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『この娘はただじゃれてるだけなの』 作者: ヘルニア
「ナズーリン! シュート!!」
「グア! 何をするご主人!」
「そこに、ナズーリンが居たので蹴ったのです」
「ゲホ! ゴホ!」
もう、宝塔はその力を失っていた。だから、ナズーリンでストレス発散。ではない、修行する決まりになっていた。
これは、決定事項だから誰も逃れることは出来ない。
寅丸だって、本当はナズーリンを蹴るよりも宝塔を蹴ったほうが楽しいのだが、決定事項だから仕方が無い。ということにしている。
「……こんなことは、やめてくれご主人!」
「仕方ないのです。私は元々凶暴な妖怪ですから!」
「ウア! ごしゅ!」
寅丸はまた蹴った。ナズーリンの話を最後まで聞けば心が揺れてしまうかもしれない。
最期までしてしまうかもしれない。
「こうして、ナズーリンを蹴らないと、毘沙門天様に怒られてしまうのです」
そういうことだ。これは、仕方の無いことだ。自然の摂理でありそれに逆らうことは許されない。
たとえ、ナズーリンが拒絶の意思を示したとしてもこれは義務なのだ。
「……うぐ!」
ビチャビチャ汚らしくその場で、ナズーリンは血の混じった液体を吐き出した。
所詮は下賎な鼠の妖怪だ。一挙一動が汚らしい。ああ穢らわしい。
「ナズーリン! シュート!」
「ぐあう!」
靴や足に、その汚れが付くことを後悔しては居られない。
更なる追い討ちをナズーリンにかける。
寅丸はこれは通過儀礼だということにしている。後何回かナズーリンを蹴り飛ばせば、気を失うことだろう。
だから、ナズーリンは大丈夫だと思う。
しかし、逆に寅丸は深い罪の念にとらわれることになるだろう。
意識を失い思考しない、ナズーリンと罪の意識に苛まれる責め苦にあう寅丸だ。
どちらが、毘沙門天様の為に修行し奉仕しているかと考えたら一目瞭然だ。
「やめ、止めてくれ!」
「やめません。これが私の義務なのですから!」
「ごしゅ! うえええ!?」
「ナズーリン! シュート!!」
何回かのつもりだったのに、ナズーリンは気を失ってしまった。
「起きてください!」
「……」
「起きなさい!」
「……」
「起きろ! おい、ナズーリン! おい! この餓鬼! 喰っちまうぞ!」
「……」
「いけません」
起きないナズーリンについつい寅丸は、イライラしてしまい昔のような口調に戻ってしまった。
しかし、それでは不味いことに気付いてすぐに虎の形相をしていた顔と剥き出しになった歯を引っ込めた。
「ナズーリン! シュート!!」
「ナズーリン! シュート!!」
「ナズーリン! シュート!!」
義務は義務、仕方なく気を失うナズーリンを三回ほど蹴飛ばして寅丸は今日の修行を終えたのだった。
その帰りの足取りは、本人は重いと思っている。
しかし、傍で見ていた村紗の眼には軽く見えた。
「ナズーリン、シュット!」
誰も居ないことを確認して、村紗も蹴ってみた。
言い知れない、他者を征服するこの感じはクセになりそうだと思った。
次の日村紗は毘沙門天の弟子になったのは言うまでも無い。
ヘルニア
作品情報
作品集:
7
投稿日時:
2013/05/06 11:08:18
更新日時:
2013/05/06 20:08:18
評価:
5/6
POINT:
510
Rate:
15.29
分類
ナズーリン
寅丸
村紗
こんどはナズーリンを亡くすかもよ……。
村紗、ご入信おめでとうございます。
でもそれが良い