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『筍事変の一年前』 作者: ギョウヘルインニ
椛ちゃんはペロペロ眠っている射命丸のお顔を舐めました。
「ぅううん? 何ですか?」
「くぅ、くうぅ〜ん」
まるで、犬のように愛らしく見つめています。それから、またお顔を舐めようと舌をだしました。
「ぁあ、もうご飯の時間でしたか」
「くうん。くん」
これ以上お顔を舐められてはたまらないと思った射命丸は、まだごはんのじかんでもないのにごはんを与えることにしたのです。
ガソゴソと乾いたご飯を、箱から取り出して、椛と書いてあるお皿に乗せます。
「はぁはぁはぁ」
「ま〜だ、駄目ですよ。お水の準備ができていませんよ〜」
ごはんを見た椛ちゃんは、興奮して呼吸を荒げました。しかし、まだ準備ができていなかったので静止するように命じられました。
「く〜ん」
「待て、まてですよ」
平たいコップにお水も入れられて食事の準備は完了しています。しかし、椛ちゃんが食べたそうにしている様子が可愛くて射命丸は少し意地悪をしたくなったのです。
それから、十秒位たちました。
「良し! いいですよ」
「くぅーん! ハグハグ」
食べていいと、指示を出された椛ちゃんはとてもうれしそうにご飯を勢い良くほお張りました。
「……どうですか? 美味しいですか?」
「ハグハグハグ」
いつもは、とてもいい子で射命丸の言うことを良く聞く椛ちゃんでしたがご飯を食べてるときは違います。
とてもご飯に夢中になってしまうのです。
でも、そんな椛ちゃんが可愛くて射命丸は頭をそっとなでました。
「く〜ん?」
「ああ、なんでもないですよ。最後まで食べちゃってくださいね」
頭をなでられて、食べるのに夢中だった椛ちゃんでしたが顔を一旦上げました。
せっかく、ご飯に夢中だった椛ちゃんを止めてしまってなんだか射命丸はなんだかバツの悪い気持ちになりました。
ご飯を食べ終わった椛ちゃんは今度はお水をピチャピチャ飲み始めました。
そのしぐさがとても、面白くて笑いそうになってしまいました。
「……そろそろ、炊き出しの時間ですね。行ってきますよ」
「くん、くぅ〜ん」
行かないでと、椛ちゃんは射命丸の靴にあま噛みしました。それをそっと射命丸は外して出かける準備をします。
椛ちゃんとの楽しいひと時はすぐに過ぎ去ってしまいました。疫病が蔓延した後の郷で射命丸は毎日炊き出しをしているのです。
椛ちゃんがいい子にしていれば、早く戻ってくるかも知れません。
このころの、アリス記念公園は沼地だった。
ギョウヘルインニ
作品情報
作品集:
6
投稿日時:
2012/12/26 12:31:33
更新日時:
2012/12/26 22:39:53
評価:
4/4
POINT:
380
Rate:
16.20
分類
椛
射命丸