Deprecated: Function get_magic_quotes_gpc() is deprecated in /home/thewaterducts/www/php/waterducts/imta/req/util.php on line 270
『大事な者を失った』 作者: ヘルニア
「んんん? 聞こえるか橙」
「……藍しゃま!」
「どうやら、聞こえているようだな」
「お願いします。ここから出してぇ!」
「それは出来ないな」
「そんなぁ」
「お前は私の式だからお前の罪は私が執行しなくては、紫さまに顔向けできない」
「そんな、何のことを言ってるのですかぁ?」
「私が、紫さまの大好物を盗んだことがばれたんだ」
「何ですかぁ! それ、私に関係ないじゃいですかぁ」
「それは、違う! 間違っているぞ橙!」
「えぇ?」
「えじゃない。お前は私の式だから悪い」
「何言ってるんですかぁ」
「紫さまがそれで許してくれると言ったのだ」
「私の価値は一般的に低いことはぁ、わかっていてもぉ。藍しゃまだけは違うと思って居ましたぁ」
「私だって、辛いんだ。でも、私の命に比べればお前を失う喪失感なんて無に等しい」
「……うぁぁ。としか言えないぃ」
「むしろ、これから喪失感を味わうことに何故か快楽を感じてしまうんだ」
「…………」
「静かになったな。納得してくれたのだな。では、電子レンジのスイッチを入れるぞ」
「…………」
「よし、良い子だな橙」
「…………」
「では、スタートだ」
「……! ギニャー!」
そういう夢を橙は見た。そして、悟った。このままでは、藍にいつ殺されるか分かったものではない。
殺される前に、殺さなければならない。
隣で、まだ藍が眠っていた。さびしがりやの橙がさびしがらないように隣で眠ってくれていた。
だが、これは偽りだと気付いてしまった。
橙だって、藍を失うことは辛い。でも、もしかしたらその喪失感を何処か求めていたのかもしれない。
橙は藍に馬乗りになった。
「うん? 何だ? うぐう?」
橙はそのまま枕で藍の顔ごと口を覆い息が出来ないようにした。
足をバタバタ、身体をグルグル仕様とした藍だったが、抵抗したのはそれきりだった。
橙は藍に殺されずに済んだ。少しさびしいけれどそれも生きているから味わえたことなのだ。
橙は、溢れてきた涙を拭って、朝ごはんを食べることにした。
今日だけは綺麗な朝だから、間違って3人分の朝ごはんを作ってしまうかもしれない。
本当はもう、1人分だけでいいのに。
- 作品情報
- 作品集:
- 7
- 投稿日時:
- 2013/03/29 12:49:41
- 更新日時:
- 2013/03/29 21:49:41
- 評価:
- 6/6
- POINT:
- 580
- Rate:
- 17.29
- 分類
- 橙