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『産廃10KB 「かぐや姫を育てよう!」』 作者: 零雨
瘴気渦巻く、不気味な森に住まう普通の魔法使い、霧雨魔理沙。
彼女は同じく森に住む人形遣い、アリス・マーガトロイドからあるものを貰って上機嫌であった。
「いやー、いいもの貰っちまったぜ。まさかちょっと研究を手伝っただけでこんなもんがもらえるなんてなー」
魔理沙の目の前には、硝子のようなもので出来た透明な箱が置いてある。
大きさは80cm程度で、狭い部屋の中で異質な雰囲気を放っている。
これが今幻想郷で流行っている『ぷち幻想郷セット』だ。
箱の中に仮想空間を作り出し、そしてその世界でランダムに選ばれたキャラクターとともに暮らす、というものである。
「さて、誰が選ばれるのか楽しみだな……。しかし、妖精メイドとか毛玉とかになったら最悪だぞ……」
そう言いながら箱に魔力を送り込む。魔理沙の魔力に呼応して、透明な箱の表面が妖しく輝く。
そして一層激しく輝いたかと思うと、パッと光が消えた。
光が消えた箱の中に鎮座していたのは、見覚えのある長い黒髪の少女。
「げぇ! 輝夜かよ! ……まあ、顔を知ってる奴だからまだアタリといっても言いかな」
箱の中に現れた小さな輝夜は、魔理沙の叫びなど気にも留めずに、リアルに再現された永遠亭の一室で寛いでいる。
げんなりとした調子でため息をつく魔理沙。その視界にあるものが映った。
いつの間に現れたのか、箱の傍には小さなリモコンがあった。
魔理沙がそれを手に取り、適当に十字型のボタンを押す。
それに反応して、箱の中の輝夜が起き上がり、ふらふらと部屋の中を歩き出した。
「おっ、これで輝夜を操作できるのか。じゃあこっちのボタンは何だ?」
先程押したボタンとは違う、青いボタンを押す魔理沙。
すると、箱の表面にうっすらと文字が浮かび上がってきた。
蓬莱山 輝夜 レベル1
魅力 5 スタミナ 50/50
体力 2 霊力 20/20
知識 4 経験 6
「ふむ……。これが高いのか低いのかは分からんが、なかなかいいんじゃないか? スタミナは歩いたから減ったのかな……」
とりあえず、魔理沙は全てのボタンを試しに押してみることにした。
その結果分かったのは、十字型のボタンがそれぞれの方向に対応した移動、青いボタンが能力表示、赤いボタンが弾幕発射、緑のボタンが周囲の探索だった。
そして白いボタンを押すと、箱の表面にアイテム購入画面が表示された。
「アイテム購入? お金を払ってまでするようなもんじゃないだろ……」
アイテム購入画面に映っていたアイテムはどれもお手軽と言える価格ではあったが、魔理沙は特に何かを購入するわけでもなく、そっと画面を閉じた。
購入画面が消えると、永遠亭で寛いでいる輝夜が再び表示される。
「永遠亭にいても面白くないし、ちょっと移動してみるかな」
移動ボタンを押し、輝夜を永遠亭から外へと誘導する。
ようやく永遠亭の入り口にたどり着いたところで、輝夜の目の前にてゐが現れた。
「このてゐも誰かが操作してるのか? 案外身近なところに操作してる奴がいたりするかもなー」
感心したような口調でそう呟いて、てゐの横を通り過ぎようとする。
が、あろうことかてゐはいきなり輝夜に向けて弾幕を放ってきた。
てゐの手から放たれた弾幕は、輝夜の後頭部に炸裂した。
「は? おい、なんだよこれ!?」
地面に倒れた輝夜に、てゐは容赦なく弾幕を浴びせ続ける。
表示されているスタミナゲージがぐんぐんと減っていく。
必死に輝夜を逃がそうとする魔理沙の努力も虚しく、スタミナゲージが0になってしまった。
画面が真っ暗になったかと思うと、おどろおどろしい赤色で『GAMEOVER』という文字が浮かび上がってきた。
「何なんだよ……。まさか、死んじまったのか?」
真っ暗な画面は魔理沙の問いには答えない。『GAMEOVER』の文字が魔理沙を嘲笑うかのように、赤く輝いている。
しばらく待っていると、文字が消え画面が再び輝夜を映し出した。
永遠亭の前で倒れているようだ。
てゐはもうどこかに行ってしまったのだろう。辺りは静まりかえっていた。
「お? 死んだわけじゃないみたいだな……。いや、輝夜だからリザレクションしたのかもしれないな……」
そう呟いて、輝夜を起き上がらせる。
そこで魔理沙はあることに気がついた。ステータス画面の表示が先程とは違っている。
蓬莱山 輝夜 レベル1
魅力 5 スタミナ 50/50
体力 1 霊力 20/20
知識 4 経験 7
「経験が増えて、体力とスタミナが減ってるな……。もしかして、スタミナが0になるたびにステータスが下がるのか?」
言ってから、魔理沙はアイテム購入画面をぼんやりと思い出した。
確か購入画面には死亡時のステータス減少を減らすというアイテムがあったような気がする。
改めて購入画面を見て魔理沙は考え込む。
折角新しい遊びを始めたのに、よく分からないまま放り投げるのは癪だ。
しかも、別のプレイヤー、おそらく"こちら"の幻想郷に住む誰かだろう。
ソイツが自分を倒していい気になってると思うと、無性に腹が立ってくる。
それが霧雨魔理沙という人間の性格であった。
「よし……。アイテムを買って、さっきのてゐに仕返ししてやるぜ……」
購入画面からいくつかのアイテムを選択し、代金を箱の側面にあった投入口に入れる。
魔理沙が購入したのは強化アイテムだ。ステータスを恒久的に上昇させる、少しばかり値の張るアイテムだった。
早速手に入れたアイテムで輝夜を強化する。
蓬莱山 輝夜 レベル1
魅力 11 スタミナ 50/50
体力 7 霊力 20/20
知識 10 経験 7
「ふふん、これでかなり強くなっただろう。よし、てゐの野郎を吹き飛ばしてやるぜ!」
『ええ、そうしましょう』
画面に文字が浮かび上がる。どうやら、画面の中の輝夜が発したようだ。
画面の中の輝夜が言うには、知識の値が10以上になると意思の疎通ができるようになるらしい。
「これはなかなか面白いな……!」
『さあ、早く私を操作して頂戴。イナバを倒しに行くんでしょう?』
画面に表示される輝夜の言葉に頷いて、操作に戻る魔理沙。
運のいいことに、捜索を始めて数分でてゐを発見することができた。
永遠亭を出てすぐ先の竹林で体を休めていた。
『隙だらけね。今のうちに倒してしまいましょう』
輝夜の言葉に頷き、魔理沙はボタンを押す。
淡く輝く光弾がてゐにめがけて勢いよく飛んでいく。
光弾は休憩していたてゐの顔面に直撃し、てゐを大きく弾き飛ばした。
弾き飛ばされ、ばったりと倒れたてゐはぴくりとも動かない。
『どうやら、今の一撃で倒してしまったみたいね』
「一撃か……」
想像以上にアッサリと復讐を遂げた魔理沙は、一瞬呆気に取られたが、すぐに喜びが湧き上がってきた。
現実の弾幕ごっこで勝利したような爽快感。勝利とはいいものだなと魔理沙は改めて感じたのであった。
「よし、この調子で他のやつらも倒しに行くか!」
『そうね。私が一番強いってことを、他の人間に思い知らせてやるのも悪くないかもね』
意地悪そうににやりと笑う輝夜。魔理沙にはその笑顔がすごく頼もしいものに見えた。
『ぷち幻想郷セット』が世に出回ってから数ヶ月が経過した。
魔理沙の操る輝夜は今、『ぷち幻想郷セット』の中では最強のキャラクターになっていた。
最初は低かったレベルも、今は84という高レベルになっている。
輝夜の次に高いレベルのキャラクターがレベル57だから、これは桁外れの強さである。
最強を目指した当初は、レミリアやアリスなどのキャラクターに行く手を阻まれたが、今は誰も輝夜を止めることはできないでいた。
いまや横に並ぶ者のいない最強プレイヤーである魔理沙の一日は『ぷち幻想郷セット』で始まる。
朝早くに起き、人里に多くいるキャラクターを数人狩ってから朝食を取る。
その後、昼ごろまでは仮想の幻想郷内のあちこちを回って、高レベルキャラクターを狩る。
レベルがかなり離れているので輝夜が負けることはないが、とにかく時間がかかる作業だ。
それが終わると軽めの昼食、最近はパン一枚だが、を食べて夜遅くまでひたすらアイテム収集をしている。
深夜2時くらいになると眠気がやってくるので、大量に作ってあるシチューを食べ、軽く体を洗った後に眠りにつくのだ。
ここ数ヶ月はずっとこの調子である。
そんな魔理沙は今日も『ぷち幻想郷セット』で遊ぶために箱に魔力を送る。
箱が妖しく輝き、輝夜が画面の中に現れる。
はずだったのだが、今日は違っていた。
「なかなか起動しないな……」
苛立った口調で魔理沙が呟く。と、それに呼応するように画面に文字が表示された。
『ぷち幻想郷のサービスは停止いたしました』
『GAMEOVER』の文字よりももっと毒々しい赤色の文字が画面の上で輝いている。
一瞬何が起きたのか理解できずに硬直した魔理沙だったが、すぐに我に返った。
「はぁ!? おいおい、どういうことだよこれは! サービス停止なんて聞いてないぞ!」
怒鳴り散らして箱を叩くが、画面は相変わらずサービス停止の一文が表示されているだけだ。
散々怒鳴って疲れきった魔理沙の瞳から涙が溢れ出す。
拭っても拭っても、とめどなく溢れ出してくる。
「返せよぉ……! 私の輝夜を返せぇ……!」
ぼろぼろと大粒の涙を流しながら訴えるが、当然返ってくるわけがない。
魔理沙は知る由もないが『ぷち幻想郷セット』のサービスが停止したのは、ほとんど魔理沙のせいであった。
課金アイテムによるステータスの強化に加え、狂ったかのように画面の前に張り付き続けてのプレイ。
魔理沙ほどこのゲームに執着しているプレイヤーは他にいなかったのだ。
そんな魔理沙が他のプレイヤーを狩るものだから、ゲームの人口が減っていき、最終的にはほぼ無人の状態になっていた。
それに気がつくこともなく、魔理沙はひたすら他のキャラクターを狩り、アイテムを収集し続けていたのだ。
「どうして……どうして……!」
きのこ採集や魔法の研究もやめて、ひたすらこのゲームに打ち込んできた魔理沙の手元に残ったのは、途方もない喪失感と、役に立たない箱のみである。
何もかも失って一人ぼっちになった魔理沙。その泣き声が、部屋の中に虚しく響き渡った。
作品情報
作品集:
6
投稿日時:
2013/02/25 07:27:28
更新日時:
2013/02/25 16:27:28
評価:
18/20
POINT:
1540
Rate:
15.65
分類
産廃10KB
輝夜
魔理沙
メビウスオンラインを思い出しました
遊びに本気になり、楽しい時間が終わると人生もオワタ状態になる。それが魔理沙クオリティ!!
でも欲しいな。
いやぁ、ああいうゲームって人を可笑しくするから怖いですね〜
昨今のゲームシーンを取り巻く諸問題に訴える風刺作品。
面白かった。
その事を忘れた当然の結果と言えますね。
魔理沙にはこういう愚かさが似合いますね。同時に輝夜より魔理沙メインだった感もありますが…。
知能10 体力1 魅力99に調整したい
意思の疎通が出来るならその分サービス停止のショックは大きいだろうなあ……でも数ヶ月なら少ししたらまた立ち直れるかも知れませんね。
皮肉たっぷりの結末で面白かったです。
この魔理沙には一人で出来ていくらでも遊べるera東方を勧めたい。
ワッツカグヤ
それまで費やしてきたものを無駄にしたくないんだよ