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『少女達の朝食』 作者: すな
2人分の朝食を作るのは、いつも私の役目だった。
お玉で湯気の立つ鍋の中身をほんの少し掬って、小皿に取る。す、と小さな音を立てて啜ってみると、味噌汁の味は丁度良く仕上がっていた。蓋をして置いておく。
米は先程炊きあがった。あとは焼き鯖だけだ。手の甲程度の大きさのものを2切れ菜箸でひっくり返して、反対側にも軽く焼け目がつくまで待つ。もうすっかり慣れたものだ。
染み出した魚の脂に、じゅう、とフライパンが鳴る。
「――――衣玖ぅ」
いきなり背後から声をかけられて、私は咄嗟に振り向いた。
そこには、彼女が立っている。
「ごめんね、びっくりした?」
「……総領娘様……今日はお早いのですね」
「でしょ?目が醒めちゃって」
心臓が跳ねて跳ねて止まらない。うるさいそれを必死に押し殺して総領娘様に挨拶を返す。
えへへ、と呟く彼女はまだ半分夢の中のように見えた。
「……まだ作りかけですので、座って待っていて下さいね」
はあい、と間の抜けた返事をして、総領娘様はおぼつかない足取りでテーブルの方へ向かった。
まだ心臓がうるさい。ごとごとごとごとごとごとごとごと。落ち着け落ち着け落ち着け。彼女に聞こえないように深呼吸を何度か繰り返す。まだ夢見心地のうちに。悟られないようにそっと。
ゆっくりと最後の息を吐き出すと、動悸も幾分かましになったように思えた。
じゅううう、ぱち。小さく爆ぜる脂。再び鯖をひっくり返そうとして、自らの手が震えているのに気が付く。
とても美味しそうに魚に火が通っていくさまを、私は死んだ目で見下ろしている。
米はやや硬めに炊いて、味噌汁の具はお麩と葱と絹豆腐でシンプルかつスタンダードに。焼鯖は塩味。大根おろしや醤油を直接垂らしての使用はなるべく避ける。
白米、味噌汁、焼いた鯖。総領娘様と一緒に摂る朝食は大体こういう献立だ。
それらを順に安っぽい白色のプラスチックの器に盛っていく。かちゃ、かちゃ、と陶器や木の器のものとは全く異なる軽い音がする。絵どころか凹凸の装飾すらない皿に次々盛られる朝ご飯。まるでピクニックかままごとみたいな光景。
台所を取り囲む空気は、楽しいものでも穏やかなものでもない。私は1人で鬱々と朝食の準備をしている。それを総領娘様は食卓について待っている。
今日の朝ご飯はなんなの、とかいう質問も無ければ、また焼き魚なの?なんて文句もない。同じ空間に居り、互いが覚醒しているにも関わらず、他愛もないコミュニケーションも無しに私たちはただひたすら朝食の支度が出来るまで待っている――――或いは耐え忍んでいる。
嗚呼。
頭の隅の方でひっそり吐いた溜め息が胸の中に沈殿したのと同時に、盛りつけが終わった。味噌汁も白米も湯気を立てている。鯖はそれらと比べて湯気の量では少々劣っていたが、それは皮の方を上にしているからだ。箸を差し込めばじきに湯気がふわりと香る。少々質素ではあるし、一日のスタートを切る食事としては完璧と言えないかもしれないが、まあ差し支えはないレベルだろう。
「総領娘様、お待たせしました。朝ご飯の支度が出来ましたよ」
私がこういうふうに総領娘様の身の回りのお世話をするようになってから、そろそろ1年になるだろうか。
比那名居邸と同じ土地に立った離れ――とはいえ広さは数人家族が暮らしても問題ない程度である――に住まうようになった総領娘様の生活に不自由がないように、とのお達しだった。彼女とそれなりに親しくてこの役割を任せられるのは私くらいしかいない、とは比那名居様の談だ。親から直にそんなことを言われては、引き受けざるをえなかった。
元々そう忙しくなかった龍宮の使いの仕事と平行して、総領娘様のお世話も担当している。というより、最早こっちが本業のようになってしまっている。朝食だけではない。昼食も夕食も掃除も洗濯も全てがいつも私の役目だ。基本的にこの離れから出ることはもう殆どない。すっかり使用人のようになってしまった。
自分と彼女の席の前に朝食を並べていく。湯気を立てる食事を前に、おいしそう、と総領娘様がぽつりと呟いた。
いただきます。2人で静かに挨拶をして箸を手に取った。箸置きがちりんと音を立てる。
総領娘様がお米を箸でとって何口か食べ、味噌汁にも口をつけるのを見て、さあ私も、と魚に箸をつけた。箸先で身を割いて、ああ予想通り柔らかく湯気が立った、と思った瞬間。
――総領娘様の顔色がさっと変わった。
不穏なものを感じて、即座に箸を置く。
「……い………いく……あの、ごめんね……ごめんなさい」
「……何がです?」
「あの、だから、ご飯……先に食べ始めちゃって……」
「え?」
「い、衣玖が用意してくれて、るのに、私先に食べ始めちゃって、」
「そんなことないですよ、ちゃんと一緒にいただきますだってしたじゃありませんか」
「え、ぁ、ぁう、でも、衣玖がお箸付けてからじゃ、ないと食べちゃいけない、かなって……」
どんどん消え入りそうになるのと一緒に、総領娘様は顔を俯けていった。前髪の隙間からきろりと動いた両目が一瞬私を射竦めて、また机上の朝食の方に戻る。爬虫類の目付き。
昨日はいただきますを言う前に箸をつけてしまったと2時間粘った。
私は家長でも何でもないどころか彼女より下の立場であるし、私個人としては別に構わなかったのだけれど、つい折れてしまったのだ――――そうですね総領娘様明日はいただきますしてから食べ始めましょう。私がそう言った時の彼女の瞳の煌めきといったらまるで刃物か何かのようだった。
「ごめ、ごめんね? ごめんなさい……ごめん……」
まるで小動物か何かのように、総領娘様はぶつぶつぶつぶつ呟いている。私にはその頬の動きがリスか鼠に見える。ちまちまちまちま啄むように動く唇は、食べ物を咀嚼し飲み込むのではなく絶え間なく言葉を吐き出しているのだが。
ああいう生き物は硬いものを噛んで前歯を削らなければ、いつか己の歯がその脳天を突き抜けて死ぬという。この少女もそうしていなければ死んでしまうのだろうか?彼女がリスか鼠だとすれば私は何なのだろう。
ちまちま動く唇から念仏のように聞こえるごめんなさいごめんなさいごめんなさい……が、口からぼろぼろ零れて床にぼとぼと落ちていくのが見えるようだ。或いは彼女にとっては本当に念仏なのだろう。まるでそうすれば楽になると信じているかのように、ぶつぶつぶつぶつ。
「いいのですよ総領娘様。貴女は私より位も高いのですし」
「で、でも」
「私は総領娘様のお世話を頼まれていますから。きちんと召し上がって頂くのを確認しませんと」
「でもっ、ご、ご飯作ってくれたり、してくれて……い、衣玖だって仕方なくやってるだけで……ほんとは、した、したくないでしょ?」
「総領娘様はそんなこと気になさらなくても――」
溜め息混じりに呟いた途端、彼女の周りの空気がじわりと変わった。
――――しまった。自分の背中が強ばるのが分かる。
凍っていくと言うより、濡れた紙が乾いていくと言う方が正しいだろうか。びたびたしていたものがひしひしと張り詰めて、よれて皺になるあの歪つな感じ。
彼女の目の色が一層濁る。なのに刃物のようにぎらついている。そんな変化に気付いたのも、総領娘様の伏せがちだった目が見開かれてこちらをひたりと捉えたからだ。先程のように一瞬ではなく。じっとこちらを見ている。凝視している。私の首の辺りを嫌な感じが忙しげに這い回る。見開かれた目につられたように小さな唇が開いて。
「…………そんなこと?」
「総領娘様っ」
「そんなことッて何よおぉおおォおっ!!!」
叫びながら、総領娘様は右手を薙いだ。
反射的に自分の頭をかばう。飛び散るお米。味噌汁。魚。私のも彼女のも皆等しく宙に舞う。
からころん、と軽い音がして朝食の皿が床に落ちる。
「ゎたっ、私悪い子なのよ!!? わたしっ、私が悪い事してるって衣玖知ってるくせになのにどうして怒らないのよ!」
嗚呼。瞑った目をそろそろと開きながら私は、内心神に祈る気持ちでいた。
こういう時総領娘様はいきなり暴れだす。癇癪という言葉で片付けるには病的な程の勢いで。食事時なら料理が盛ってあろうとなかろうと構わず手当たり次第に薙ぐ。投げる。叩き付ける。だからとうに食器は全てプラスチック製のものに変わっていた。フォークは尖っていて使えない。スプーンも重さがあると危ない。ましてや、ナイフなんて。
「衣玖は!! 私のことなんてどうでもいいんだああ!!! ごめんねって言ってるのに意地悪してるんだ!! 私のこときっ、きらいだから許してくれないんだ! 私のそばにいるのもう嫌になっちゃったんだ!!! 食器だって! 私のお気に入り捨てて意地悪してるんだ!!!」
「っ、総領娘さ」
「何で! 何でよ!!! 何で食器変えちゃったのよ! 気に入っていたのに!! 衣玖のばか!! 衣玖なんか死んじゃえ!」
――――食器を変えたのは総領娘様がそうやって何でもかんでも構わず放り投げてしまわれるからです。どこにそんな力があったのか、陶器はもちろん木の器だって叩き割ってしまって。そのお気に入りの食器を随分前に割ったのは総領娘様ではありませんか。
それらの言葉も返せず私はただただ罵声と飛んでくる食器から身を守っている。
もうフォークもスプーンもナイフも使えない。以前酷い目にあった。フォークは突き刺すためのもので、スプーンは抉るためのもので、ナイフは切り裂くためのものだから。
焼き魚に醤油を垂らして、それに大根おろしを添えるのなんか、私の好物なのだ。こうなる以前はよく朝食に食べていた。でも今は駄目だ。こうなった総領娘様に醤油の容器と大根おろしを投げつけられて、それらが目に入るとどれだけ痛くて視界を奪うのか嫌というほど体験したから。
彼女がリスなら私はクルミか何かだろう。カリカリカリカリ削られて割られて中身を抜かれてぽいと放られるだけの。中身に夢中な彼女の後ろの方で、その辺に捨て置かれた私の殻はからから空虚な音を立てているだろうか?
私を怒ってくれない、想ってくれない衣玖なんか死んじゃえ。全ての怒りはそこから湧き出ているようだ。
何故私なのだろう。何故私でなければならなかったのだろう。彼女が私にこんなにも執心する理由は何だ?
リスが木の実ばかりを食べるように、そもそも彼女も私でなければならないのだろうか?
私の外側をカリカリカリカリ削っては中身を貪っている彼女が、放り投げた殻だってクルミの一部であることに気が付く日は来るのだろうか?
下らない――――すくめた首に鈍い痛みを感じながら吐き捨てた。
そのうち、彼女の罵声にかひゅかひゅという音が混じり始めたのに気が付く。過呼吸だろうか――私はそのまま数歩後ずさりし、急いで袋を取りに走る。
「わっ、わあひっ、ぅあっい、あ、おこ、ぁぅ、ううぅ、ぅげ」
口を開けたままぱくぱくさせているのが見える。赤らんだ顔にぽっかり空くもっと真っ赤な穴。の中に浮いている白い歯。白魚のような指が胸の辺りを押さえて――そのうちに、咽喉を息が通る音に濁りが混じり始める。丸まる背中。下がる頭。総領娘様はとうとう膝を付いてしまった。
嘔吐だ。
この感じでは、袋はもう間に合わないだろう。
「おっ、おごっ、ぉうぇェェろぇえぼおォっ……」
びしゃびしゃばたびしゃ。ぼた。
私が早々に諦めたのとほぼ同時に、水分を含んだモノが床に叩き付けられる音が耳に届く。私が小走りから歩くのに切り替えて彼女のところに辿り着くまで、総領娘様は途切れ途切れに先程食べた朝食を吐き戻していた。
ぼろぼろと涙や鼻水を垂れ流すのと一緒に、味噌汁に入っていた豆腐なんかが咀嚼されたそっくりそのまま出てきている。食べたばかりなのだから当たり前か。そして昨日の夕食と思しきものがびたびたと出て、そのうち吐瀉物が糸をひいてくる。饐えた臭いがそこら中に広がって、私の鼻腔の奥を刺激していく。
嘔吐くのを堪えつつ、総領娘様の側に跪いて背中をさする。
「ぁっ、あーーっ、はあーーーっ、あぁーっ…」
総領娘様は、涎とも胃液とも鼻水ともつかないねばついたものを垂れ流しにしながら、大きく息をしている。もう戻すものもなくなったか。顔の赤みも幾分かましになったようだった。
「大丈夫ですか?」
「んずッ、ぅご、んぶ……こほァッ、ぉええっ、ぇほっ……ごほっ……」
鼻先からぶら下がる色々なものが混ざり合った粘液。咳と一緒にぽとぽと落ちる葱や豆腐の欠片。つられて私の喉元にも酸っぱいものがせり上がる――吐いてなるものか。自ら仕事を増やすなんて。
あんなに上手く出来た味噌汁も、白いご飯も。ぐちゃぐちゃの訳が分からないものになってしまった。とろり、また力なく開いた総領娘様の口から濁った涎が一塊落ちる。
「ぅあぁ、あぶ、ぉぁ……あ」
しばらく自分の吐瀉物を見つめながら肩で息をしていたと思ったら、総領娘様はぶちまけられた食べ物達をかき集め始めた。
何故だろう、砂場で子どもが山を作るのと動作は全く一緒のはずなのに、比べ物にならないほど異様なものに見えるのは。そんな事を考える。止めよう、という気は起こらなかった。集めた吐瀉物をぶつけられるのはごめんだったし、この状態の総領娘様が何をしたってもう驚けない。
にちゃ、とかねちゃ、とか生理的嫌悪を催す音をさせながらかき集めてかき集めて、彼女の目の前には直にぐずぐずの小山が出来上がっていた。砂場ならばバケツでも被せるところだろうか。それともトンネルでも掘るところだろうか。吐瀉物を掘り進めて向こう側の総領娘様と手を繋いだなら、お互いの手は胃酸でぴりぴりしていることだろう。
馬鹿なことを考えている間に多少落ち着いたのか、総領娘様がのろのろとこちらを見る。つんのめるような体勢で吐いたせいで流れ込んでしまったのだろう、鼻の穴からも細く吐瀉物らしきものを垂らしていた。
彼女が軽く口を開くとすっかり静かになった台所に粘着質な音が響く。ぱく、と一度だけ躊躇するような動きをして、掠れた小さな声が絞り出された。
「っ……ごめ、ごめなさっ、ごめ……食器…ごはんも……ご……衣玖、死ね、なんて……死ねなんて嘘よお……死んじゃやだよぉ」
途切れ途切れな懇願。
ぞっとした。
心底ぞっとした。
何度体験しても慣れない。毎度毎度微妙にシチュエーションは違えど、大方同じようなことは幾度となくあったのに。慣れない。まともな精神を持つと自負する者ならば慣れてはいけないのかもしれない。それでも慣れてしまえたなら随分楽だったろうなと思う。すかさず彼女と一緒になって吐瀉物をかき集めて、トンネルの中で手を繋ぎ合えて無邪気に微笑んでしまえるくらいに、慣れて。
総領娘様は、ぐちゃぐちゃになった顔で、べちゃべちゃになった手で、めちゃくちゃになった言葉で、私に縋る。涎と吐瀉物がごっちゃになった液体を口から垂らして長い髪の毛を真っ赤な顔に貼り付けて振り乱して、ただ瞳だけがぎらぎらと、ぎらぎらとひたすらに私を捉えている。
背中を悪寒が駆け上がっていく。瞼が、頬の筋肉が勝手に引き攣るのが分かる。ぴく、ぴくく、と軽い痙攣が出る度に、総領娘様の瞳のぎらぎらが冴えていくようで、私は。
私はこの人が怖い。心底怖い。
そうだ彼女の言うとおりなのだ。言いつけられているからここにいるだけだ。もうこの人のそばにいたくないのだ。
地雷の設置場所は毎日、時には毎時変わるから迂闊なことは言えないし、正直気が触れてしまったとしか思えない振る舞いも、吐瀉物や過呼吸のあとそこらじゅうに垂れ流された涎を掃除するのももう沢山だった。ご両親だって自分たちが世話や後片付けやをしたくないからと私に厄介を押し付けてしまって。そうして私は彼女の些細な行動や仕草にさえ恐怖を抱いている。彼女の気配がする度に心臓がごとごとうるさくて。皮膚の痙攣も震えも止まらなくて。
私は逃げたい。この立場からこの状況からこの少女から。全て放り棄てて居なくなってしまいたい。
「ごめんね、いく……」
鼻水と味噌汁の塩分でがびがびになった声でそう言いながら、この少女はへらりと笑っていた。私をこんなに追い込んでおいて、卑屈に、そうすれば楽にでもなれるかと言わんばかりに、薄気味悪くへらへらと。
――どんな形であれ総領娘様が笑うのは、近頃めっきり減ってしまっていた。
彼女は日に一度しか笑わなくなってしまった。こうやって私に当たり散らして、ぐずぐずのまま全身で私に支離滅裂な好意を示したその後にしか。
あんなに愛想笑いをしたり、あからさまに何か企んでいる笑みを浮かべたり、腹を抱えて笑ったりと忙しい表情をしていたのに、もうふと礼を言われる時に微笑まれることすら無い。
どんな形であれ――以前の快活さなど微塵も感じさせないまでに変貌してしまっているとはいえ、総領娘様が笑わなくなったら。本当に、もう元には戻れないような気がして。
「……いいのですよ、総領娘様」
つい、つい心にもないことを言ってしまう私がいて。
瞼の痙攣は治まらない。今も右の方がぴくんぴくんと別の意志を持ったように跳ねている。
怒り狂う直前のそれと文句は同じはずなのに、こういう時だけ総領娘様は愚図らない。心にもない台詞だ。私はこうしている間もおかしくなりそうなくらいこの少女が怖いし、叫んで逃げ出してしまいたい。
でもきっと、どこかで期待はしているのだ――滑稽なほどに怯えながら。誰にも逆らえないまま。皿をプラスチックに取り替えながら。自分はクルミだなんて馬鹿な想像をしながら。ストレス性の瞼の痙攣に合わせて。ひょっとしたら、もしかしたら、以前の総領娘様に戻ってくれるかもなんて甘い期待を。
私の心の隅っこの方に僅かに残っているそのにおいを嗅ぎ付けて、総領娘様は笑うのだ。私ここに居ていいんだ、あなたの隣にいていいんだ。そんな風に薄気味悪く笑うのだ。
「明日は、一緒に箸をつけましょうね」
「…………うん……」
ひどく汚れた手が私のスカートの裾を掴む。もう、朝食を薙いだ時のような力はない。
私はそこに、そっと自分の手のひらを重ねた。
可哀想で自業自得な衣玖さんの朝の一幕でした
傲岸不遜さなんて見る影もなくなった豹変型メンヘラ天子ちゃん可愛い
投稿した文章にコメント・評価等有難うございました
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「緑髪緑眼ミメティック少女」に質問下さった方へ
大変遅くなってしまいましたが、「緑髪緑眼〜」のコメント欄に返信しました。
ここを見て下さっているか分かりませんが、よろしければ御覧下さい。
すな
- 作品情報
- 作品集:
- 6
- 投稿日時:
- 2013/02/21 21:48:00
- 更新日時:
- 2013/02/22 06:48:00
- 評価:
- 4/4
- POINT:
- 400
- Rate:
- 17.00
- 分類
- 天子
- 衣玖
- メンヘラ
- 嘔吐
ただ、ゾッとする様なSSでした。
その実(じつ)はプラスチックの器の如く、美味しい食事を盛られようとも、それをぶちまけられようとも、叩きつけられようとも、割れず、傷つかない、単なる無感動なモノ。
常にうつろう危険地帯となった天子ちゃんとお似合いだね、衣玖さん。
とても美味しくいただけました。
メンヘラは相手するだけ無駄