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『産廃10KB「亡き富士見の娘へ捧ぐ」』 作者: んh
私は桜が大嫌いだ。
「……じゃ、蓮子、お願いね……」
そう告げるメリーの息遣いは荒い。頬は紅潮し、放っておけば昏倒してしまいそうだ。私は仰向けに寝そべり、目を瞑る。心の準備が整う前に、たちまち服を剥ぎ取られた。脱がすためだけに着ていた服を。
「あぁ、綺麗……んちゅ、んん」
舐め回されているのは臍のあたりだ。胸と太ももを撫でるのは細い指。私は力を抜き、ひたすらに息を殺す。
「ハァ、ハァ……んむ、ちゅ……」
乳首を嬲られる。少し伸びた爪が時折引っかかる。内ももでは、5本の指が芋虫のように蠢いている。閉じていた瞼に思わず力が入る。
「ん、むちゅ、素敵よ、とっても……子、んむ」
腹を貪っていた舌が、つぅっと乳房まで這い上がってくる。太ももの手は恥丘の茂みへ。乳首にあった手は私から離れ、代わりに聞こえてきたのは粘液の音。自分の秘所を慰めだしたのだろう。ベッドに立ち込める淫臭が、むっと濃さを増す。
「……子、……んこぉ、あぁ、綺麗よ……んぷ、ぇんこォ……」
譫言のように名を呟きつつ、乳首にむしゃぶりついてくる。啄まれてしまいそうなほど、激しく、執拗に。体がぞわぞわ震え出す。
「あぁ……綺麗、本当に綺麗……あぁ、んぶ、むぶちゅ、れろ、ンハァ……」
指がクリトリスに当たった。体の芯に電気が走る。身悶えしそうになるのを必死でこらえていると、柔肌がのし掛かってくる。吸い付くような乳房に、撓垂れ掛かる髪の毛。間違いなくメリーだ。震えが少しだけ収まる。
「ごめんね……子、本当にごめんね……ハァ、ハァ、あぁ……ん」
舌が、じわじわと近づいてくる。乳房から、鎖骨、首筋、耳朶へと。湿った息が髪を濡らす。震えがぶり返してきた。怖い。
「……んこぉ、ごめんね、本当にごめんね、んぶゅ、許して……」
かくも空虚な逢瀬も、また愛の形と言えるのだろうか。確かに同性愛なんてそもそもが非生産的ではある。だとしても、だ。
もちろん、今さら後悔など無い。メリーのことが好きだから。そうなのだ。好きだからこそ、嫌で嫌でたまらないのだ。"この"メリーが。
「……子、好きよ、大好き、んふぅ」
頬を犯していた舌が、とうとう口内へ潜り込んでくる。きつく結んでいた唇を緩め、私はそれを迎え入れる。拒むことは出来ない。だって私は、メリーを愛しているのだ。
「んちゅ、ずぞぞっ、んむ……んちゅ、むちゅ、はむ……ぷはっ、ハァハァ……子ぉ……ぬろぉ、んむむ……」
歯の一本一本まで容赦なく蹂躙される。舌を絡め取られ、為すがまま陵辱される。煮立ったような唾液をこれでもかと注ぎ込まれ、ぬらぬらした鼻息を顔中に吹きかけられる。そのどれ一つとして、私の知っているメリーではない。少し抜けてて、愛らしくて、知的なサークルの相棒を思わせるものは、どこにもない。
本能がキスを拒む。もがこうにも首には両腕が絡みつき、10本の指が耳やうなじをねちねち撫で回してくる。はち切れんばかりに勃った乳首が私の乳首を押し潰し、腹の上では腰が行ったり来たりを繰り返す。溢れ出る淫蜜はもはや抑えが効かぬようで、今頃私の臍下にはナメクジが這ったような跡が出来ていることだろう。想像するだけでおぞましく、私は思わずシーツを握りしめた。
「ハァハァ、ハァ……子、…ぅ子ぉ、ごめんね……ごめんなさい……」
再び舌は耳元へ。ひたすらに「ごめんなさい」を繰り返しながら、耳介にぬめぬめ纏わりつく。甘噛みしてくる。本当に喰われてしまいそうな気がした。指が、また私の股座へ迫る。止まぬ愛撫に、秘部はすっかり愛液を垂らしていた。こんな状況で濡れてしまう自分の体が、ひどく忌々しかった。
「許して、お願い。んぅ子、許して……」
謝罪の囁きはさながら呪文。好き勝手に全身を舐め回していた指は、しかし熱を持ち始めていた私の秘裂には決して潜り込もうとしない。まるで触れることが赦されないかのように、何度も指先でつついては躊躇い、離れ、やがて行き場を無くし、自分の秘裂を慰めに戻る。その繰り返し。
「はぁっ、んん……んぁ……ごめんなさい……許してぇ……ゅ子……」
声が次第にくぐもっていく。荒く爛れた吐息に、しゃくり声が混じり出す。死体のような私を慈しみながら、犯しながら、嗚咽を漏らす。
「本当に、ごめんなさぃん、んんぅ! あぁ……」
すすり泣きながら、しかし愛撫は止まない。むしろ激しくなる。両の足が私の右足に絡み付いた。腰骨と恥丘が擦れる。愛液ですっかりベチャベチャになった陰毛は、蛭を思わせる感触だった。腕を持ち上げられ、腋を舐められる。二の腕を伝い、肘、手首、そして指の一本一本まで徹底的にしゃぶられる。人差し指と中指が、口の中を滅茶苦茶に犯し尽くす。吐きそうだ。早く、終わってくれ。
「許し、てぇ……ゅ子、んぁ……んむ、んんっ! お願い……」
どうして、こうも時間が進むのが遅いんだ。気持ち悪い。触るな。私の体を弄ぶな。これはメリーのものだ。
「んん、んぁっ……ぅゅ子、許して、好きだった、助けたかったの。ごめんなさい……ゅ子、んあっ」
戦慄きはいっそう激しくなる。声が艶めかしくなってくる。どんどんメリーの声じゃなくなっていく。ああ誰だ。お前は誰だ。
「んっ、ぁあっ! ぁ、ダメぇ、行かない、でっ、置いてかなぃ、ああぁ……っ!」
腕を掴まれる。指が触れたのはしどとに塗れた陰部。そのまま根元まで呑み込まれていく。ああ、なんて気持ち悪い!
「んぁっ、あぁ、イクぅ、イッちゃう、んぅ、ごめん、なさっ、ゅゆぅ、こぉ、んぅ……」
私の指はもはや快楽を貪るための玩具でしかなかった。前後に動かされる度、蠢く肉襞が指に絡みついてくる。涙混じりの艶声が、慟哭じみた嬌声へと変わっていく。
「好きよっ、大好き、んぁ、愛してるからぁだから……ぁ、ゆゅ、こっ――!」
声が止む。同時に指が締め付けられる。被さっていた体躯が弓なりに反る。一瞬の静寂。何もかもが、心までもが永遠に凍てついてしまったかのよう。ふっと、荒い吐息が頬を撫でた。どさりと落ちてきた少女の体は、酸素を求め幾度も蠕動を繰り返す。咽び泣く声と共に。
「ごめん、ね……大好きよ、幽々子……」
*
更に幾度かの絶頂の後、"彼女"は疲れ果て眠りに落ちた。寝息を確認し、私はようやく目を開ける。宇佐見蓮子に戻るために。
隣には赤ん坊のように体を丸め、泣き寝入りするメリーがいた。なぜだか安堵の息が漏れる。シーツを被せ、頬に残る涙跡を拭ってやる。暫く二人きりでいたかった。髪を撫でながら、終わったことを確かめていたかった。メリーを感じていたかった。でも、耐え切れず立ち上がる。さっきまで弄られた感触が、どうしても消えないのだ。あの不快感が、おぞましい気持ちが、なくなってくれないのだ。羽織っていた青い着物を投げ棄て、浴室へ向かう。
熱いシャワーを頭から被り、じっと蹲る。何度やっても慣れようがない、見知らぬ誰かに体を好き勝手されるあの感覚。ザラザラした愛撫の記憶。レイプされた後って、こんな感じなのだろうか。
――あたしね、時々死んだ女の子とセックスしたくなるの。無性に。それでもいい?
メリーの言葉が不意に頭を過ぎる。二人きりのサークル活動を続ける中で芽生えた想い、それを告げた時もらった答えだ。あの時は受け止められる自信があった。喩えどんな障壁があろうと、愛があれば乗り越えられると信じていた。
顔を上げる。浴室の鏡に映ったのは、桜色の髪に青白い顔をした亡霊みたいな女だ。睦み合うため、メリーの望むまま染めた髪。ピンクの染料はシャワーに溶けて、浴室を惨たらしく染め上げる。排水口に注ぐ薄紅の液体は、血にしか見えなかった。
イメクラだのコスプレだのなんて言葉は知っているし、そんなものに恥じらいを覚えるほど初心でもない。桜色の髪をした着物女の死体にしか性的興奮を覚えなくとも、別に構いやしない。染髪だろうと死体のふりだろうと、それが私に対してメリーが望んだことならば、喜んでやってやる。でもあの行為は違う。断じて違う。あのメリーが愛しているのは、私じゃない。私のことなんかこれっぽっちも見ていない。愛しているのは、語りかけているのは、全く別の"誰か"の死体なのだ。
不思議と涙は出なかった。最初の頃は泣いたりも出来たかもしれない。けれど今はとうに枯れ果ててしまった。頭皮が擦り切れるくらい何度も髪を濯ぎ、触られた箇所を血が滲むまで石鹸で洗い、口に残る不快感をうがいと歯磨きで一掃する。絶えず頭を駆けるのはあの時告げられた「大好きよ」という言葉。見知らぬ女へ捧げられた睦言だ。それを反芻する間だけ、荒涼とした心に潤いが戻った。
ベッドへ戻る。メリーは気持ちよさそうに眠っていた。その手を握り、唇を添わせる。ああ、これだ。この温もりこそがメリーだ。私の愛する人だ。これさえあれば、もういいのだ。
「私も、メリーのこと大好きだよ」
そっと語りかけ、頬を撫でてやる。カーテンを開くとすっかり夜は明けていた。ベランダからは綻びかけた桜並木が見える。直に京都は本格的な春を迎え、あの薄紅色の花弁で埋め尽くされることだろう。もう少しの辛抱だ。桜が散る頃には、メリーの発作も収まる。あの忌まわしい衝動に悩まされることもなくなる。そうすれば私たちは元の私たちに戻れるのだ。私は祈らずにいられなかった。願わくば、もう二度と満開の桜を見ることがないようにと。
*
私は、桜が好きだ。それは目覚めの合図であり、あの子を偲ばせる徴でもあったから。
艶事の熱が残る褥から身を起こす。なんとなく夜風に当たりたくなった。
「――どこ行くの、紫?」
添い寝していた霊夢に袖を引かれる。声は少しばかり不機嫌そうだ。薄く笑いかける。
「私がいないと眠れない?」
霊夢は「まさか」と鼻で笑う。ぶっきらぼうな仕草は、肌を重ねている時も変わらない。慈愛に満ちているようで、その実何も愛していないかのような、そんな情事。一番気楽な相手だ。藍は少しばかり重すぎる。
「寂しがりなのは、あんたの方でしょ?」
霊夢は放り投げるように呟いた。睦言らしからぬ物言い。夜風に当たる前に冷えてしまった。もう一度腰を落とし、霊夢と唇を重ねる。巫女は億劫そうに躊躇ったが、結局は大人しくこちらの劣情を受け入れてくれた。短めの黒髪に、真白い痩躯。"あの子"によく似ているなと思った。
「……あんたってさ、ヤな女よね」
口元に囁かれる。侮蔑と憤懣を織り交ぜた声で。
「セックスしてる時、いつも別の女のこと考えてる。今だってそう。あたしとキスしながら、あたしのこと見てない。最低よそういうの」
抱きつかれ、押し倒された。不敵に笑う表情は「忘れさせてあげましょうか?」という挑戦状だろうか。それも一興だ。悪い妖怪が哀れな人間を慰み者にしている。助け出すとすれば博麗の巫女が適役だろう。出来るものならそうしてやって欲しい。言えた立場じゃないが、あの子はあまりに可哀想だ。
「幽々子とは、こういうことするの?」
薄笑いで、上の巫女は問いかけてくる。答える前に唇を塞がれた。そのまま、唾液をたっぷり啜られる。別の"女"に想いを馳せていた私から。途端に興が失せた。スキマ伝いに縁側へ。巫女は「もう……」と拗ねたふり。嫌な女と詰られたのは心外だ。こいつも性悪さでは負けていない。
「ヤったことないって味がした」
小馬鹿にした言い方だった。さっきの発言は撤回しよう。こいつと蓮子を同列に語っては蓮子に失礼だ。
「あの子とは、そういうんじゃないの」
「……あいつも不憫ね。こんな意気地なしに好かれたんじゃ」
「あんたには分からないわ」
夜風は次第に春の薫りを濃くしている。桜が芽吹いたら、また冥界へ行こう。この神社より、白玉楼の桜の方がずっと美しい。そして会いに行こう。愛おしいあの子の"抜け殻"に。花見酒片手に、いつも通り他愛ない話でもしよう。何よりも美しい、触れることの赦されぬ模造品(レプリカ)と二人きりで。
4867文字、9.76KBでした
一番好きなのは、富士見の娘
二番目に好きなのは、白玉楼の亡霊嬢
三番目に好きなのは、富士見の娘への妄執から亡霊嬢の手さえ握れぬ八雲紫です。
3/14コメントありがとうございました
>1さん
ありがとうございます。最近エッチなのが大嫌いです♪
>2さん
うふふのふ♪
>NutsIn先任曹長さん
代用品は3人ですよ。藍も入れると4人か
たとえ世界が紫×(霊夢≒蓮子)を推しても、私は(紫≒メリー)×(幽々子≒蓮子)を支持します
>4さん
何つっても萃夢想で、「幽々子が頑張ってると邪魔したくなっちゃうの」みたいなこと本人に直接言っちゃうのが八雲紫って女ですから
>5さん
そんなことしたら幽々子が満たされちゃうじゃないですか。あの女に救いを与えてはいけません。あれは報われぬまま閉じ込めておくから美しいのです。
>あぶぶさん
えーどこが分かりづらかったんじゃろうか。
要するに、おい幽々子、貴様には幸せになる資格などない冥界のご立派なお屋敷で一人虚しく死んでろああ可愛いなぁ みたいな感じです
>智弘さん
ここのところ代替恋愛でしか勃ちません
>まいんさん
愛だ恋だなんてすれ違ってるうちが華ですよね
>ちゃまさん
蓮子≒霊夢があれだけ流行ってるんだから、蓮子≒幽々子もあっていいんじゃね?と思います
>有限会社エフゲニー
ありがとうございます。こういう愛しか興味ありません
>pnpさん
そもそもセックスが不潔なんだと思います
最近みんなセックス美化しすぎ
>boxさん
これに紫≒メリー≒豊姫の方程式を足して、紫に片思いする天子を加えた8角関係が、手頃な妄想にはお勧めです。
>町田一軒家+さん
女だらけの東方なので、もっと倒錯したドロドロすれ違いに発展して欲しいですよね。とりあえず今は誰も報われない16角関係くらいを構築したいです
>機玉さん
霊夢と幽々子についてはそれぞれ別のSSで散々書いてしまったので、あんまり気が回りませんでした。ごめんなさい
おおまかに言いますと、死ぬ前の幽々子にとって紫は初めて自分を認めてくれた人で、亡霊の幽々子にとっては恩人かつ大事な「友人」で、霊夢にとっては壊れない玩具です。
>矩類崎さん
うえーん「エロ書くと漏れ無くギャグになっちゃう症候群」をそろそろ治したいよー
ほんと自分で書いててげんなりします…
>紅魚群さん
蓮子は報われないのが一番。ゆかりんはヘタレが一番
>18さん
そうなのかもしれないですね。私チンコぶら下がってるんで女の人の気持よくわかりませんけれど
>山蜥蜴さん
ほら、紫はかつて唯一人本気で愛した幽々子に自殺されちゃったから(震え声)
藍って「紫様の苦悩を私が全部受け止めるんだ!」みたいなこと考えて抱きしめてきそうで面倒くさいです><
匿名評価のお一人ありがとうございました。
んh
http://twitter.com/sakamata53/
作品情報
作品集:
6
投稿日時:
2013/02/25 12:23:37
更新日時:
2013/03/14 21:05:31
評価:
18/19
POINT:
1520
Rate:
15.45
分類
産廃10KB
宇佐見蓮子
八雲紫
3/14コメント返しました
良いよ〜♪
ここやアソコの代用品は、かわいそう。
病んだ濃厚なメリ蓮子。
殺伐としたあっさり風味のゆかれいむ。
こういうゆかりん好き
うだうだ考えないで一回突っ込んでみたら?存外弱い貴女のことですから、「この脱け殻にすがってる浅ましさと哀しさがイイ!」とかなるんじゃない?(無責任)
そう感じました。
体を許しているということは嫌いでは無さそうだけど。
前半のギャグみたいな感じと後半の硬直した雰囲気の落差が印象的でした。
深い想いのある作品でした。
って、JOJOのオープニングでやってました。
ゆかりんは人間の何倍も生きただろうに、まだその境地にはまだ至れて居ないご様子。それに比して、お相手二人の人間の大人なことであるなぁ。
そして、藍さまェ……重い女扱いされて……。 重い藍さまかわいい。