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『裏ほのぼの』 作者: ギョウヘルインニ
今日もまた”ほのぼの”魔理沙は、”優雅”な早苗さんに負けていました。
首根っこを優雅に掴まれて吊るしあげられていたのです。首が絞まってだらしなく唾液をたらしています。
「だから言ったじゃないですか? ほのぼのは所詮ほのぼの優雅に勝てるわけないんですよ」
ほのぼのは戦いの道具ではありません。どんな弾幕も、ほのぼの放てばそれはただのほのぼのなのです。それでも、魔理沙はほのぼのの持つ力を信じているのです。
早苗さんにこうして負けて、無様な醜態を晒しながらもその瞳にはほのぼのが宿っています。
早苗さんはため息をひとつ吐いて、魔理沙を投げ捨てました。優雅に八百屋に買い物に行く途中だったのです。
「……はぁ、はぁ、はぁ、……あ、くそ! 待て! まだ負けたわけじゃないぜ」
優雅に去っていく早苗さんの背中に向かって、魔理沙は息を切らしながらも言いました。しかし、無視されて去っていくのを見送るしかなかったのです。それに、足にきていて立つことがしばらくできなかったのです。
「く、くそう! うぅうううううううううう。悔しいぜくそ」
早苗さんが見えなくなり、魔理沙は一人その場で泣きました。地面にはいくつも涙の後ができます。
しばらくして、泣きやみ足が回復した魔理沙は帰る事にしました。道中で早苗さんのことを考えて、いらいらしながら帰ります。
いつか必ず、ほのぼの、早苗さんに酷い目に合わせてやろうと色々頭の中で考えて歩きます。
そんなことを考えているから、魔理沙は迷子になってしまいました。
「やばいぜ、ここ何処だ?」
一応森です。植生からして魔法の森とは違うところのようです。こういうときは飛べば良いのですが、今回は作者都合により木の枝が邪魔をして、森の上に出れそうもありません。
魔理沙はとっても怖くなって、走り出しました。しかし、やみくもに走ったせいでさらに迷ってしまいました。
普段霊夢たちには、絶対見せない表情で魔理沙は半べそです。それでも、道はわかりません。
とうとう、疲れてその場に座り込んでしまいました。
時刻は夕暮れ時を過ぎて、暗くなり始める時間です。このままここにいれば、妖怪に襲われて食べられてしまうでしょう。
それもお話としては良いのかもしれません。実際魔理沙の背後には人食い妖怪が近づいてきています。
「あれれ? 魔理沙さんじゃないですか。こんなところで何してるんですか?」
「あ、ああああ! 助かった。美鈴道に迷ってたんだ助けてくれ」
「また、ほのぼのでも探してたんですか? 仕方ないですね」
今まで、魔理沙と美鈴はほのぼのについて話したことはないのですが、魔理沙がほのぼのを求めて色々やっているのは有名になっていました。
「ああ、そんなところだぜ!」
さっきまで泣いてた魔理沙は、もういつもの調子に戻っています。
美鈴は良い妖怪だったので、魔理沙を自宅まで送ってあげることにしました。
帰り道、魔理沙はほのぼのはすばらしく、優雅は害悪だと話します。普通の者ならうんざりするのですが、なぜか美鈴は真剣に魔理沙の話を聞いていました。
「……優雅は、人を殺す。しかし、ほのぼのは人を生かすんだ」
「そうですね。優雅よりほのぼのの方が良いですね」
魔理沙の家に着いたとき美鈴は同意しました。それから、真剣な表情で魔理沙に耳打ちしました。
次の日、昨日家の前である場所に行くように言われた魔理沙はそのある場所に来ていました。そこは、寂れた何が祭ってあるのかもわからない神社でした。
先に美鈴が来ていて魔理沙をその神社の中に案内しました。
神社の中には、地下へと続く階段があったのです。二人はそこを降りていきました。
そして、その階段の先には畳張りの部屋があったのです。狭い部屋で光が入らずじめじめしています。たいまつがたかれていますが薄暗いのです。その部屋の真ん中に咲夜が正座していました。
「咲夜さん。連れてきました」
「ありがとう。今度は美鈴外の警戒を任せるわ」
二人とも、今まで見たことのないような真剣な表情です。
「なんだ、咲夜じゃないか? お前がここに呼び出したのか?」
「魔理沙、私のことは咲夜ではなく今日から師匠と呼びなさい」
「は?」
魔理沙がそういったときです。ナイフが飛んできて、魔理沙のほをかすりました。人に話しを聞かせるときの定番です。
「突然師匠って言うように言われて困惑するのはわかります。しかし、私の話を聞けば納得します」
「わかった。わかった。聞いてやる」
咲夜はふっと一息はいて話を始めました。
「あなたは、ほのぼのを求めているそうね」
「ああ、そうだぜ」
もしかして、咲夜がほのぼのくれるのかと思い魔理沙の目はキラキラ光りました。ついでに、小さなお星さままであります。
「そして、優雅と戦っている」
「そうだ、優雅は敵だ」
今度は、怒りの表情です。優雅という単語を聞いてついつい興奮してしまうのです。
「しかし、いつも負けている」
「ち、何が言いたいんだ」
魔理沙は気に食わないこと言われて舌打ちしました。
「なぜ、負けるかわかりますか?」
「ほのぼのは、ほのぼの時代を築いてきたが、優雅の歴史は何でも優雅をつけて残酷なことを正当化してきたんだ。平和のほのぼのと血と殺戮にまみれた優雅、戦ったらほのぼのは負けてしまうんだ。そんなことは、寺小屋の子供だって知っていることだぜ」
実は寺小屋の子供はたぶん知らないのです。でも、咲夜は知っていたらしく、うんと頷きました。
「良くほのぼのについて知っているようね」
「こんなの常識だぜ」
それでも魔理沙は胸を張ってえらそうな態度をします。
「じゃあ、裏ほのぼのって知っている?」
「なんだ? 裏ほのぼのって?」
「知らないようね。今日はその話をしようと思って、ここにきてもらったのよ」
実は魔理沙が迷子になっているときに、美鈴突然現れたのは、咲夜が魔理沙をつけさせていたのです。そして、何か機会、もしくは切欠があったらここにくるように仕向けるよう指示知っていたのです。 以上、矛盾点を何とかごまかそうとするのでした。
「裏ほのぼのって言うのは、長年優雅に駆逐されてきたほのぼのが、優雅に対抗するために作った。武道なのよ」
「なんだって、優雅に対抗できるのか?」
「ええ、極めれば、優雅だけではなく”最新鋭”新進気鋭”までも打ち破る力があるわ」
「もしかして、お前がそれを教えてくれるのか?」
「ええ。私は裏ほのぼのを極めたわ。そして、その全てをあなたに教えます」
咲夜は、魔理沙にほのぼのの才能を感じたのです。だから、教えることにしたのです。
「咲夜、いや師匠お願いするぜ」
こうして魔理沙は、納得して咲夜の弟子になりました。
この日から、裏ほのぼのを極めるために努力しました。所謂、汗のにじむ努力でした。支給された虫取り網で、トンボを捕まえたり、バッタを捕まえたりしました。あるときは、スイカの種を遠くに飛ばしたり。またある時は、マスケット銃(実弾は装てんされていない)を持って格好良くポーズを決めました。
そして、1週間の歳週が過ぎたのです。
「良く、裏ほのぼのを極めたわね。もうあなたに教えることはないわ」
「師匠! 今までありがとうございました!」
魔理沙の旅立ちのときが来たのです。これから、早苗さんと戦う約束をしていました。
三時間後
首根っこを優雅に掴まれてまた吊るしあげられていました。また首が絞まってだらしなくまた唾液をたらしています。
「裏ほのぼのとか言っていましたが、ほのぼのに裏があるのならばなんで優雅にも裏があると思わなかったのですか?」
最初から魔理沙は裏ほのぼのを使っていましたが、全然歯が立ちませんでした。それもそのはず、早苗さんは美鈴から裏優雅を教わっていたのです。
早苗さんは、魔理沙を放り投げて帰って行きます。その背中を魔理沙は裏ほのぼのしながら嗚咽を漏らし見送るしかなかったのでした。
「咲夜あれやって」
「あれですか?」
「そうあれ」
「一回だけですよ」
レミリアがほのぼのしそうな、ポーズを咲夜しようと力をためました。
「裏ほのぼの拳!」
「そのポーズ、何回みても無駄にほのぼのしちゃう」
さっきまで、優雅にお茶を飲んでいたレミリアはなんだかほのぼのしてしまいました。
「ここほれ、ゆう、ゆう!」
「え? 幽々子様それなんの遊びですか?」
昼下がりの白玉楼それは突然起こった。庭の手入れをしていた妖夢に幽々子は突然そんなことを言ったのだった。
ここというのは、桜の木下だった。
「はやくほれ、ゆう、ゆう!」
「掘るのは良いんですけど、その口調どうにかなりませんか?」
そういわれた途端に幽々子は悲しい表情になった。まるで、桜が儚く散ってしまうことを愁いた詩人のようだった。
「……掘って」
「わかりましたから、そんな顔しないでください」
仕方がないので、妖夢は庭の手入れに使う移植小手で地面を掘り始めた。硬い地面で思いのほか力が必要だった。
こんなところに何があるのだろうかと掘りながら考える。
「ねえ、あなたは花咲か少女って知っている?」
「……え? あ、あの。じいさんなら知ってます」
妖夢は幽々子様は何を言っているんだろうと思った。幾分か考えてしまったせいで、地面を掘るのがおろそかになってしまっていた。妖夢はそれにすぐ自分で気付いて穴掘りに集中した。
「そうなのね。あなたは花咲か少女知らないのね」
「はい」
妖夢は簡潔に答えて地面を掘り続ける。
「じゃあ、そのまま聞きなさい」
「分かりました」
『昔、長者の家に一人の少女が居たの。
見た目はねあなたにそっくりだったの。
その子はね、長者の娘だった。
長者はね、たいそう人の良い人だったそうでね。
道で物乞いしている人がいたら、生活保護について詳しく説明してあげてね。
しかも、格安の中間搾取で住む場所を提供してあげたり。
借金で困っている人に、多額の保険金をもらう方法を詳しく説明してあげてね。
しかも、格安の中間搾取で残った家族に保険金をあげたりしていたのよ。
とってもいい人の長者さんね。
でも、ある日糖尿病で死んじゃった。
後を継いだ娘はとっても悪い子だった。
長者が生前に寝床で、少女に連帯保証人だけは絶対になるなと言い聞かせていたの。
でもね、言うことを聞かなかった。
知らない人が困っていたから、連帯保証人になったの。
でも、その知らない人は詐欺師だった。
すぐに、知らない人はどこかに高飛びしまってそれきりよ。
責任を負う羽目になった少女は家を失った。
時代が時代だったからすぐに餓えて道端に倒れてしまったのよ。
倒れたところがいけなかった。
そこは、こじきとかうろうろする貧民街だったのよ。』
「あ! 幽々子様骨が出てきました」
「でかしたわ妖夢。ゆう、ゆう」
結局、その骨を幽々子が触った途端に幽々子はそれきり黙ってしまいました。
今現在でも花咲か少女が何だったのかわかっていません。
ギョウヘルインニ
- 作品情報
- 作品集:
- 4
- 投稿日時:
- 2012/09/09 16:48:06
- 更新日時:
- 2012/09/10 01:52:09
- 評価:
- 6/7
- POINT:
- 600
- Rate:
- 15.63
- 分類
- ほのぼの
- 優雅
- 誰も死なない
でも咲夜と魔理沙のやり取りはやっぱりほのぼのできました。
ほのぼのがこのままほのぼの優雅に負けて絶滅してしまうなんてゆるされないよ
幽々子様の最後はくねくねの最後の様でした。
今回はひねりがたりなかったかな?