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『シングルマザー魔理沙』 作者: R
「おめでとう、魅沙」
「ありがと、お母さん」
霧雨魅沙は、その日15歳の誕生日を迎えた。霧雨魔理沙と、今はいなくなった夫の娘だった。どうして父親がいなくなったのか、魅沙は知らない。魔理沙はそのことについて語ろうとはしなかった。
霧雨魔理沙は30歳になっていた。以前のように箒で飛び回ることはなくなったが、培ってきた魔法の技術を使って、香料や芳香剤を作って、配り売る生活をしていた。時には惚れ薬や化粧品、アクセサリーなども作って売っていた。里に直接店を出して売り歩くことはしたくなかったし、魔理沙にはできなかったから、里に店を出している人間と提供して、卸す形で売っていたりもした。
元気だった頃の面影は少ない。金髪にもほつれ毛が増え、僅かだが皺も目立ち始めている。その代わり、疲れと共に、落ち着いた大人の魅力が生まれている。
その娘も、魔理沙の生まれた年を越えた。魔理沙は感慨深げに我が娘を眺めた。霧雨魅沙の髪は茶色をしている。父方の血だろう。顔立ちは魔理沙に似て、少しツリ目の目と、あまり高くない、日本人らしい鼻を持っている。幼い頃は、慣れない母親をしている魔理沙のために、少し苦労もした。若い日の魔理沙ほど、くるくると変わる表情は持っていないが、その分思慮深く、母のことを思いやる娘に育った。
魅沙が、十五本の蝋燭の立ったケーキの炎を吹き消す。部屋が暗闇に落ちて、魔理沙が拍手を送る。灯りをつけると、魅沙はにへっと笑っている。そんな魅沙を、魔理沙は暖かく見守るのだった。
「さ、食べなさい、魅沙。魅沙のために作ったんだから」
「私も手伝うって言ったのに……ありがと、お母さん」
「何言ってるのよ。魅沙の誕生日なのに、魅沙にはさせられないわ」
ナイフを手に取り、魔理沙は魅沙のためにケーキを切り分けた。魅沙は少しきまりが悪そうに、だけど、嬉しそうに微笑みながら、母の仕草を見守った。クリームのたっぷり塗られたスポンジケーキ。クリームの上には苺がたっぷりと乗り、中にはクリームの層と、キウイやオレンジのフルーツが沢山入っていた。魔法の薬を作るには分量やら時間の計算など、料理と共通することも多い。長い間魔法使いと主婦をやってきた魔理沙には、この程度のことはお手の物だった。
「さ、食べて」
「お母さんのも切ってあげる」
「後で良いのよ、ありがと、魅沙。魅沙が食べてるの、見てるわ」
「そ、そう……? ううん、やっぱり切るわ。私だけ貰うの、悪いもの」
魅沙はそう言うと、魔理沙が置いたナイフを手に取って、ケーキを切り分け始めた。魔理沙は笑いながら、娘が母のためにケーキを切り分けるのを見ていた。そんな風に、いつも母のことを考えてくれる魅沙のことを見るたびに、魔理沙は嬉しく思い、魅沙のことを愛おしく思うのだった。
「はい、お母さん。お母さんも、食べて」
「うん、ありがとう、魅沙。でも、魅沙からよ。魅沙のお祝いなんだもの。魅沙が喜んで、食べてくれてるところ、見たいのよ」
「うん。じゃ、いただきます!」
魅沙はケーキをフォークで切り落として、口の中に運んだ。クリームは甘く、スポンジはふわふわと、ケーキの甘みが魅沙の口の中に広がる。魅沙は、魔理沙の若い頃よりも、大人しく、マナーなどもきちんとしていた。何かと若く、経験も少なく、充分でないところも出てきてしまう母だった魔理沙は、何度か辛く当たることもあった。だけど愛情だけはたっぷりと与えて育った。そのお陰で、魅沙は何もかもを充分に与えられた家ではなかったし、母に辛く当たられることがあっても、母親も辛いのだと、しっかりと支えようと決意して、母の側で大きく育った。
「おいしいわ、お母さん」
「ありがとう、魅沙。魅沙が喜んでくれて嬉しいわ。魅沙が喜んでくれるのが、お母さんは一番嬉しい」
「うん、お母さんの料理はいつでも美味しいから……」
「私も、貰うわね」
魔理沙もケーキを切り分けて、食べた。娘のために愛情をたっぷりと込めて作ったケーキ。おいしくないはずがない。だけど、さほどの感慨は生まれない。自分で作った料理は、味が分かっているからだろうけれど、それが何者か分かっている感じがする。魔理沙はケーキの味よりも、娘がこんなに大きくなってくれたことが嬉しいのだ。
魅沙が生まれてからは、苦労の連続だった。娘のせいだと思ったことはない。けれど、それは事実だった。生まれたばかりの魅沙のために、15歳の魔理沙は随分と苦労をした。泣いている魅沙を前に、途方に暮れたこともあった。誰にも相談のできないことだ。試行錯誤と、貰い物の育児本とつきっきりで、魅沙の世話をした。離乳食を作り、睡眠不足でも夜泣きに付き合う。量の増えた洗濯物を処理する。自分一人なら、好きな時に食べていた食事を、きちんと決まった時間に用意するようにする。自分一人だけではなくなった、安定した生活費のために仕事をする。その仕事道具や素材を、娘が握ったり投げたりして、だめにされる。
何よりも、自分の好きなことをして金を稼ぎ、後の時間も自分の好きなことをしている。そんな風に過ごしていた時間の大部分を、娘のために使わなければならなくなった精神的負担は、幼かった魔理沙にとってどれほどだっただろう。それでも、持ち前の器用さで、魔理沙は乗り越えてきた。一人で留守番をしていられるようになったら、随分と楽になった。8歳、9歳になってくると、自分から母親の本を読み、仕事を手伝うようになった。寺子屋にやったことはなかったが、自分で言葉を覚え、本を読んで一人で勉強した。魔理沙から見ても、魅沙は良くできた娘だった。幼く、手の掛かる頃でも持っていた愛情は、育つにつれて、魅沙が魔理沙を愛するにつれて、ますます強くなった。今では魔理沙は、魅沙なしでは、いられないのだった。
これまでのことを思い出していると、自然と魔理沙は優しい表情になり、ほろりと涙をこぼした。魅沙は、母のその様子をじっと眺めていた。
「どうしたの、お母さん……?」
「ううん、私、嬉しくてね。魅沙がこんなに大きくなってくれたの」
魔理沙は涙をぬぐうと、魅沙の髪を撫でた。魅沙は心配そうに母の顔を見詰め、母の手が頬に降りてくると、自らの手を母の手に重ねた。そんな風にしている我が子を見ていると、魔理沙はまた涙を流してしまうのだった。
「ごめんね、食べるの邪魔して。もっと食べなさい、魅沙」
「うん。ありがとう、お母さん。美味しいよ」
魔理沙は幸せだった。若い頃のように、自由だとは言えない。だけど、娘を、大切なものを持って、側にいられる幸せを魔理沙は噛み締めていた。一人だった頃よりも、幸せだ。魔理沙はそう思った。
「お腹いっぱいよ。ごちそうさま、お母さん」
「いっぱい食べたわね。残りは、冷蔵庫に入れておくわね。また、食べたかったら食べなさいね」
「うん。全部食べるわ。勿体ないし、お母さんが私のために作ってくれたんだもの」
魔理沙は笑い、冷蔵庫を箱に詰めて、冷蔵庫に運んだ。魅沙が汚れた食器を持って、流しに運んでくる。
続けて洗い物を済ませようと袖をまくると、魔理沙は娘を呼び止めた。
「いいわ。明日にでもやっておくから、置いときなさい。魅沙もお腹いっぱいだし、休んだら」
「え、でも」
「いいのよ。……今、お茶を入れるわ。ゆっくりしましょ、魅沙」
魅沙は言われるがままに、机に戻った。椅子に座って、お茶を入れる母の姿を見ていた。娘からすれば、母は大切な存在だった。
母はいつも一人だった。娘から見る魔理沙は、いつも一人で娘の世話をしていた。魅沙が一番最初に思い出すのは、母の背中で眠っている自分のことだ。母の背中で聞いていた子守歌は、今でも、おぼろげにでも覚えている。母の機嫌の悪い時にワガママを言うと、不機嫌なままに当たられることもあったけれど、いつも一人で魅沙の世話をしている母を見ていると、母も辛いのだと思うようになった。魅沙の世話をする他は、かちゃかちゃと器の中で素材を煮込み、混ぜて、固めて、売るための魔法の薬を作っている。時には、魅沙の悪戯のために、虫の入った薬の文句を言いに来た人が怒鳴るのに合わせて、頭をぺこぺこと下げていることもあった。後になって、魅沙が謝ったとき、「いいのよ、自分で間違うこともあるんだもの」と笑って許してくれた。
部屋には、生まれた時から魔法の本が沢山あった。魅沙は魔法の本から言葉を学んだ。母が魔法を沢山使うのを見て、魅沙は母に憧れた。母の仕事を手伝い、自分も大きくなれば母のように、魔法を使いたいと思うようになった。
「はい、魅沙」
「ありがと、おかあさん。砂糖はいくつ?」
「二つ。魅沙も、同じよね」
紅茶に砂糖を落とす二人。スプーンで掻き回し、口を付ける。紅茶を置いて、一息つく。
「今日もお疲れ様、お母さん」
「うん。……ありがとね、魅沙」
「ね、お母さん。お母さんって私の年には、もう一人で暮らしていたのよね」
「うん。家にはいられなかったからね」
「すごいなぁ。……私、料理もお母さんみたいにできないし、一人で暮らすなんて、難しそう」
「そんなことはないわよ。私だって、魅沙くらいの頃は、料理なんて全然出来なかったわ。一人だから、誰も文句は言わなかっただけ」
魔理沙は若い頃を思い出したのか、くすくすと笑った。魅沙は少し、母の若い頃を想像するように上を向いていたが、やがて母の顔を真っ直ぐに見た。
「……ねえ、お母さん。私、一人で生きてみたいわ」
「……一人で?」
魔理沙はカップを机に戻し、魅沙の顔を見た。魅沙は生真面目な、真っ直ぐな目をしていた。
「うん。一人で生きてみたいの。私、もうお母さんが私を産んだ年よりも大きくなったんだもの。私だって、一人で生きられるわ。里のお仕事を手伝ってもいいし、お母さんと同じように、魔法を勉強して、魔法の道具を作ったりしてもいいと思うの。お母さんの仕事取っちゃうみたいで、悪いけど、お母さんの方がうまくやれるもの」
「……外になんて、行かなくてもいいわよ。ここにいればいいわ」
「でも」
「一人で生きるのは、大変よ、魅沙。自分で、自分の身を守れる?」
「………………」
「魔法の勉強はここでもできるし、お仕事は私のを手伝ってたらいいわ。お母さんが死んじゃっても、この仕事を引き継いで続けたらいいわ。魅沙は、何か、したいことがあるの?」
「ううん……でもね、私は外に出てみたいの。だって、お母さんの家しか、私、知らないんだもの」
「魅沙、……外を知りたいだけで、外に出たら、大変なことになるわ。私も……」
魔理沙は言葉を切った。あまり、思い出したくないことを考えたのだろう。
「……もう少し、大きくなってからの方がいいわ。まだ魅沙は、一人では頼りないもの」
魔理沙は、頑なだった。魔理沙も、魅沙の気持ちを無下にしたい訳ではない。でも、魅沙は反発した。
「行かせてくれても、いいでしょう」
「お母さんはね、魅沙を心配しているのよ。魅沙は、お母さんといるの、嫌? 何か、不満があるの?」
「ううん、ないわ。でも……でも、里にいる人は、私と同じか、少し年下でも、もう一人で生きてる人がいるわ。羨ましいの」
「……そうやって、魅沙も私を捨てるのでしょう」
「捨てる?」
魅沙には、信じられないことだった。母の発した言葉は、会話になっていないような気がした。
「捨てないよ。お母さんのこと、好きだもの」
「なら、どうして出て行こうなんて……」
魔理沙は泣いていた。魅沙は驚いて、魔理沙に駆け寄った。母に寄り添り、母を見た。魔理沙は恨みの目をして、魅沙を見ていた。魔理沙が大変な時、誰も、魔理沙を助ける者はいなかったのだ。そのことが、魅沙には分からない。
「どうして、魅沙は出て行くなんて言うの。一緒にいても、いいでしょう」
「ごめん、お母さん、泣かせるつもりはなかったの。出て行くなんて言わないから」
「ほんとう。ほんとうに出て行かないの」
「うん。うん、お母さん、だから、泣くのをやめて……」
魅沙はそれ以上何も言えなかった。魅沙はもう、この話題はしなかった。
お風呂に入ると、魅沙は魔理沙と一緒に布団に入った。この家は布団が一つしかないから、魅沙はいつも母と寝る。生まれた時からそうだったし、魅沙にとってはいつものことだった。
布団に入ると、母が身体を寄せて、魅沙の身体をぎゅっと抱き締めた。魅沙も、母の身体を抱き締め返した。
「今日はごめんね、お母さん」
「ううん。私こそごめんね、魅沙。せっかくの、魅沙の誕生日なのに、台無しにしちゃって」
「うん……」
「ね、お母さん。私、お母さんの側には、ずっといられないと思うわ」
「………………」
魅沙は、それを言うべきか言うまいか悩んでいたのだ。布団の中で口に出してからも、また母は泣きはしないかと思ったが、母は黙って聞いていた。
「でも、お母さんだって寂しいものね。私、もうしばらくここにいるわ。もっと大きくなってからにする。だから、……だから……出て行くって決める時までに、もっと勉強するわ。そのときは許してね、お母さん」
「……うん」
魔理沙は娘の身体を抱き締めて、答えた。魅沙は母の答えにほっとして、母を抱き締め返した。
「……ね、魅沙。私からも、一つお願いしてもいいかな……?」
「うん? なあに、お母さん。何でも言ってよ。私、お母さんのためなら何でもしてあげる」
「……私の、恋人になってよ」
「……へ?」
「私、ずっと寂しかったの。誰にも頼れなかったから。あなただけが頼りだった。あなたが大人になったら、お願いしようって思ってた。ね、魅沙。私と、ずっと一緒にいてよ」
小さく灯りを放つランタンが遠くにおいてあって、影の中で、うっすらと母の顔が見えた。母は今にも泣きそうだった。魅沙は困った。母に、そんなことを言われるとは、思っていなかったのだ。恋人。恋人がどういうものか、魅沙は知らない。でも、母は母としか、思えなかった。でも、魅沙には断れなかった。
「うん。……いいよ、お母さん。恋人になろう」
「魅沙……ありがとう。ありがと……」
結局、魔理沙は泣いてしまった。なんだ、どっちにしても泣いちゃうんだ、と魅沙は思った。でも、どのみち、母の言うことは聞いてあげたいと思った。魔理沙は娘の胸で泣いて、しばらくしてから、魅沙を見上げて笑った。
「嬉しいわ、魅沙……」
魅沙の身体を抱き上げて、魅沙の唇に口づけた。
ん、と魅沙はそれを受け入れた。こんなことするんだ、と魅沙の頭はぼうっとした。魔理沙の手が、魅沙の幼い胸に触れた。少し膨らんできたところで、魅沙はその違和感を感じていたところだったから、恥ずかしかった。でも、母の手は温かかった。
やがて、魔理沙の手が、魅沙の足の間へと伸びた。魅沙は、恥ずかしくて、思わずその手を押さえた。魔理沙が魅沙をおずおずと見た。
「魅沙……?」
「ご、ごめんなさい、お母さん。……でも……、恥ずかしいの」
「くす、恥ずかしいことなんてないわよ。魅沙のここ、何度も見てきてるもの」
「で、でも……ごめんなさい、どうしても、恥ずかしいの、ごめんね、お母さん……」
「そう……」
魔理沙は残念そうにしながら、魅沙の服の下から胸に直接触ったり、胸にキスしたりをした。そのうちに、また手を股に伸ばし、魅沙は思わず、その手を押さえた。
「お願い、したいの……」
「おかあ、さん……?」
「したいの、魅沙としたいの……もう、私、魅沙と重なりたくって仕方ないのよ。ずっと、ずっと、好きだったんだもの……!」
そう言うと、無理矢理、魅沙のパジャマを脱がそうとした。魅沙は驚いて、思いっきりその手に反抗した。
「お母さん、お母さん! 怖いよ、やめて、お母さん……!!」
「魅沙、魅沙は私のこと、愛してないの? 魅沙……」
そう乱暴に言って、魔理沙は魅沙の唇を吸った。さっきほど優しくなくて、魅沙は恐怖を覚えた。
「やだ、やだ、やめて、怖いよ、お母さん!」
魅沙は魔理沙から逃れてベッドから落ち、立ち上がった。魔理沙が魅沙の腰を掴んだ。また掴まれたという恐怖感が魅沙を襲い、魅沙は寝室から抜け出した。
居間に入ると、魔理沙が追い掛けてくる気配がした。魅沙は恐怖感のままに、家を飛び出した。
木の幹に身体を隠し、家を伺うと、魔理沙が家を飛び出してきて、外の扉のところできょろきょろと魅沙を探した。それから、しばらくして、魔理沙は泣いた。扉のところに縋ってしばらく泣いてから、一人、家に戻っていった。
「お母さん……」
魅沙はしばらく家を見て、考えていたが、このまま戻ったらまた怖いことをされるかもしれない、と思った。魅沙は、少し膨らみ始めた胸や、毛の生え始めたばかりのあそこを見られるのが恥ずかしかったのだ。変なことだと思った。
魅沙はよろよろと、夜の道を歩いて行った。
次の日、魔理沙は居間で一睡もできなかった。扉が開いた時、魔理沙は娘かと思って飛び起きた。
「ひどい顔よ。魔理沙」
「霊夢……」
魔理沙は、遠い昔の友人を見て、年を取ったなぁ、と思った。何しろ、二人は十年以上も会っていなかったのだ。魔理沙は子供ができてから、霊夢と会うことができなかったのだ。
「……帰ってよ。いま、それどころじゃないの」
「……娘さんのことでしょう?」
「いま、どこにいるの?霊夢のところ?」
「落ち着いて」
霊夢は魔理沙をなだめた。全く、ひどい状況だ、と思っている。魔理沙の娘とやらを遠目に見たことはあったけれど、突然神社に来たかと思うと、助けてくれと言うのだから。その原因が魔理沙にあるだなんて。霊夢は頭をがりがり掻きながら、懐かしい気分にもなっていた。久々に見る遠い友人だし、いつもトラブルを起こしていた魔理沙が、またトラブルを起こしているのだ。自分がなんとかしてやらないと、という気分になってもいた。
「あんたの娘は、うちで保護してるわ。でも、しばらくは会わない方がいいわ。あんた、ひどいもの。そんな顔で、娘に会えるの?」
「……うるさい。霊夢に関係ないでしょ」
「そりゃ、普通ならねえ。でも、あんたの問題だもの。ともかく、娘が逃げるなんてことはそうないわよ。普通じゃないわ。もう少し落ち着いて、もうちょっとまともな顔になってから、会ってやりなさいよ」
「………………」
「…返事くらいしなさいよ。ちゃんとして、それから笑顔で娘さんに会いなさいよ。それと、魔理沙、久々に会えて嬉しかったわよ。たまには、前みたいに、遊びに来なさいよ」
「……うるさい」
「……何?」
魔理沙は霊夢を睨んだ。
「うるさい、って言ったの! あんたが何をしてくれたって言うのよ! 私はずっと一人で生きてきたんだから! 構わないで! 魅沙を返してよ! 返せ!」
「……あんた、変わったわね。ひどいわ。いいから、落ち着きなさい。……また来るから、それまでには、ちょっとはマシにしてなさいよ」
霊夢が扉を閉めるまで、魔理沙は霊夢を睨んでいた。扉が閉まると、魔理沙は床にくずおれて、また涙を流した。
夜になって、再び扉が開いた。魔理沙は魅沙かと思って顔を上げたけれど、違った。
「よう。久しぶりだな」
「お前……」
魅沙の父だった。魔理沙を襲い、家で拘束していたが、子供ができたので魔理沙を放り出した。もう、15年も昔のことだ。
「今更何のつもり。焼き殺されたいの」
「おお。おっそろしいなぁ」
気楽に男は言い、椅子に座り込んだ。煙草に火を付け、魔理沙の前で吸い出した。
「お前、儲けてるそうじゃねぇか。金。持ってんだろ」
「だから何、お前に渡す金なんてないのよ」
「お? そんな口聞けると思ってんのか」
男が口調を変えた。凄味のある声に、魔理沙は怯えた。
「娘がいるうちは見逃してやってたんだぞ。え? 前は随分いい目見せてやってたんだろ。また見せてやろうってんだよ。分かんねぇのか?」
「誰がッ」
魔理沙の腕を掴んで、男は魔理沙を捻り上げた。痛みと圧力、近くにある男の顔に、魔理沙は萎縮して動けなくなった。憎まれ口を返すことさえ、できなくなった。
「ひっ……やだ、やぁ、止めて、お願い、やだ、あぁ……!!」
男はそれ以上何も言わなかった。言葉が必要な段階は過ぎていた。魔理沙を手込めにする前から、それ以後も、こんな風に生きていたから、その辺りの呼吸は分かり過ぎるくらいに分かっている。
それから男は魔理沙の家で寝泊まりし、充分に楽しんだ。
魅沙が魔理沙の家に戻ったのは、一週間ほどした後だった。霊夢は何度か魔理沙の家に出掛けていくが、まだ帰ってもいいとは言ってくれなかった。だから、魅沙は一人で魔理沙のところに戻ったのだ。あの時は怖かったけれど、やっぱり母が心配だった。
昼間だというのに、家に灯りはついていなかった。やっぱり、母はちゃんと生活していないのじゃないか。魅沙の心に、不安が浮かんだ。
魅沙は知らなかった。魔理沙の家の状況を。霊夢もまた、男の呼んだ仲間達によって犯され、男達の言いなりになっていたことを。
魅沙は魔理沙の家の扉をノックした。そのとき、男の仲間達は皆寝ていて、起きていたのは魔理沙一人だった。扉をノックした相手が誰かを確かめる前に、男が目覚めた。続けて、扉がノックされた。男は魔理沙に扉を確かめるように言った。
魔理沙は魅沙の顔を見て、逃げろと言った。だけど、怯えた魅沙は、動くことができなかった。扉の外で怯えた顔をする魅沙を、男は簡単に捕まえた。
魅沙は魔理沙と並んで犯され、やがて魔理沙が死に行くのを眺めた。魔理沙は永遠の命を手に入れる前に、魔法薬に使う素材の毒を大量に吸い込んでしまったので、身体に毒素が溜まっていたのだ。永遠に生きる術を覚える前に、娘の世話などがあって、最後までその術を会得することができなかった。
娘は魔理沙が死んでからも性の道具として使われ、生き延びるために、男達のすることに喜んで従うようになった。
魔理沙の溜めていた金を使い切り、魔理沙の溜め込んだ本などを売り払って、何もかもなくした後、男達は最後に残った魅沙を金持ちに売り払った。金持ちが、魅沙をどんな風に扱ったか、その頃には、魅沙自身にも分からなくなっていた。
シングルマザーな魔理沙ちゃんも相変わらずダメだなぁ
R
- 作品情報
- 作品集:
- 6
- 投稿日時:
- 2013/01/16 20:07:34
- 更新日時:
- 2013/01/17 05:12:01
- 評価:
- 8/10
- POINT:
- 840
- Rate:
- 15.73
- 分類
- 魔理沙
- オリキャラ
- シングルマザー
だが、魔理沙らしい……。
魔理沙さんはいつも通りだが、霊夢さん可哀そう。
つまり弱い魔理沙と霊夢が悪い
うそです
PTAさん怒らないでください
たった一人の男に台無しにされてしまうなんて、霊夢も魔理沙もまだ少女だったんだな