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『れみちゃんがおなかをこわしちゃっただけのss』 作者: box
「無い……?」
「無い………?」
「無い、無い、無い………!」
「紙が……散り紙が無い………!」
まだチクチクと痛むお腹を、レミリアは抑えた。
「何故?何故?何故何故何故!?」
「館中のトイレットペーパーは、咲夜が毎日代えてる筈っ………!」
「咲夜が裏切る訳がない……あの咲夜が……!ましてやサボることなどっ……」
そこまで呟いて、レミリアは、はっと顔を上げた。荒い息遣いが、小さな個室に木霊する。
『お嬢様、申し訳ありませんが、今日はお暇を……』
「そうだ、昨日咲夜は、一日休んでいた」
「メイド長の代理をしてたのは……美鈴だっ……!」
拳を壁に叩きつける音が、洋式便座を震わした。殺気だつ野獣のように、噛みしめられた牙。煮えたぎる赤黒いものが映る、両眼。
「能無しっ……木偶の坊っ……惰眠を貪ることしか知らない、正真正銘のクズ……ゴミ……!」
「何度クビにしようとっ………クビにしておけばっ………!」
『すみませんお嬢様ァ、刃牙貸しますから許してください!』
薄い胸中で、美鈴の言葉が反響する。レミリアは美鈴を、そして自分自身を呪いながら、大きく息を吐いた。
「報い……報いだと言うの………?」
「ロリが成長を望んだことへの、罰とでも言うの?」
「いつも咲夜に取り上げられて……飲めなかった!………箱一杯の瓶牛乳っ……」
「私が飲んだのは、金の林檎とでも言うの……あんまりよっ………!」
うー、と唸りが漏れる。レミリアは、泣いていた。熱く大粒の涙を、強く頬に滴らせていた。
「駄目だ……落ち着かなきゃ、レミリア……!」
「今考えるべきなのは………美鈴や八頭身のことじゃない……」
「どうやってここから出るかよっ……!」
紅魔館の中央を突っ切る、巨大な廊下。あまりに広く長いが故に、ただ一人孤独に立つ、トイレ。トイレの中で、空の前に座る、吸血鬼一人。
これは、戦いだった。
それ以外の、何物でも無かった。
「紙は無い」
「予備も全てきれてる」
「隣にトイレが無い以上、補うことも不可能」
「紙が置かれてるのは、おおよそ50メートルも離れた、備蓄倉庫っ……!」
「見つかれば……間違い無く笑い物……!権威失墜……カリスマゼロ……!」
それだけは、
それだけは、と、レミリアは爪を噛みながら呟いた。
「けして、歩いてとりに行くのが、不可能じゃない距離……」
レミリアは首を振ると、深く喉を鳴らした。
「違う………これは罠だっ……!」
「短いとはいえ、人通りの多い廊下を行くのは、自殺行為でしかない………!」
〜レミリアちゃん想像図〜
「あれー?お嬢様、何でお尻丸出しで歩いてるんですかー?」
「み、見ないで、これにはっ、深いわけが、」
「みんなー!お嬢様がお尻丸出しだ!」
「言わないで!お願い、何でもするから!」
「ならケツを出せ」
「うー……」
〜想像図終わり〜
「駄目だ……見つかったら終わりだ………」
うなだれ、沈痛な表情を浮かべるレミリア。が、直ぐに顔を上げて、途端に目を見開いた。
「『人通りが多い』のを、逆手にとれるっ………!」
「往来が多い通路、『奴』は必ずここを通る」
「そして『奴』なら行けるっ!誰にも見つかることなく、備蓄倉庫まで!」
噛みしめるように。
敬遠深く、笑みに涙さえ浮かべて。
確かめるように、レミリアはその名を呟いた。
「十六夜咲夜っ……!」
レミリアの心中に浮かぶのは、一人のメイド。されどもメイド。レミリア麾下において最強を誇る、完全で瀟洒なメイド長。
「咲夜が、私が下痢と言いふらすか?」
「否!」
「咲夜が、私への尊敬を失うか?」
「否!」
「咲夜が、私を裏切るか!?」
「否!否!断じて否!」
「紛れも無く咲夜は………至高にして最高の、私の駒だ!」
レミリアは、高々と笑った。
さながら、悪の権化の如く。
さながら、征服をなした帝王のように。
カリスマと力とをその手に転がして、笑っていた。
「…………いや」
笑いが、止まる。
「本当に……そうか……?」
空によぎる、かつてはあった景色。
出会い。
諍い。
絆。
レミリアの影のように、付き従う姿。
白昼の走馬灯……
しかし
「………駄目だ……」
「咲夜は使えない……!」
レミリア、以外にもこれをスルー。
「思えば私がここにいるのは何故だ?」
「咲夜が裏切ったからだ……私の期待を………!」
「肝心な時にいない、役にたたない………」
「それで本当に、完全なメイドと言えるのか……?」
「本当に信用出来て、本当に頼れると言えるのか………?」
〜レミリアちゃん想像図〜
「咲夜、私に紙を、」
「は?咲夜『様』だろ?」
「そ、そんな……」
「おい、このクソガキ、下痢しておまけに紙も無いぜ!」
「止めて咲夜、みんなには言わないで!」
「ならケツを出せ」
「うー………」
〜想像図終わり〜
「非処女ロリビッチになったらおしまいよ……新作にも出れなくなる………」
再びうなだれるレミリア。額からは玉のような汗が浮かび、上下する肩に合わせ震えてる。黒く乾いた翼は、小刻みな動きを繰り返していた。
「やはり頼れるのは自分だけ……私自身で取りに行かなきゃならない………!」
大きく喉を鳴らすと、レミリアは押し殺すように呟いた。
「何とか、ノーパンがバレないような………」
レミリアは、何やらもにょもにょと言葉を口にする。そして何度かのまばたきの後、台詞が漏れた。
「スカートを下ろすか………?」
「私のスカートには骨組みが入ってるから、いつも膨らんだ状態を維持してる」
「いくらお尻がゲリラ戦に突入していても、スカートに触れず隠せる……!」
静かな笑みの浮かんだ上を、汗の一滴が伝った。熱い感覚が、レミリアの中を駆けていく。
「よし、そうと決まれば、」
折り畳んでいたスカートに、華奢な両手がかかった。
かかった、だけだった。
「まずいまずいまずいまずいまずい……!スカートを下ろしても……無駄…!無意味……!」
「液体の下痢は垂れるっ……おまけに臭いもっ……!」
寸分のところで、断崖絶壁を避けたレミリア。
だが、
「だが………」
「もう、策は………」
精魂をかけ、血を煮えたぎらせ、細胞の末端までを尖らせ巡らせども。
ことごとく、失策、愚作。
最早、万事休す。
「もう、何も、出来ない………」
絶望。失意。何もかもを見失った、虚ろな目。
レミリアは、手で表情を抑え、顔を伏せた。
その時
レミリアに電流走る――――――!
「――――――――ッッ!!」
『諦める』
それは、『明める』とも書かれる。
弛緩し力を失った脳細胞が、奇跡の方程式を成り立たせたのだった。
「そうだ……!私は何もしなくて良い………!」
「液体の下痢なら…………」
「乾くまで待てば良いっ………!!」
漲る生気。
蘇る熱い鼓動。
一度、二度ならず幾度となく、灰へ還った魂。
いや、還った筈、の。
レミリアはくすぶる灰の中から、また立ち上がっていた。
さながら、太陽のように。
「勝てるっ……!」
「………だが……」
「まだ勝ってないっ……!」
予想。否、確信。
酔いしれ浮遊し初めていた意識が、再び研ぎ澄まされる。
「まだだ……まだ終わってない」
「まだ何かあるはず………」
コンコン
「―――――――ッ!?」
突如として、密室に響いた音。
乾いた木を叩く音。
凶暴な笑みを浮かべた、悪魔の足音。
コンコン
「そんなっ……!そんなことって……!あんまりだっ………!」
「トイレを……待ってる奴がいる……!」
レミリアは、扉を叩いて応えた。
あまりに弱く。
あまりに儚げに。
底の無い奈落へと落ちながら、手を伸ばす。
蜘蛛の糸は、見えない。
「下痢が乾くまで待つには、時間がかかりすぎる」
「不審……あまりに不審……!」
「呼ばれる……!合い鍵を持った、咲夜をっ………!」
〜レミリアちゃん想像図〜
「2……1………0」
「ファイアッ」
「扉爆破完了!」
「良し、アルファ隊突撃!ブラボー隊は支援に回れ!」
「紙は!?」
「どこにも、まったく。完全に黒だ」
「捕獲対象確保!」
「うー!離して!嫌!」
「レミリア……既にお前の処遇は決まってる」
「どういうこと、咲夜!」
「少女の鉄の掟を破り、下痢をしたこと………それは『五大老』への叛逆と同じだ」
「『彼女たちに、叛逆者与える慈悲は無い」
「捕縛後、即刻の銃殺を命じられてる」
「止めて、私はただ、お腹が痛かったのよ……お願い……!」
「ならケツを出せ」
「うー………」
〜想像図終わり〜
「………………、」
無言。
静寂。
絶望の景色を、幻視したにもかかわらず。
最悪の結末へ、歩き初めてるにもかかわらず。
レミリアは、ただ静かにそこにあった。
便座の脇の、ただ一点に視線を向けて。
「初め……私は気づかなかった」
「話しには聞いてたが、一度も使ったことが無いからだ」
「いや、私自身が無意識に、視界から除外してたのかもしれない」
簡素な、腕当て。
そこに並ぶボタンの羅列を、レミリアはゆっくりと撫でた。
「神社にあったな……確か『ウォシュレット』と言った筈だ」
「これさえあれば、紙が無くとも水で洗えるらしい」
「だが」
「果たして、『吸血鬼』が使って良いのか?『流れる水』が弱点の、『吸血鬼』が、だ」
話しに聞いただけ。
曖昧模糊。
正体不明。
アンノウン。
先の見えない、分かれ道。
まったくの五里霧中。
しかし
レミリアの表情が、変わった。
「今まで苦しかった」
「下痢をした」
「紙が無かった」
「絶望した」
「何度も諦めもした」
「勿論、今も」
どくん
鼓動が、一つ。
「でも」
「違う」
「これは、『試練』……」
「私がさらなるカリスマを手に入れ、新世界へ踏み出すための『試練』ッ」
「少なくとも私は、そう受け取った!」
そこにいた。
少女ではない。
幼女ではない。
強靭な吸血鬼ですらない。
レミリア・スカーレット。
誇り高き魂が、精悍な表情を光らせていた。
「何かあれば、部下のせい」
「何かあれば、部下に頼る」
「自分では何も考ず、ただ怠惰な毎日を送り」
「その事実から目を背け、上っ面のカリスマで周りから隠そうとしてた」
「下痢が教えてくれた」
「トイレが教えてくれた」
レミリアは、指を動かした。
横合いの、ボタンへ。
「本当のカリスマは、余裕ぶってることなんかじゃない」
「恐怖を知って、それを乗り越えることだッ!!」
「私は、もう」
「迷わない!」
「行けええええーーーー!!」
叩きつけるように。
ボタンは、押された。
「パチュリー、お姉様は?」
「痔ですって」
今日も幻想郷は平和でした
end
作品情報
作品集:
5
投稿日時:
2012/12/04 12:43:58
更新日時:
2012/12/09 09:50:26
評価:
8/9
POINT:
810
Rate:
16.70
分類
れみちゃん
れみちゃんわね♪
レミリアって言うんだほんとわね♪
だけどちっちゃいから♪
自分のことれみりあぅっていっちゃうんだ♪
おばかだねれみちゃん♪
れみちゃんわね♪
れみちゃんわね♪
血液大好きほんとだよ♪
だけど小食だからこぼしちゃうんだよ♪
かわいそうだねれみちゃん♪
れみちゃんわね♪
れみちゃんわね♪
幻想郷にいっちゃうんだ♪
さびしいねれみちゃん♪
命よりも重い誇りがそこにあった。
誰も信用できない、他者の手を借りてはならない、己の力のみで乗り越えるべき試練。
そして押された断罪のボタン。
そう、彼女はスカーレット。レミリア・スカーレット。
紅に染まりし、幼き夜の皇。
コウモリ化すれば良くね?
おぜうさま、とりあえずケツ出せ!!
こっちのほうで出張ることのほうが多くないですかね?とりあえずケツを出せ
最後に逆転があるとドキドキしていたのですが、オチで顔がほころびました。
何このバトルマンガみたいなノリwww