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『産廃10KB「はくれいのみこ」』 作者: 穀潰し
ある神社に、はくれいれいむというみこの少女が住んでおりました。
れいむはとてもすごい力を持っていて、その力でいろんな異変を解決していました。
ある時は奇妙な霧を出す吸血鬼を。またある時は暖かさを盗んだ亡霊を。
いろんな強敵を倒してきました。
すごい力だ。
さすがはくれいのみこだ。
異変を解決するたびに、そんな言葉をかけられていました。
れいむもそんな自分の力を不思議と思わず、ただそういうものだと納得していました。
そんなある日、れいむはよく神社に来るまりさという少女に言われました。
れいむはなんで、そんなに強いんだ?
その問いにれいむは答えられませんでした。
改めて考えれば不思議なことです。
ただの人間である彼女が、吸血鬼や亡霊に勝てるなんて。
その疑問に知り合いであるスキマ妖怪が答えます。
それはアナタがはくれいのみこだからよ。
答えになっていない答えに、しかしれいむは納得しました。
そうか、私ははくれいのみこだから強いのか。
そうよ、れいむははくれいのみこだから強いの。
そうか。
それからも彼女は、異変を解決していきました。
宇宙人に、鬼に、神様に、地獄の烏に、天人に、魔法使いに、神霊に。
どんな相手でもれいむは負けません。
もはや異変が起こり、それをれいむが解決すると言う図式に、誰一人として疑問を持たなくなりました。
それほどまでに、れいむは圧倒的だったのです。
すごい力だ。
流石ははくれいのみこだ。
なんども繰り返された言葉。それをれいむが不思議に思うことはありませんでした。
周りも、そういうものだと納得していました。
ある日、れいむは人里で買い物をしていました。
そんな彼女に里の子供がちょっかいをだしました。
なんのことはありません、丸めた紙くずを投げつけただけのことです。
ただたんに、巫女と言うものが珍しかっただけかもしれません。
善悪も判らない子供にとってただの挨拶にも似たものでした。
投げられた紙くずは綺麗に宙を舞い、ぽこん、とれいむの頭に到着しました。
当のれいむは頭にあたった紙くずが地面に落ちて、ようやくそのことに気付く始末でした。
その光景に、周りに人たちは苦笑を浮かべます。
みこさんも、たまには気を抜くらしい。
くすくす。
はははは。
笑い声があたりに響きます。
それにれいむは憮然とした表情を浮かべ、その場を後にするだけでした。
別の日、れいむはまりさと弾幕ごっこをしていました。
ふつうのまほうつかい、きりさめまりさと、はくれいのみこ、はくれいれいむの勝負は、当然と言うかれいむの勝利でした。
未来でも見えているような先読みにどれだけ密度を高めてもまるで弾自体がすり抜けているような回避。
結果として、まりさは自分の放った攻撃を一発も当てられず、反対にれいむの攻撃はその殆どを体に受けることとなりました。
まりさが帰った後、れいむはふとこの前のことを思い出していました。
子供にぶつけられた紙くず。それがずっと気に掛かっていたのです。
まりさの弾幕を避けられる自分が、何故たった一個の紙くずを避けられなかったのか。
注意が向いていなかったから?
いいえ、異変の最中には不意打ちを食らうことなどよくあることです。もし注意云々なら、今頃れいむは存在していないでしょう。
殺気や気配が無かったから?
いいえ、殺気はまだしも、子供からはぶつけてやろうという気がありありと溢れていました。むしろ何故気付かなかったと言えるほどです。
自分にとって脅威ではなかったから?
いいえ、『被弾する事』が負けとなる弾幕ごっこ。その世界に身を置いているれいむにとって、威力が無いから避けない、などは理由になりません。
では何故?
答えは簡単です。
単に、れいむが反応できなかっただけなのですから。
子供の気配に。
迫ってくる紙くずに。
それに気付き避けるだけの身体能力が無かったのですから。
その事実は、とても、とても、不思議なことでした。
悪魔に亡霊宇宙人。鬼に神様天人神霊。
ありとあらゆる怪異を相手取って勝利してきたれいむに、子供のちょっかい一つ避ける力が無いとは。
あ、とれいむは気付きました。
異変の時、『はくれいのみこ』として、自分は比類の無い力を発揮します。
では、普段の『れいむ』としては?
はくれいのみこではなく、ただの何処にでもいる少女としたら?
ざわり、と心が揺れました。
そんなことは無い、私は強いんだ。
今までだって、そしてこれからも。
しかし一度浮かんだ不安は消えません。
だかられいむはもう一度、スキマ妖怪に訊ねました。
私は本当に強いのか、と。
誰でも良い、『れいむ』は強い。
そう言ってほしかった。
スキマ妖怪はにっこりと笑って答えました。
『はくれいのみこである』れいむは強いわ。
正直で残酷な言葉。それはつまり―――。
ある晩、れいむはこっそりと妖怪退治へと赴きました。
幻想郷の安定を図るはくれいのみこ、としてではなく、一人の少女、れいむとして。
彼女の頭の中には、昼にスキマ妖怪に言われた言葉がぐるぐると回っています。
『はくれいのみことしてなら』
そんなことは無い。
肩書きなんて無くたって、私は強い。
はくれいじゃなくて、れいむが強いんだ。
そう思いたかったのです。
その証拠がほしかったのです。
だから少女はいつもどおり妖怪退治に出かけました。
いつもと違い、ただの少女として。
絶叫と、血飛沫と、何かを齧る音。
水に溺れたような少女の助けを求める声と、知性の欠片もない畜生の息遣い。
ぼりぼりぐちゃぐちゃと嫌な音。
少女の腹部に齧りつき、柔らかい中身を堪能する妖怪。
痛みと絶望に大粒の涙を零しながら、残る力を振り絞って妖怪を押し退けようとする少女。
でも無駄。
だって普通の少女が妖怪に勝てるはずなんて無いもの。
こちらに気付いた少女が手を伸ばす。
見知った相手に。
それに答える。
役割をこなせないのなら、舞台からは退場してもらうしかないでしょう?
見捨てられたと絶望に見開かれる少女の瞳。その瞳から光が消えるのも時間の問題。
さて、次の娘はちゃんと『はくれいのみこ』でやっていけるかしら。
くるりと踵を返してスキマの中へ。
私は『はくれいのみこ』を導く者。
閉じた世界での役割。
それは決められた物。
さぁ、しっかりとこなしましょう。
アナタはそれを。
私はこれを。
それしか演じられないのだから。
登場キャラ、とはその役だからこそ、キャラが立っている。
ではそれを除いたら?
あら不思議、モブへと早変わり。
霊夢ちゃん食べたい。
>1氏
霊夢ちゃん美味しいです。
NutsIn先任曹長殿
役者不足でした。相応の役で満足していればよかったのに。
下手に背伸びするからこうなる。
>3氏
そう、博麗が強いのであって、少女が強いのではない。
>汁馬様
次の博麗はきっとうまくやるでしょう。
>機玉様
必要ならば知らされますし、知らされないのなら知る必要は無い。
その辺りの処世術ももう少し長生きすれば身についてのではないでしょうか。
>さとしお様
有難うございます。今回は一テンポで読みきれるか、というのも若干考えて見ました。
>まいん様
やっぱり設定上強い子って泣かしたくなるよね!!
少女としての妖怪退治はあれです、初めてのおつかい、みたいなノリで。
>あぶぶ様
にょろーん
>pnp様
紫、この人でなしー!!
>ちゃま様
有難うございます。個人的に一時設定は大事にしたいと思おうかなと考えているフリをしています。
>んh様
有難うございます。しかし私の脳みそではこれ以上の掘り下げはどうにも……。
>町田一軒家+様
残念ね、私も役をこなしてくれない役者はいらないの。
>山蜥蜴様
その監督も、監督という役割を与えられたモブの一人。総じてこの世は舞台である。
>矩類崎様
シンプルというお言葉は私にとって最上級の褒め言葉です。
可哀想だからこそ、お話は引立つのでしょう。
>紅魚群様
そういうキャラだから愛される。ではそのキャラを辞めたときは?
少しでも考えて頂ければ幸いです。
>16氏
もっとぐちゃぐちゃに描きたかったよ……
>17氏
刺激があってこそ活性化もある。
折角のドンチャン騒ぎ、のらなきゃ損です。
穀潰し
作品情報
作品集:
6
投稿日時:
2013/02/25 01:38:47
更新日時:
2013/03/13 19:15:54
評価:
17/18
POINT:
1480
Rate:
15.84
分類
産廃10KB
博麗霊夢
返信
芸能人だろうと、博麗の巫女だろうと、プライベートでヘマをやらかしたら、舞台から追放。
次回からは新キャストでお送りします。
でももういなくなっちゃったね
役目を外れた途端に何も出来なくなってしまう霊夢が可愛かったです。
しかし、一人の少女として妖怪退治ってどういう状況なんだろうか
個人的には、ここからもう一歩突っ込んだ霊夢像が見てみたくもありました
シンプルですが、きれいにまとまったお話でした。
代役が幾らでも効く時点で、それは既にエキストラなのではないだろうか。
周りの全てがエキストラなら舞台に居るのは監督一人。
はくれいのみこだから強い。不思議な話だが、そういうものなのだから仕方ない。
もっとぐちゃぐちゃになってもよかった。