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『おだやか幻想郷』 作者: box
「全く、訳が分からない!」
肩を怒らせた屠自古に、神子は気づいた。
「屠自古、どうしたのですか」
「それが布都の奴、『お前は只のプラズマだ!』って勝ち誇ってきて……」
神子は何も言わなかった。
・・・・・・
<事故>
「神奈子様、誕生日おめでとうございます!」
早苗はそう言いながら、神奈子に大きな箱を渡した。
「嬉しいな早苗、これはプレゼントかい?」
「はい!」
開けると出てきたのは、大きなケーキであった。真っ白なクリームに苺の乗ったものである。
「私が焼いたんですよ」
「早苗もすごくなったものだなあ」
「ところで神奈子様、」
「蝋燭は幾つですか?」
神奈子はケーキを落とした。
神奈子はケーキを落とした。
<命在りし>
三度扉を叩いても、返事は無い。さとりは、こいしの部屋の扉を開いた。
小さな部屋は暗く、廊下の灯りが僅かにさすばかりである。と、さとりは小さな声を上げた。部屋の真ん中に、人の形をしたものが倒れていたのだ。
「誰だろう」
真っ先にさとりは思いながら、倒れる人に駆け寄り
そして、気づいた
相手の心から、何の声も流れてこないことに。
「眠っていても、何かを考えてる筈では……?」
さとりは薄い暗がりの中、仰向けの胸に手をあてた。どうやら女性のようで、ふくよかな膨らみを持っている。
しかし、鼓動を察するより先に、さとりは目を見開いて手を引っ込めた。
「………これは?」
恐る恐る、もう一度、相手の胸を触る。さとりの指は、軽く沈んだあと、強く跳ね返った。
さとりは今度は、肌を撫でようとした。が、妙にじっとりとした皮膚の上では、指は滑らなかった。
「この人は、一体……」
さとりは相手の表情を見やって、今度は息を呑んだ。無論、暗がりの中で、良く見えるものでは無い。しかし、目鼻の凹凸も無く、髪の毛の一本も無いのが、朧気にもさとりに見えたのだ。
「…………」
さとりは考えた。まず、これは何かを。次に、何故これがこいしの部屋に在るかを。
そしてその内に、さとりは呟いた。
「………こいし」
目の前の人物は、明らかに死んでいる。しかも、体に妙な加工処理をされて。
さとりはこいしを知ってる。愛らしい表情の裏に、無邪気な凶暴性を秘めてることを。気紛れで、思いつきで、簡単に命を弄ぶことを。それを知っていれば、答えは一つしかない。
こいしが死体を剥製か何かにして、弄んだ。そうとしか、さとりには考えられなかった。
と、そんな折、さとりは部屋の入り口へ顔を上げた。いつの間にか、こいしが、ぼうっとさとりを見つめていた。
さとりは、小さく口を開いた。
「……こいし」
「………?」
「私たちは、妖怪です。人も襲います。しかし……」
「………命とは、何でしょうか……?」
「お姉ちゃん………」
「それ、ダッチワイフ……」
<実習>
「突然だが、君に頼みがあるんだ」
「?」
妖夢は、上白沢慧音についてあまり知らない。寺子屋で先生をしてることの他には、強いて知ることも無かった。が、その慧音が、いきなり妖夢に頭を下げていた。
「妖夢、君に、授業の実習に出て欲しいんだ」
「私が?何のです?」
「………保健体育の、だ」
妖夢は目を丸くして驚いた。
「君にしか出来ないんだ、頼む!」
「私にしか?」
戸惑う妖夢ではあったが、人の為にする事は嫌いではない。結局妖夢は、慧音に頷いた。
「見ろみんな、これが精子だ」
慧音はそう良いながら、尻尾を揺らす半霊を掲げた。
「これが女性の中の卵子に触れると、受精して……」
と、言葉が途切れた。半霊は宙に浮くと、慧音を強かに跳ね飛ばしたのだ。
子供達から歓声が上がる。
「わー!慧音先生が受精したー!」
妖夢は刀を抜いた。
<信じる者は救われる>
命蓮寺に住むみなで、山へ行くことになった。ぬえは乗り気では無かったが、付き合い上ついていくことにしたのだった。
遭難するとも知らずに。
村紗、一輪、ナズーリン、星、聖、ぬえ。
六人は、吹雪荒れる斜面の上、ちっぽけな山小屋で身を震わしていた。
「寒い……もう、限界かもしれません」
聖は唇を青くして言った。山小屋には焚き火も、燃やす為のものも無かったのだ。
「何を弱気なことを」
「しっかりしてください」
口々に聖に激励が飛ぶ中、ぬえは明日の朝御飯について考えてた。
すると、
「聖、私に任せて」
村紗が立ち上がり、言った。
「私の全生命を使うことで、なんかよくわからない理論で小舟を具現化させる。そうすれば火がつけられる筈」
「しかし、それでは村紗が!」
「ありがとう、聖」
そう言って村紗は消えて、あとには小舟が残った。
「わー!村紗ー!……しかしこれで、火に当たれる……」
と、聖は口に手を当てた。
「駄目です!これでは火種が……」
すると、
「姐さん、ここは私が」
一輪が立ち上がり、言った。
「雲山を水蒸気爆発させれば、火が点く筈」
「しかし、それでは一輪と雲山が!」
「姐さんに逢えて、本当に良かった」
一輪が消えて、爆発のあとには、小さな火が点いていた。
「わー!一輪ー!……しかしこれで暖まれる……」
と、聖は口に手を当てた。
「駄目です!火はあっても、食糧が……」
すると、
「聖、私に任してくれ」
ナズーリンが立ち上がり、言った。
「私は鼠だ、私を食べれば良い」
「しかし、それではナズーリンが!」
「御主人を頼んだ」
ナズーリンはペンデュラムで自分の頸動脈を掻き切ると、動かなくなった。
「わー!ナズーリンー!……しかしこれで、食べ物が食べられる……」
平然とナズーリンを食べようとしてる聖に、ぬえはふと寒気を覚えた。と、聖は口に手を当てた。
「駄目です!私は女の子ですから、只の鼠なんて食べたら死にます!」
ぬえは何も言わなかった。すると、
「聖、私にお任せを」
星が立ち上がり、言った。
「私が黄金の回転力でモーメントを逆回転させれば、私は虎ですからバターになる筈です」
「しかし、それでは星が!」
「貴女といたときは……本当に楽しかった」
星は目にも止まらぬ速さで回転し始めた。そして残ったのはバターだけだった。
「わー!星ー!……しかしこれで、美味しく鼠を食べられる……」
ぬえは、次の聖の台詞がわかっていた。しかし言いたくは無かった。
「駄目です!何か棒を使って焼かないと、鼠もバターも食べれません!」
聖はぬえを見た。ぬえは視線を逸らした。しかし狭い山小屋では、聖を見ずにはいられなかった。
仕方なく、ぬえはちらと聖を見た。しかし聖の両目に収まる眼球が、ぬえにはただのガラス玉にしか見えない。ぬえは、そのことに、堪らない恐怖を覚えた。
「ぬえ…私はどうしたら良いでしょうか」
「………そ、」
「そんな目で私を見るなあああーー!」
ぬえは風のように山小屋を抜け出して、吹雪の中へ走り出した。
後に、奇跡的に助かったぬえは、守矢信仰に改宗した。
「わー!諏訪子ー!……しかしこれで……」
「………!」
その後のぬえを知る者はいない。
<うー☆>
「ふん、何が咲夜よ」
レミリアは、新しいメイドが人間であることに憤慨していた。
「ちょっと意地悪したら、直ぐに音をあげる筈だわ」
と、ちょうどそこに、咲夜が戸を叩いて入ってきた。ここぞとばかりにレミリアはにやけたあと、咲夜の方を向いた。
「御嬢様、御夕飯は要りますか?」
「飢う☆」
「メインディッシュは?」
「兎ー☆」
「付け合わせは?」
「鵜ー☆」
「ところで御嬢様、台所の鍵を知りませんか?」
「有ー☆」
「ここの棚ですか?」
「右ー☆」
「では、御持ちしても宜しいでしょうか?」
「諾ー☆」
「かしこまりました、では今暫く」
「負けたわ……私の……完負よ」
二人の主従の始まりであった。
<泣くまで>
「輝夜ああああーーーーァァッ!!」
爆風、遅れて、爆音。
強烈な熱と風とが奔流を為して溢れ、弾ける。刹那も無く屋根は吹き飛んで、門番役の兎達がバウンドもせずに宙を舞うのが、輝夜にも見えた。
「慧音に何をしたーーーッ!!」
絶叫に等しき、叩きつけられた声。目を血走らせ髪を振り乱した妹紅に、輝夜は薄ら笑いで以て応えた。
「何って……ねえ、ナニをシただけよ」
「惚けるなっ!」
「ふふ、まあ、敢えて言うなら……唇を奪って差し上げたとか?」
形にすら成らぬ叫びを上げて、妹紅は輝夜に飛びかかった。が、輝夜の表情に、一部の変わりもない。
「(さあ来なさい妹紅。今一度、貴女を完膚無きまでに叩きのめしてあげるわ。そして貴女は、二度とこの私に楯突けなくなるッ、未来永劫にッ)」
「所詮貴女は負け犬よ、もk」
高らかと放たれた、台詞。
代わりに、輝夜の口から漏れたのは、頬骨の砕ける音であった。妹紅の拳、華奢華奢にして硬い拳が、輝夜を振り抜いていた。
「(――――素手、ですって!?こんなの、今まで、一度も―――――)」
「おおおおおおッ!!」
肋、額、腹、そしてまた、顔面、隙も無く暇も無く、拳が砕け血を流しても、妹紅は輝夜を殴り続ける。鋭さも、技術も、まるで伴わない。しかし流血を重ねる事に拳は力を増し、輝いた。
「輝夜ああああーーーーァァッ!!」
「お前が!泣くまで!殴るのを止めないッ!!」
(十分後)
「うおおおおおお!!」
「……………」
(三十分後)
「輝夜アアア!」
「……………」
(一時間後)
「……!………!」
「……………」
(半日後)
「おい」
「…………」
「泣けよ輝夜!」
「止めたけりゃ止めれば良いじゃない!」
(三日後)
「この痰カスがあああああーーーッ!」
「来なさいよおおおおおおーーーッ!」
(一ヶ月後)
「オラオラオラオラオラオラオラオラァァーーーッ!」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァァーーーッ!」
(一年後)
「………、!、、」
「………、、!、、」
・
・
・
「なあ、輝夜」
妹紅はボールのように輝夜を打ち上げると、ジャンプしてそれに追いついた。二人は光を置いていく速さで雲を突き抜けながら、のほほんとした表情を浮かべる。
「ワームホール理論とブラフマー創造説における宇宙波調伝導場の共通性についてどう思う」
「くだらない質問だわ」
やがて成層圏を抜ける際にまで達すると、妹紅は輝夜を打ち落として、炎を吹かしてそれに続いた。
「あのマグマの海を見ていればわかるでしょう?生命の誕生にはあと数億はかかる」
「いや、そんなことは無い」
空の下、二人の下に広がるのは、見渡す限りの溶岩―――――星の原風景、そのものであった。輝夜がマグマへ飛び込み、妹紅もそれに続く。二人はその中で、口を使うことも無く、概念体としての会話で互いを理解していた。
「宇宙が二巡か三巡前の時―――――マエリベリ・サピエンスの世界の時は、シヴァーとアルタイルの相乗が自然に起きて、もう今くらいにはヴィシヌ・サーマルの兆候が見られたんだ」
「でも、ヤハウェ曰く、偶然とは意思、果てを見るのは生命、でしょう?」
「『白馬は馬に非ず』、か。先ずは様子を見ようか」
マグマの中で輝夜の首を引き寄せると、妹紅は拳を放った。その拳は光を歪め、空間を裂き、平行世界との原子交換を起こす。そして輝夜が吹き飛ぶより先に妹紅は後ろに回り、これを繰り返した。
「ところで輝夜、私たちは何故こんなことをしてるんだ?」
「さあ、分からないけど、取るに足らないことよ」
「そうだな」
一か万かの時間の後、妹紅はまた輝夜を打ち上げた。
・・・・・・
「全く、不躾な!」
肩を怒らせた布都に、神子は気づいた。
「布都、どうしたのですか」
「それが屠自古の奴、『この懐古厨!』と訳の分からぬことを……」
神子は何も言わなかった。
おしまい
春花開くこの季節に、おだやか幻想郷
タイトル御借りしました
返す予定はありませんが、有難う御座いました
コメント返信
>>ギョウヘルインニ氏
おいしくいただいておきます
>>2氏
こいしwww
>>先任曹長殿
ええ、平和極まりないです!ニッコリ
>>4氏
そして4氏が目覚めることは、二度と無かった・・
>>短類崎氏
実は速効魔法でありインスタントでありS・トリガーであったりもします
>>6氏
汚くないもん!女の子だもん!
>>7氏
・・・演出の一環です・・・多分
コメント有難う御座いました
box
http://boxgarden108.blog.fc2.com
- 作品情報
- 作品集:
- 7
- 投稿日時:
- 2013/03/29 10:12:18
- 更新日時:
- 2013/04/04 20:31:37
- 評価:
- 9/10
- POINT:
- 930
- Rate:
- 17.36
- 分類
- カオス
- 短篇集
くうー☆かくわぁれるか。
殺るかヤられるか。
今日も幻想郷は平和です♪
ここで笑った。
おかげで今日は安眠できそうだ。ありがとう。
Alt,Fまで押して物理保存しようかと思いましたが脳内永久保存したのでもういいです。
一部神がかってました。中三つの至高性。
受精したー!
<実習>の「わー!慧音先生が受精したー!」これは卑怯すぎます
うー☆みたいな話は合わせるのが難しいので、感心すると共に面白く感じました。
ボキシズムと名付けよう。(意味不明。)
生徒たちに怒りの目を向けて抜刀する妖夢を想像して笑った