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『第三眼覚少女暗黒化膿症型精神的外傷学入門』 作者: 狭間レヴィ
巻頭歌
さとりよ
さとりよ
何故怯える
さとりの心が分かって
恐ろしいのか
女は古明地さとり。好きなものは心の中に潜む闇と人型に変化できるようなペットの肉体である。嫌いなものは自分の妹である。私はいつも彼女を見ている。なぜなら、私は彼女の近くにいるからだ。
率直に言うと彼女は愚か者である。
他の人間や妖怪、怨霊の心の中に潜む闇を見つめ、満足をするとトラウマを呼び起こし苦しむ姿を見て優越感に浸ろうとする。自分自身の闇以上の存在を知らないからこそこのようなことが出来る。
ペットとして拾ってきた動物を育て成熟して人型になると犯し貪る。動物は純粋であり自分の肉欲、愛欲を解消できると彼女は心の底で思っている。これは彼女が幼い頃からの歪んだ性癖、今も彼女を包み込む闇の一つだ。
彼女は妹が嫌いだ。妹の変化によって嫌いではなく、理由は私にもわからない。よく彼女は妹と会話をした後、手足の爪を噛み食す。
足の爪を口に近づけ歯を付けたときの顔はストレスを解消しており、幸福を手にした愚かな人間の顔によく似ていた。歯を動かし「かちり、かちり」と足の爪を噛んでいく。爪を剥がすように噛み続ける。舌を爪の裏に這わせるように舐める。そして爪を歯で挟み噛み千切る。
ときどき私は彼女を可愛そうだと思う時がある。覚妖怪という存在だけで忌み嫌われることや妹の身体に起こった変化に対して彼女は身体を震わせ恐怖し自身のトラウマに変化していく。
妹の身体の変化、それは目が閉じたこと、他人の意識に恐怖し深き無意識の闇に潜ってしまったこと。二人の姉妹は繋がった存在では無くなってしまったのだ。愚かなエゴと闇を抱える姉と闇に覆われ蝕まれる白痴なった妹、悲しい姉妹。私は二人の近くにずっといる。一人は私の力を欲望、それ以外に使う。もう一人は私の力を心の奥底に封じ変化をすることを諦め無意識の闇に飲まれる。私は第三の目、数が少ない覚妖怪は私を身体に宿し心を読む。覚妖怪の身体には数本のコードがあり一つの眼球である私と繋がっている。
私と繋がることで私は意志を持つことができる。覚としての古明地さとりとして確立することが出来る。さとりは動物が好きだ。肉体以外にも純粋な心は何よりも癒しになるようだ。匂い、手触り、そして自分以外の存在が彼女の中に感情を生み出すことが出来たとも言える。そして彼女の中で蠢く性欲を解消できると考えている。
彼女の意思は私には少しだけ届くが私の存在を知らない、私の意志は夢の中で無意識に伝わることがある。ときどき彼女がペットと交わった後に自分の行いに嫌悪感を抱くのは私の意志が伝わるからであると私は考えている。彼女は力を持つ覚妖怪の一人だ。他の妖怪のように欲望や本能で生きることは出来る。私がいるから彼女は理性を保てるとも言える。
彼女のサイクルは単純だ。
朝、起き上がることが出来ないぐらいの負の感情、自分への嫌悪、闇が彼女の頭を駆け巡る。その時、彼女は両親のことを考えている。彼女が幼い頃、守ってくれた存在だ。両親の思い出を脳内でぐるぐると駆け巡らすだけで今まで駆け巡っていた不快極まりないものが消えるのだ。
午前中は淡々と自分に任せられた仕事を行う。その時に手の爪を噛む。部屋の中に噛む音が響きわたる。彼女の小さな手はささくれを歯で抉った痕があり血が付いていた。
午後はペットや妹と会話をしたりしている。妹と会話する時は常に作り笑いを浮かべている。憎しみを封じ込め信頼、肉親としての愛情を作っているのだ。
夜はペットを部屋に呼び野獣のように犯す。相手が雄でも自分が上位的存在、サディストのように犯していく、それはまさしく獣……。そしてし終わると優越感、満足感以上の悲壮感と後悔の念に襲われる。その感覚に対して快感は得られないようだ。
眠りにつく時、朝と同じように両親のことを考える。朝とは違うのは両親は自分が殺したと考える自負の念を頭いっぱいに考える。そして睡魔の闇に負け眠りにつく。
そう、彼女は両親を殺したのだ。彼女の両親は彼女が動物に対して性的な行為を行う原因を生み出した闇でもある。殺した理由は私には分からない。同属嫌悪で済む問題でもあるし、妖怪の親殺し、子殺しなどよくあることとも理解できた。殺し方は簡単な方法だった。両親が寝ているときに身体に繋がっているコードを鋏で切ったのだ。髪を切る行為と同じように簡単に切れた。母親の赤色の細いコードを四本、全て切り繋がりを無くすと母親は絶叫したのを覚えている。
「ひっ、いやあ゛ぁぁあああぁあ」
繋がりが無くなった覚妖怪は死ぬ。父親は自分の娘によって死が近づくことを知っており悟っていた為、彼女が父親のコードを鋏で切ろうとした時、ぎゅっと抱きしめた後、笑顔で彼女に向けてこう言った。
「愛しているよ。こいしを頼んだよ」
そう言い自分の腕で繋がりを拒絶し引き抜き絶命した。彼女の頭では爆発しそうな電撃が流れた。
頼まれた頼まれた頼まれたこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしこいしなんでなんでお父さんお父さん、お母さんは殺せたのにお父さんは死んだ死んだ結果的に同じなのに何々なになになんでなんでこいしをこいしをこいしこいしああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああみんなにくいにくい幸せしあわせしあわせ恋しい恋しい恋しい恋しい恋しい恋しい恋しい恋しい恋しい恋しい恋しい恋しい愛しい愛しい愛しい愛しい何か、誰か助けて助けて愛してお父さんお母さん、私よ変わって。
私の中に伝わってくる、それはフラッシュバックと意思を波のように表現された意思。
ああ、これが死を直面した禁忌の意思か……。そう私は考えていた。
両親の死から時間が経過すると彼女は外面だけを変えていった。心を読み恐怖させる妖怪の姿ではなく。地霊の主として沢山の純粋な心を持つ動物をペットにしていった。
ただそれは見かけだけである。ストレスのように溜まる欲、周りの者から以前両親がいた時より避けられることが増えた気がすると感じる孤独の寂しさ。妹への恐怖の嫌悪。それが重なり動物を今まで以上に犯した。
少しずつ彼女の世界が脆くなっていった。そして脆くなった世界は彼女の不安、無意識の眠りを蝕んだ。
――プツリ
「うえっ……グっ」
これは悪夢。繋がった私に伝わった断片的な夢。
『かわいい、さとりや』
『何て気持ちの悪い娘。あなたにも私にも似てなかった娘』
『かわいい、こいしや』
『髪があなたにそっくりね、かわいいわ』
『お姉ちゃん、大好き!』
『さとり様、私に何をするんですか……』
『ひィ……止めてください! さとり様』
『さとりや、動物を犯したのだな。してはいけないよ。約束だ』
『動物を犯したって何でなの? さとり?』
『え……お姉ちゃん? どうしたの?』
『嫌だなぁ。あれは私がさとり様にしたことだから私の責任ですよ』
『醜い覚妖怪め。死ね』
『――――――』
「こいし? どうしたの?」
『――――――』
「お母さん、何?」
『――――――』
「……お父さん? 何を言っているの?」
『憐れ』
『醜い』
『闇の』
『世界』
『私よ』
『変われ』
『反転』
『闇』
『光』
『愛しているよ』
――プツリ
パッと私の目が開かれる。彼女が起きたのだ。黒い天井が私の目に吸い込まれるようにそこにある。彼女を見ると涙を流していた。身体をガクガクと震わせ何かに怯えていた。彼女は自分を取り戻すように深呼吸をした。
そこにノック音が鳴り響いた。
「さとり様、起きていますか?」
ペットの声に彼女は涙を拭いベッドから出ると返事をしてペットを部屋に入れた。
「どうしたのかしら、お燐?」
ペットの前である為、平常を取り戻した。そして私を通してペットの心を読む。
『さとり様と交わりたい、さとり様に愛されたい。お空じゃダメみたい』
ペットはさとりへの愛と肉欲を求めているようだった。それを彼女は察しペットの隣に座りゆっくりとペットの身体を手で触れる。ペットは息を荒くし彼女の次の手を待つ。彼女はペットの顔に手をやり、顔を近づけお互いの舌、唇を重ねた。
どれぐらい時間が経っただろうか。私はペットの欲を読み続け彼女はペットと身体を重ねお互いを慰めあい、愛し合った。
「んっ……吸いすぎよ。お燐は赤ちゃんみたいね」
――プツリ
彼女は欲求を満たし、満足したようだ。ペットはすやすやと彼女の隣で寝ている。欲を絶やせないような動物を受け入れたのだ。
「これで、この子と何回目かしら……」
小さな声で呟く。呟きは自分の闇の心を閉じ込めるように理性を表に出すようだった。どうやら、彼女は昔を思い出しているようだ。
そっと、涙が頬をゆっくりと流れ彼女の視界は闇に包まれた。私も目が閉じていくことを確認出来た。
また、夢が彼女を伝わってくる。
闇
闇の訪れ
闇の帳
闇の誘惑
闇の幻影
闇の悪夢
さとりがトラウマを現実で再現するというならさとりはさとり自体がトラウマでありさとりはさとりを具現化する・
他人の意思
正体不明の彼女を包む闇
トラウマ
全てが彼女を纏わりつく 彼女自身から鏡を見るように具現化が始まる
たくさんの小さな粒が細かく動く
水を泳ぐ塊が跳ねるように動く
根を巡らせ土から顔を出して動く
姿は確率され意思は覚醒される
病んだ闇を持つさとりの少女は反対の純粋で光を持つ少女がトラウマとして具現化される。
さとりは逃げる。夢は終わらない。トラウマとの交わりを求めるように少女は追いかける
さとりの催眠術によく似ている。トラウマは反対に嫌い、心に傷を追うように出来ている。
さとりは自らを痛めつける生き物を見て逃げた妹に似たトラウマを見つめる。具現化されたトラウマに心などはない。己も他人との関わりから逃げたと言う言葉からも一緒に逃げる。
そして、呑み込まれた。
ここは闇の胎内、母親の胎内とは違う
何かが変わらないし愛されない
――プツリ
目を開ける。
そこにはいつも見る天井ではなく闇があった。私の目からでもはっきりと彼女の苦しみがわかる。彼女の思い出、苦しみ、欲望がはっきりと繋がりによって駆け巡る。彼女が妹を嫌っていたのは家族同様の同族嫌悪、姉妹としての嫌悪、存在を嫌っていたようだった。しかし、殺すことは出来ない。家族という悲しい呪縛によって……。
一糸纏わぬ姿の彼女は起きる。隣にはすやすやとペットが寝ていた。
タンスから一回り大きなダボダボの服を着て私を丁寧に服の外に出すと部屋を出て淡々と妹の名前を呼ぶ。
「こいし、こいし。どこかしら」
手には鋏を握っていた。どこから手に入れたのだろうか。私にはわからない。彼女の顔を見ると泣いていた。ああ、何と愚かなのだろうか。声は震えずに名前を呼んでいたが涙が頬を伝って口に入りそうだった。
廊下に出ると妹がいた。妹は何も知らない顔、つまり無知の仮面を被って彼女を他人のように眺めているようだった。
「なぁに、お姉ちゃん? 例えばそのいつも見せないような顔やそのお母さんとお父さんを殺した時に握っていた鋏なんか持ったりとかしてさ。まさか、かわいいかわいい妹を殺そうなんてしないよね? お姉ちゃん? それで心臓をブスッと刺したりとかしないよね?」
妹は早口で疑問点を指摘して離れる。ふらふらと追いかけて行く彼女は鋏を握っていない片方の手の爪を口に入れ噛んだ。
中指の爪と千切れそうな肌を噛み、血が流れ痛みが出現する。爪深く噛まず皮膚の部分を深く噛んだようだ。
「大丈夫よ。何も心配しないでこっちにいらっしゃい。さぁ、はやくはやくはやくはやくはやくはやく」
同じ言葉を無理もなく発音をしている。狂っているのだろうか。私と彼女の壁が低くもあり高くも感じる。
その時だった。
「何してるんですか! 止めてくださいよ! さとり様!」
後ろ、つまり彼女の寝室の方から声がした。ペットが彼女を抑えるように声を荒げたのだ。
「あら、お燐。別にいいでしょ。あなただって私を使って性的欲求を満たしたのだから私もかわいい妹を使って欲求を満たしたいのよ。まさか、お燐は私がこんなことをして地霊殿からいなくなってあなたの欲求を満たす存在がお空しかいなくて嫌だ、とは思っていませんよね?」
私を通してペットの醜い心を読み口に出す。ペットは主の顔を見つめるだけで何も言い返さない。正論のような指摘らしいものを主の受け黙ったようだ。そして、また後ろから声がした。
「お姉ちゃん、どうしちゃったの? いくらお燐がそういうダメペットだってお姉ちゃんは認めていたんじゃないの?」
「うるさい。うるさいうるさいうるさいうるさい五月蝿いわよ。あなたと同じではないし私とも違うわ。でもあなたと一緒生まれ育った私は何も違いは起こらないのよ。二人を殺したあの日もあなたが眼を閉じた日も全部、全部あなたと同じなの。繋がりがあなたともあるの。私はあなたを影のように嫌い、だけど白と黒のように違いが生まれて好意が胸から出てくるの。どうして! ドウシテナノ? 教えてよ……私の大好きで大嫌いなこいし……」
何かを話している。私のにはもう聞こえないぐらい遠くに感じてきた。
「知らないよ。他人は他人、自分は自分。何も変わらない、何も愛さないって思っていたのは他人を愛さないで動物に逃げたお姉ちゃんだったでしょ。私覚えているわ」
――プツリ
彼女と私の繋がりが途絶えた。彼女は最後まで愚かだ。私の意志が深き深層心理、無意識に……。 私は死にたくはない。また母親の胎内からやり直し夢を見たくはない。輪廻を繰り返したくはない。
と思う間もなく、掻き消すように私の意識は消えていった。
――プツリ、プツリ
作品情報
作品集:
6
投稿日時:
2013/02/01 15:42:24
更新日時:
2013/02/02 00:42:24
評価:
4/4
POINT:
350
Rate:
15.00
分類
古明地さとり
古明地こいし
悪夢の垂れ流し。邪悪の具現化。
名前では呼ぶけれど、心では一括りにペットと呼ぶ性の捌け口。
死にたくないからやり直す。悪を成して闇の胎内に逃げ込む。
――プツリ。
闇の中 鳴いても無駄な ホトトギス
時折響くぷつりの音がだんだんと耳に残るようになってきて得も言えぬ感覚になっていた
こういうのもいいな
嫌われ者と嫌われ者は惹かれあう。
母親の胎内からやり直したくない? 駄目、もう一度歩もう嫌われ者に付き添う道を。
一蓮托生、君は選ばれた。
俺が覚妖怪じゃないから……?
それとも馬鹿だからか