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『魔理沙「産廃10KBだと?」』 作者: 智弘
【注意】
産廃10KBに投稿された作品のネタバレがあります。
産廃10KBで未読の作品がある方は「戻る」を推奨いたします。
魔理沙「なんで……なんでだよぅ、う、ううぅ……」
さとり「どうしたんですか、魔理沙さん。まるで、産廃10KBという作者さん方の好きなキャラを題材にした掌編作品を投稿するイベントで誰一人にも見向きもされず、主役としてそれはどうなのかとショックを受けて泣き伏しているように見えますよ」
魔理沙「心読んでわかってるくせにトドメさす真似すんな! というかなんで私の家にお前がいるんだよ!」
さとり「すみません。鍵がかかってなかったもので勝手に入らせてもらいました」
魔理沙「明らかに窓から入ってきてんだろ、お前。ガラス割れてるじゃねーか」
さとり「防犯対策がなってないからですよ。これを機に反省してくださいね」
魔理沙「なんで私がたしなめられてるんだ。お前だよな? 悪いの、お前の方だよな?」
さとり「そんなことはどうでもいいんです。今、話すべきは魔理沙さんが誰からも愛の告白をされず、枕を涙で濡らしていたことです。私がこうして様子を見に来たのも、魔理沙さんがそうやってみじめに這いつくばってる原因が私にも原因があるからですよ」
魔理沙「ばかっ、な、ないてなんかねぇよ! これは、その、よだれだよ、よだれ! それになんで、お前に原因があるんだよ」
さとり「え? だって、私が扱われた作品数は今回のイベントの中でイ、チ、イ、ですからね。わかります? 一位ですよ、一位。トップ。いわゆる、ナンバーワァン。モテカワキュートな愛され覚り、それがこの私、古明地さとりです(キメ顔)」
魔理沙「もう帰れよお前」
さとり「まあまあ、せっかく魔理沙さんにいい話を持ってきたんですから、そう邪険にしないでください」
魔理沙「いい話? へん、慰めはいらないぜ」
さとり「今の魔理沙さんってとても無様ですね」
魔理沙「本音もいらない」
さとり「まったく素直じゃないんですから。いいですか? 終わってしまったことを気にしても仕方ありません。それよりも、これからなにができるかを考えるべきです」
魔理沙「もういいよ……誰からも好かれてない私なんかに、できることなんかなんにもないし……」
さとり「なにを言ってるんですか。あなたが今回、作品に扱われなかったのはですね、参加された作者さん方が悪いんです」
魔理沙「え? そ、そう?」
さとり「もちろんですとも。あなたは悪くない。可哀そうな被害者です。だから、もっと怒ってもいいんですよ」
魔理沙「や、やっぱり? 私、悪くない? 悪くないよな?」
さとり「ええ、ええ。ですから、作者さん方に思い知らせてやるんですよ。自分を扱わなかった作品は自分が出なかったからこんなにもよくない、とダメだしをしてやるんです」
魔理沙「え、ええ? そんなことしてもいいのか? 本当に大丈夫か? あとで廃屋に呼び出されたりとかしない?」
さとり「安心してください。魔理沙さんが作品をディスった後に、私がきちんとフォローしておきますから。魔理沙さんは存分に思いのたけを吐き出してすっきりしていいんですよ」
魔理沙「よ、よし。やってやる、私はやってやるぞ、さとり!」
さとり「(金髪の子、チョロいなぁ)」
こいし「さすがお姉ちゃん。弱ってる魔理沙を言いくるめて嫌われ者の役目を負わせて、自分だけはフォロー役にまわることでさらに相対的な好感度をあげようとする魂胆が見え見え。それに気づかない魔理沙も可愛いので、ぜひとも精神的に追い詰めて心が痩せ細ったところで手を差し伸べて私だけに依存してほしい……あ、ダメだ、興奮してきた。服、脱ごう」
魔理沙「ん、今なんか言ったか?」
さとり「いえ、なにも。それより、さっそく始めることにしましょうか」
■『寒村紅葉』 Box氏
さとり「初っ端から10KBとは思えない濃い世界観が垣間見える作品ですね。魔理沙さんはどう感じました?」
魔理沙「私の名前がない。十点」
さとり「まあ、落ち着いて。あまり根拠のないダメだしばかりしていると恨みをかって、筋肉を信用しない元軍人スナイパーにもれなく一族全員を標的にされたりしますよ」
魔理沙「お前がなにを言ってるのかさっぱりわからないが、うぅん、そうだな。それじゃあ、熟語を多用する書き方のせいかなんだか読みづらく感じた。これなら、どうだ」
さとり「そうですね。この表記の仕方は、読みづらいと感じるか、硬質の文体とするかは人によると思いますよ。読み方の違いにもよるかもしれませんけどね」
魔理沙「読み方というと?」
さとり「特に力の入った風景描写がこのお話の特徴だと私は思ってます。風景というのは会話文と違って、人によって頭への残り方が大分違うのですよ。たとえば、電話で相手の声を聞いたとき、その姿やどんな人物かと想像する人と、しない人がいます。この場合だと、前者は今回の作品に向いている読者で、後者はあまり向いていない読者ですね」
魔理沙「向き不向きの問題なのか」
さとり「もちろん、どちらが良いとか悪いとかそういうことを言いたいのではありませんからね。魔理沙さんには笑顔より泣き顔の方が似合うとか、そういう程度の問題です」
魔理沙「ふぅん……待て、今なんて言った?」
さとり「魔理沙さんの鼻をチーンしたいので、ちょっと壮絶な痛みに苦しみながら顔中の体液を垂れ流してくれません? と言いました」
魔理沙「嫌だからな? 注文が具体的になっても絶対に嫌だからな?」
さとり「…………」
魔理沙「近づくなよ! 無言でジリジリ近づくなよ! それ以上近づいたら舌を噛み切るからな!」
■『かごのなかの霊夢』 NutsIn先任曹長氏
さとり「囚われの霊夢……ごくり、と考えましたね」
魔理沙「お前がウソついても他のやつらには全部事実になるからやめろ」
さとり「まあ、冗談ですよ、冗談。それにしても、この作品は構成が上手いですね。いわゆる叙述トリックというものでしょうか。タイトルと冒頭のほの暗い雰囲気や狂気の見え隠れするようなキャラ描写が、上手い具合に噛み合ってますね」
魔理沙「いや、本当にな。私はてっきり霊夢がゲスな野郎に監禁されているものとばかり」
さとり「ほう、ほう。あんなことやそんなことを強要される霊夢さんを想像していたというわけですね」
魔理沙「ば、ばっか。そんなんじゃねぇよ!」
さとり「ふふ、やーらしぃ。興奮しました? しちゃいました?」
魔理沙「お前への殺意でな」
さとり「おや、怖い怖い。このお話も怖い雰囲気を練り上げているとでも言いますか、緊迫した空気を少しずつ積み上げ、ラストで一気に打ち崩すというつくりをしてますね。オチに鮮烈さを持たせるために見事な下地作りを成し遂げたといえるでしょう」
魔理沙「最後の方のはっちゃけたハッピーエンドのテンションは嫌いじゃあないぜ。それまでで緊張していたせいか、どっと解放されたみたいでなんだか愉快痛快といった気分になれるな」
さとり「安定の霊夢愛あふれる作品でしたね。魔理沙さんもこんなふうに一途に愛されたいとは思いませんか?」
魔理沙「え、いや、その、まあそう、だな」
さとり「そうですよね。私みたいに多くの方から愛されたいですよね。すみません。魔理沙さんの夢を先にかなえてしまって。ほんと、どうもすみませんね、愛され上手で。可愛くってごめんねー!」
魔理沙「やかましい」
■『萃香の省スペース計画』 ウナル氏
さとり「幻想郷の住人が年々増大の一途をたどるということで土地不足問題に悩まされるお話ですか。地上は大変ですねぇ。地底ではむしろ土地が余っていますのに」
魔理沙「そうなのか? なら、過剰分はそっちに移住すればいいんじゃないか」
さとり「そうですね。人間はもちろん、並みの妖怪でも謎の病やとつぜんの憤死で死ぬことに定評のある地底ですけど私たちは歓迎しますよ」
魔理沙「完全に迎撃体勢だろ、それ」
さとり「この作品は盛大なホラ話のような雰囲気があって可笑しさがこみ上げてきますね。スラップスティックというんでしょうか。それに、冒頭からのスピード展開もこちらの興味をぐいぐい引っ張ってくれます。この展開の早さはさすがといったところですね」
魔理沙「紅魔館の連中がいきなりひどい目にあって気の毒なんだが」
さとり「自分たちは無関係だと安心しきっていた次の瞬間には全財産を徴収されるという、光の速さのフラグ回収は見ていて惚れ惚れする職人芸ですね」
魔理沙「しかし、これって根本的な解決にはならないような……どんどん小さくなることを繰り返してしまいには微生物レベルの世界になりそうでちょっと怖いな」
さとり「欲を言えば、やはりタイトルの萃香をもっと前面に押し出してほしかったところですが、省スペースおっぱい代表という点で満足しようかと思います」
魔理沙「お前、人のこと言えないだろ」
さとり「いえいえ、魔理沙さんの方こそ人様にコメントできる胸なんですか」
魔理沙「……やめよう。この戦いは悲しみしか生まない」
さとり「互いに罵倒しあうことができますから、私はむしろ望むところなんですが」
魔理沙「お前の性癖に付き合う義理はない」
さとり「もう、魔理沙さんったらつれないんですから」
魔理沙「だから近づくなっつってんだろ!」
■『星屑と探検家』 まいん氏
さとり「はじめは星屑(ほしくず)かと思ってましたが、星屑(しょうクズ)でしたか。これはタイトルに座布団をあげたくなりますね」
魔理沙「あの神様代理がこんな胸糞悪いやつだったとは思わなかったぜ。やっぱり虎だから、一皮むけば獣じみた本性を見せるんだな」
さとり「一皮むけば、ってもう一回言ってくれません?」
魔理沙「絶対にいや」
さとり「もうっ、焦らすのが好きなんですね、魔理沙さんは。この作品の星も焦らすのがなかなか好きなようですね。オモチャをわざと乱暴にしていつ壊れるのかにだけしか興味のない子供みたいな感じです。やはり、星にはクズが似合いますねと感心しましたよ」
魔理沙「ナズーリンの心労は想像を絶するだろうな。ついにその不満を爆発させるが、それでも星にいいように扱われてしまったし」
さとり「ええ、終盤の星のクズっぷりとナズーリンのもはや絶望にすら疲れきった様子は、読んでいて妖しい身震いをもよおしましたよ」
魔理沙「お前の好みって本当に歪みきってるな」
さとり「そうですか。ところで私、魔理沙さんのこと好きですよ」
魔理沙「だからそういうこと言うところが歪んでるっつってんだよ!」
■『自分は輝夜が一番好きっす』 鯨布氏
さとり「あなたは次に、輝夜はどうした、と言う」
魔理沙「輝夜はどうした……はっ!」
さとり「魔理沙さんのそういうお約束を守ってくれるところは好きですよ」
魔理沙「そりゃどうも。しかし、本当に輝夜はどこにいるんだ。単に好きだって言ったきりじゃないか」
さとり「全体に漂うナンセンスの雰囲気は癖がありますね。ときどき秀逸な表現が飛び出してくるので油断もできませんよ、これは」
魔理沙「しかし、さっぱり内容が頭に入ってこないな。話題もあっちへこっちへと跳ねるように変わっていくからまったく追いつけん。タイトルのことも含めて、呆然とするばかりだ」
さとり「独特すぎる雰囲気の際立った作品でしたね」
■『根の国の幽香』 海氏
さとり「恒例の滅亡ものかとも思いましたが、この作品の趣は少し違うようですね。どちらかというと朽ちてゆく中でも力強い生命の輝きが感じられるお話です」
魔理沙「幽香の能力を独自の解釈でストーリーに盛り込んでいるな。文字から香るような花の表現はひたすらに綺麗だ」
さとり「このお話の背景も想像できるつくりですね。ただ、ワンシーンを切り取ったようで、前後も気になってしまい、これでおわりなのかという物足りなさがどうしても出てきてしまいますね」
魔理沙「あとは物語に起伏がないことだな。会話もいつものあいつらがしてるような感じでさ」
さとり「まぁその問題は、激しい動きや勢いある展開を必要としないお話ですから、単純にジャンルというか方向性の範疇でしょうね」
魔理沙「今回の企画の10KBっていう容量制限がよく感じられる作品でもあったな。でも私はこういうスマートな話が結構好きだ」
さとり「さすが体型もスマートすぎるだけはありますね。もうちょっとお肉とか食べた方がいいと思いますよ。なんならご馳走しましょうか」
魔理沙「……ちゃんとした肉なんだろうな?」
さとり「ええ、もちろんですよ。ソイレント・システムって知ってます?」
■『Renko Dream』 リチャード・ハットマン氏
さとり「好きな夢を買うことができるだなんて、アウターゾーンみたいなお話ですね。これ、元ネタがあるんでしょうか」
魔理沙「これが夢の内容なのか、それとも現実の出来事なのか、話の途中でも大分わからなくなってきたぜ。夢と現実の境界がとろとろに溶けていって、誰かがそれをぐちゃぐちゃにかき混ぜたような不思議な感覚がつきまとう」
さとり「ふわふわと浮いているような気分がたまりませんね。とろりとした夢の空気を上手く書き表してます」
魔理沙「私は逆にこういう雰囲気は落ち着かないんだけどな。次の瞬間にも足元に底なしの穴があいてどこまでも落ちていきそうな危うさがあって、なんだか怖いんだ」
さとり「今夜はいっしょに寝てあげましょうか?」
魔理沙「木でも抱いて寝てろ」
さとり「ゆうべはおたのしみでしたね」
魔理沙「うっさい!」
さとり「しかし、序盤はそうでもなかったのですが、話が進むにすれてだんだんと展開が駆け足になっていきましたね。題材的にも掌編サイズ向きではなかったように思います」
魔理沙「いや、夢の話だしな。これくらいあっさりしてる方がそれらしいじゃないか。そういう意味じゃ、制限を上手く利用したなって思うぜ」
さとり「まあ、魔理沙さんは気が短い、いえ早漏ですからねぇ」
魔理沙「なんで言い直した」
■『奥山に 紅葉踏み分け 鳴く烏の 声聞くときぞ 秋はかなしき』 山蜥蜴氏
さとり「セックス!」
魔理沙「ついに人の心を読みすぎて頭がおかしくなったか。思考回路はショート寸前か?」
さとり「だって、素敵じゃないですか。本来の目的から外れきったセックスって。快楽すらお呼びでないんですよ? あるのはただの可愛らしい意地の張り合い。なんとも愛でがいのあるお二人ですねぇ」
魔理沙「お前の性癖とムツゴロウ精神はどうでもいいけどさ。この話の文と椛はなにか競い合ってるのか? なんか文に椛が付き合わされてるような感じだけど」
さとり「推し量るしかありませんがね。文は気に入ってるから手にしたいか、気に入らないから屈服させたいのでしょう。椛の方からすればたまったものではないでしょうね」
魔理沙「じゃあ二人の行為はただの勝負の方法、というか道具みたいなものか。でも勝負を持ちかけられるのは文の一方からだけだし、椛は受け身になるしかないからずいぶんと不利な戦いなんだな」
さとり「天狗という種族とその権力に耐えしのぐことで、また時間外では従う義理はないと力を振るうことで椛は自分の意思を示してますし、文も自分におぼれさせようとしてますし、時間内にそれが出来なければペナルティとして椛の好きにさせています。文の方は遊び感覚ですね」
魔理沙「遊びといっても子供の心でやってるけどな。もうそれ以外、興味がないんだ」
さとり「どこまでも袋小路なこの関係、すばらしいものですねぇ。魔理沙さん、私たちもこういう魅惑的な肉体関係を築きません?」
魔理沙「身内でやってろよ」
さとり「残念。それならもうやりすぎて飽きてしまいまして」
魔理沙「え?」
■『スーヴェニル燐』 シドニー氏
さとり「わが子のような存在を私に殺された過去を持つお燐の話ですね。一途に復讐を目論んでいるところが、ふふ、健気で可愛らしいじゃありませんか」
魔理沙「お前、これだけ恨まれていてよく平気だな」
さとり「憎さあまってと言うではありませんか。なにも思われないより、熱烈な思いをぶつけられる方がいいものです。特にラストでわざわざお燐が言葉にしているところは、その胸のうちにあふれた執念がにじみ出たようにすら思えますね。そういった部分を深く書いているところがいいですね。魔理沙さんはこのお話、どう思います?」
魔理沙「私が出てない。十点」
さとり「さすがにそれは言いがかりにも程がありますから、もう少し突っ込んだところでダメ出ししてください」
魔理沙「うぅん、そうだな。じゃあ、最後にお燐がさとりに異国の言葉を使ってるところとかだな。気取ってるインテリっぽくて鼻につく」
さとり「フランス語ですね。ですが、それにもきちんと意味があると後書きで作者さんが解説してくれていますよ。作者さんの巧妙な意図に気づけないのにそうやって食ってかかるなんて……」
魔理沙「うぅっ、お、お前、どっちの味方なんだよ」
さとり「もちろん、決まってるじゃないですか。魔理沙さん、私が信じられないんですか。魔理沙さんのためにこうやってお付き合いしているんですよ? ね、私だけを見て。私があなたを助けてあげますから」
魔理沙「あ、ああ、うん。その、ありがとう、さとり」
さとり「(魔理沙さんの味方だなんて一言も言ってないですけどね)」
■『ナズーリンがもぐもぐしてるだけ』 汁馬氏
さとり「文字通り、星を食い物にしているナズーリンのお話ですね。まったく予想だにしていなかったところに着地する、びっくりするようなオチが魅力的です」
魔理沙「いや、気持ち悪いって。老廃物の料理なんてどうかしてる」
さとり「行き過ぎた愛だと言いたいのですか? ですがときに愛情はこのお話のように、汚いところなんてない、と本当に思わせるものなんですよ。その昔は、自分の体の一部を料理に混ぜることで媚薬とする文化もあったくらいですから」
魔理沙「私には理解できない世界の話だ。あ、そうだ、理解できないといえば、この話も少しわかりづらいところがあったな。冒頭で部屋を出て行った彼女が誰なのか明言されていないところとか」
さとり「確かに書かれてはいませんけど、後の話の流れから聖白蓮だと十分に予想がつくでしょう?」
魔理沙「べつに隠す必要もないだろ。それに、いきなり弁当の秘密をバラすのもなんだか唐突で、せっかくのオチの驚きも切れ味を損なっているように思える」
さとり「そうでしょうか。この作品はストーリーを非常にわかりやすく書かれていますから、ラストへの運び方も無理のないつくりになっていますよ。ですからオチに伴う驚きも理解しやすく、すっかり遅れてくるようなタイプではないでしょう」
魔理沙「びっくり箱みたいな話ってことか」
さとり「そうです。ところでこのお話を読んでいたら、なんだかお腹が軽くなってきた気分になりますね」
魔理沙「いや、こっち見んな。つま先から頭までじろじろ見んな」
さとり「ごくり」
魔理沙「見るなって言ってんだろ! やめろよ、怖いから!」
■『ハートフルラブパルスィ』 パワフル裸ロボ氏
魔理沙「あ、こういう話はいいな。私、出てないけど。ピンチになったヒロインを救うヒーローとかいかにもな純愛ストーリーって感じでさ。私、出てないけど」
さとり「反吐がでますね、このお話」
魔理沙「おい」
さとり「背中がかゆくなりそうです。勇儀が我慢できなくなってパルスィをさらって軟禁して、蝶の羽をゆっくりと毟るように彼女の自由意思をじわじわ奪う様を、じっくりと描写する話とかはありませんかね」
魔理沙「ねぇよ、バカ。いいじゃないか、このハートフルなハッピーエンド。まさに王道的な恋愛作品だ。王道はパワーだぜ。どんな層にも通用する力があるんだ」
さとり「確かに、パルスィが襲われそうになったところで勇儀が助けるところは、お約束をきっちり守っていて奇妙な安心感に包まれましたね。ひねくれたところのない、素直なお話です。たまには甘すぎるほど甘い味わいというのも、悪くはないものですかね」
魔理沙「だろ? だろ? やっと、さとりもわかってくれたか」
さとり「ええ、こういう話はもうありませんからね。ここくらいは魔理沙さんにも華を持たせませんと」
魔理沙「……なんか不吉な言葉を聞いたような気がするけど、私の気のせいだよな?」
さとり「はい」
魔理沙「目をそらすな」
■『みすちー3333文字クッキング』 pnp氏
さとり「私、今回の企画では語り口調の話が多くなると思っていたんですよね」
魔理沙「とつぜん、どうしたんだ?」
さとり「容量が制限されてますから三人称の地の文よりも、語りかける形式の方が長さを節約できるんですよ。その最たる例がこの作品です。見え隠れするストーリーの背景や濃密な解体描写を盛り込みつつも、この容量に抑えることができていますね。語りの軽やかさもそのまま読みやすさにつながり、ミスティアさんのキャラクターも見ていて楽しい、見事なお話でした」
魔理沙「いやいや、このミスティア怖すぎるだろ。レミリアをひたすらバラバラにするだけの話じゃないか」
さとり「そこがいいんじゃないんですか。ところどころで投げやりというか、アンニュイな雰囲気を漂わせるミスティアさんにも、ちょっとした可笑しさがこみあげてきますし。料理という体裁でやっていながらも実際にはレミリアをバラバラにしたいだけだというスタンスも感じられるので、一種のミスレミであることもうかがえますね」
魔理沙「私には一ミリも理解できない世界の話だな」
さとり「あ、そういえばこの番組、今度再放送するみたいですよ。魔理沙さん、一緒に見ません?」
魔理沙「……今、喉動かしたろ。唾のみこんだろ、なあ?」
さとり「失礼、期待のあまりつい」
魔理沙「絶対見ないからな」
■『はくれいのみこ』 穀潰し氏
さとり「あなたが皆に構われているのは、あなたが持つ仕事のせいに他なりません。一度、すべてを投げ捨ててみればあなたの本当の姿が見られますよ」
魔理沙「いきなり、なにを言ってるんだ」
さとり「付加価値の話ですよ、魔理沙さん。こういう役割系に突っ込んだ作品はどれも読んでいる方にも通じるものがあるので、面白いものですよね。短いながらもきれいにまとまっていて、構成がしっかりしていることがうかがえます」
魔理沙「私には、あの霊夢がこんなに弱いなんて信じられないし、面白くもなんともないけどな」
さとり「あなたのそういった感情も、また役割によるものだとしたら?」
魔理沙「……な、え、なに?」
さとり「冗談ですよ。冗談。あなたの感じている感情は精神的疾患の一種で治し方は私が知っています私に任せろ、というやつですよ」
魔理沙「いや、ごめん。なに言ってるのか全然わからん」
さとり「ふふ。わからなくていいのですよ」
■『現人神銀行現界支店』 スレイプニルアナザーフォルム氏
さとり「これはまた、愉快なお話でしたね。命を換金できるのも一種の奇跡のように思います。舞台が現代というのも、また薬味になってますしね」
魔理沙「いきなり一億円が出てきてよくわからないうちに終わったんだが、なんなんだ、これ。説明不足なんじゃないか」
さとり「まあ、少しばかり不親切かもしれませんがね。それでも、残高が尽きたところからの描写は十分な説明を果たしていると思いますよ? 相手が死神だとなおわかりやすいようにも感じますけど」
魔理沙「うぅんと……つまり、一億円が早苗の人生の値段だってことか?」
さとり「そうです。たとえるなら、笑うせぇるすまんのようなタイプの話ですね。仕組みや原理などは気にせず、その場に置かれた人間の言動や心理の移り変わりを楽しむ作品ですよ」
魔理沙「これ、早苗が一億円の正体をはじめから理解していたらどうなっていたんだろうな」
さとり「それもまた興味深いですね。まだまだあるから大丈夫だという思考から、次第に金銭感覚が狂い始め、呼吸するように使わざるを得なくなってしまい、と想像するとなんだか楽しくなってきますね」
魔理沙「いや、私はさすがにそこまで考えちゃいないんだが」
さとり「ふふ、仲間仲間」
魔理沙「親しげに抱きつくのやめろ!」
■『さびいろ・とうめい・りびんぐでっど』 ちゃま氏
さとり「ほぅ……」
こいし「とっても安らいだ顔してるね、お姉ちゃん」
さとり「大変、満足してますから。この作品における愛は触れるものの肌を焦がし、焼けただれながら抱き合う、粘性の欲望にあふれています。たまりませんね。もよおしてきました」
こいし「やだぁ。お姉ちゃんったら、変態さん」
さとり「もっと言ってちょうだい。それにしても、この作品はタイトルからして一線を画してますね。見たときは、名前がどこにあるのかと首を傾げたものですが」
こいし「地の底ってイメージだから、こんな退廃的で湿った雰囲気が似合うのかな。薬物とか鎖とか、もうぴったり当てはまるよね」
さとり「さびいろというのは思い出でしかないのかしら。とうめいというのは、存在しないということなのかしら。りびんぐでっどというのは、死体も同然という意味なのかしら。あれこれ考えられる、味わい深いお話ですね」
こいし「そうだね、お姉ちゃん」
魔理沙「なあ、さとり。さっきから一人でなにぶつぶつ言ってるんだ」
さとり「あら、失礼しました」
■『かぐや姫を育てよう!』 零雨氏
魔理沙「これ、もう私が主役なのになんでタイトルが私じゃないんだ。許さない。十点」
さとり「落ち着いてください、魔理沙さん。それはあまりに短絡的ですよ。そんなふうに気が短いから、このゲームでも廃人になるんですよ?」
魔理沙「うっさい。私は一度集中したらほかのことが手につかなくなるタチなんだよ」
さとり「確かにこの作品の魔理沙さんは、普段の魔理沙さんのイメージそのもののように感じられますね。キャラクター面をわかりやすく伝える書き方で、読んでいるこちらも引き込まれます。それに魔理沙さん、こういったゲームにとってもハマりそうですよね」
魔理沙「ぐ、ぬ、はっきりと否定できない自分の弱さが悲しい……」
さとり「外界でもこういった問題があるようですよ。魔理沙さんの末路も含めて、風刺作品としても完成度の高い作品です」
魔理沙「でも、なんで輝夜なんだ。別にほかのキャラでもいいように思えるが」
さとり「はあ、趣味なんじゃないでしょうかね。なんといっても、今回の企画は作者さんの好きなキャラを題材にしなければいけませんからね。好、き、な、キャラを」
魔理沙「…………」
さとり「(あ、顔真っ赤にして泣くの我慢してる。なんだろう、たぎる)」
■『071003F 河城にとり.docx』 ただの屍氏
さとり「まさか10KBという容量の中で、こういった試みがなされるとは思いもしませんでしたね。まさに実験的手法による作品です」
魔理沙「うぅんうぅん、論文は苦手なんだよなぁ。新しい魔法術式の論文を書くのも毎度毎度時間がかかってるくらいだし」
さとり「まあまあ、確かに冒頭の取っつきづらさは否定できませんが、読み進めてみれば予想外の面白みが味わえますよ。特に『5.考察』からその正体をあらわにします」
魔理沙「なんか考察までは理路整然としていたのに、ここからは途端に雲行きが怪しくなってくるな。雑踏をそのまま文面にしたみたいだし、だれが言っているのかもよくわからん」
さとり「そのための注釈です。ですが、まずは気にせず一度読んでみてから、注釈を見るといいでしょうね。そうすれば、それまでの展開がどういうことだったのか、視界が開けたみたいになって、笑いがこみあげてきますよ。得体のしれないユーモアが怒涛のセリフの群れに乗って襲い掛かる感覚は、なかなか得難い面白みです」
魔理沙「冒頭と注釈の読みづらさが気にならなければ、最高に楽しい話ってことだな」
さとり「私としては、その読みづらさも、これがあくまでレポートだという形式の演出に一役買っているように思いますがね。構成の妙が映える作品と言えるでしょう」
■『十六夜 咲夜のズボラのス〆メ』 日々の健康に一杯の紅茶を氏
さとり「寒さをしのぐために脂肪分を摂取するのは当然ですが、そのためにラードをそのまま食べるなんて豚の共食いみたいで素敵ですね」
魔理沙「なんでお前、そんないい笑顔なんだよ」
さとり「女の子を豚みたいに可愛がるのって楽しいと思いません?」
魔理沙「同意を求めるな。そんな悪趣味なこと、やったこともないからな」
さとり「やってみたいんですか?」
魔理沙「お前、人の話聞いてる? 本当に覚りか、おい」
さとり「ふふ、そんな目で見ないでくださいよ。苛めたくなっちゃうでしょう。それにしても、この話は文面から豚の臭いがにじみ出るようですね。生活臭と言ってもいいんですが、とにかくそうした営みをいろんな人物に視点を移しながら描くのがとても上手い。落ち着いた筆致による描写は、読んでいるこちらにも染みるようにその情景が伝わってきますね」
魔理沙「でも、結局この紅魔館はどうなったんだ。レミリアがいないだけでこうも堕落するものなのか」
さとり「なにかのきっかけで一度文化レベルを落とすとあげるのは至難だと言われてますが、そういうものなんでしょうかね。魔理沙さんも難しいとは思いますけど、がんばってくださいね」
魔理沙「なんで私はもう落ちてるの前提なんだよ」
さとり「?」
魔理沙「心底不思議そうな顔すんな!」
■『亡き富士見の娘へ捧ぐ』 んh氏
さとり「すばらしい恋愛譚ですよ、これは。誰かの面影を相手に重ねる代替恋愛の醍醐味がこの短さの中にぎっちり詰まってます。双方が平等に救われない結末しかない感情のやり取りは、まったく心地よい影を胸のうちに落としてくれますね」
魔理沙「胃が痛くなるくらい、ドロドロで重苦しい話だな。私はこういうのダメだ。十点」
さとり「魔理沙さんにはこの味わいは少し早かったかもしれませんね」
魔理沙「……子供扱いすんなよ」
さとり「よしよし」
魔理沙「…………」
さとり「今すぐぶん殴ってこいつとの関係を清算したいと思ってますね。まあ、怖い。そういえばこの話も蓮子の怖さというものがよく書き込まれていますね。思いが自分に向いていないままの行為がどれほどおぞましいかを理解させられます」
魔理沙「やたらと呼び方が『……子』みたいに途切れ途切れになっていたのも、読んでいけばそういうことだったのかと頷けるな。でも、性の生々しさが私にはやっぱり、うぅん、どうもなぁ……」
さとり「それがいいんじゃないですか。単純なエロスで終わらせないところが。行き詰まりとでも言いますか、どこにも放つことのできない閉塞的な感情の様が、見事に表されている作品でした」
■『輝夜「貴女は後悔するわ」』 ギョウヘルインニ氏
魔理沙「だからなんで私が主役なのに、タイトルに私の名前がないんだよ!」
さとり「しかもまた輝夜に負けましたね」
魔理沙「この話の中だと、輝夜に勝ってるのになぁ……勝ってるよな?」
さとり「判断が難しいですね。結果的に輝夜は狂い、魔理沙はけろりとしてますけども、不老不死になってわずか十年が経過した時点ですでに汚れた体を死んで治すという妖精もびっくりの考え方ができてますからね。もうその時点でどこかずれてしまったのか、それともあくまでメンタルが強いのか」
魔理沙「しかし、不老不死になったとはいえ、年数の経過がすさまじいことになってるな。スケールが壮大すぎるぜ」
さとり「それに淡々としていながらも魅力的な描写は相変わらず素敵ですね。シンプルながらも文の妙味を失わない書き方は見事の一言です」
魔理沙「タイトルにしても、いい皮肉になってるな。私が不老不死になったばかりに、永琳も自分がいなくなっても大丈夫だと決心してしまったんだろう。後悔するのは輝夜の方だったというわけだ」
さとり「本当ですね。魔理沙さんったらひどいですね。同じ癖っ毛持ちとして恥ずかしい限りですよ」
魔理沙「だからそうやって私のせいにするのもやめろ」
さとり「魔理沙さんって鬼畜で外道で最低のクズですね」
魔理沙「言い方が気に入らなかったんじゃねぇよ!」
■『古明地さとりの洗脳講座』 機玉氏
さとり「はーい、操ってわくわくの時間ですよー。今日は自分の言うことをなんでも聞いてくれる女の子の作り方を教えまーす」
魔理沙「なんのテンションだよ、それ」
さとり「そんなあからさまに引かないでくださいよ。ちょっとしたお茶目ですよ、お茶目。てへぺろ☆ってやつです」
魔理沙「…………」
さとり「ときめいてます?」
魔理沙「鳥肌たってる」
さとり「まあ、可哀そう。このお話ではそんな魔理沙さんも立派にすることができるんですよ。洗脳で」
魔理沙「お前って本当にロクなことしないよな」
さとり「嫌ですねぇ、これも慈善事業の一つですよ。作中でも本格的な洗脳の手順を説明してますね。妖精という例をとって書かれていますが、これが実にわかりやすい」
魔理沙「なんか説得力があるというか、うぅん、例を交えた書き方のせいなのか? 本当に教本としてありそうな筆致だな」
さとり「さらに、思いもよらぬところからとつぜんあらわれるオチもいいですね。サプライズと言いますか、胸を小突かれたような気分になります」
魔理沙「本当に唐突だけど、オチとして十分に役目を果たしているんだから大したやり方だよなぁ。まあ、あまりにとつぜんだったせいか、これでおわりかって物足りなさも出ちゃうんだけどな」
さとり「もっとこの話が読みたくなってきますよね。そう、つまり私たちはすでに作者さんに洗脳されていたんですよ!」
魔理沙「な、なんだってーー!!」
さとり「…………」
魔理沙「…………」
さとり「…………」
魔理沙「……満足したか?」
さとり「それなりに」
■『早苗さんは半分神なので普通の食事が取れなくなりました』 R氏
さとり「今回はグルメのお話が多いですね。読んでいるとこちらもお腹がペコちゃんですよ」
魔理沙「いや、ありえないだろ。なんだよ、これ。ゲロがご飯って……ないないない、絶対にない」
さとり「嫌にかたくなですね、魔理沙さん。こんなものは、あれですよ。もののけのお姫様が遠い地から呪いを解くためにやってきた青年に、干し肉を自分で噛んでやわらかくしてから口移しでのみこませるようなものですよ。あれがちょっと大胆になっただけです」
魔理沙「お前は『ちょっと』って言葉の意味を調べてこいよ! 半分神だから妖怪の嘔吐物でないと食えないっていう設定もあまりの衝撃にすんなり受け入れてしまった自分が怖いよ!」
さとり「ですよね。もうちょっと他に方法はなかったんですかね。牛とか豚みたいに低級妖怪の肉を食べるとか、永遠亭に入院して点滴生活をしてみるとか」
魔理沙「しかし、この嘔吐と食事の描写は書き込まれすぎていて圧巻の一言だな。あまりにも濃密に書かれているから、文面からして胃酸の嫌な味がこみあげてきそうだ」
さとり「この書き込みの熱意はすばらしいですね。おぞましさの中に二人の感情の渦が見え隠れしています」
魔理沙「私はもうなんか気分が悪くなってきたぜ……」
さとり「まあ、大丈夫ですか? もうダメだと思ったらここに全部出しちゃってくださいね」
魔理沙「それ、私の帽子だろ」
■『あやや』 ホーリー山本氏
魔理沙「…………え?」
さとり「どうしたんですか、魔理沙さん」
魔理沙「いや、どうしたもなにも、これ……え? だって、これ、え?」
さとり「この作品もあなたに見向きもしない話なんですよ。早くディスってください」
魔理沙「その……えっと、とがくしって誰だよ。作者さんか?」
さとり「ご存知、ないのですか? とがくしとは作者さんの一人でもなければ、オリキャラでもありません」
魔理沙「じゃあ、なんなんだ」
さとり「ブランドです。とがくしとは、ブランドなのです。ブランドというのはある種のクオリティを約束するものですからね」
魔理沙「ブランドー?」
さとり「吸血鬼じゃないです」
魔理沙「フランドール?」
さとり「離れてるし、吸血鬼じゃないって言ってるじゃないですか」
■『さとりんはコウ立て無視の突進少女』 あぶぶ氏
魔理沙「囲碁とはまた和風だな。地霊殿の雰囲気からすると、お前らはチェスとかやってそうなイメージがあるけど」
さとり「どこぞの島に住んでる殺人癖のあるご令嬢に招かれた天才みたいにチェスと将棋と異種格闘戦ならやったことがありますけどね」
魔理沙「なんだそりゃ。しかし、この話は囲碁をよく知らない私でも問題なく読めたな。さとりとこいしのキャラが囲碁を通して書かれているのもいい。一貫してほのぼのとしていて、安心して読めるストーリーだぜ」
さとり「私は最後にどんでん返しで、なにかとんでもないことが起こるのでは、と身構えてましたけどね。それにしても、この話の私は情けないですねぇ。こんなことで泣いてしまうなんて」
魔理沙「いやぁ、案外お前も可愛いところがあるんだな。意外な一面ってやつが見れて面白かったぜ」
さとり「失礼な。私は常に可愛らしいんですよ。なんといっても今回の企画で実績がありますからね。ナンバーワンという実績が」
魔理沙「ああ、はいはい。わかったわかった。さとりは可愛い可愛い、可愛いぜ」
さとり「え……その……そんな当たり前のことを一票も獲得できなかった人に言われても反応に困るんですが……」
魔理沙「お前ってホント、息する感覚で人の逆鱗の上をスキップするよな」
■『こんなときは眼の裏まで咲夜』 仙人掌うなぎ氏
さとり「一行目から有無を言わせずこちらをその世界観に取り込もうとしてきますね。文面からすさまじい磁力が放たれているようにすら思えます」
魔理沙「いやいや、いきなり咲夜がおかしくなってるじゃないかこれ。訳がわからん」
さとり「確かに不条理じみてますが、読みにくいかというとそうではないしょう。これは、冒頭でその世界のルールを説明しているからです。なにも示されないままでは読んでいるこちらもどうしていいかわかりませんが、このように内容が奇怪なものであれ明確なルールがあればそれを指針に進もうとするものですからね。ですから奇妙でありながらも不思議な読みやすさがあるんですよ」
魔理沙「読みやすい? 私にはなにがなんだかわからなかったけどな。咲夜がレミリアをお嬢様と呼んでいないのも違和感が残ったし」
さとり「シュールレアリスム的手法を用いて咲夜の能力の側面を書いた話だとは思いますけど、そもそもこういった話に意味を求めるとキリがなくなってしまいますよ」
魔理沙「うぅん。セカイ系ってこういうのを言うのか? 抽象的すぎてどうもなぁ……」
さとり「そうですねぇ、この作品は残り香をちょっぴり味わう程度がちょうどいいと思いますよ。楽しみ方は読む人それぞれですから」
■『無意識とDNAとテキストコラージュ(※萃香はいない)』 さとうとしお氏
魔理沙「うお、なんだこれ」
さとり「一目見ればわかるように、いかにもなにか仕掛けが潜んでいそうな段落形式が特徴ですね。評価期間の後で更新したようで、作者さんからの解答が提示されていますよ」
魔理沙「DNAの二重螺旋みたいに読めるように文字が仕込んであったのか……きっとすごい苦労したんだろうな」
さとり「意味的には普通に読める上に、二つの斜め読みまで仕込むのはなかなか出来ることではありませんからね。仕掛けが理解できて思わず、ほぉと感心しましたよ」
魔理沙「でも、これってテーマがお前ら姉妹みたいだけど、タイトルはさとりでもこいしでもないんだな。なんで、萃香なんだ?」
さとり「作者さんの趣味でしょう。これはそういう企画ですから」
魔理沙「うぅん。それじゃあ、制限の意味がないような気がするんだがな。それに、結局仕掛けがわからない人には、よくわからない、つまらない、としか思えないんじゃないか?」
さとり「そうですね。テキストのコラージュとしてはレベルの高いものでしたが、惜しむべくはそれがこちらに伝わりにくいという点ですね。わかる人にだけわかればいい、というスタンスであったのが残念です。しかし、こうした柔軟な発想とそれを実行できる手腕こそ評価されるべきでしょうね」
魔理沙「しかし、注視していたせいで目がかなり疲れたぜ」
さとり「目薬使いますか?」
魔理沙「お、サンキュー……いや、待て。なんで瓶サイズなんだよ」
さとり「サードアイ用ですよ。覚り妖怪は乾燥に弱いので。私、目薬の冷たい刺激が好きなんですよねぇ。こいしはその刺激に耐えられず第三の目を閉ざしてしまいましたけど」
魔理沙「そんな理由なのか」
■『ネバネバギブアップレッツ懐妊さとり様!』 enjoy@空の青氏
さとり「私の妹はこんなにも可愛い」
魔理沙「お前、ゲロる程のダメージ負わされたり、納豆を口移しで無理やり食べされられたりしてよくそんなこと言えるな」
さとり「あ、どうでもいい話なんですけど、納豆は味醂とめんつゆと一味で混ぜると美味しいですよ」
魔理沙「本当にどうでもいい」
さとり「知的なお空やバーのマスターお燐も魅力的ですね。今度、やらせてみましょうか」
魔理沙「お前の妹、本当にとんでもないな。酒を飲む場所で馬の精液の話するとかないわ」
さとり「あら、ご存じないんですか、魔理沙さん。地底では馬の小便がビールで、精液がカクテルとして出されるんですよ」
魔理沙「…………」
さとり「冗談ですから、そんな潮みたいに引かないでください。それにしても、このお話では会話のテンポがよくて、小さな可笑しさをコツコツ積み上げて大きな笑いにしてくれるような面白みがありますね」
魔理沙「まあ、確かにとんでもないテンションではあるけど、逆にその勢いにのまれてこっちまで気分が高揚してくるみたいだな」
さとり「ラストは伝統と実績の正夢オチです。こじんまりとしていながらも、きっちりとまとまったお話に仕立て上げた作品でしたね」
■『ウルトラハッピーさとりさま』 ゆっ氏
さとり「文々。新聞にある占いで今週はウルトラハッピーだと言われた私の話ですね」
魔理沙「お前のところもあいつの新聞を取ってるんだな」
さとり「ええ、よく燃えるので冬場は重宝してますよ。それにしても、新聞の占いなのに名指しで運勢一位だと書かれるとはある意味すごいですね」
魔理沙「ああ、でも読み終わった後で考えると、こいしが自分たちの計画のために文と手を組んでいてそう書かせたということもありうるよな」
さとり「それはそれは。こいしが賢い子になってお姉ちゃんは嬉しいです」
魔理沙「あ、いいんだそれで。しかし、ウルトラハッピーの一週間はあっという間に過ぎ去って、それからの裏切られる怒涛の勢いは圧巻だぜ」
さとり「それまでに仕事を手伝ったことなども何気ない伏線だったとは、まったく気づきませんでしたよ」
魔理沙「あと、なんかこの話のさとりはチョロい気がするぜ。優しくされてそれまでのペットや妹との関係をすっかり都合よく忘れるなんてな」
さとり「たぶん、優しさに慣れていなかったんでしょうね。そういう人って一度優しくされると扱いやすくなりますからね」
魔理沙「ふぅん……なにニヤニヤしながらこっち見てるんだ?」
さとり「いえいえ、お気になさらず。ふふ」
■『サニーちゃんと霊夢』 紅魚群氏
さとり「霊夢が心の拠り所だった妖精のサニーが、霊夢の葬式の日に神社へ向かった話ですか」
魔理沙「いきなりサニーが童話のシンデレラ並みに悲惨な環境にいるんだが、いったいなにがあったんだよ」
さとり「これもまた一場面を切り取ったような始まり方ですね。ですが、冒頭である程度の説明を自然に書き込んでますから、読みづらさは感じませんね」
魔理沙「サニーが子供っぽく書かれていて、わざとらしくも感じるけどいかにもな妖精の演出としてはかなっているな」
さとり「霊夢の葬式だと聞いても、霊夢さんに早く会いたいと思っているなどまだ実感がわいていない妖精の哀れさや、霊夢の死に理解がようやく追いついてその胸の中で喪失感が形作られる様は、読んでいて感じ入るところがありますね」
魔理沙「印象としてはいい話だと思うんだけど、ハッピーエンドってわけじゃない。なんだか澄んだ雰囲気の作品だな」
さとり「サニーの渦巻く感情の波を、読んでいるこちらに押し付けず、染み入るように伝えてくる筆致は見事の一言です。妖精の心中というラストは、霊夢さんがもう二度と戻ってこないとわかっていながら離れたくないというサニーの願いが如実に表されてますね」
魔理沙「でもあの霊夢が死ぬなんてなぁ。なんだか私には想像もつかないぜ」
さとり「人間ですから、あなただってそのままならいつかは死んでしまうんですよ。魔理沙さんも自分の葬式で心中してくれるようないい人が出来るといいですね」
魔理沙「重すぎるだろ、それ」
■『博麗神社で怪談を語ってはいけない』 町田一軒家+氏
さとり「子供であろうと大人であろうと無邪気な発想とは、おそろしいものです。魔理沙さんもそうは思いませんか?」
魔理沙「ラストのセリフも私なのに、タイトルに私の名前がない。十点」
さとり「これはさすがに霊夢さんが主役でしょう。あきらめてください。それにしても、この作品はいろいろな解釈が出来そうで面白いですねぇ。パズルみたいなお話ですよ」
魔理沙「そうだな。結局、この怪談っていうのはいわゆる呪いみたいなものなのか?」
さとり「それも人それぞれの捉え方があるんでしょうね。制限があるようですし、儀式のようなものなのかもしれませんし、博麗神社という場所に限定されていますから、おそろしい妖怪が神隠しをしているのかもしれません、ね」
魔理沙「あと気になったのは、霊夢の話した二人の少女が本当に実在していたのかだな」
さとり「そこのところは、作者さんの中では正解があるのでしょうけれど、正直なところ私にはよくわかりませんでしたね。単純に怪談上の登場人物でしかない、というのはないでしょうけれど」
魔理沙「じゃあ、やっぱり霊夢が怪談を利用して消し去ったのか」
さとり「そうだとしても納得のいかない点がいくつかあるんですがね。怪談の効果でその二人の存在を抹消したのも、いったいいつなのかという問題も出てきますしね。あなたの最後のセリフで終わるお話でしたから、やはりそこには含みがあると思います」
魔理沙「なるほどな。過去にあった話と見せかけて今まさに、ということかもしれないのか」
さとり「意味がわかると怖い話、のタイプの作品でしたから、出来れば解答がほしいところですが、こういうものは自分で考えなければいけないのかもしれませんね。でも、解答があるといいですね、ホント。ないものですかねぇ、解答」
魔理沙「露骨すぎるからそろそろやめろ」
■『門番』 ダルメシアン氏
さとり「右ストレートでぶっとばす、まっすぐむかってぶっとばすと言わんばかりの直球ピーンボールのように鋭い笑いとシュールな空気をもたらしてくれる作品ですね。地の文が妙にこなれていて、可笑しさがこみ上げてきます」
魔理沙「やっぱり他のやつらも辛かったんだな……」
さとり「ここはしんみりするところじゃないんで、そういう湿っぽい声出すのやめてくれません?」
魔理沙「なに言ってんだ、勝手なこと言うなよ! お前にあいつらの気持ちがわかるのか!」
さとり「あ、自分、覚りなんで^^」
魔理沙「今すぐその顔に拳をシュートしたい。抉りこむように打ち込みたい」
さとり「魔理沙さんったらこわぁい。それにしても、獲得票一位の私にはこのお話に出てくる彼女たちの気持ちがよくわかりませんねぇ。人気ナンバーワンの私にはわかりませんねぇ。ああ、辛い。その悲しみがわからなくて辛いわぁ」
魔理沙「その目と目が離れすぎている顔を今すぐやめろ。生まれたての地球みたいにしたくなるから」
■『霊夢の飼育』 汰汲氏
さとり「…………」
魔理沙「目がギラギラしてる時点で考えてること丸わかりだからな。こっち見んな」
さとり「私も魔理沙さんが飼いたい。だけど、屋敷はもうほかのペットでいっぱいなんです。でも、これなら!」
魔理沙「だから言うなっつってんだよ。しかし、紫が小さくなった時点で、もう嫌な予感でいっぱいだったな、この話」
さとり「徐々に独占欲があらわれてくる霊夢の描写がわかりやすくていいですね。その後のウソがばれて、紫に裏切られたと勝手に思い込む霊夢もまたすばらしい。やっぱりそうなりましたか、と思いつつも満足できるツボを押さえた展開ですね」
魔理沙「だけど、これは結局なんで小さくなったんだろうな。この作品のコメントを読んで少しは納得もできたけどさ」
さとり「そのあたりは自由解釈でよろしいんじゃないですかね。書くべきところを書き込んだからこそ、欲におぼれた霊夢の魅力的な顛末を話の中にしっかりとまとめられたんですからね」
魔理沙「何気にタイトルも上手いよな。二重の意味に取れるところがさ」
さとり「こういうさり気ないところにも演出があるのは、読者としても嬉しいところですね」
魔理沙「でも、好きな人を自分のものだけにしたいっていうのは多かれ少なかれ誰でも感じるところだよなぁ。この話の霊夢ほどじゃないにしても」
さとり「ですよねぇ。魔理沙さんもやっぱりそう思いますよね」
魔理沙「ああ、うん。で、手を後ろに隠したまま近づくなよ」
■『念願のフランちゃんを手に入れました』 木質氏
さとり「なんだか妙なリアルさのある監禁物語ですね。こういう話ならある程度、心を弱らせればすっかり思い通りになるというものですけど」
魔理沙「いくら続けてもフランのやつは男にまったく懐かないな。まあ、いきなり自分を飼おうとするような輩に擦り寄るやつなんていないしな」
さとり「男の方もはじめはひたすら我慢してプラトニックに接していましたけど、一度欲望に頷けば後は歯止めがきかなくなるものです。男が丁寧な口調や真摯な決意の割りに、下半身に全敗してるところがなんだかおかしいですね。これがシリアスな笑いというやつなんでしょうか」
魔理沙「おまけにフランが脱走した後は、自分に依存させるためにと薬物を躊躇なく使ってるあたりもやばいな。きっと自分ではこれでもかというくらい冷静に行動してるつもりなんだろうけど、傍目から見ればただの性欲の奴隷だな」
さとり「そういったギャップが静かな笑いにつながるんですかね。ああ、なるほど。これがギャップ萌えというものですか」
魔理沙「絶対ちがう」
さとり「いったい最後はどんな終わり方になるのかと期待していたのですが、まさか10KBという容量制限を逆手に取ったオチだとは思いませんでした。一種のメタフィクションのような面白みがありますね」
魔理沙「しかし、この作品で一番面白いのはフランの被虐的な可愛らしさでも驚きのオチでもなく、この男のキャラ描写だな。こういう狂人の独白は、どうしてか不思議な引力を備えているんだよなぁ」
さとり「ほう、魔理沙さんの好みのタイプは気狂いですか」
魔理沙「まったく違うし、メモしてんじゃねぇよ」
■『全裸超人 聖白蓮』 矩類崎氏
さとり「大真面目に不真面目なことを書くシュール系のお話ですね。タイトルの吸引力が今回の企画の中で一番でした」
魔理沙「確かにこんなタイトルだと読まずにはいられないな。古めかしい硬質な文体と、その内容のギャップが読んでいるこっちの腹のやわらかいところを心地よくくすぐってくれる」
さとり「全裸になろうが、集団に強姦されようが、シャイニングパイオツになろうが、聖白蓮の神々しさが一貫して書かれていましたね。作者さんのスタンスが一切ブレないのも、読みやすさにつながったのかもしれません」
魔理沙「何気にこういう教養に突っ込んだ話を書いているのもすごいな。私にはよくわからん世界の話だからかもしれないが」
さとり「まあ、魔理沙さんの頭が残念なのは今に始まったことではありませんから」
魔理沙「にごった目をこっちに向けるな。見下しすぎだろ。私はこれでも勤勉なんだぜ?」
さとり「ほほう、ではどの程度のものか見せてもらいましょうか」
魔理沙「面白い。望むところだ」
さとり「では、私についてきてください。さあ、こっちですよ。早く。ハリーハリー!」
魔理沙「なんでナチュラルに寝室に連れ込もうとしてんだ、お前」
さとり「仏の教えです」
魔理沙「もういいからいっぺん、聖にならって沈んでこいよ」
■『メイド屋家業』 sako氏
さとり「限られたパイの奪い合いのために今日も商売に精を出すメイドと主人の妹を描いたお話ですね」
魔理沙「うぅん。なんでだろう。まるで違和感がないんだが」
さとり「魅力で人を惹きつける主人と優秀な側近、荒事担当の部下やら知識人やらと人材としては適してますからね、紅魔館は。元ネタは知らないんですが、ギャング映画のワンシーンのようです。いかにもな雰囲気の再現がなされてますね」
魔理沙「冒頭のメイドの仕事内容にごくごく自然に暗殺が入ってるところで、ちょっと身構えたぜ」
さとり「終始自然体の咲夜と幼いながら仕事をがんばるフランドールの姿は、見ていて和やかな気分になれますね」
魔理沙「店を爆破して、無差別に人を巻き込んでるけどな」
さとり「仕事ですからね。功績はそのまま寿命となりますし、失敗は体に刻まれる世界ですよ」
魔理沙「殺伐としているはずなのに、牧歌的な印象も受けるなんとも不思議な話だな」
さとり「魔理沙さんは殺伐としているのが好みなんですか? 部屋に閉じ込められて錆びた鋸で自分の足を切り落とさなければいけなかったり、とつぜん爆弾つきの首輪をはめられてから仲間同士で殺し合いを強制されたり、ケジメすると称して爆発四散したりする状況がいいんですか?」
魔理沙「なんかやけに具体的だな。当然、嫌だけど」
さとり「まあまあ、そう遠慮せずに」
魔理沙「その悪評と実績の八意印がついたビンを今すぐ捨てろ」
■『アリス・エプロン・アリス』 有限会社エフゲニー氏
魔理沙「なに、いや、なんだこれ」
さとり「これはまた一風変わった切り口で書かれたお話ですね。内容自体は普通のお料理ストーリーですけど」
魔理沙「いや、料理も描写も上手いけど、それ以上に語っている『僕』の存在が気になって仕方ないぜ」
さとり「冒頭で『僕』という視点の主の正体をエサに読者を引き寄せる手法が見事にはまってますね。このお話の面白いところは、その『僕』の存在が中盤にはもうはっきりとわかるところですね。正体が判明してもそのままお話は続いてゆき、まだなにかあると思わせぶりな雰囲気を一切損なわずにそのまま終わるという、ある意味では驚きのラストを作り出しました」
魔理沙「確かに、なんだこれで終わりかよって思うけど、不思議と物足りなさとか肩透かしのような期待外れの印象は受けないな」
さとり「理由はいろいろ考えられますが、一番わかりやすいのは『僕』の強烈なキャラクターでしょう。演劇のような過剰な口ぶりに、フェティシズムの持ち主。この魅力的なキャラ描写が最後までお話を読ませる力を生み出しているように思いますね」
魔理沙「それに、こういうふうにもしかするとアリスの家の無機物すべてが毎日息づいて独自の思想を垂れ流してるんじゃ、って考えられて逆におそろしくもなるな」
さとり「まあ、私は似たような体験をしてますけどね。生き物の心は読めますから」
魔理沙「へぇ、やっぱり動物とかに囲まれると大変なのか?」
さとり「そうですね、この前ペットに囲まれたときは一心不乱にセックスセックスの大合唱を」
魔理沙「発情期かよ」
■『君は庭師を二頭持っている』 八百万智氏
さとり「二人の庭師がいなくなってしまった後の幽々子さんのお話ですね。タイトルからなにかのジョークが始まるのかと思ってました」
魔理沙「なんというか、ひたすらに嫌味なく綺麗な話だな」
さとり「冒頭で書かれた時の流れは胸を締め付けるような思いが浮かんできますし、幻想的な情景描写は幽々子の開花する様を余すところなく表現していますね。文面がそのまま目蓋の裏で再現されるようでした」
魔理沙「心が温まる話だぜ。一種の陽気さすら伝わってくるみたいだ」
さとり「まあ、ただただ美しいお話で上品な味わいではありますが、もう少しこなれたところがほしかったかもしれませんね。これほどの作品を前にしては贅沢な注文ですけれど」
魔理沙「しかし、この作者さんは幻視力が高そうだな。いろんなものが変換して見えていそうだ」
さとり「ほう、それは仲間意識かなにかですか? 魔理沙さんも見えてはいけないものが見えてしまっていたりするんですかね」
魔理沙「お前が今私に向けている視線は、そのまま私がお前に返してやりたいものだからな」
さとり「え、魔理沙さん……私のことをそんな目で見ていたんですね。いやらしい」
魔理沙「もうやだこいつ」
■『おとなのえほん『子宮とりかえっこ』 著:小悪魔』 雨宮 霜氏
魔理沙「もうっ! もうっ! この話こそもう私が主役でいいだろ! なんで小悪魔なんだよ、最後くらい夢見させてくれよぉやだよぉもうぅ!」
さとり「なんか、魔理沙さん。この作品の魔理沙さんに感化されて幼くなってません? 誘ってるんですか。あまり可愛らしくしてると飼いますよ?」
魔理沙「可愛いからさらうって完全に誘拐犯の思想だからな」
さとり「(あ、戻った。おしい)まあまあ。このお話も主役は魔理沙さんはもちろん、小悪魔さんでもなく、あの吸血鬼姉妹のどちらかのように思えますよ」
魔理沙「フランとレミリアの子宮が入れ替わってるってどこから出て来るんだよ、こういう発想」
さとり「なかなか素敵なアイデアですよねぇ。血液を得るために体を売っているレミリアですが、その子宮に吐き出される精液はすべてフランのところにいってしまうとは」
魔理沙「しまいには妊娠が発覚して、誰の子かも知れないものをお腹に宿す羽目になるなんてな。そのときのフランの行き場を長く失っていた感情が爆発した場面は、おそろしく迫力があったぜ」
さとり「レミリアが姉として本当に最低のクズで、むしろ微笑ましさすら感じますよ」
魔理沙「さすがにそれはない」
さとり「あら、残念。クズを眺める悦びを知らないだなんて」
魔理沙「知ってたまるか。それにしても、この作品はなにか別の背景があるのかね。私と小悪魔が当たり前のように生活をともにしてるけど」
さとり「本筋はあくまで子宮をとりかえっこした姉妹のお話ですからね。そこらへんは薬味としておけばいいでしょう」
さとり「これで三十九作品すべてを読み終えましたね」
魔理沙「あれ、なにか一つ抜けてないか?」
さとり「あんな邪仙が真剣十台しゃべり場みたいにマシンガントークを放つだけの話なんて私は知りませんよ」
魔理沙「まあ、お前がそういうなら別にいいけど」
さとり「さあ、魔理沙さん。どうですか? 全作品と触れ合って好きに思ったことを吐き出せて、すっきりできましたか?」
魔理沙「ああ、それなんだけどさ。私、間違ってたと思うんだ」
さとり「え?」
魔理沙「作者さん方が私に見向きもしなかったのは確かに悔しいけど、こんなにも面白い作品を読ませてもらえたんだ。そこに自分の都合だけで文句を言うなんてどうかしてるよ。人として恥ずかしいじゃないか」
さとり「まあ、まあ、魔理沙さんったらいつの間にか立派になって。メンタルも豆腐から高野豆腐くらいにまで硬くなりましたね」
魔理沙「それ大して変わってないよな?」
さとり「いえいえ、魅力的な女の子になりましたよ。前よりもっと飼いたいと思うようになったくらいです」
魔理沙「まったく褒められた気がしないし、微塵も嬉しくない」
さとり「ふふ。そんな頑なな魔理沙さんも素敵ですよ。魔理沙さんをこんなにも愛らしくしてくれるなんて、産廃10KBを企画した紅魚群さんと、参加した作者さん方には本当に感謝したいですね」
魔理沙「お前の邪すぎる礼をもらっても困るだけだと思うがな」
さとり「それでは改めまして、産廃10KBを企画した紅魚群さん、参加した作者さん方、そして評価してくださった読者の方々、お疲れ様でした。そして、ありがとうございました」
作品情報
作品集:
7
投稿日時:
2013/03/13 18:03:03
更新日時:
2013/03/14 03:03:03
評価:
15/16
POINT:
1500
Rate:
19.06
分類
産廃10KB感想
さとりと魔理沙(時々こいし)のかけあいが面白かったです。
熟語表現が多い、ですか・・・確かにそうです、御指摘有難う御座います
どれもオチが秀逸で読みやすい。
>ソイレント・システム
私は遠慮して(ry。
ミスティア謹製のなら食べるかもしれない。
拙作の趣旨を良く解ってらっしゃる。
また徹底的にこき下ろす雰囲気で始まったのに全然普通に紹介している事に
作者様の優しさを垣間見ました。
非常に楽しませていただきました。
レビューでありながらこれ自体が大変楽しく読めました。
魔理沙ちゃん、そんなこと言うと霊夢香霖とドロドロの寝とり合いする話書いちゃうぞうふふ
そして魔理沙、大丈夫。ここにいる方々は『そんな君』を愛してくれる方ばかりですから。
魔理沙ちゃんディスるって言いながら全然ディスってないなぁ。まんまとさとりさまの策略に乗せられてる感しかないね。
ともかく楽しませていただきました。さすがです
魔理沙のセリフ通り、唐突さやオチの弱さは自分の精進の足りない証拠であり、自分で書いてて一番気になった欠点部分でした。
より良いものが書ける様にこれからも精進させてもらいます。
あと、さとりのセリフにちょっと救われました。
二度も感想を頂けてお得! 紳士なさとりんと可哀想な金髪の子が感想、さらにお得!
さとりさん、あの二人はまだ暫くは忙しそうなので、その間代わりに、あぶれてるはたてちゃんでも愛でてあげて下さい。
はたてちゃんもそこそこ美味しく歪んでる筈ですので。
こういう、イベント後のそれに関連した投稿、毎回結構楽しみでして、はい。
感想は本当に励みになります。
次はもっと萃香を愛でれる作品にしやす!
魔理沙の未来はどっちなのでしょう
そうです。フランちゃんの前では誰だって性欲の奴隷です。