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『信仰は儚き霊夢の為に』 作者: ギョウヘルインニ
あの時、ほのぼのを見落としてかもしれない。そう初めて霊夢と鳥取砂丘に行ったときは、まだ、私も霊夢も未熟だった。
だから、隠れほのぼのを見逃していたと、魔理沙は思いました。
再びの中国地方、砂漠のような鳥取砂丘へ向かうことを魔理沙は決意したのです。
「霊夢、また鳥取砂丘に行こうぜ」
「鳥取砂丘?」
「そうだぜ、一緒に行こうぜ」
「断るわ。一人で行ってきて」
魔理沙の中では、旅の仲間でほのぼの現人神の霊夢は乗り気では有りませんでした。
この時、このせいで魔理沙は勝手に勘違いしてしまいました。
「霊夢、もしかして病気なのか?」
「え? 病気じゃないわ。病気なんていつかかったかもおぼえてない」
「いいや、それは病気だぜ。鳥取砂丘に行かないなんて病気だぜ」
「鳥取砂丘とか関係ない」
「それは、思い込みだぜ」
もう、意味が全く分かりません。そして、魔理沙は何かを決心しました。
霊夢は現人神で病気、これは多分信仰が足りていないせいだ。霊夢の場合は、供物として捧げられるほのぼのが足りないとせいだと、思いました。
「良し、待ってろ霊夢! 私がほのぼのを採ってきてお前にやるぜ」
「うーん、意味が分からない」
「今は意味が分からなくても大丈夫だぜ!」
「そうなの?」
魔理沙は霊夢の頭をやさしく一回撫でると、箒に乗って旅立ちました。目指すは病んだ霊夢に効きそうなほのぼのです。
空を飛びながら、魔理沙は考えました。幻想郷から鳥取砂丘に行くには距離がありすぎます。あの時も、霊夢が乗用車を運転してくれたから鳥取砂丘にいけたのです。
魔理沙は運転免許を持っていません。車もリアカーしか持っていません。
だから、鳥取砂丘にはいけません。結論としては幻想郷の中でほのぼのを見つけて、霊夢に持っていかなければならないのです。
すでに魔理沙の頭の中ではどんどん状況は悪化していきます。早くほのぼのを見つけて霊夢のところに持っていかないと、霊夢が消えてしまうような気がしたのです。
残された時間は短いのです。
”こうして考えて居る間にも、霊夢からは徐々にほのぼのが失われて行くのです”
それでも冷静にと、自分に言い聞かせます。冷静に、冷静にと何度も言い聞かせます。
ようやく、無意味に上がっていた心拍数が下がり始めました。
魔理沙はまず、輝夜に助けを求めることにしました。輝夜に助けを求めるなんて普段なら、考えられないことです。
それでも、今は霊夢の為に恥や外見にこだわっている場合ではありません。
「お願いだぜ! 霊夢が死にそうなんだ! 助けてくれ!」
「……はい? 何を言っているの?」
永遠亭に、魔理沙はやって来ました。輝夜にあわせてくれと言っても中々通してくれない、優曇華院や、てゐを振り払って来ました。
丁度おやつの時間で、輝夜が楽しみにして自室で待っているときに魔理沙は満身創痍で現れたのです。
普段の魔理沙なら考えることは出来ないでしょう。畳に顔を擦り付けて、明らかに格下に輝夜に懇願したのです。
恥辱に塗れれます。それでも、霊夢のためには仕方ないことなのです。
「霊夢が死にそうなんだ!」
「それが、私に関係あるの?」
「無いかも知れないぜ。でも、頼む助けてくれ!」
「嫌だと言ったら?」
「……おやつは、没収だぜ」
「おやつ?」
「そうだぜ。おやつは私が全部食べるぜ」
これは、賭けでした。気分屋の輝夜を説き伏せるには、霊夢の命よりも一回におやつの方が良いと考えたのです。
もしも、言うことを聞かなければライターのオイルをかけて燃やします。
「……わかったわ。おやつの為に貴女に協力するわ」
蓬莱人にとっては命よりも、おやつの方が大事なのです。
魔理沙は人生一代の賭けに勝ったのです。
仲間に輝夜が加わりました。これで、100人力かける0.005です。大丈夫、何とかきっとなるでしょう。
魔理沙は右手を左手に添えました。こういう動作一つ一つには意味は有りません。
で、とにかく二人は永遠亭から出て竹林を歩いて見ることにしました。
”妹紅が命を賭して守った竹林は、今ではうっそうと茂り一時期金色だった竹もいまでは普通の竹林に戻りました”←その後の寅猫革命始末記より抜粋
「で、何処にいくつもりなの?」
「私にも分からない。郷の何処にほのぼのがあるんだ?」
「それより、先におやつ食べていい?」
「駄目だぜ! 先にほのぼの探すんだぜ! 霊夢の為に探すんだぜ。霊夢のために。うううう」
霊夢の名前を出したとたんに魔理沙は寂しくなりました。いつも、ほのぼのを探すときには、霊夢が居ました。居ないときもありましたが、都合のいい記憶だけを魔理沙は覚えているのです。
「どうしたの? いったい? おやつ食べてもいい?」
「だから、駄目だぜ! ほのぼのを見つけてからだぜ!」
「……私が、おやつ食べてたらなんかほのぼのしてない?」
輝夜は提案しました。二人とも幸せになれる良案です。
魔理沙は、輝夜とおやつを交互に見ました。考えて居るのです。もしも、輝夜がおやつを幸せそうにほうばって食べていたら。ほのぼのしているのかも知れません。
考えました。
珍しく深く考えました。
結論が出ました。輝夜が確かにそれをすればほのぼのしているでしょう。でも、それは、魔理沙の餓えたほのぼのにとっては、唯の食べ物を食べる行為と少しか、かわり有りません。
これでは、足りません。余りにも足りなすぎるのです。霊夢が失ったほのぼの全部を取り戻すにはあまりにも小さなほのぼのなのです。
小は大を兼ねないのです。小悪魔は大妖精では無いと言う理屈です。
「私が見えないところで、食べろよ」
「良いの?」
「私の気持ちが、変わらないうちに、さっさと食べろよ」
「……食べる。……わよ」
「さっさと、食べろ! 私をからかっているのか?」
「いや、そういうわけでは」
険悪な二人、どれもこれも魔理沙からすれば全部輝夜のせいです。輝夜は何も分かっていないのです。
魔理沙の見えないところに輝夜は行きました。死角になりそうなところの隅でおやつを食べます。地味なサツマイモを蒸かしただけのおやつです。ほくほくしています。
多分、輝夜がホフホフそれを食べればそれだけでほのぼのしていたと思います。でも、それは魔理沙には関係の無いことです。
実際に今、隅で輝夜がサツマイモを食べていますが見て見ぬ振りです。でも実は手鏡を魔理沙は持っていて、隙が有れば採るつもりです。
禁断の小さなほのぼのなのです。
しかし、それは束の間でした。魔理沙は怒りを感じました。自分に怒りを感じたのです。これは、小さなほのぼのであって、霊夢の為のほのぼのではありません。
魔理沙は、”バリン”と手鏡を地面に叩きつけました。そして、破片を拾って、それで手の甲を刺しました。自傷行為ですが、自分への戒めなのです。
鋭い痛みが走りました。でも、それは霊夢が受けた辱めに比べればたいしたことはありません。いつのまにか、霊夢の状況はどんどん悪化していると妄想してしまっているのです。
きっと、悪い奴等に捕まってしまい。暴力をうけたあげく輪姦されてしまったに違いありません。もう、その傷を癒せるのは、ほのぼのしかないのです。そう思うのです。
「……何やってるの?」
「見て分かるだろ。自分を戒めてるんだ」
「なんとなく、言っていることは分かるけど、実際そういうことしている人を見るは、初めて」
「うるさいぜ、お前に意見は求めてないぜ」
「あらそうなの?」
「なんだ、その人を小馬鹿にした感じのいいぐさは、なんなんだ」
「おやつ、もう食べたから。もう、あなたには用は無いの」
そうです。魔理沙は外交カードをもう切ってしまっていたのです。相手は、命がいくつでもある蓬莱人です。人質をとったり、拷問したりと言った手段は通用しないのです。
あとは、残っているのは義理と人情だけです。輝夜は家に帰りたいので、魔理沙には義理も人情もありません。
「それは駄目だ。お願いだぜ! 一緒にほのぼのを探してくれ」
「嫌よ。めんどくさい」
「おね、おね、ぉねがぃします」
「今、何か言った?」
「お願いします」
魔理沙は、また土下座しました。しかも、今度は竹林の土の上でした。なんとも情けない有様です。
それでも、霊夢の為に出来ることはなんでも魔理沙はするのです。
「仕方ないないわね」
再び、輝夜は魔理沙に同行することにしました。人にこうやって土下座されるのは久しぶりのことで嬉しかったのです。そして、この話に付き合えばもっと土下座が見られると思い同行することにしたのです。
とんでもない、奴なのです。
そして、ようやくほのぼのを探すことにしました。
今回これだけ無意味に話を進めてしまったのです。
こうしている間にも、霊夢の病気は進行しているのです。
「で、どうするの?」
「……茸を探そうと思う」
「茸?」
「そうだぜ、茸の中には食べるとほのぼの出来る種類がある」
「そうなの?」
「もちろん、合法だぜ」
二人は、竹林から森に場所を移すことにしました。
”所有者の居ない木を見つけるのは簡単ではありません。死んでしまったレミリアもかつてフランの紋章が掲げられた木から茸を盗みました。そのせいで、早苗さんにお尻たたきを食らうことになったのです”←寅猫革命エピローグより抜粋
二人は、そんな決まりを無視して探し始めます。こうなってはなりふり構っていたれないのです。早苗さんにお尻を叩かれる恐怖に堪えて、他人の紋章が掲げられている木から茸を構わず抜いていったのです。
大体、合法的な茸を集め終わった辺りのことでした。
魔理沙はまた気付いてしまったのです。ほのぼの出来る茸は偽ほのぼのなのかも知れません。そもそも、茸に霊夢がほのぼのしてくれるか怪しいものです。もしかすると、かえって傷つけてしまうのではないかと思ったのです。
そう思うと、集めた茸には何の価値も有りません。持って帰って食べればいいのですが、今はこの茸よりも霊夢のほうが大事なのです。
今頃、泣いているに違いありません。身体も心も痛いのです。
「うああああ! 私は何てことしてたんだ!」
「どうしたの今度は?」
突然魔理沙は大きな声を出しました。己の過ちに、取り返しのつかない過ちに怒りを感じたのです。
集めた茸を魔理沙は生のままその場で、食べました。何が何だろうが、この失態を早く埋め合わせなくてはならないのです。
「茸は違っていたんだ」
「なんなのよ」
「うああああああ!」
もう、めちゃくちゃでした。発狂した狂人のようです。
その場で、グルグル回り始めてジタバタしました。茸のせいではありません。
それで、しばらく経ってようやく落ち着きを取り戻しました。こんなことをしていては霊夢は救えません。
「もう帰りたい。ほのぼのなんて見つかるわけない」
「そういうなよ。頼むぜ」
「また、頭下げてくれたらついて行ってあげても良いけど」
「……わかったぜ」
「うんうん。わかったのね」
また、輝夜は魔理沙が頭を下げるものだと思いました。
「お前が悪いんだ。今それに気付いたぜ」
「何を言っているの? 悪いって何が?」
「霊夢がほのぼのしてないのはお前のせいなんだ」
とんでもない言いがかりです。被害妄想は完全に加速してしまい今光速に達したのです。
輝夜の指示で、奴等は霊夢に酷いことをしたと思ったのです。そうです。奴等の頭領娘だと思ったのです。
「だから、何を言っているの?」
「お前は、敵なんだ!」
「意味が分からない」
「今回は見逃してやる。さっさと、私の目の前から消えろ! 消えるんだ!」
「なんて、失礼なやつなの」
そう輝夜が言い終るころに、魔理沙から走り出していました。これ以上奴等に関わる者に関わるわけには行かないのです。これ以上かかわれば、”禁断”に触れてしまうのです。
涙が出てきました。禁断に触れてしまったせいで、汚れてしまったと思うのです。
しばらく魔理沙は、走り続けました。足が痛くなるまで走り続けました。そして、立ち止まったのです。
息をおさめるために立ちふさがります。ふと足元を見ると、季節はずれのどんぐりが落ちていました。
一人になってしまった魔理沙はそれを拾い上げると、あることを思いついたのです。
このどんぐりを、たくさん拾い集めて霊夢に首飾りを作って送ろうと思ったのです。なんだか、霊夢がそれでほのぼの喜んでくれるような気がしたのです。
一見地味な物かも知れません。
あれは、10年くらい前に魔理沙と霊夢が森で遊んでいた時のお話です。幼少の二人です。まだ、魔理沙がほのぼのに目覚める前の話なのかそうなのかは、魔理沙の想像しだいです。
そこで、なんだかんだあって、なんだかそれで霊夢がどんぐりの首飾りでほのぼのすると思ったのです。
やはり季節はずれで、なかなか、綺麗などんぐりは見つかりません。しかし、霊夢は良質なほのぼのでないと救えません守れないのです。
一つ拾っては、少し汚れているような気がして、捨て。また拾えば、また捨てるのを動作を繰り返したのでした。
腰が痛くなります。でも、霊夢の為に、今度は手が痛くなりましたが、霊夢の為にと頑張りました。
どんぐりを集めて集めきった魔理沙は、疲れ果てました。霊夢の為に、疲れ果てて目が霞むほど集めたのです。
そうして、フラフラしながら森を抜けて道に出たときのことでした。
「アンタ、こんなところで何やってるの?」
「……霊夢! 生きていたのか? 何処も怪我は無いか? 大丈夫なのか?」
魔理沙の中では、霊夢はきっと今頃虚ろな瞳をして座っていると思っていました。居もしない奴等が急に障子の影から襲ってくることを妄想して、奇声を上げているかもしれません。
きっと、痩せた顔が病人のそれと変わらないと思います。そして、時々思い出したようになけなしのほのぼのを奴等に奪われて行くのです。それが全部、魔理沙のせいだと思っているのです。
「何をいってるの?」
「なんだ。良かった。本当に、良かったぜ」
「どうしたの?」
「ごめんな、お前の為にほのぼのを持って来れなかったんだ」
「別に気にしてないわ」
「ははは、……良かった……ぜ」
「ちょっと、魔理沙!」
そう言って、気が切れたのか、魔理沙はその場で倒れてしまいました。
集めたどんぐりが、倒れた拍子に辺りに散らばってしまいます。
才能なのでしょうか。鉄屑を集めた時に草薙の剣が混じっていたのと同じように、どんぐりの中に混じって金の粒が入っていました。何処か抜けているところがあるので、結局間違った物を拾ってきていたのです。
しかも、1個2個ではありません。結構な数でした。霊夢は辺りを見回しました。
今度、お団子を奢ってあげるのでなにも問題ありません。無いのです。
ついでに、偶々持っていた。水筒と、おにぎりをその場に置きました。せめてもの罪滅ぼしです。そして、金の粒を拾いもと来た道を戻っていったのです。
帰り道、霊夢の顔は満天の笑顔をしているのでした。
魔理沙は知らず知らずのうちにです。こうして、このほのぼのの現人神は事情を知らない者が見れば、おそらく100人が100人思わずほのぼのしてしまうことでしょう。
作品情報
作品集:
7
投稿日時:
2013/04/07 10:22:05
更新日時:
2013/04/07 19:22:05
評価:
6/6
POINT:
600
Rate:
17.86
分類
魔理沙
輝夜
霊夢
ほのぼの
抜粋
空回りしてる良い魔理沙に好感を覚えた。
ところで、以前から名前だけは出てきていた『寅猫革命』って何だよ!?
それを知れば、私はもっとほのぼのできるんだ!!
でも、∀魔理沙の所為か良い話だったのにな。
霊夢ちゃんが幸せそうでなによりです。