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『ハラキリコンパク・スプリットショー』 作者: rubeluso

ハラキリコンパク・スプリットショー

作品集: 7 投稿日時: 2013/05/16 14:43:15 更新日時: 2013/06/04 01:03:40 評価: 4/6 POINT: 420 Rate: 14.83
 
いやになるくらいあかるい月明かりが道を照らしている。さえぎる雲のない満月が自身の美しさを下界に見せつけているかのようだ。 
こんなに明るければ必要ないだろうけれども、夜道歩きの習慣で行灯は手放せない。何より風情というものがある。単なる散歩ではなく人に呼ばれてのことならば手ぶらであるくというのも妙な心地だ。
 虫の声が盛りの季節だ。夜でも空気は熱をもち、いくつもの眠れない夜は人の気持ちを悶々としたものにさせる。ゆるやかに登る道をあるくとかなり汗ばんできた。
 人里から少し離れた丘のあたりにはちょっとしたお屋敷が並んでいる。いわゆる山の手というやつだ。自分自身はこういう場所に居を構えるには到底及ばぬ身だけれども、顧客が幾人かいるのでまるきり馴染みのないあたりというわけでもない。

 私はふところから招待状を取りだした。とはいってもこの招待状は道案内の役に立つといった性質のものではない。浮かし彫りの満月の丸い表紙に、一枚開けると細やかな蝶の切り絵。とても手が込んでいる。肝心の中身はこれまた贅沢な筆致でただ屋号が書いてあるだけだ。
場所は招待を受けた相手からよくよく聞いて頭に叩きこんでいる。招待状を取り出したのはちょっと立ち止まっての休憩と記憶の再確認のためだ。

 
 坂をのぼりきっての四辻を左手へ。みごとな白塗りの壁に突きあたる。蝶の鱗粉か夜光貝の破片でも塗りこめられているのか、一面の白のなかに、月の光が気まぐれに跳ねてきらめく。時と空間をまったく異にしているにもかかわらず、それは日中の湖を思い出させた。

 ここだな。
 そのまま壁にそってあるいて行くと入り口が見つかった。相当に立派な門構えだ。
 日と寒さに焼けた木材は彼の経た年の分だけの威厳を備えてたたずんでおり、真新しい蝶番や釘隠しは若々しい気概を発している。断固として内と外を分かつ存在であるということを知らせる、門らしい門だ。
 感心しながら呆っとその門の前に立っていると女性が一人近づいてきた。
 「何か、御用ですか?」
 私が慌てて招待状を見せると彼女はちらりとそれに視線をやり、何も言わずに中へ通してくれた。
 
 「杉田の案内なんだが」
 「お連れ様はもうお待ちになっております」

 立派な門や白壁に守られるにふさわしい豪奢な屋敷だ。伝統的な日本家屋の格式で建てられていることは間違いないがそこかしこに手が加わっているのも感じられる。案内の女中について歩を進める板張りの廊下も足に心地よく、程よいぬくもりを返してくる。
 友が待つ座敷へ通されると最低限の説明を手ばやく終え、奥ゆかしく女中は部屋を去っていった。客人に余計な干渉はせず、それでいて不足はない。その洗練された所作を見ていてもここがどういう場所なのかおおむねの判別がつくというものだ。

 庭に面した障子は開けはなたれており、清らかな白砂が眼に飛びこんでくる。向かいにも同じような部屋が見える。
 どうやら庭を囲んだコの字型の建物の一辺に私たちは居るようだった。
 待ちくたびれの不平を言う友人を適当にあしらって庭に目を向ける。満月を背にして奥の方に何やら設けられているのが見えた。金地の屏風と縁無しの畳が三畳、大洋に浮かぶ孤島のように砂地に直に置かれている。ようく見ればその脇には仰々しいかがり台だ。野に一座、まさしく即興の舞台のようだ。これからあそこで催し物が行われるのだろうか。
 庭を取り囲む建物にはひそやかな人の気配がある。私たちと同じように座敷から庭を臨む人々が居るのだろう。
 
 当然ながら友人は今日ここで何が起こるのか知っている。だから私を招待したのだ。しかし尋ねてみてもにやにやと笑いながらはぐらかすばかりだ。とはいえ、私は彼の事を信頼している。その饗応ならば我々の嗜好を満たしてくれるものであるに違いないはずだ。
 先ほどの女中が膳を運んできた。季節の野菜に川の魚、簡素ながらも上品な彩りだ。獣の肉は入っていなかった。
 まだ給仕の女中が去り切らない内に庭のかがり火が灯された。もしかしたら私が最後の客でその用意が終わるのを待たせてしまったのだろうか。そう思うと心苦しい。
 
 火は煌々と赤く、この季節には暑苦しい。
 月明かりだけでも十分に庭を見渡せたが、火が灯されたことで金色の屏風が炎を艶かしくうつして一段と強くかがやき、まばゆいそれに焦点が集められる。
 逆に先程までは見えていたはずの庭の隅や物陰に影が宿る。そこに何かが潜む気配が生まれるた気がした。
 と、そんな闇の一つから湧き出てきたかのように、いつの間にか一人の少女が金色の壁の前に歩み出ていた。光を全面に写す屏風の裏手から出れば、視線を固定された客の眼にはさも突然現れたかのように感じられる。なかなか上手い舞台装置だと私は思った。

 少女は幼い。利き手に鞘に収めたままの刀をたずさえ、溌剌とした剣気を発しているが身にまとうものは何一つ無く、夜の空気に若々しい肢体をさらしている。それが異様に滑稽でやはりここは見世物小屋なのだと思い到る。
 背丈は低いがその筋肉は固くしなやかで、ともすれば少年ではないかとさえ思われた。銀色の髪は短く揃えられ、それが少年らしさに拍車をかける。しかしつつましいながらも膨らみかけた乳房はやはり男子のものではない。陰に眼を落とせばそれは更に一目瞭然だ。
 緊張しているのか少し荒い息をついている。全裸のためにその呼気と吸気が体をめぐる様子がありありとわかった。
 
 我々の部屋は彼女を側面から見る位置になっているので、私は不躾な視線を気兼ねなく送ることが出来た。
 少女は生まれたままの姿にも関わらず、顔をうつむかせるでもなく真っ直ぐ前を見ている。正面に上客でもいるのか、あるいは心ここにあらず何も見ていないのか。どことなく上気した彼女の瞳の色から、後者であればいいのだが、と思ってしまった。
 少女が一歩前に出る。炎と光の波打つ壁から裸体が浮き上がり、影とともに一礼した。調息して刀を上段に構える。一瞬空気が止まった後、裂帛の気合が澄んだ夜の空気に響き渡り、ほとんど不可視の速さで刀が振り下ろされていた。白刃が夜を切り裂き流れる線となり、少女の体は刀と一体となってめまぐるしく跳ねた。
 素晴らしい演武だ。私はこの方面には素人だがそんな人間にすらわからせる迫力があった。立ち居振る舞いから察せられたとおり、少女はかなりの遣い手のようだった。満月が熱を放っているのか、今夜は風が欲しくなるほどの気温だ。
 かがり火の間近で剣を振るう少女はすぐに汗だくになり、皮膚と薄い脂肪の下に隠された筋肉が赤く光る。
 
 ふと、いつのまにか白砂の庭に現れていた黒子が二人、同時に少女に向かって何かをほうり投げた。弧を描いて闇夜に浮かぶそれは鈴付きのちいさな巾着だった。宙を飛びゆっくりと少女の間合いに達するや、鈴ごと断ち切るみじかい金属音がひとつ。寸分の差もなく二個の巾着は真っ二つになっていた。朱に塗られた小豆が砂上に流れる。
 続いて離れた場所が明るくなったかと思うと、火矢が四条、暗闇に筋をひきつつ少女に向かって翔んだ。
 熱と光が少女に向かって収束した刹那、小気味良い連続音と共に矢はすべて払い落とされていた。
 通常の大道芸であれば喝采に値するが、我々が求めているものにはやや遠い。かたわらの友人に顔を向けるとどうやらこれは前座らしいことがわかった。そうでなくては招かれた意味がない。
 しかしながら少女の業前は確かなものだと知ることができた。普段から剣の術理に親しみ鍛錬に精を出していることだろう。そんな少女が何故この場にいるのか、これからどのような堕落した姿を見せてくれるのか。それを想像させ得た良い演武ではあった。
 
 続いて黒子が持ってきたのは小刀を載せた三方膳だ。
 得物の長さは九寸五分、柄はなし。松原紙で茎を包む。おおむね作法に則っている。
 それを見て、先程までは凜とした空気をまとっていた少女から淀んだ気配がにじみだした。
 少女は屏風の前へと戻り、白砂の海に浮かぶ畳に乗りこみ手水鉢を使って身を清める。
 庭を取り囲む建物も彼女を注視しているようで、これからが本番だということがわかった。
 
 畳の中央で金色の屏風を背負い、少女は正座して息を整える。
 清められたむきだしの小刀、神妙な表情、取り囲む視線。これは紛れもなく戯画化された切腹だ。
 もともと切腹は被虐趣味と深く結びついた行為ではあるが、今この場で全裸のままその形式をなぞる少女の姿は背徳的な見世物行為であることをより深く印象づける。
 
 運動後の荒い息はおさまったらしく、かわって今度の呼吸は深く長い。そして先程までとは粘度のちがう汗が瑞々しい皮膚から蒸気となって夜に溶ける。
 そして場面の転換を示すかのように、戸惑ったようなすこし歪んだ笑顔で少女は秘所に手をのばし、びくり、と体をふるわせて、自身の肉芽をつまむすがたを見せるように足をくつろげた。
 敏感な肉芽を充血させた指が、女になりきらない少女の曲線をなぞりつつ乳首へとためらいがちに這いあがっていく。すでに性感帯となっているそこもつまみあげ、少女は自身の淫欲の熱を高めさせていく。
 満月の下、火に照らされたしなやかで未熟な体が自らを以って慰める姿はそれはそれで目を楽しませる物ではあったものの、私は辛抱強く次の展開を待った。
 
 にたり。自身の内でわだかまる不条理に触れるときの、少女の憧憬と雌の媚びが混ざった表情で三方から白刃を取り上げると、刃に舌を這わせて湿らせる。そして少女はその殺傷能力を持った直線で肉芽をなぞりはじめた。
 刃が触れるたびに白い裸体が細かく震え、押し殺した甘い声が漏れる。もはや彼女は背中を畳に預け、月あかりをいっぱいに浴びるように体をのけぞらせていた。
 白銀の刀身が充血しきった突起をなでる。観客の視線も意識しているのだろう、あるいは刀剣愛好のような変態性癖もあるのだろうか、微弱な刺激にもかかわらず少女は十分な快感を得ているようだ。
 いよいよ高まってきたのか喘ぎ声がぽつり、ぽつりともれる。正面に向かって開かれた股ぐらの奥では幼い性器がとめどなく蜜をたらしている。
 
 屋敷の周りで鳴く虫たちの声も高まり、夏のじとついた空気が私の体にもまとわりつく。数十歩の距離の向こうの少女を視線で犯するほどに見つめる私とは対照的に、かたわらの友人は頬杖ついて余裕のごとき振るまいだ。しかしながら貪欲でいやらしい屍食獣のような視線は隠すべくもない。
 少女は刀をにぎりかえ、おもむろに刀身を割れ目にあてがった。
 蛭が這うようなじりじりと極端なおそさではあるが、刃先が少しずつ飲みこまれていく。冷たく鋭い金属が熱く柔らかい膣肉を割りさいて、それでいながら一滴の血すら見えることはない。
 ついに三寸ほどが挿入されるとそこで手が止まった。慎重に柄は抑えたまま、少女は背を反らせ、膣から逆さまに生えた金属を強調させた。あふれる蜜は刀身を伝い茎を包む杉原紙をしとどに濡らす。
 挿入される時よりはやや早く、それでも焦らすような時間をかけて徐々に割れ目から刃がその身をさらしていく。
 逆再生で少女から産まれた刃はその身にまとう愛液でかがり火を淫らに反射させて美しい。少女の中を傷つけることはなかった証としてそこには一点の朱もない。
 
 私は感心の息を吐き、思わず拍手などもしてしまいそうになったがどうやらそれはこの場には相応しくない振るまいのようだった。
 夜の空気を間に挟んで少女の痴態を見つめていたに違いない視線の主たちは、わずかな衣ずれの音をもらすだけで息を潜めて行為の続きをうながしている。
 
 その気配なき期待に応えるように少女は上体を倒して腰だけ突き上げ、女性器を強調するひどく淫蕩な姿勢をとった。
 ふたたび刃が女性器に押し込まれる。さきほどよりはやや早く、一寸、二寸、……三寸、遠目からの目視ではあるが女性の中の限界を極めているのではなかろうかと思われる深さまで刃は潜る。
 
 そしてそこで止まらない。
 少女の手にいっそうの力が込められた次の瞬間、肢体が大きく震え、続いて悲鳴とも恍惚ともとれる高い音が白い喉を震わせ、尿道からは黄色い液体がほとばしり出た。
 はっ、はっと短く息をつき、それでも体に凶器を埋める行為は中断させられない。
 まるで不可視の貴人のように、未熟な子宮の入り口をするりと通り抜けたであろう白刃が少女の性器の奥の奥、子宮壁の最奥に口づけている光景を私は幻視する。凶刃の通り道を外れた卵巣たちはその幸運を喜んでいるだろうか、あるいは自分たちの子供の檜舞台であるはずの子宮を異物に蹂躙されて嘆いているだろうか。
 
 いずれにせよ、少女自身の意思でその薄い薄い肉の壁は切り裂かれる。
 紛れもない嬌声があがり、いよいよ刃を伝って外に流れてきた真っ赤な血が少女の手も赤に濡らす。
 とめどなく涙を流し、痛みをうったえる言葉を吐きながらも口元は緩み、自身の痴態を示す単語すら聞こえてくる。破廉恥な自慰行為と変わらない様子でこの淫らな自傷を楽しんでいるようだ。
 半分ほどまで埋まっていた刀身をいったん引き抜き、そしてよりいっそう深く刺す。淫具で行うそれと同じく反復して快楽をむさぼっているかのようだ。
 
 生きた肉をかき混ぜる水音がいやに淫靡に響く。次第に抽送の間隔が早くなり、少女の悲鳴のような喘ぎ声も高まっていく。
 そして絶頂を迎えることを示すひときわ大きい叫びとともに九寸五分を深く深くに差し込む。
 いまや少女の体に奥という概念はない。
 刃全体が膣の割れ目にそってまっすぐに、少女の正中線にとってかわる。とどめとばかりに握る手を返すと、子宮を、へそを、横隔膜を、水月を綺麗に縦に割り、柔らかい体から刃が産まれる。血にまみれ、腸を絡みつかせたそれを震える手で高く掲げ、絶頂の余韻に満足気な表情をすると、そこで力尽きたのかべちゃりと音を立てて刃は畳に落ちた。
 がに股気味に足を開きサァジタル面にそって股から切り開かれ、細かく痙攣するその姿は解剖の蛙そのもので滑稽だった。
 
 
 出し物がこの上ない最高潮を終え、もう幕が下りることを示すかのようにかがり火が消えた。演劇の終幕と同じように暗闇の向こうでなにかがごそごそと動く気配が後には残る。
 私はかたわらの友人に彼女は死んでしまったのだろうかと問いかけたが、彼はそれを否定した。
 なぜなら彼がこの出し物を見るのはこれで三回目だそうだ。彼女の手慣れた様子からもすでに経験があるようには考えられる。
 しかしながら手品や騙しの類にはどうも思えない。
 彼のとりあえずの意見としては、あの少女も人外の化け物かなにかであろうということだった。確かにこの幻想郷ならば珍しくはない。
 私はこのような素晴らしい店に連れてきてくれた友人に満足の意を示し、互いの友情とこれからの交流を確かめ合った。
 
 
 
 
 
 
 
 その少女が店にやってきたのはあれから二週間も経たないころだった。
 「すいません、この店は器の類も商ってもらえるでしょうか」
 日々の生計として私が営むのはいたって普通の質屋だ。いかがわしいもの、例の趣味につながるものは扱っていない
 「とりあえずは見せてもらいましょうか。あんまり普通の欠け茶碗というなら勘弁ですが」
 
 私は少女の顔をまっすぐに見つめながらそう言った。
 客に対するにはあまりにぶしつけな視線だったが、彼女は気を害したふうでもなく応じてくれる。
 
 「ああ、こっちは私の半霊、私の幽霊の部分なんですが、やっぱり気になりますか?
  私は冥界のお屋敷で庭師をやっています。名前は魂魄妖夢というんですが、魂と魄、分かれていて半分人間で半分幽霊です。
  でも人間の部分は普通の人間とほとんど変わらないのでできれば気にしないでください。こっちの幽霊もちょっと冷たい以外は無害ですし……」
  
 どうやら我々の推理は当たっていたようだ。ひと目で分かる幽霊的要素を持っている彼女の姿はときどき人里でも見かける。あの時に半霊を連れていなかったのは素性を隠そうとして影にでも隠していたのだろうか。
 
 「それでですね、そのお屋敷で蔵を掃除した時にいくつか使っていない器が出てきたのです。なにぶん大きいお屋敷ですし歴史も古いので。
 モノは良いけれど取り立てて使う必要も無さそうだし眠らせておくのも勿体ない、ということで整理も兼ねて質に入れてきなさいとお嬢様がおっしゃったのでこちらに来たというわけなんです。」
 
 そう言って少女が提げていた風呂敷を広げるあいだ、私は今度はあんまり不審にならない程度に彼女の顔をうかがった。
 やはりあの夜、自分で膣を貫き腹を裂く、変態的な自慰行為を見世物にしていた、あるいはされていた少女に間違いないだろう。
 今こうして日常の風景で出会う彼女はとてもあのような異常な行為を楽しむようには見えないが、人間、外っ面からはうかがえない異常な性癖を持っているのだということは私自身が十分に証明できる。
 
 「どうでしょうか。お嬢様も言っていたし品物としては良いのだと思います。私にはよくわかりませんが」
 
 彼女が風呂敷を広げ、質入れ物を並べ終わるのに合わせて私は商売人に戻った。
 確かに言うとおり、隔離された幻想郷では貴重品に入るぐらいの良い品だ。それは彼女が持たされた風呂敷や、器を囲む木箱からも十分すぎるほどにわかる。
 特に文句は付けようがない。値を少し見繕ってみようという事を述べて品物を受け取ると、遣いの目的が果たされたことに安心したのかにわかに彼女は饒舌になった。
 
 「実はここに来る前に別のところにも持ち込んだんです。あの魔法の森の近くの、香霖堂という古道具屋ですが、御存知ですか?そしたらそこの店主は風呂敷を開けることすらしないで『冥界から持ち込んだものなんて不吉だ』って言って断ってしまったんですよ。あそこの店主は本当に商売する気があるんでしょうか?あ、いちおう念の為に言っておきますと、冥界から来たから不吉だなんてことは全く無いですよ。むしろ冥界は死んだあとに裁判を経た魂が来るところだから穢れなんてほとんどない、とお嬢様もおっしゃっていますし……。だいたい最近ではこの世からあの世に普通に人が来たりいろんなものを持ち込んだりしているじゃないですか。それなのに冥界だから不吉だなんて死人差別です」
 
 屈託なくしゃべる今の彼女はいたって普通の少女だ。普通の人間とはほとんど変わらない、という彼女の言はそうなのだろう。もともと、この幻想郷には人間と区別がつかないような人外の存在は多い。それでも身体的には人間と違うところが多いらしい。
 普通の人間だったら致命傷のあんな行為をしたあとで今こうして普通にしゃべっているのも、普通の少女のような外見であんな行為を享楽とともに行えるのも、彼女がやはり人間ではないからなせることなのだろうか。
 
 「やあ、見積もりが終わりましたよ。このくらいでどうでしょうか」
 
 私は商売人としての計算よりも少し多い額を彼女に提示した。少女はすこし驚いているようだった。
 
 「え、こんなに!思っていたよりも良い値です」
 「モノ自体がかなり良かったからね。それにお宅からはまだ何かでそうな気配がありますから、今後のお付き合いも考えて、少し色を付けさせてもらいました。思っていたよりも多い、というのなら、お嬢様には少なく報告して残りは自分のお小遣いにでもすればよろしい。多分、そのお嬢様もそれくらいは見越しているでしょう」
 
 半分は私の願望と少女に対する誘惑で、おひねりのようなものだ。こうして日常で彼女と知り合う機会が出来ればそれは嬉しい。
 深々とお辞儀を下げて、かなり浮いた様子で店を出て行く少女を私は見送った。
 次の十五の月が楽しみだ。私はそれまで、いっそう商売にもまじめに取り組む気持ちを新たにして太陽が白く染める外を見た。
 
妖夢には歪んだ自慰がよく似合うと思います。

腹を切るという自傷行為がエロティシズム、マゾヒズムを伴うものであるということはよく知られており、ひところは「好奇心により」自分で腹を割いたという人も少なからず居たといいます。

以下コメント返し、敬称略

>>1
日常生活の風景の中に不意に空いた暗い穴、誰もがそのようなものを持っているといいなと思います

>>2
妖夢すき ひできらい
stripではなくsplitの意で書きました。実際に行われているのは後者ですしね

>>3
あどけない日常の顔があればあるほど異常な部分が際立っていいですよね
妖夢ちゃんはかくれマゾヒストかわいい
rubeluso
作品情報
作品集:
7
投稿日時:
2013/05/16 14:43:15
更新日時:
2013/06/04 01:03:40
評価:
4/6
POINT:
420
Rate:
14.83
分類
魂魄妖夢
割腹
自慰ショー
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2. 100 NutsIn先任曹長 ■2013/05/17 00:30:04
Oh!! ジャパニーズ・サムライガール・ハラキリオナニーショー!! ハラショー!!

『比較的普通』の人が刹那の非日常を堪能し、日常に戻った彼が、再びまみえた幻想の舞台のアイドルとお近づきになれるかといったお話で、大人のメルヒェンといった趣でした。

はてさて、淫靡な出し物を疲労したのは魂か魄か……。
3. 90 dan ■2013/05/17 17:05:25
妖夢の醸し出す和風なエロさくるおしいほどすき

題名はハラキリコンパク・ストリップショー?
4. 100 矩類崎 ■2013/05/19 22:25:42
これは素晴らしくエロい。ギャップがまたたまらないというか、平常モードの妖夢が淫靡に見えてくるのが素敵です。淡々と猟奇の小道を進む文章が非常に快楽的でした。
5. 100 まいん ■2013/06/09 22:46:33
前半の情景で胸やお腹がいっぱいでした。
美しさに溢れたこの物語。ありがとうございました。
6. フリーレス 狂い ■2013/06/11 06:02:39
死を弄ぶなんて・・・

そういえば妖夢も妖怪でしたね・・・
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