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『さいせい ちれいでん』 作者: 雨宮 霜
この作品は、前作「たいはい ちれいでん」の続編となっております。読まなくても平気かと思われますが、このお話を読む前に目を通しておくことをお勧めします。
面倒な人の為の簡単なあらすじ「マゾヒストのさとり様がケーブルを切って気持ちよくなった結果、一時的に無意識妖怪になりました。」
それでは、ごゆるりと。
最近、さとり様がおかしい。
あたいが後ろから近寄っても気付かないし、会話が以前と比べてずれているように感じる。
他のペット達には顕著みたいで、猫の話を聞くとどうも考えを読み取ってもらえないらしい。
そして本人の外面的なところだと、あたいやお空と話す時、不自然に明るいというか、無理をしているというか、本当は怯えているのを強引に隠しているというか、とにかくそんな感じがするのだ。
そしてそう言える一番の根拠であり原因だと思われるものは、さとり様の第三の目だ。
どこがおかしいんだ?と訊かれたら、あんたの目は腐り果ててるよと言い返したくなるくらいおかしい。
だって目に繋がる管のほとんどは切れて垂れ下がっているし、目の本体はかろうじて二本に支えられてさとり様の体となっている。
その目でさえ、ぐじぐじと充血して、すごく痛々しい様子で白い部分を見ることができない。誰がどう見ても異常だと思うだろう。
でも問題なのは、さとり様がそれを気にする素振りを全く見せないことだ。
何事もないかのように振る舞われてしまうと、どう反応していいかわからないし、この気持ちを読みとってもらえていないのだから非常に困る。
「どうしたものかねぇ……」
はぁ、と溜息をついて、座っていた椅子を背もたれごとぐいと倒す。
ちょうど後ろの二本の脚だけで立っている状態だ。
「ねぇ、あんたはどうしたらいいと思う?」
「お姉ちゃんなら、ほっとけばそのうち治ってるよ」
「わひゃぁあ!?」
どんがらがっしゃん!とでも擬音をつけて、あたいは椅子ごと転げ倒れた。
だって、喋れない怨霊に話しかけたつもりが、どうして、
「ここここいし様ぁ!?いつからここに!」
「つい今さっきだよ。お姉ちゃんの名前が聞こえたから、なんとなく来ただけ」
「心臓に悪いですよぉ……」
右肘を盛大に打った痛みに顔をしかめて、虚空に突然現れたこいし様を見上げる。
器用にもあたいがひっくり返ることを読んでいたかのように、あたいの頭ギリギリのところに立っていた。
勢いをつけて跳ねあがり、振り向く。平時より少し視線を下げると、変わらぬ無表情のこいし様がいた。
……実はちょっと苦手なんだよね、この人。
さとり様が大切にしているだけあって悪い人じゃないんだけれど、なんというか会話がしづらい。
心を閉ざしているからというのは分かるのだけれど、それだけではない理由を感じる。
わざと、たまに会話の軸をずらすというか。
あたいの憶測に過ぎないけれど、そんなことをしている気がするのだ。
「それで、お姉ちゃんがどうかしたの?」
「いえ、あの、それがですね……」
こいし様はきっと、さとり様のことを一番よく知っている人。
ならば、数日前から続いているこの異常についても、何か知っているはず。
でもまた何事もないかのように言われたら、あたいはどうしていいか分からなくなってしまう。
「さとり様、最近おかしくないですか?……へ?」
「うん、どんなふうに?」
あたいの口から勝手に、無意識に言葉が流れ出た。……ああ、操られたのか。あたいの無意識。
基本的にお二人は似ているんだけれども、こういう強引なところはこいし様特有だと、思う。
どうせ考えてることは強制的に筒抜けにされるのか、なら観念して話してしまおう。
そう思ったので、あたいは洗いざらい喋ってしまうことにした。
「今のさとり様、どこか変だと思いませんか?第三の目に繋がってるコードはほとんど切れてるし、なんだか不自然に明るいし、ペット達の心も読めないみたいで少し怖いですし。何があったのか、知っていませんか?おかしいですよ絶対」
「んー……」
矢継ぎ早にまくしたてたあたいから視線を外して、唇に指を当ててぽーっとするこいし様。
いや考えているんだろうけど、何も考えていないようにしか見えないから仕方ない。
ほんのちょっとして底の色の見えない瞳であたいを見つめると、
「そっか、お燐にはそんな風に見えるんだ。わたしは変ってほどじゃないと思うんだけどなぁ……。それで、何だっけ。サードアイだっけ?」
あたいが口を開く前に、教えてあげる、と笑顔で告げられた。
……どうやら、返答は求められていないようだ。
そのまま机に腰掛けて、ピントのずれた方向にこいし様は語りかける。
「まず説明の前に、お姉ちゃんの好きなことって知ってる?答えは痛いこと。お姉ちゃんは痛くされて気持ちよくなっちゃうヘンタイさんで、いっつも自分の手首を切ってたの。ここまではいい?それでちょっと前のことなんだけどね、お姉ちゃんとしたときに気持ちよくさせえてあげたくて、思い切りやっちゃったの。それで悦んでくれたのはいいけど、心読めなくなっちゃったみたい。代わりに無意識は見れるんだけどね。わかった?」
「ちょっと待ってください!」
質問しているように聞こえて、実際はこちらの話を聞く気がまるでない様子のこいし様。
強引に遮って整理をつける。
つまり、やっぱりさとり様は心が読めなくなっていて、それはこいし様が情事の時にケーブルを切ったからで、
「要はこいし様が原因ですか。というかなにやってんですか……」
「し、仕方ないじゃない!わたしも盛られてたし感じてるときのお姉ちゃん可愛いかったんだから!」
色々とない交ぜになった感情がもろに顔に出てしまい、結果半眼で半ば睨む形になってしまった。
こうまで心を見せれば解るのか、こいし様はばつの悪そうに首ごとそっぽを向いて言った。
「だいたいお姉ちゃんがいけないんだよ。切られて痛くされて感じるヘンタイさんなんだから。わたしはお姉ちゃんの喜ぶことをしただけで、その結果たまたま一時的に無意識しか読めなくなっちゃっただけなんだから」
そのたまたまで多数のペット達が困ってるんですけどね。
しかし悲しいかな、さとり様の妹溺愛っぷりは尋常ではないので、一介のペットにはどうしようもない。主人の性嗜好までとやかくは言えないし。
結果はぁ、とため息をつくだけしかできず、あたいは言った。
「さとり様に度を過ぎた快楽は時に毒にもなりますよ、と伝えてくれませんか……」
「……いいけど」
それだけ返事をすると、くるり反転して扉の方へ。それ以上話しかける間もなく、あっけなく部屋から出て行ってしまった。
……いったい何がしたかったんだろう、彼女は。
少し考えてみたが、やっぱりいつもの無意識行動にしか思えなかった。
ふぅ、と一息ついて、ぐっと伸びをする。
「あ、そうだお燐!」
「はいぃっ!?」
気が緩んだ最中だったので、普通に扉から入ってこられただけなのにまた驚かされてしまった。少し情けない。
見開いたままのあたいの目を射抜くように見つめて、
「訊き忘れてた。あなたにとってお姉ちゃんって、何?」
「え……」
突拍子もない質問。感情の読めない、でもどこか一所懸命だということは判るこいし様。
何故なのか、分からないけれど。今まで見た中で一番冷たくて、でも一番近く感じた。
隠しているようででも必死さが滲み出ていて、外見相応の女の子のようで。今は、普通の応対ができると思った。
「……さとり様は、あたいの大切な主人様です。その他の何者でもありません」
だから、あたいなりに真剣に慎重に、言葉を選んで伝えた。これが、あたいの素直な気持ち。
こいし様は表情を隠してそう、とだけ呟いて、そして焦点が虚空にある笑い顔に戻って、言い放った。
「残念だったね。お燐の答えがそれでよかったよ」
その後ろ手に見えた物は。銀色に鋭く輝く、赤黒い斑点のついた、ナイフ。
「もっと変わったことを言ってくれたら、お燐をお姉ちゃん以上に気持ちよくさせてあげたのに。飛んじゃうくらいに、」
−−こわれちゃうくらいに。あたいに背を向けながら動いた口は、確かにそう言っていた。
「お姉ちゃんは、わたしのお姉ちゃんなんだからね」
ばたん。軽いのに、やけに響く音を立てて、扉が閉じる。足音に残った銀色の軌跡は、しばらく眼にこびりついていた。
「……はぁーっ……」
ベッドに座り込んで、詰まった息を深く吐き出す。動かなくなっていた部屋の空気が、どっと弛緩したように感じて。そのままぼすりと体を倒す。
……前言撤回。やっぱりこいし様は、苦手だ。
なんとなく、ふよふよと浮かんでいる怨霊に爪を立ててやった。
−−今日の夜、一人で部屋に来てください。
夕食と旧地獄の怨霊管理から戻ってきたあたいに、そっとさとり様は耳打ちした。それが、数時間前の出来事。
さとり様は時折、あたいをこうやって呼ぶことがある。何のためかは、まぁ……早い話が、夜伽を命じるのだ。
本人の前で言ったり思ったりできないが、さとり様はかなりの寂しがり屋で、それを快楽で発散させようとしているフシがある。
それにあたいだけならともかくお空も、さらには実の妹のこいし様にまで手を出すという節操のなさ。
浮気癖とはまた違うのだろうが、これが良い事のはずがない。どうにかして、あげたいのだけれど。
主人の駄目なところは置いておいて。あたいは地霊殿の一番奥のさとり様の部屋に向かっている。
また発情期ではないのだけれど、今まで結構な回数呼び出されているので癖がついてしまっているのか、あたいの身体はもう火照ってしまっていた。
両腕で身体を抱きながら、前にふらつき気味に進む。正直もう辛抱たまらない……あたいはいつからこんなふしだらになってしまったのだろう「ふっ」「ひにゃあっ!?」
突然耳(人間のほう)に息を吹きかけられて、たまらずぺたん、と地面に座り込んでしまう。
無駄に昂ぶった身体には、それすらも強い刺激になってしまっていた。
じとり、半眼涙目であたいに狼藉をはたらいた相手を見据える。そこには、褐色瓶を持ったニコニコ笑顔のこいし様。
「何するんですかぁ……」
「悪戯ー」
悪びれもなく言って差し伸べられた手を取り、立ち上がる。
うきうき笑顔のこいし様は、珍しくあたいの態勢が整ってから話し始めた。
「お燐、今日は『お呼ばれ』なんでしょ?もう終わっちゃった?」
「いえ、まだですけど」
「よかった!わたしも一緒に行くよ!」
思わずはい?と問い返してしまった。何故、ペットに命じた仕事に妹様がつき合うのだろうか。……行くよ!じゃなくて行っていい?じゃないのかなどとは突っ込まない。だってこいし様だもの。
「だってえっちな事するんでしょ?面白いものもらったからお姉ちゃんと試したいの」
そう言って、手の中の小瓶をからからと振る。ラベルには「霧雨魔法店」と手書きで書き殴ってあった。
あの魔法使いか。こいし様に妙なことを吹き込んで。
頭の片隅に今度会ったら問いただしておこうと留めておいて、あたいはやんわりと止めることにした。……何を言っても無駄な気はするけれど。
「でもいいんですか?その、さとり様が」
「大丈夫!お姉ちゃんがわたしを邪険にするはずないから!」
……あたいが気にするんですが。やっぱり無駄でしたか。
しかし心を閉ざしたこいし様に内心を察しろというのは無理な話なので、黙っておくことにした。
「ほら行こう、お姉ちゃんも喜んでくれるから!」
「……はぁい」
飛び跳ねそうなこいし様に手を引かれて、またふらふらと歩き出す。
……正直、こいし様は無意識で話が通じないんじゃなくて、ただ強引なだけな気がしてきた。
こんこん。
「入って」
二度のノックに返ってくるさとり様の返事。あたいの部屋のものよりも少し重い木のドアを、ゆっくりと押し開ける。
「失礼、します……」
「こんばんは、お姉ちゃん」
ベッドに座った、寝間着姿のさとり様。相変わらず、その三つめの瞳はじくじくと腫れて閉じられたまま。その姿は、いつもよりちいさく見えた。
「こいし?どうして……そう。分かったわ。でも、今はお燐と話をさせてくれないかしら」
「むー。仕方ないなぁ。お姉ちゃんが言うならしばらく出てるよ」
目を瞑ったまま、具体的な理由を何も聞かずにさとり様は話を進める。そういえば、今読めるのは無意識なんだっけ。
あたいがぽーっとしている間に、じゃあすぐ終わらせてねとこいし様が姿を消す。
片目を開けてぱふぱふ、とさとり様が隣を軽く叩くので、あたいはそっとそこに座った。
「……」
「……」
そして、訪れる沈黙。それは情事の際の心地よい無音ではなく、どちらかと言うと気まずさにお互いが黙った状態。
こんな空気であたいが息を荒げてる訳にはいかないので、気合いで整える。
そっと横を見やると、さとり様は俯いて目を閉じていた。
それから何分、経っただろうか。
「……ねぇ、お燐」
「はい、さとり様」
さとり様は消え入るような、つぶやきほどの声であたいの名をを呼んだ。
目を落とすと、膝の上で両手を握りしめて、きゅっと唇を結んださとり様。そこから恐る恐ると言ってもいいくらいの調子で、言葉が出てくる。
「お燐は、私が怖い?」
あたいが、さとり様を、怖い?そんなことはない。確かに、最近のさとり様はいつもよりおかしいとは思うけれど。
「そんなこと、ないです。心が読めなくても、さとり様はさとり様ですから」
そう、とだけこぼして、こちらを見上げた瞳は、不安そうな色を宿していて。
「……私は、あなたが怖いわ」
「え……」
ぽつり溢れたような言葉に、少し戸惑う。さとり様が変わりこそすれど、あたいは何も変わっていないのに。
「貴女はもう妖獣だから言葉も話せるし、私と同じように考えることができる。だから、真意と違うことを口に出せる」
「そんな!あたいはさとり様に嘘なんてつきません!」
「ええ、知ってるわ。あなたは素直で、優しい子よ。……これは、いつも心を読んでしていた一種の確認だから……癖なのよ。あなたはのことは信頼してるから、深く考えなくていいわ。今のは忘れて」
そうは言われても、ちょっと今の言葉はずきりと来た。……でも、さとり様は臆病だから、仕方ないとも思う。
結局、言うとおり忘れたほうが二人のためだろう。
さとり様は少し力を緩めて、続けた。
「ねぇ、今の私を見て、どう思う?
「……変わり、ましたね」
これでも、一番自分の心と一番近い言葉を選んだ。
「……ええ。そうね。私は変わったわ、こいしのことは読めるようになったけれど、あなた達の心は読めなくなった。……この変化は、受け入れてよかった物なのかしらね」
あたいに、というよりは自分に尋ねるように言うさとり様。
しっかりと、よく考えてまた慎重に言葉を選んで。精一杯心の映像通りに、質問する。
「……さとり様。さとり様の一番大事なものってなんですか?」
「こいしよ」
即答だった。なら、あたいは考え直す必要もなく、ありのままに伝えればいい。
「だったら、いいんじゃないですか?あたいは難しいことはわかりませんけど……大切な人ともっと近くにいられることは、素敵な事だと思います」
「でも……」
「さとり様は昔から、考えすぎなんですよ。……ずっと離れてた妹と、せっかく繋がれたんですから。素直に喜んでも、いいと思います」
労わるように、できるだけ優しく。そっと目を見つめて言うと、さとり様はあたいに軽くもたれかかってきた。
ぽふん、とでもたおれる音がつきそうな、そんな羽のような身体。
あたいの腕の中にすっぽりと収まってしまうくらいの、そんなちいさな主人のからだを、あたいはやさしく抱きしめた。
「……だいじょうぶですよ。あたいはさとり様がどんなふうになっても、ずっとさとり様のペットですから」
「……うん」
あたいの言葉を聞いて、きゅっとそっとさとり様の腕が回されて。
なんだか急にかわいらしく思えて、あたいはくしゃり、髪を撫でた。
あれだけ昂ぶっていた体も何故か今だけはなりを潜めて、やわらかくてあたたかいものが気持ちを満たしている。
少し失礼かもしれないけれど、母性というもいのが分かった気がした。
そのまま事を先に進めるでもなく、なにをするでもなく時間が流れる。しばらくずっとこうしていたいと、そう思え「もう終わった?」
がちゃり、空気を壊すようにこいし様が入ってくる。あたいにしなだれかかっていたさとり様も、がばっと跳ね戻った。
「え、ええこいし。もうお話はおしまい。貴女もいていいわ」
「そ。じゃあこれの出番だね!」
そう言ってバン!と掲げたのは霧雨印の謎の小瓶。正直、嫌な予感しかしない。
「こいし、それはなぁに?」「何ですかそれ」
「うん、地上に行ったときにもらってきたんだけどねー」
子供のようにこいし様の手元をじっと見つめるさとり様と、半眼で若干引き気味のあたい。こいし様は何故かくるっと一回転して、瓶の中身をつまみ上げた。
「じゃーん!魔法生物ロドリゲス一号!」
「……」「……」
二人ともドン引きである。これは決してこいし様にではなく、その取り出したもの(とタイミング)がおかしいのだ。
まず形状。球を細長く引き延ばした棒状の何かに、植物の根のような、一度だけ見たクラゲの触手のような細い紐に似たものが大量についている。
そして色。肌の色を限りなく濃くして、その表面には暗い水色の管らしきものが見える。
でも、先端だけはピンク色。しかもなんかちょっと動いてるし。
素直にに言うと異形の化け物のように気味が悪い。
「あ」
そして掲げたはいいが、ぽろり。その未だうねうねと動く謎の植物だか動物だかわからないものが、あたいとさとり様のいるベッドに落下してくる。なんですかこれ気持ち悪い。
「ひっ!」
近くで思い切り机を叩かれて威圧されたように、声を出して怯えるさとり様。あたいはというと顔がひきつって何も言えない。
そしてあろうことか、そいつは何故かあたいが反応できなかった隙に、とても生理的嫌悪感をもよおす動きで、一瞬でスカートの中に入り込んだ。
「に゛ゃあっ!?」
「あー、わたしが使おうと思ったのに」
のんきに呟いてないでください。しかも使うってどういうことですか!
手で上から押さえつけようにも、太股を這う異様な感触で(こいし様の無意識かもしれないが)妨げられる。数秒して、これがただ逃げ込んだだけではないと気づいた。
ーーこいつ、奥に向かってる!
「ちょっ、やだやだ何なんですかこれ!」
「だからそれは魔理沙からもらった魔法生物で、名前は」
「名前なんてどうでもいいですから何をするものなんですか!あとさりげなく手を掴むの止めてください!止められないじゃないですか!」
「まぁいっか、お燐でも。で、それいわゆる生やす奴なんだけど」
「ちょ、こいし様ぁっ!?いったいなんでそんなものを……っあ」
馬鹿な問答をしている間に、もう最深部まで到達されてしまったようで。
その細い触手の一本が、あたいの秘所に沈み込んだ。
「ひぃ……ん、あ……」
ひとつ入れば、残りの無数も次々と。あたいのまだ湿り気が残る中に、侵入して根を張っていく。
そしてそのそれぞれから吸い上げられるような感触がして、先端の楕円形の棒が段々大きくなっていくのが、あたいには手に取るようにわかった。
げんなりと力のない垂れ下がったものから、どくんどくんと脈打ち膨らむように立つそれへ。
根の侵攻と吸い上げが終わった頃には、スカートを押し上げて三角形を作っていた。
「できたね、えいっ」
ばさり、こいし様があたいのスカートをめくる。するとそこには、さっきの謎生物を一回りも二回りも大きくした、とどのつまり男性器がそこにあった。
「うわあ……」
「そうね、お燐は猫だものね」
ただ一つ人間や普通の妖怪と違うのは、それに猫特有の多数の棘がついていたこと。
自分で言うのもなんだが、グロテスクを通り越してもはや凶器である。
くっついた、生えたと同時に何か媚薬のようなものでも分泌されるのか。
あたいの心臓の鼓動は速く、体がムードなど関係なしに火照ってしまってきた。
パンパンに張りつめたそれに触って、解放したい欲求が湧き出てくるけれど。こんなもの握ったら手が血まみれになるだろう。
「こいし様ぁ……」
「さすがにコレ舐めたり咥えたり入れたりできないよ。お姉ちゃんパス」
「え、私?」
肩を掴まれて、強引に体制を変えさせられる。思いの外力が強くて、よろめいた結果猫本来のような四つん這いでさとり様に向くことになってしまった。
「え、お燐、まさかそれ入れるの?そんな無理よ死んじゃう」
「平気平気。お姉ちゃんは痛くされて感じるヘンタイさんなんでしょ?」
「でもむりぃ!こんなのできないわよぉ!」
何でだろう。涙目でいやいやと可愛らしく首を振って懇願するさとり様を見ると、すごく……ドキドキ、いやぞくぞくする。
「……正直もう我慢できません。襲われたくないなら、早く逃げてください」
言うと同時に、さとり様の両頬をホールド、こちらに顔をセット。
「ちょ、ちょっとお燐?あなたもしかしてやっぱりそういうつもりで来てたの?」
「あんな言われ方したらそう思いますよ。さとり様がたくさん呼び出すせいで、こんな身体になっちゃったんですよ?」
「あ、その、ちょっと待ってまだ心の準備が」
あわあわとした様子ではあるけど、吐息のかかる距離まで近づいても、あたいを突き飛ばして逃げたりする様子はない。
……嫌がらなさそうだし、いいか。
「それじゃあ失礼します」
「〜〜〜〜〜っ!?」
囁いて、そっと唇を触れ合わせて。閉じきらないうちに、舌をねじ込んだ。
驚きに目を見開いてもがくのを、口の上をなで上げて止める。続けてやると、さとり様は面白いようにちいさく跳ねてくれる。
あたいはもう数えるのが面倒なくらいにはさとり様と体を重ねているので、どこをどうすれば喜んでくれるかは把握している。
焦らすのも攻めたてるのも、思いのまま。
「ふぁ、あむぅ、れる、じゅ……」
そのままちょっと続けるだけで、すぐに甘ったるい声が漏れ出してくる。
あたいのざらざらとした猫舌は、強めが好きなさとり様にはおあつらえ向きなんだろうか。
歯を磨くように、丁寧に。こそぎ落とすように、強く。緩急をつけて一本ずつ撫でる。
片目を開けてみると、すでにとろけた目のさとり様。その懇願しているような、媚びているような、そんな少女のあやうい瞳に。あたいの中の獣欲がさらに焚きつけられて。
外をなぞっていた舌を、一気に奥へとさし入れる。
拍子に唾液が口の端から零れるのを感じながら、縮こまっていた舌を絡めとると、さとり様はおずおずと応じてくれた。
一歩踏み込めばお互い歯をぶつけてしまいそうな蹂躙に、さとり様は情熱的に応える。
ただ燃えているのは、あたいがつけたのは愛情の火ではなく、欲望の炎だろう。
溢れるほどに溜まっていた唾液を、吸って、送って、交換して。
自分と混ざりあった相手のものが喉を通るたび、それが燃料となって体の芯を燃やすような錯覚を感じた。
「んぐ、ちゅ、む……ふ、ぷぁっ!」
息がもう苦しくなったのか、案外強い力であたいの顔が引き離される。
なんとかあたいから逃れたさとり様だったが、結局哀れ後ろに居たこいし様に捕まってしまった。抜け目の無い人だ。
「ほぉらきっとすごく気持ちよくなれるよ?もう下ぐしゅぐしゅだし、お燐もトんじゃってるし、諦めなって」
スカートを下着ごとずり下ろされ、やだやだぁ!と子供のように堅く体を丸め涙を浮かべわめくさとり様。
実際のところあたいの正気はまだ(たぶん、ぎりぎり)飛んではいないのだが、目の前の液体を溢れさせるそこから目が離せなかったり、無意識にじりじりと進むのを止められなかったりともう理性には限界が来ている。
「さとり様……あたい、もう……」
「ひっ」
押し倒すかのように肩に手を乗せると、また詰まった息が飛び出してきて。ぞくりと駄目な類の感情が沸き上がる。
劣情に任せて、さとり様の脚を押し開く。
むあっとした熱気が、あたいについたソレにまとわりついた気がした。
「あ……」
くちゅり。ほんのわずかな音を立てて、先端がさとり様の大切なところに触れる。
一気にしてしまおうかというところで、残っている理性が総動員されすんでのところで止まった。同時に、あたいの頭がちょっとだけ冷える。
だって今更な気がするけれども、棘だらけな上に大きさが大きさなので物理的に辛いんじゃないかこれは。経験からすると指二本でもだいぶキツかったし。
時間としてはかなり短いが、あたいが欲望との歯車に巻き込まれていると。
「お燐、あなたが何考えてるかは分からないけど。お姉ちゃんは辛そうだよ?痛いのは大歓迎だけど、焦らされるのは嫌いだもん」
「え……」
下に落としていた目線を戻すと、さっきとは別の意味で涙を流しながら、ぼやけた瞳で懇願するように見つめるさとり様の姿。
ついさっきまで嫌がってた、はずじゃ。
「ほらね。ニンゲンじゃないんだから、それ突っ込むくらい平気だから。お姉ちゃんをいじめないでよ。私の番も回ってこないし」
むすっとした口調を耳元で囁かれる。じっと見据えると、言われたとおりその表情は苦痛をこらえるようにも見えた。
でも、なぁ。やっぱりおもいっきり傷つけることになるんだからペットとしてはーー
とん。
「へ?」
後ろから押されたと気付くのに数瞬かかった。そして引き起こされるだろう事は起こってから気付いた。
ずぷっ。
「いぃっーーー」
その声は、どちらのものかあるいは両方か。
上体が倒れ込んだ反動で、しっかりと準備されていたその性器が、さとり様の中に入り込んだ。
先端さえ埋もれてしまえば、行きの障害は残っていない。針に通った糸のように、たやすく奥まで貫いた。
「かっ、は」
一撃で奥を叩かれて、さとり様の口から空息が飛び出す。
あたいはというと、ただ入れただけなのにすでに腰砕けになりそうだった。
気持ちいい。どろどろにとろけた主人のそこは、あたいのものを熱で包み込むように、粘膜で撫であげるように受け入れて。初めて敏感な部位で経験した膣内には。
ひとたまりも、なかった。
「う、うぁ、あぁぁっーーー!」
急速に何かが昇ってくる感覚とともに、体の芯が溶けだしたようなものが先端から放たれる。
背中にぶるぶると心地よい寒気が走り、腰ががくがくと震えて止まらない。
女性の絶頂とは違う圧倒的な解放感を伴う射精に、あたいはただ真っ白になって声をあげ続けるしかなかった。
びゅく、どくんと粘性の強い液体が鈴口を通過する度、吸い取られるような快楽があたいを襲う。
それを精一杯享受しようと、無意識に腰を掴んでいちばん深くまで押しつけていた。
実際には一分に満たなくても、どれほど長く感じられただろうか。
欲望の放出が終わって、一息ふぅとついて。
「早漏」「はやいわよぉ……」
二人から浴びせられた言葉で一気に夢見心地から引き戻された。
「そ、そんなぁ!」
「動いてもいないのにイっちゃうなんて思わなかったよ。お燐の堪え性無し」
「だって、こんな気持ちいいなんてあたい知らなかったんですよぉ!」
「……」
ああ。さとり様があたいを見ている。
こいし様の罵りは別にどうってことないんだけれど、その恨めしげな飼い主の視線がものすごく痛い。心に。
「ほらお姉さまはご不満ですよー?手伝ってあげるからもっと頑張る」
「はへ?」
いつの間にか取り出していたナイフで、あたいの服が正面から下着ごと真っ二つ。反応する間もない早さで剥ぎ取られた。
「や、こいし様……ひぁあっ!」
思わず大きな声を出してしまったのは、こいし様があたいの胸をくわえてきたから。
予想もしなかった場所への刺激に、体とさとり様に突き刺さっているそれがびくんと反応する。
「んは、あ……ぅん……」
付け根を舐め回され、先端を吸い上げられる。甘い痺れが伝わるたび、あたいの棘が硬さを取り戻していく。
こいし様が、あたいの胸を口に含んでいる。
それが何故か、目の前の、秘所をさらけ出しているさとり様よりも、すごく……ドキドキする。
「こいし、さま……っあん!どうして……?」
「わたしはお姉ちゃんに気持ちよくなってほしいの。このままあなたが抜いちゃったら可哀想だから、特に他意は無いよ」
なんでか知らないけど、聞いて少ししゅんと尻尾が下がった。でも逆に、下の方は完全に硬さを取り戻していた。
自覚した途端にさっきの熱さが伝わって、もう我慢でっきなくなってしまった。我ながら単純だとは思う。
「……さとり様。動いても、いいですか?」
こくり。顔を真っ赤にして、荒い呼吸をしながらさとり様は頷いた。
その返事で、かけておいたストッパーが吹き飛ぶ。
棘が刺さるだとか、すぐに動くと敏感でつらいとか。
そんなことも全部気にせず、抜ける直前まで一気に引き抜いた。
「い、いぎあぁあああっ!」
瞬間、体を伝わる暴力めいた電撃と悲鳴混じりの喘ぎ声、でも快感に焼け付いた頭ではそれを理解することはかなわない。
狂ったように抜き挿しして、腰を打ちつけるだけ。
「ひぐ、あぎぃっ!あっあっぁっあ゛ぁぁっ!」
「はっ、あ、うぅぅぅ……!」
あたいが最深部を突き、抉り出すように引き抜くごとに、さとり様はふるえ、わななく。
そのたびに中がきゅうきゅうと締め付けて、あたいへの刺激を強める。
声にならない、まさに獣のような叫び。目の前で主人がそんなものを、獣のあたい相手にあげている。
その事実が、あたいを加速させる。
摩擦が生み出す、女性では経験することのないだろう快楽。それの虜になったまま、ただひたすら貪り続ける。
「ぎぃう、あぐ、はぁぁう゛ぅぅぅうっ!」
さとり様の収縮を受ける度に、刻々とあたいの耐力は減っていく。気持ちいい、ずっと味わいたい、けれど強く感じようとすれば、それだけ残された時間が短くなる。
もう射精感は目前、おそらく十秒ともたないだろう。
それを悟って、テンポを速く、より大きいストロークで打ち込んで。
十秒どころか、もう道を通り抜けていく、白い奔流。
びゅくっ!どびゅ、どぷっ!
「はぁあっあっあ、あーーーーーーー!!」
なんとか最奥に楔を打ち込んだ刹那、凄まじい勢いで粘液が放たれる。さとり様の子宮めがけて、爆発するように。
ぐっと腰を押しつけて、暴れる感触に身を任せて。
先ほどより量は少ないものの、変わらない快楽を精一杯受け止める。
膣内でものが跳ねる度に、歓迎するように、あるいは拘束するように締め付けるさとり様。
追加された刺激に責め立てられ、あたいはどうにかなってしまいそうだった。
でも、それも終わる。
「ぁっ、ぁーーーーー、っはぁ、はぁ、はぁっ」
「うぐ……っづ」
二度目の射精を終えても、今度のこれはまだ硬いままだった。尽きない欲望を表しているようで、熱い顔が赤くなる。
それでも心臓がまだ早鐘を打っているので、深く呼吸をして息を整えた。
さとり様のねっとりとした、不満を帯びていてなお誘うような視線はまとわりついたまま。
あたいはそれに応えるべく大きく息を吸い、再び腰を引こうと、
「ちょっと待って、お燐」
「な、なんです、か?」
聞こえて横を向くと。ほんのりと紅潮した頬で、下着を脱いでいるこいし様。
「え、ちょっとこいし様何してるんですか!?」
「だって、あなたたちの見てたらわたしもしたくなっちゃったんだもん……」
そう言って、湿ったパンツを放ってベッドに上がってきて。
目の前で四つん這いになって、さとり様の顔を跨ぐように体を起こした。ちょうど、さとり様の顔に座っているような感じ。
「ねぇ、お姉ちゃん。わたし、見てるだけでこんなになっちゃったんだ。ひとりぼっちは寂しいし、舐めてくれない?」
手を少し前について、腰を落として。秘部を口に密着させるように。
幼い少女は、本来持ち合わせていないはずの淫靡さを醸し出していた。
「ふぁ、あぁっ……!いいよ、お姉ちゃん!
さとり様の舌が差し出され、与えられる快楽にこいし様が悦びの声をあげる。疚しい気持ちを抜きにしても、とても、可愛らしい。
あたいが吸い込まれるように見ていると、緩んだ目のこいし様は切れ切れに伝えた。
「どうしたの、ぁん!はやく、おねえ、ちゃんを、気持ちよくさせてあげて……!」
その言葉に促されて、ずるっとものを抜く。棘が刺さる抵抗なんて、もう無いに等しかった。
「ん、あ!はぁん……あぅ、うぅん……!」
相変わらず、動かすのを止められなくなるくらいに気持ちいい。けれど、今は。
あたいが突くと、さとり様が跳ねる。さとり様が跳ねると、こいし様がもっと気持ちよくなってくれる。
さとり様の愛撫を受けるたび、高い声を漏らすその口も。快感をこらえるように、ぶるぶると震えるその細腕も。はだけた洋服のすきまから覗く、その慎ましやかな胸も。溶けて涙を浮かばせる、その宝石のような瞳も。
全てが全て、あたいを惹きつけて。
「んぁあ!はぁん、あ、あぁぁっ!」
弱点に触れられたのだろうか、高く喘いで跳ねた拍子に、目があって。
「あ……」
射抜かれた。あたいの心の奥の、一番深いところ。
頭の中が真っ白に、こいし様でいっぱいになって、何も考えられなくなる。自分の心臓の音だけが、やけに大きく聞こえる。
これって。
「……様……こいし、さまぁっ!」
「は、あんん!い、ぁあ……お、りん?い、ひぃぁあっ!」
ぽーっとした、悦楽に染まった表情で。一度だけ、あたいの名前を呼んでくれて。
たったそれだけのことなのに、たまらなくそれが心地よくて、嬉しくて。
「あはぁ、んあ、ふ、ぁん!う……んあぁ!」
あたいが腰を動かして、こいし様も飛びそうな顔で感じて。
「ぶ、んむうぅぅぅぅぅ!」
ぷしゃっとあたいの下腹部に愛液がかかって、すさまじい強さで締め付けられる。
もうイきそうで我慢の限界でも、まだこいし様がイっていない。こいし様と一緒にイきたいーー!
「ああ!んんぁ!はぁん!ああ、あふぁ、はぁぁっ!」
「うぅ、くぅっ……!」
彼女ももう絶頂が近いみたいで、腕と腰はがくがくと震え、息も短く顔も真っ赤だ。
あたいもラストスパートをかけて、今までよりずっと速く打ち込む。
そしてすぐにこいし様の身体がピンと張って、目と口を堅く噤んで。そっか、もう来ちゃうんだ。
「わたしぃ、もうだめぇっ!んん、んぅっ、あ、ああぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁんんっ!」
「あたいも、飛んじゃいますっ……!あ、うああーーーーー!!」
どびゅっ!びゅくるるるっ!ぶびゅうっ!
全てが抜けていくような膨大な快感に、一瞬で昇りつめる。痺れの波が身体中を駆け巡り、全身を悶えさせて。
こいし様の絶頂の叫びを聞いて、あたいは精を吐き出した続けた。
……この突然芽生えた感情に名前を付けるなら。きっと好きというのが一番合うんじゃないかな。
白濁する意識の中、そんなことを考えていた。
「はぁっ、は、は……」
白く飛んだ空から落ちてきて、入らない力を総動員して腰を引く。
ぬぽっ、と水っぽい音がして、柔らかくなったものが血と精液の混じった液体とともに抜けた。
「ふぅ、きもちよかったぁ……」
こいし様もだいたい同じタイミングで戻ってきたらしく、ぺたんと後ろに手をつく。
あたいも同じようにしたら、手が空を切ってベッドから落ちた。痛い。
ふぅーっと大きく息をついて、余韻に浸りながらこいし様を見上げる。なんだか知らないけれど、すごく綺麗で、淫らに見えた。
しばらくそのまま、ぽうっとしていると。こいし様があたい付近の空間に焦点を合わせた目でこちらを見下ろしてきた。
あたいを見ているのに、見ていない。その目に感情の色は特に見当たらない。おおむねいつも通りに戻った、のだろうか。
下を見たかと思えば、今度は真横の、ベッドで疲れ果てて意識をやってしまっていたさとり様を見た。
ふとさとり様の千切れたケーブルのうち一本をつまんで、弄ぶ。くるくる指に巻きつけてみたり、弾いてみたり。
……笑顔すら貼り付いていない空虚な無表情なので、怖いかといったらけっこう怖い。
それも飽きたのだろうか、今度はなにやらこくり頷いて、ふわり床に降りてきた。
すごく半端に着崩された服の隙間から覗く肌が、なんとも艶かしい。幼いからだとのギャップが、また劣情をそそる……ってなにを言ってるんだあたいは。
そうしてあたいの横に座ったかと思うと。この人はまた予想だにしなかったことを言い出すのだった。
「ねぇお燐、えっちしない?」
「はいしましょ……え?」
反射で返事をしかけたが。何を言ってるんだろう落ち着けあたい。
「だから、えっち。せっくす。性交。あなたのまだ出し足りなさそうなそれをなんとかしてあげるって言ってるの」
「あ……で、でも止めたほうがいいですって。絶対痛いですし、こいし様さっき嫌がってたじゃないですか」
確かにこの収まりの悪い棒は硬さを取り戻してしまったけれど、これをこいし様に入れたらどうなるかは想像に難くない。
というより、先程の行為による血まみれのシーツが全て語っている。
「……気が変わったの。いいじゃない、あなたにデメリットは何も無いんだから」
「えっ、ちょほんとにするんですか……!?」
床に座って、ものをさらけ出しているあたいに、こいし様がずいと降りてくる。
あたいはというと、口では言いつつも眼前の光景に目を奪われたまま。
感情関係無しに高鳴る心臓その他諸々、身体を動かすこともできず。
「あっ……」
くちゅり。そして鋭く刺激が走って、こいし様のしとどに濡れるそこと、触れあう。
まだ毛の一本も生えていない、肌色の一本の線と、あたいの赤黒く脈打つ、釘のようなものが同時に映っているのは、どこかアンバランスに、危うく思えて。
「こいし様、やっぱりやめた方がーー」
言葉を聞かず、あたいの脇から肩へ手を回すようにして力を込める。
その表情は、揺れる銀髪と目を惹く下のもののせいでよく読みとれない。
そして彼女は一度大きく深呼吸をして、口を一文字に結ぶと、
「ふっーーーー!」
「うぁ、ぁああっ!?」
一息で、腰を落としたのだった。
突然のぬめりにまみれた中に、ばちばちと脳内で弾ける音がする。
まとわりつくうねりを突き抜けて、なにかを破る感触とともにーー
ちょっと待った。なにかを破る感触?
疑問がよぎった瞬間、万力でも使ったかのような、すさまじい締め付けが襲いかかった。
これは気持ちいいどうこうではなく、けっこう、いやすごく痛い。つまり、
「こいし様ぁ!」
「あ゛ぅ……うぅ、何よぅ……」
あたいをぎちぎちに圧迫しながら、背中に爪を立てて、ぎゅっと閉じた目から涙を零して。
つながったそこからは、粘性のある透明じゃなくて、鮮赤が流れ出て止まることはない。
「はぁーっ、ぁーっ……」
あたいにしがみついて、涙をぽろぽろとこぼしながら必死で痛みに耐えるその姿は、
「こいし様……やっぱり、」
「いいから、続けて……気持ちよく、なってくれていいから。わたしのことは気にしないでって、言ってるじゃない」
「でも……」
こんな辛そうなの、あたいは見ていられない。気持ちよさより、罪悪感でつぶれてしまいそうだ。
こいし様は懸命に腰を下ろそうとしているのだけれど、がちがちに力が入っていて、ほとんど先に進まない。
これでは、こじ開けるようで負担も大きいだろうし、些細な事だけれど締め付けが強すぎてあたいも痛い。
どうにかして、力を抜いてあげないと。でもいったいどうしたら……
「うぅ、はやくしてよぉ……」
ああ、苦痛の色が濃くなってる!なんとかしてどおうにかして、えっとえっと力抜くには驚かせればいいわけだから、えっとうんと……
そうだ!
「好きです!」
あ、あたい馬鹿だ。
「え、かはっ!」
でも、そんな告白と呼びたくない認めたくない驚かしはこいし様をすかしたようで。すとん、とこいし様が落下した。
「いっ、ぐっ……お、おもしろい、じょうだんねぇ?」
息も絶え絶え、声も切れ切れに、無理に笑うこいし様。
「こ、こいし様、すみません!あたいっ」
「……でも、嫌いじゃないよ、わたし」
けれども、相手がそんな状態なはずなのに、あたいもそんなに盛る気分じゃなくなったはずなのに、どくんどくんとさらにそれへと血液が集まって。
それにつれて、頭が芯の方から段々ぼやけていって。
「あー……心を操るわけじゃないから、無意識だとちょっと時間かかるね……」
「え、それってどういう」
ことですか。続ける前に、こいし様が、そっとあたいの唇に指をあてる。
「……っ、まぁ、なんでもいいから。あなたは何も気にしなくて、ただヤればいいの。全部、わたしの身勝手だから」
あっけらかんとそう言う彼女の、意図が掴めない。
どうして、こいし様はこんな苦痛しか伴わないようなことをしたがるのだろう。
「もう、へたれ。わたしがこうしてるのは目的があるんだから、さっさと犯して精液出す」
「その言い方は……」
ちょっと色んなものが欠けてるんじゃありませんか。とは思っても、目の前にいるのはさとり様じゃないので通じるはずもない。
少しだけとはいえ時間が経ったからか、こいし様の表情も幾分か和らいだように見えてきた。
あくまで見えているだけ、あたいのもう思考がぼやけている頭がそう認識しているだけなのかもしれないけれど。
それにつれてか、ぎちぎちに潰すくらいに締め付けていたこいし様の膣内も段々緩くなってきて。
もともと潤滑液はあったせいか、すぐにでも腰を動かしたい衝動が、あたいの中に生まれてきている。
「ふぅーっ……そろそろ、みたいだね。おりん?」
「えっ、はいっ?」
手振りで、今の座った、いわゆる対面座位の体位のつながりを変えるよう促された。
結果、あたいが覆い被さるような正常位に。でもこの体勢だと、
「背中、痛くありませんか?」
「気にならないから。その程度」
それだけ言って、あたいの両頬に手を添える。キスでもされるのかな、ともう麻痺した脳に浮かんだ。
とりあえずそれは、間違いだったみたいだけれど。
あたいにほんの少しだけ近づいて、ぴたりと止まったこいし様の瞳。吸い寄せられて、熱にうかされたようにとけ始めて。
「ーー暴走した感情は、わたしにどんな色を見せてくれるのかな?」
発せられた言葉を聞いた途端。
急に熱い気持ちが吹き上がって。あたいの頭が、真っ白に弾けた。
ぶつん。
ぶつん。
がくん、高所から落とされたような衝撃を受けた気がして、はっとあたいの意識が戻る。えっと……どうなってた?一体。
身体にあるのは変わらないついてる感覚と、妙に気だるい腰のあたり。
見えるのはまっくら、目が閉じている。そして聞こえるのは、
「ひぐっ……えっく、うぇっ……」
怯えたような、女の子の泣き声。え、なき、ごえ?
「こいし様っ!?」
悠長にぼーっとするなどしていてはならない、何がどうなってるあたいは何をしたんだ!?
明けた視界に映っているのは、外見相応の子供のように泣きじゃくっているこいし様。
はだけている服は相変わらずで、その秘所からは多量の血液と混じった白濁液が流れ出ている。
さぁっと血の気が引いた。
「こ、こいし様!あたいっ、その、ごめんなさっ」
「ひっく……ちがう、ちがうの……」
あたいの半パニックの謝罪に、すすり泣きながら首を横に振るけれど。どう考えてもあたいが暴走してしまったとしか思えない。
あぁもうあたいはこいし様を傷つけて、どうしてこう出来の悪いペットなんだ――!
「ちがうの、お燐は、できのわるいペットなんかじゃ、えっく、ないもん……」
……え?
何か一瞬、強烈な違和感を感じた、気がする。目の前にいるのが、さとり様のような。
あたいが一瞬固まった間に、こいし様はすすり上げるのを止めてぐじぐじと袖で目を擦り始めた。
ぐしぐし。ぐしぐし。ごしごし。涙を拭うというよりかは顔を擦るになってきた。
ごしごし。声をかけようとしても、無心で拭き続けるのを見るとためらってしまう。
無理しなくても、絶対だいじょうぶじゃないよ。
「……へーきへーき、私は大丈夫だから」
あたいが情けない表情で固まっているのを横目に、すっと腕が下りる。
するとそこには、いつものつかみ所のない笑顔が戻っていた。張り付いていた。……目は赤いままだけれど。
「やー、ごめんねお燐。私の勝手でこんなことさせちゃって」
「そ、そんなことないです!あたいの歯止めが利かなかったせいでこいし様をこんな目に遭わせてしまって……」
「……いやまぁそうなんだけど。わざと原因作ったのは私だからね」
「……へ?」
今、何と。よくわからないことが聞こえた気がする。
「ん、わかんないって顔してるね。つまりね、あなたの無意識をちょっといじって、我を失うように仕向けたの。心をいじる訳じゃないから即効性は無いんだけど、ね。だからあなたが気にする必要は無いよ」
「そんなこと言われましても……」
あたいが酷いことをした事実は変わらないわけで。いくら妖怪だと言っても、痛いものは痛いだろう。
そこまで浮かんで、不可解な点が生まれた。
「こいし様」
「なぁに?」
「どうして、こんなことしたんですか?」
「無意識」
ばっさりいつも通りだった。もう少し、考えて行動してほしい、ものだけれど。
「だけとは言い切れないねー」
「……そうですか」
かと思ったら、今回は違うらしい。汗や血やその他の液体を吸ってぐしょぐしょのシャツを脱ぎ捨てながら、こいし様は続ける。
「わたしはお姉ちゃんみたいなヘンタイさんじゃないからさ。痛いのは嫌なんだけど、なんでかあなたのそれを受け入れなきゃいけない気がしたんだ」
「それで、こいし様はこんな無茶を……ってそれ要するになんとなく無意識にってことじゃないですか」
「んー、ちょっと違うんだよね。いつもは目的が無いのに何かする感じだったんだけど、今回は判ってない目的のためにしてた、ような……って、何してるの?」
「……薬を見てるんです。……これ、即効性の痛み止めです。さとり様が昔使っていたものですから、効くと思います」
こいし様の言葉を聞きながら片手間に見つけたものを、水と一緒に手渡す。いつもと同じ笑顔に見えても、やっぱり痛みは隠し切れていなかったから。
あたいにも非があるし、これくらいはしないといけない。
彼女が飲み終わるのを待ってから、言う。
「それで、その目的は何だったんですか?」
「んふふー、聞いて驚け」
もう薬効が回ったのか、すっくと立ち上がりあたいに人差し指を向けた。
その拍子に股からピンク色の液体が零れ、ちくりあたいの胸が痛む。
そして自らのサードアイを持って、一言。
「お姉ちゃんみたいに心が読めるようになりました!」
「……目、閉じてますけど?」
ぴしっ。見事に石化魔法が決まったようだ。
しかしこいし様は大ボス属性だからか状態異常が効きづらいらしい。すぐに戻って叫んだ。
「そんなバカな!」
「あの……」
なんとなく、言葉でつっこむのもいたたまれなくなったので、手鏡を取り出して向ける。
こいし様の目には、ぴっちり閉じたいつも通りの瞳が映っているだろう。
その通りだったのか、ぺたんとまた座り込んでしまった。そして軽く俯いて、何か言い始める。
「うぅ……だったらこんな痛いことした意味ないよ……ぜったい戻ったと思ったのに……というかさっきまで開いてたのに」
「……その、すみません」
そう言われるとこちらに立つ瀬が(もともと無いけど)なくなる。どうしても、さっきの泣き顔が脳裏から離れないから。
しかしこいし様は、第三の目を開けるためにやっていたのか。……最近閉じたさとり様とは正反対だ。
「ううん、ちがうの。だからお燐は悪くないって。さっきの事なら……ちょっと、びっくりしちゃっただけだから。ずっと閉じてたのに、いきなりあんなに熱いのもらったら、火傷しちゃうよ」
「あついの……って」
「わたしは気持ちをいじったんじゃなくて、ちょっとだけ気持ちの枷を外しただけだから。あのお燐がいった時の気持ちは、元々わたしに抱いてくれてたものじゃないのかな?」
あたいの熱い、羽目を外された、あの時心の底にあった、こいし様に抱いていた気持ち。そう並べて、ようやく合点がいった。
えっと、つまり。あたいのあの発言は『面白い冗談』ではなく、苦し紛れの本気の言葉だと、理解されてしまったわけだ。
つまり、あたいのこいし様に抱き始めた恋慕を、読まれてしまった、わけ、だ……
「ーーーーーーーっ!」
「んー、どうしたの、お燐?」
今まで頭の中にあったことが全部吹き飛んで、顔が沸騰して真っ赤になる。
言いようのない羞恥とパニックに襲われて、顔を手で覆って目を背けるのでせいいっぱい。
「だからどうしたの、お り ん?」
あたいの顔をのぞき込むように、いつもより明るい声音で尋ねるこいし様。
あぁ、きっと分かって言ってるよこの人。
「わたしの瞳、あなたがせっかくあつい気持ちでこじあけてくれた心も閉じちゃったみたいだからさー。自分の言葉で口に出してくれないとわかんないなー。お燐はどうしてそんなに縮こまって恥ずかしそうにしてるのかなーって」
やっぱり絶対わかって言ってるよこの人!
自分でさえ急に生まれてまだ整理ついてないのに、それを一度全部見透かしたはずなのに訊いて、いや言わせようとしてる!
「ねぇお燐。わたし、あなたの気持ちをちゃんと知りたいなぁ」
あたいの前にしゃがみ込んで、顔を塞ぐ手をそっとどかそうとされる。
「おりん、教えてよー。あなたがわたしをどう思ってるのk」「もう、知りません!」
あたいはもうたまらず耐えきれなくなって、手を振り払ってドアを開け放って、外へ走り出した。
やっぱり、こいし様は苦手だ。
……でも、あたいの中の熱い気持ちは、変わらなかった。
「……あーあ、逃げられちゃった」
「でも、なんでだろーな。あの子の目を見てると、ついからかいたくなっちゃう」
「……まぁいっか。無意識無意識」
「でも、目開かなかったなぁ。やっぱりこれ以上、お姉ちゃんが自分を傷つけるのは見たくないよ」
「わたしが覚に戻れば、お姉ちゃんはちゃんと、昔みたいに戻るんだよね……?」
お久しぶりです、雨宮です。初めての方ははじめまして。
前回は堕ちていくさとり様、今回はちょっとずつ回復していくこいしちゃんを書いてみた、はずです。快感に素直は両方についてますけど、セックス中毒がついてるのはさとり様の方みたいですね。でも体力あんまないから気を抜くと死んじゃう。
今回語り手になってもらったお燐ですが……へたれな女の子、可愛いと思います。これがさとり様だったら殴りたくなるんですけどねふしぎ。
グロと言うよりエロ多めなお話ですが、楽しんでもらえたならこれ幸いです。
エログロゲロならゲロ書きたい
雨宮 霜
作品情報
作品集:
4
投稿日時:
2012/08/31 11:47:48
更新日時:
2012/08/31 20:47:48
評価:
3/3
POINT:
300
Rate:
16.25
分類
お燐
こいし
さとり
「猫のペニスには棘がついてるんだZE☆」
意味の有る無いは関係なく、ただ、姉妹愛、主従愛が、そこにありました。
しかし……、猫ペニスファックはあまり見かけませんね〜。以前書いた事はありますが、やっぱり人様のSSのほうが何倍も抜けます。