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『白紙』 作者: 零雨
サニーミルクは珍しく本を読んでいた。
ルナとスターが一回休みになっているせいで、イタズラはし辛いからだ。
やることがなく途方にくれていたサニーは、たまたま出合った魔理沙に本を借りたのだ。
魔理沙はパチュリーから大量の本を借りてきたばかりで上機嫌だったので、快くサニーに本を貸してくれた。
もちろん、その本もパチュリーから借りてきたものなのだが。
無差別に借りてきた本の中から、自分が読むことのないであろう、サニーにも読めそうな絵本を貸してくれたのだ。
「この絵本面白いなぁ……」
普段よりもやけに広く感じる家でぽつりとサニーが呟く。
絵本の内容はありきたりなものだったが、その描写は絵本とは思えないくらい濃密なものだった。
自分が信じる善の道を貫く主人公が、悪人を懲らしめて回るというものだ。
その悪人を懲らしめる方法は、子供が読む絵本とは思えないような方法だった。
窃盗犯に対して、もう二度と悪さができないように、相手の四肢を砕くというものや、放火魔に同じ苦しみを味あわせるために、放火魔を丸焼きにするといったもの。
おそらく、小悪魔が趣味で集めていた本だろう。
魔理沙はサニーに本を貸すとき、中身までは見ていなかった。
中身を見ていたなら、流石の魔理沙もこの本をサニーには貸さなかっただろう。
そういう異質さがこの本にはあったのだ。
しかし、サニーの頭はそんな濃密で残酷な描写を完全に理解できるほど優れたものではなかった。
不幸中の幸いと言えばいいのだろうか、本を読んでいるサニーの頭に強く残ったのは正義が悪を裁く、といった部分のみ。
子供や妖精には複雑な描写も、壮大なストーリーも必要ないのだ。
「正義のヒーローか……。かっこいい! 私もヒーローみたいに悪を裁きたい!」
本を読み終わるや否や、立ち上がってそう叫んだ。
そう、子供はヒーローに憧れるものなのだ。
たまに、捻くれた悪人に魅力を感じる子供もいるが、サニーは素直な妖精だった。
絵本のヒーローに、強く憧れを抱いたのだ。
ヒーローに憧れた子供が何をするかは決まっている。
「早速私も悪を裁きに行くわ!」
絵本に影響されたサニーは、勢いよく家を飛び出していったのだった。
サニーが向かったのは、魔理沙の家だった。
あまり広くないサニーの交友関係の中で、一番の悪人は魔理沙だと判断したのだ。
「ふふ……。今の私、最高にかっこいい……!」
悪を裁くというシチュエーションに酔いしれているサニー。
能力を使って身を隠すと、素早く魔理沙の家へと侵入した。
ゆっくりと慎重に家の中を探索する。
運のいいことに、部屋の扉は全て開いていたので、扉を開けて進入しているのがバレるということはなさそうだ。
やたらと物の多い家の中を探索していると、魔理沙の声がサニーの耳に届いた。
どうやら、魔理沙は部屋で魔法の研究をしているようだ。
「あー、ちくしょう。どうもうまくいかないな……」
机に向かって座っている魔理沙の愚痴が聞こえてくる。研究が進まず、かなりイライラしているようだ。
そんな魔理沙にサニーは静かに近寄る。
今のサニーの頭には悪を裁く、それだけしかない。
悪である魔理沙は裁かれねばならないのだ。
「くらえ! 正義の裁きよ!」
叫ぶと同時に魔理沙に勢いよく体当たりするサニー。
椅子に座っていた魔理沙は、突然の衝撃に成すすべもなく吹き飛んだ。
背もたれのある椅子ならよかったのだが、運の悪いことに魔理沙の椅子は背もたれがなかった。
吹き飛んだ魔理沙はそのまま机に激突し、動かなくなった。
お腹と頭をを机で強く打ったようだ。
そんな魔理沙を見て、サニーは勝ち誇ったように笑みを浮かべた。
「正義は勝つ! 悪は滅びる!」
そう言い残し、サニーは窓から飛び立つ。
憧れた絵本のヒーローの真似をしながら、サニーは上機嫌へ自宅へと帰っていった。
- 作品情報
- 作品集:
- 7
- 投稿日時:
- 2013/06/18 13:46:12
- 更新日時:
- 2013/06/18 22:46:12
- 評価:
- 7/7
- POINT:
- 700
- Rate:
- 18.13
- 分類
- サニー
しかし後にサニーが調子に乗ってはしゃぎすぎて、いつか仕返しを受けそうな気がするけど・・・。
世の中正義だけがまかり通らないことを知る日はいつ来るのだろうか。