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『早すぎた帰宅』 作者: 日々の健康に一杯の紅茶を

早すぎた帰宅

作品集: 7 投稿日時: 2013/03/15 08:23:16 更新日時: 2013/03/22 21:29:04 評価: 5/5 POINT: 480 Rate: 16.83
皆様は予定が早く終わってしまった時は何をしますか?
一度やってみたかった事をしたり、普段行けない場所に行ってみたり、あるいは難しく考えずぱーっと酒でも飲んで時間を潰したり。
今回、レミリア・スカーレット女史は数ある選択肢の中から早めに帰ることを選択しました。
女史は一週間出かけると家人に伝え紅魔館を後にしました。出かけた場所?理由?それはご自由にお考え下さい。今回のお話には関係いたしません。
ともかく女史は本来一週間かかるはずだった旅程を4日で終わってしまいました。
あまりに早く帰っても家人の休息の邪魔になるのではないかと考えた女史は1日ばかりをなんとか潰したのですがそこから先がいけません。
話は変わりますが女史は面白いことに目がありません。しかし大抵のものはメイドが手に入れてまいります。
数少ない例外といたしましては神社の巫女などは女史自ら足を運ばなければなりません。しかしその巫女も酒宴の一つでも開けばふらふらと蜜にたかる蝶のように呼び寄せられます。
長々と申し上げましたが要するに女史は外の事情にあまり詳しくないのでございます。出不精なのでございます。
確かに女史の妹様などよりはよく知っているでしょうがそれでも屋敷の中で知識を競えば下位に位置することは明白です。
その点、普通の魔法使いなんかは遊ぶ場所も泊めてもらえる場所も、大きな声では言えませんがたかれる場所も良く知っているという点ではかの屋敷どころか幻想郷の誰も敵わないでしょう。
女史は確かに社交家であり知り合いもここ幻想郷ではたくさんいますが、いかんせんふらりと尋ねて時間潰しに使えるような知人はほとんどおりません。
それでもなんとか神社で出がらしを飲んだり、人里を見物してみたり、夜雀の屋台で酒を飲んでみたりしてみましたがどうやっても時間が食べ切れません。
こうした具合で女史に芽生えた家人達への思いやりの情はすぐに帰ろう、という欲求に取って代わられたのでございます。

路銀が尽きたと言うことも帰宅への要因の一つである。賭博とはなぜかくも魅惑的なのだろうか。

日が高く上り昼食の弁当を使うには良い頃合になった頃、女史は懐かしい紅魔館に帰ってまいりましたが門に誰もおりません。
平常ならばシェスタをこよなく愛する門番が妖精を相手に暇を潰しているか、夢の世界を探索している微笑ましくも怒りを抑えきれない光景が見られるはずです。
ですが現在門は墓場のズンビーの口のごとく半開きに開いており多少なりとも太い神経をお持ちの方なら喜んで館に入ることは間違いありません。
女史は門を抜けた後、腹立ち紛れに力一杯門を閉めてから花壇を眺めましたがそこにも門番の姿は見受けられません。
それどころか冥界の庭ほどではありませんが丁寧に整えられているはずの庭が荒れております。
暇に飽かしていじりにいじった小世界は雑草という侵略者によって、よく言えば生命力あふれる、率直に言うとまとまりの無い混沌とした様相を呈しております。
雨の日も雪の日も熱心に手入れをしていた門番だけに女史は不審を感じました。
もしかしたら何か館の内部で大きな問題が起きているか、考えにくいことですが、健康が服を着て歩いているような門番が病気をしているのかと推理しました。
だとしたら早く帰ってきたのは館の問題の解決をするための運命を無意識に引き寄せたためかもしれないなどと考えながら女史は玄関のノブをひねりました。

以前魔法使いが庭に魔法を使った際、数年にわたって発育が悪くなったことがある。それ以来手入れは鬼気迫るものとなったらしい。

玄関を開けたときにまず感じたのは埃っぽい空気でした。女史の友人の住まいとなっている図書館に比べれば微々たる物ですが、仕事熱心なメイド長がこのような状態を放っておくことは考えられませんでした。
ますます女史は不安を感じ、もしや敵襲でもあってファミリーが連れ去られたのではないか、友人の魔方陣が暴発して*いしのなかにいる*のではないか、などなど想像が膨らんでいきます。
単にどこかに出かけているだけではないかとも考えましたが、誰一人として残っていないというのはやはり不自然です。それに出かけているとしたら噂好きの幻想郷の諸氏が黙っていないでしょう。
女史は悪い予感を感じながら日傘を傘入れに入れ館に足を踏み入れます。あたりを見渡しますが埃っぽい空気の他には何もありません。妖精メイドも居ないのですが女史が探しているのは家人なので気に留めませんでした。
静寂と冷気に包まれながら女史はまずどこへ行くべきか思案いたします。どこから行くか、何を探すか、必要なものはあるか。賊に対面したとしても制圧するのは容易いことですが家人を盾にされると少々厄介です。
結局、女史は友人の居室を尋ねることにいたしました。事があったにしろ無かったにしろなにかしらの手がかりがあるのではないかと考えたからです。
図書室へと向かう道中にも生命や幽霊の気配はありません。玄関と同じく静寂と埃の香りが辺りを支配しております。
一応武器を構え慎重に進んではいたのですが幸か不幸かそれを用いる機会は訪れることなく図書室へと辿り着きました。
ガーゴイルの意匠を凝らしたノッカーを叩きますが返事はありません。押してみると抵抗が無かったので思い切って開いてみました。
そこには館よりも更に埃っぽくその上かび臭さも上乗せされた空気が漂っていました。入り口からざっと見回してみましたが友人は見当たりません。
室内へと歩を進め友人の定位置である散らばった机に目を向けても誰もいません。思い切って声を上げてみましたが返事はありません。
続いて暖炉でも調べようかとした所で弱々しい声が聞こえたのでそちらに向かいます。
声が聞こえた場所に辿り着くと友人が司書に使っている下級の悪魔がうつ伏せで棚に詰め込まれていました。
引っ張り出してから仰向けにしてやり事情を聞きますとしばらく魔力の補給が無いため節約のために寝ていたこと、声が聞こえたため一時的に目覚めたことなどを話しました。
女史は友人の行き先を聞きましたが知らされていないようでした。女子は再び司書を元通り棚につめて図書室から去りました。

冬眠により消費するエネルギーを減らす動物は数多くいる。悪魔にもいるに違いない。ただ彼女が何のために棚に入っていたかは分からない。冬眠ではないかもしれない。

碌な情報を得られなった女史は続いて厨房へ向かうことにしました。館の手入れがされていない現状、使用者がいるとは考えにくいですが妹の部屋へ向かうよりはマシだと女史は考えました。
道中相変わらずの埃臭さでしたが図書室に比べれば快適とすらいえる空気でした。歩き回って体も温まってきたのか肌寒さも感じません。
やがて厨房に辿り着きましたがドアノブに積もっている埃を見て入る気がうせていきました。しかし念のため確認することにして手にほこりがつかないようにハンカチーフでノブを包んでから扉を開けます。
冷え切った暖炉、もう幾日も使われていないであろうランプ、もし調理するならばまず掃除をする必要のある部屋を見て無言で外に出ました。
扉を閉めようとした時、ふと違和感を覚えました。違和感を感じた場所をもう一度見るとそこは食料庫でその周囲だけ妙に、なんというか、臭いが漂っていたのです。
もしや箒に乗ったネズミが留守をいい事に食料にまで手を付けたのではと考えた女史は食料庫に向かうことにいたしました。
食料庫は特別の客人のためのワインを選んだり時には料理の材料の吟味をすることのある女史にとっては使い慣れている場所です。
そこに広がっていた光景は女史の思考を止めるには十分なほどの衝撃を与えました、
散らばっている食品の包装、異臭を放つ食い散らかし、割れたビンのガラス片やわずかに飲み残しのある酒瓶などが床を彩っております。
神経質なまでに整理整頓され機能美を誇っていた空間は足の踏み場すら見つけることが困難な様相を呈しています。
女史はしばし呆然としていましたがやがて混沌とした残骸の中に3条の道を見つけました。
それはちょうど人が歩ける程度の幅がありその範囲にはごみが落ちていません。
ちょうど入り口から始まっておりその終末には辺りの床よりもより一層多くのごみが散らばっております。
女史は曲者が3名で食い散らかした痕跡だと考えます。ミスリードを誘うためにわざと道を作ったことも考えられますがそこまでの労力をかける理由が分かりません。
女史は待ち伏せも検討しましたが荒らされた部屋を見続けて怒りを抑えきれる自信を持てなかったため再び外に出て探索することにいたしました。
外に出た女史は食料庫から伸びる3つの足跡を見つけます。足跡と申しましたがこれは女史の鋭敏な感性により見て取れたもので一般の人間や下手な妖怪変化には見て取れないほどのものです。
追跡を専門としている者なら見ることができるでしょうがこのお話ではどうでもよろしいことでございます。
1つは女史がつけた足跡。2つは右手に伸びる複数人の足跡。女史が狩などを嗜んでいたらより特徴を読み取れたのでしょうが残念ながら複数人ということしか分かりません。
もう一つは左手に伸びる1人分の足跡。これはどこかで見たような記憶がありますが女史は思い出せません。
女史はまず左手の足跡を辿ることにしました。一人だけ逃がすというのも癪に触りますし複数人を相手にするのだったら相手の情報を知っておく方がより完璧を期することが出来ると考えたからです。

我侭な舌と有り余る暇を持つ者は幻想郷にはいくらでもいる。大抵は部下が苦労するが中には苦労を楽しむ連中もいる。

左手の足跡は地下に続いており女史は嫌な予感を感じ無意識に眼を逸らしていましたが現実は苦々しいものでした。
足跡は女史の妹の部屋へと続いていたのです。女史はここへは来たくはありませんでした。
なぜならもし女史の妹が連れ去られたとしたら相手方はとてつもなく厄介であることが判明し、もし何の変哲も無く暮らしていたら食料庫を荒らした犯人と妹が何かしらの関係があるに違いないと考えたためです。
女史は恐る恐る扉に近づき設置してある鈴を鳴らすと中から返事がありました。その声は紛れも無く愛すべき妹の声で女史は安堵のためか頬が引きつっております。
館のドアの中では最も、恐らく幻想郷の中でも有数の、重いドアを開けて室内に入ると女史の妹が床に右耳を押し付けながらうつ伏せになっております。入り口にいる女史は顔を見ることが叶いませんでしたが妹であることは明白です。
女史が何をしているのか尋ねると世界の心音を探っていると言いました。どのくらい続けているかを聞くと覚えていないと言いました。
食料庫の惨状は何かと尋ねると215室に答えがあると言いこれから忙しくなるからと壁際まで這いずっていきました。
壁を這い登っている姿を見届けてから女史は部屋を出ました。扉が閉まる直前に何気なく振り返ると天井からぶら下がる妹と視線が合った様な気がしましたが幻覚に違いないと言い聞かせ女史は215室に向かいました。

もちろんそれは幻覚ではない。扉が閉まった後も見ていた。天井に両足を突き刺し両手でスカートを押さえ口からは真実と唾液を垂れ流しながら―――

女史は暗澹とした気分で食料庫の前まで戻ってきて先ほど選ばなかった右手の足跡を辿ることにしました。
足跡は紛れも無く215室に近づいており近づくに従って気配がより濃厚になっていきます。部屋の前にたどり着く頃には汗に湿った絨毯すら見ることが出来ました。
地下室に行ったときから薄々と感じていた嫌な予感が的中してきていることを女史も認めざるを得ません。認めていくことによってより暗澹とした気分は強くなってまいります。
それでも、まだ、自分の予想は外れていて部屋の中にはマヌケな賊がマヌケさにも関わらず狂気に当てられた女史の愛する妹を言いくるめていて、
留守を任せたはずの家人達はたまたま無断で幻想郷の住民の噂にも昇らない場所に長期間出かけているという、最早妄想に近いまでの希望的観測を控えめな胸に抱きながら女史は215室の扉を開けました。

全てを見なかったことにして眼を背けて暮らすのも一つの手ではある。ただ見ていない間にそれが近づいてこないとも限らないが。

そこに広がっていた光景は食料庫とは比べ物にならないほどのごみと甘ったるい頭が痛くなるような匂いが漂う不浄のお手本のような部屋でした。
女史はできるだけ無生物に目を向けて精神の均衡を保えおうとしましたが動く物体というのは、ましてや予感が当たった場合ではなおさら、猫でなくとも眼を引かれるものです。
背中に湿った紫髪を張り付かせ硬直しながらもゆっくりと顔をこちらに向けるパチュリー・ノーレッジ。骨張ったしりを浮かせ膝立ちになりながら両手を何かに向かって伸ばしております。
酒に焼けた赤ら顔が次第に青ざめていく紅 美鈴。両の腕で目の前にある何かを抱いていましたがあわあわと、何に慌てているのか皆目見当がつきませんが、起用にも両手と腰を使い後ずさっていきます。
そしてパチュリー・ノーレッジが両手を伸ばし、何の証拠もありませんが、狼藉を働かれようとしていた、これまた何の証拠もありませんがもしかしたら、紅 美鈴がパチュリー・ノーレッジの狼藉を手助けするため胴を押さえられていた十六夜 咲夜。
その目は泥酔しているかのようにドロンとしており胴を抱えられていた折にもなされるがままにしておりました。
その視線は女史に向けられておりますがそれがなにかは分かっていないようです。どこのとはあえて言及いたしませんが口からはだらだらと液体を垂れ流しています。
女史は全てを悟り笑顔で元凶と思しき二名を眺めその二名がぎこちない笑顔を返したことを確認した後に床を蹴り空中でこぶしを握り力任せに――――

後日物を喋らせるには問題がなくなった首謀者の証言によれば特殊な薬品が手に入ってので使ってみたことや一週間経てば自然に収まったことなどが判明いたしました。
また早めに帰るなら連絡を入れるべきだと言う主張やレディーの部屋、あの時館に淑女がいたとは思えないのですが、に入るのだったらノックぐらいするのが常識ではないかと言い始めた所で女史の手により首謀者は再び喋ることが出来なくなりました。
続きと言えなくもない。どちらから読んでも問題ないです。
女史という呼び方に特に意味はないです。響きがよかったので使ってみました。

>>1名無し様
最初は核戦争でミュータント化した容姿に気付かない面々に鏡を突きつけるとか全員死んでいて幽霊になっているとか考えたんですが上手く纏まらなかったので。
>>2NutsIn先任曹長様
持てる者を怒らせる方法の一つが所有物に傷を付けることだと思っています。そういった意味ではお嬢様はカンカンになったのではないかと。
>>3名無し様
イメージとしては指で耳を塞いだ時の音です。ちなみにこれは指の血流の音らしいです。
>>4んh様
紅魔館の庭の土は肥えています。後はご想像にお任せします。
日々の健康に一杯の紅茶を
作品情報
作品集:
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投稿日時:
2013/03/15 08:23:16
更新日時:
2013/03/22 21:29:04
評価:
5/5
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1. 100 名無し ■2013/03/15 18:48:38
ヤクチュウENDだったかー。
ゴミ山の中で一週間風呂に入らず食っちゃ寝の生活の少女臭……さすがにそういう趣味はないなぁ。
2. 100 NutsIn先任曹長 ■2013/03/15 20:43:39
浮気物のストォリィでは、予定より早く帰りし主人が見るは、妻と睦みあう米屋か洗濯屋というのが必定。
然るに、この物語は、幼き主が見舞いしケイオスの極みたる酒宴の後日譚でありまっする。

恐らく、夜の皇たる主は、忠義を信じていた従者共に、御母堂のホトより生誕せしめた事を、存分に後悔という慈愛を以って堪能したのでありませう……。
3. 100 名無し ■2013/03/17 09:55:17
私の亡き姉もお薬をしたときに世界の心音が聴こえると言っていました。
それを思い出しました。
4. 90 んh ■2013/03/21 19:24:38
ラリパッパだったのか。こりゃ糞尿まみれだな
5. 90 名無し ■2013/03/25 00:17:14
最後の描写が官能的で素敵。
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