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『曇り空憂鬱。全部、妖夢のせい』 作者: ギョウヘルインニ
ドンと背中を押されてたと感じたときには、私の身体は宙に浮いていたのです。
空を飛べるのですから、本当なら何も焦る必要など有りません。
でも、あの時は駄目でした。
そうです。私を突き飛ばしたあの気配と気品は私の良く知っている人でした。いえ幽霊ですね。
幽々子様でしたから。
私は、なぜだか納得してしまったのです。前から幽々子様は私のことを嫌っているようでしたから。
この白玉楼に来たときから、分かって居たんですよ。大好きだったおじいちゃんが、この階段から去って行ったときから私のことを見る眼がそれでしたから。
どうせ私は、ここを追い出されては生きてはいけないでしょうからと逡巡してこのまま私は落下し階段から落ちてもいいと考えてしまったのです。
だから、階段から転げ落ちていく私は体のあちこちが階段の石にぶつかって壊れて行くことになぜか納得してしまったのです。
しばらく転がり階段の途中で止まった私の体はもう動きませんでした。息をしていることが奇跡に感じられた程です。
たまたま、仰向けになっていたのでお空が良く見えました。お空は雲って居て、今にも雨が降りそうです。
だんだん、その光景はぼやけていきます。多分、意識が失われようとしているのです。幽々子様に後頭部を殴打された時と同じですから大体間違いありません。
そんな、私の薄れいく視界の隅に幽々子様が入りました。
私の生死を確認しに来たのでしょう。まだ、生きていますよ。幽々子様は少しは後悔していますか?
……まったく、後悔していないようですね。その、ニヤケタ表情は満腹中枢が満たされている時と同じ顔ですね。
最期に、恨みの言葉でも言ってあげましょう。最期の力を振り絞れば、一言二言なら言えるでしょう。
「ゆゆ!」
言いかけたら、幽々子様の下駄が私の口をふさぎました。ついでに、鼻もふさがれて居ます。息ができません。
そのまま、体重をかけてきて、鼻がゴクンと音がして折れました。そして、鼻からは血が溢れ、さらに私は呼吸困難になります。
涙が溢れていたのかも知れません。視界が潤みます。
多分、一度下駄の圧力は無くなったと思います。しかし、その後大きな衝撃がありました。
それから、私の意識は途絶えたのです。
ついに私はやってしまった。衝動的に、妖夢を階段から突き落としてしまった。あの、銀色とも白髪とも見える髪を見ただけで、私はどうにかなっていた。なってしまった。
常日頃から、妖夢には嫌がらせとも奉仕とも思える行動言動にうんざりしていた。
なんで、私の食事はいつも稗や粟ばかりの雑穀なのだろう。
なんで、おやつはいつもいつもいつもポップコーンなのか思い返せば限がない。
だから、全部妖夢が悪いと思う。突き飛ばされても、それはしょうがないことだと思う。
思い返せば、妖忌にあの子を押し付けられたときから私は平穏の日々は失われていたのかもしれない。
転がって、落ちていく妖夢に対して何か感想や感慨が誰かにあるかと聞かれれば何も感じて居ないにも、関わらず。
何か大切な者を失ったと、少しさびしい表情で答えるに違いない。
そんな、ことを考えているとずいぶんと下のほうで、妖夢は止まった。
ここから、突き落とされたのだから無事では無いと思う。
でも、妖夢のことだから生きているに違いない。
私は止めを刺すべく、階段を降りていった。
すると、案の定、妖夢は生きていた。元々白い顔がさらに白く感じられるほど瀕死のようだが、眼が動いていた。
私はそれを見下す。
私が視界に入ったのだろう。口を散漫に動かして、なにか言い始めた。
「ゆゆ!」
ゆゆ、つまり私の名前を言おうとしている。続く言葉はどうせ、私に対する恨み言だ。
死にかけのこの子なのに、最期まで私を悩ませ、苛ませようとしているに違いない。
咄嗟のことだった。私は下駄で妖夢の顔をつぶしていた。
分厚いこの木の下駄が妖夢の鼻をつぶしたときは、嫌な感覚だった。この、下駄は御神木から切り出した上物で結構お気に入りだったのにもう使えない。
もう使えないから、最後位はしっかり使ってやるのが主人の務めだと思う。
この、下駄にだって付喪神位宿っている。夜中、さびしい時とか妖夢にいじめられてないているときはよく慰めてくれたものだ。
しばらく、時間が有った後、頭蓋を砕いてやろうと思い切り踏み潰したが、砕くことは出来なかった。
それでも、妖夢は絶命したようだ。
私は、妖夢に成仏して欲しいので灰塩を撒いてその場を後にした。
なんだか、急に肩が軽くなった気がした。何だか、もう一度桜を咲かせたくなった。
……しかし、妖夢は死んでいなかった。
適当な設定
この後、妖夢は再び異変を起こした幽々子と戦うことになる。下駄の付喪神は、実は付喪神つながりで小傘のあの唐傘の下駄と恋に落ちることになる。しかし、血塗れたその過去を、幽々子に唐傘の下駄につげ口されて捨てられてしまう。復讐に燃える、下駄は丁度異変解決しようとしていた妖夢と手組んで、マズは小傘に復讐しようとする根性の曲がったやつだった。
ギョウヘルインニ
作品情報
作品集:
8
投稿日時:
2013/06/20 14:23:43
更新日時:
2013/06/20 23:23:43
評価:
5/10
POINT:
580
Rate:
13.44
分類
妖夢
幽々子
幽々子の下駄
内容もやはりあなたの作品では異質でした。
しかしあなたの作品をおっていった僕なら納得出来てしまう不思議作品でした。これはしょうがない。悪いのは妖夢だ。
毎日ジャンクフードばかりの食生活で糖尿病になり、視力と手足を失った肉ダルマとなりながらも生にしがみ付く幽々子。
投じられた血塗れの下駄が向くのは、表か、裏か……。
激突する元・主従!!
そして、そんな殺伐とした二人の間にほのぼのを見出した魔理沙が、西行寺家の秘宝を狙う霊夢と共に介入してきた!!
次回作、乞うご期待!!
「ゆゆ! ゆっくりできないばばあがいるよ!」