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『八月最高値』 作者: ヘルニア
「くろまく〜」
レティは黒幕だった。冬にチルノを箱に閉じ込めて、おがくず入れて夏になるまで溶けないようにして保存しておくのだった。
「レティお姉ちゃん。本当に箱の中にお菓子があるの?」
「くろまく〜」
レティは黒幕だった。チルノに姉っぽく接して懐かせる。やさしい顔してチルノに近づいてかわいがるが心の中は残酷冷徹だった。
「お姉ちゃん。この箱少し背が高いよ。中に入らないと中の物がとれないよ」
「くろまく〜」
レティは黒幕だった。商品に傷が付かないように肩車して、チルノを箱に入れたのだった。
「お姉ちゃん。ありがとう。……これ? お菓子?」
「くろまく〜」
レティは黒幕だった。箱の底には、スプレー缶があった。そこからは、窒素ガスが大量に出てきたのだった。たちまちチルノは昏睡した。
「くろまく〜」
レティ黒幕だった。今冬も、チルノが豊作で心の中でほくそ笑んだ。
夏が来た。レティは、チルノを売って一儲けしようと郷に来ていた。今年は特に猛暑でチルノには高値が付きそうだ。
「くろまく〜」
「レティ。チルノ一つくれないか?」
レティが大きな声で、チルノを売っていると早速買い手が付いた。ナズーリンだ、文無しの癖に毎年チルノを買おうとする。悪い客を相手にする気はレティには無い。
「くろまく〜」
「く、いつからお前はそんなに偉くなったんだ」
ナズーリンは毘沙門天をひきあいに出されてしまっては太刀打ちできないと、唾を地面に吐いて去っていった。
「くろまく〜」
「レティ、一番高いチルノ売ってくれ」
今度は、郷に買い物に来ていた藍に声をかけられた。藍は上客で、毎年一番上質なチルノを買って行くのだった。
早速、レティはチルノの入った箱に一番小さなドリルでピンホールを空けた。そこから、尖った鉄製の長いストローを差し込んだ。それが、おがくずの層を超えて、中のチルノに刺さった。
しばらくすると、ストローの先から紅い液体が出てくる。レティはその液体をぐい飲みサイズの器に注ぎ藍にわたした。いわゆる、チルノの試飲だった。
「くろまく〜」
「……おおなるほど、さすがだな今年も質の良いチルノだ。良し、このチルノとそこの小さい箱のチルノ2つもらおうか」
藍はチルノをテイスティングした後満足して、買っていったのだった。
「来年も、レティからチルノを買うからよろしく」
「くろまく〜」
レティは去っていく藍に礼をふかぶかしたのだった。心の中で、レティは思う。アイツはチルノの血なんか飲んでチルノのなにがわかるの?
そもそも、チルノが何使われているのかレティはまったく知らない。高く売れれば商品がどのように扱われようと知ったことではない。
「くろまく〜」
その後も、大盛況でチルノはたくさん売れた。これでまたしばらく遊んで暮らせる。
「くろまく〜」
レティは悪態をついて谷底に売れ残ったチルノを捨てた。
どんなに、大盛況でもチルノが全部売れるわけではない。結局最後まで、売れ残るチルノはいる。それが、夏場の炎天下で販売していたものだから、暑さ溶け出して何の価値もないゴミになってしまった。お客が居る郷に投棄するわけにもいかないので、郷から離れた谷までリアカーで運んで蹴り落としたのだった。
落ちていく箱は、崖の壁に当たって砕け散り中から半分溶けたチルノが放り出される。仮死状態のチルノはそのまま谷底に消えて行った。
「くろまく〜」
今年も秋になった。レティは今年も黒幕だ。業者に早めに箱を大量発注したのだった。
近年は人口栽培のチルノが一般に普及して来ている。しかし、多くの人工栽培物チルノは天然物に比べると味も香りも劣るとされている。また、人工栽培のチルノは天然物に比べると、サイズが小さく容姿が劣る。悪徳業者などは、天然物に似た香料を添付したり天然物と混ぜ天然物として販売する。
それが、ちょっとした社会問題に成っている。
- 作品情報
- 作品集:
- 5
- 投稿日時:
- 2012/10/06 19:28:20
- 更新日時:
- 2012/10/07 20:18:51
- 評価:
- 4/6
- POINT:
- 350
- Rate:
- 12.50
- 分類
- レティ
- チルノ
(ちるのが売れなくて)落ち込んだりもしたけれど、私は黒幕です。
チルノはレティを怒らせた。
一日待ってくれ、俺が本物のチルノをごちそうするよ