
「んっ・・・!」
小さく漏れた声は、無論少年の物だ。
前人未到の聖域を荒らされてもなお、妹紅が反応することは無い。
少年は獣のように腰を振り続け、股関節と尻がぶつかり合う度に妹紅の首がかくんと垂れる。
端から見れば、死体と交わってるようにしか見えない。
だが、その様子を見る者も、荒く響く吐息を聞く者も、暗闇の中にはいなかった。
「あぁっ」
やがて、少年の腰が跳ね、溢れんばかりの精を妹紅の中に吐き出す。
男女の交わりとしてはあまりに短い時間だったが、まだ未熟な少年には、それを気にしてる余裕など無かった。
ことが済むと少年は、逃げるように妹紅から離れていった。
またある年は、幻想郷を飢饉が襲った。
作物も果実も何もかもが死に絶え、人々は食べることの出来る物を求め、幻想郷をさまよった。
道には、死体の山が築かれた。
「あれが、妹紅って娘か・・・・」
いささか明るい十六夜の夜、中年期に入ったばかりの男が、死臭の充満する広場にひっそりと入っていく。
そしてゆっくりとした足取りで、妹紅の前に来た。
「・・・・・・」
男は懐から鉈を取り出すと、利き手の右手に握りしめた。
男の骨張った頬に、冷たい汗が流れる。
男は呻いた。
こんなことはしたくない。
自分は人間なのだ、犬畜生にも劣る行為をして良いのか、と。
しかし、男には家族がいた。
空っぽの腹を抱えて毛布にくるまってる、妻と七歳の息子が。
「南無三・・・!」
男は苦痛に満ちた声を出した。
そして妹紅の右手を、むんずと掴み、鉈で一刀の下に切断した。
幸い、男の職業は猟師であった。この手の作業には慣れてる。
次に、今度は左手を掴み、鉈を突き立てる。
今度は角度が悪かったのか、半分くらいのところで止まってしまう。しかし、二三と振り下ろすと、あっさりと二つ別れになった。
これだけあれば、充分だ。
男は思うと、経を唱えながらそそくさとその場を離れた。
妹紅のなくなった筈の両腕は、すでに半分ほど再生し始めていた。
しかし、明るい月夜の出来事は簡単に明るみになってしまう物である。
一人がやれば二人。
二人がやれば三人。
気づけば、妹紅の前には、飢えた亡者たちの行列ができるようになった。
あまりに妹紅の尊厳を無視するその行為を、輝夜を始めとする永遠邸の面々は止めようとしたが、永遠邸は焼き討ちされ、彼女等もどこかへ消えてしまった。
だが、そのお陰で多くの人々が命を救われたのも、また事実だった。
飢饉が過ぎ、また平穏な時代が来ると、いつしか妹紅は神として崇め祀られ始めた。
動かぬ妹紅を中心に荘厳な神社が建てられ、祭壇が作られる。
中では日夜妹紅の解体作業が行われて、そこから作られた肉は、幻想郷中の人々、及び妖怪達の胃袋を満たす。
生きるための労働から解放されたことによって、幻想郷の文明は著しい発展を始めた。
現人神にして食糧の少女は、未だに眠そうに突っ立っていた。
時が経ち、幻想郷に産業革命が起こり始めた。
妹紅を燃料とした永久的エネルギー供給器官の開発に成功したことによって、森羅万象全てのエネルギーが妹紅によって生み出された。
人々はますます、太陽神妹紅を唯一の神として崇めた。
無論、数多の神が、その犠牲となった。
妹紅が眠り続けて、およそ数百年。
幻想郷に、戦いの火蓋が切られた。
人々も妖怪達も、妹紅から作られた近代兵器を用いて、妹紅を我が手に収めんと戦い続けた。
森も、川も、空も、何もかもが灼かれて――――――――
――――――――幻想郷は、核の炎に包まれた。
鉛色の空の下、一人の少女が歩いていた。
枯れた木の枝を杖代わりに歩くその姿は、ある種の美しささえ感じさせる。
しかし、見渡す限り黒ずんだ荒野には、それを見る生存者はいなかった。
「・・・ぁ!」
と、少女―――――仲間ともはぐれてしまった蓬莱人の輝夜は、ひび割れた声帯を小さく震わせた。
「ぁぁぁ・・・!」
その視線の先には、いた。
かつてはただの少女であり。
かつては輝夜の宿敵であり。
かつては輝夜の恋人であり。
かつては現人神であり。
そして、今も眠り続ける少女、藤原妹紅が。
数千年前、まだ幻想郷に生命があった時代から、何も変わらずただ眠そうに突っ立っていた。
輝夜は、呻き以外の何も口から出はしなかった。
ただ、彼女はひどく孤独だった。
「妹紅・・・」
目を覚ましてよ、妹紅・・・・
無力な少女の
無力な、叫び
そして
「・・・・あ、」
「・・・・・やばい、今居眠りしてた、私・・・」
妹紅は目をこすると、辺りを見渡した。
「・・・あれ?ここどこだ・・?」
返事の代わりに
輝夜は、強く妹紅を抱き締めた。
the period
連れを起こさないでやってくれ、死ぬほど疲れてる。
若輩な身ながらモコモコ王国国王陛下に捧げさせていただきます(ありがた迷惑)
コメ返信
>>先任曹長様
めでたし・・?
>>4様
圧倒的っ・・居眠りっ・・・!
>>5様
コメ返信するのは最後にしてやると言ったな
あれは嘘だ
>>国王陛下
コーズーミーック オン
>>ギョウヘルインニ様
ツバメを入れなかったのが悔やまれる・・
box
作品情報
作品集:
4
投稿日時:
2012/06/24 14:08:55
更新日時:
2012/06/27 19:58:21
評価:
7/10
POINT:
780
Rate:
14.64
分類
忙しい人のための妹紅
愛は永遠。
国王陛下は寝ている間に、広大な領地を手に入れたのでありました。
めでたしめでたし。
面白い奴だ起こすのは最後にしてやろう。
この沸き上がる良くわからねー力があれば輝夜をコズミック的な力で永久に闇に葬り去れる気がしてきたモコ。
まぁ、周りの景色がクトゥルーの無名都市みたいな鳥取砂丘チックになってるのがちょっと気になるモコが……
眠り姫の主役はそれを取り囲む人たちなんや
つい最近似た眠り姫を読みましたがその人は目を覚まさないまま話が終わってしまったが
サクッと読める文章かと思ったら別にそんなことはなかったぜ!!