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『【現代入り】媚薬バレンタイン』 作者: ND

【現代入り】媚薬バレンタイン

作品集: 8 投稿日時: 2013/06/30 04:02:11 更新日時: 2013/07/01 00:28:47 評価: 3/4 POINT: 330 Rate: 14.20
【5つどもえ編】

『出来たぁぁああああああああああああ!!!!』

パチュリーの歓喜の声と共に、ベッドから魔理沙が跳ね起き、

そのままパチュリーの背中に飛び蹴りをかました

『うるせぇぇぇええええええええええええええ!!!』

叫び声と共に、パチュリーは吹っ飛びながら壁に激突する。

壁に血痕が付着し、そのままパチュリーは動かなくなった

『何よ……うるさいわねぇ……』

アリスが、渋々とイライラしながら目を覚ます。

『全くだぜ。これだからゲームオタクはクリアするごとに五月蝿い。一体何がやりたいんだか分かりしないぜ』

『一番五月蝿かったのアンタの声よ』

アリスがそう言った瞬間、魔理沙が恐ろしい形相でアリスを睨みつけていた。

睨みつけられたアリスは、魔理沙に睨み返した。

しばらくして、パチュリーの笑い声が響いた

『なんだ、まだ生きてたのか』

魔理沙はそう言って、拳の骨を鳴らし、首を揺らして骨を鳴らした。

その音を聞いてすぐにパチュリーは不穏な形相で魔理沙を睨みつけた。

『一体、私が何をしたっていうのよ』

『大声あげやがったじゃねえか。忘れたとは言わせねえぞ。』

『あっそう、じゃぁどうして私が大声を上げたか分かるかしら?』

『『ゲーム』』

『違う!!!!』

パチュリーは即座に否定した。

そして机の上から液体の入ったビンを取り出して、二人に見せ付けた

『これよこれ!私たちの希望のカケラ!!!』

『あ……?なんだこの液体』

見せ付けた瞬間、魔理沙はビンを横取りし、蓋を開けようとした

『ぁあ――――!!!』

パチュリーは大声を上げながらビンを取り返した。

徹夜で作り上げたのか、目の下には隈が出来ており、息切れを起こしている。

『何勝手に開けようとしてんだぁ!!正気かぁ!?』

『お前……若干キャラ変わってねえか?』

徹夜で一睡もしていないからか、性格が若干荒れているように見える。

だが、それに気づく余裕も無しに、再びパチュリーは不敵の笑顔で説明をする

『まぁいいわ。とにかく貴方達、これが何か分かる?』

パチュリーが差し出した瞬間、少女二人はその液体を見つめた。

ピンク色、いや桜色だろうか。

『んー……桃のジュース?』

『違う』

『下剤?』

『違う』

『元気ドリンク』

『違……まぁ、間違っては無いわね』

パチュリーがそう言った瞬間、魔理沙は首を傾げる

『なぁ、一体なんなんだ?』

そう言った瞬間、パチュリーは不敵の笑みをした。

『聞いて驚くんじゃ無いわよ……これはね……』

そして、薬を堂々と掲げて言葉を放った

『媚薬よ!!!』

媚薬

魔理沙は、一瞬何なのか分からなかったが、

すぐに分かったアリスは、みるみると顔が赤くなっていった。

『な……なな……な……!』

『なぁパチュリー。媚薬って何だ?』

魔理沙がそう質問すると、パチュリーは魔理沙を見下す目で見つめた

魔理沙は一瞬で不愉快になった

パチュリーは、面倒くさい顔になりながらも、渋々と説明をした

『んん…簡単に言えば惚れ薬と言えば良いわね』

パチュリーが説明を終えた瞬間、魔理沙が理解するのに時間は掛からなかった。

そして瞬時に、顔が真っ赤になった

『な……なな……な……!』

そして、パチュリーの持っている薬を見ながらフルフルと震えた。

そして薬を目の前に、土下座をした

『女神様!!』

『南北東西女神様!!』

アリスも同時に土下座をする。

『これを……店主さんに飲ませれば……』

パチュリーはこの時、一番良い笑顔をしたと同時に、

一番悪い事を企んでいる顔になった。

『女神様!!で!!どのようにしてこれを飲ませるのでありましょうか!!』

アリスがそう言うと、パチュリーが考え出した。

『そうね……私たちが作った料理に仕込ませるとか、栄養ドリンクと騙すか……』

だが、話を割り込む用に魔理沙が疑問をぶつけた

『でもよ……。これ本当に効くのかな…?』

魔理沙がそう言って、真っ先に反論したのはアリスだった

『魔理沙!!女神様に失礼じゃない!?』

『いや……でもよ、当の作った本人はこの薬を試したのか?』

魔理沙がそう言った瞬間、部屋に沈黙が流れた。

そして当のアリスも、徐々にパチュリーの顔を窺った。

『…………』

パチュリーは、なんとも言えない顔をしていた

『それに、徹夜したって言うなら、どこかでミスしている可能性だって高いし、益々怪しいぞその薬…』

『そう言えばそうねぇ……』

二人がそう呟くと、パチュリーは溜息を吐きながらビンの蓋を開けた

『分かったわよ。飲んでみるわ』

そう言って、パチュリーはその液体を水に溶かしてスプーンでかき回した。

そして、その水を一気に飲んだ














『ええ。娘さんは元気ですよ……本当に元気すぎて、親父さんの躾に疑問を感じるくらいですよ』

霖之助はそう言って、電話越しの相手と話をしていた。

『……ええ。分かってます、手は出しませんたら。……しつこいですね』

最後には必ず聞いてくるその言葉に、霖之助は飽き飽きしていた。

別れの挨拶をしてから、霖之助は電話を切った。

最近は滅多に電話をしていなかったからか、この電話もなんだか助け舟のようにも思えた。

僕も疲れているのかもしれないな。まともな客が来ない店に、

しかも客では無い者が大多数来る。精神も結構限界に近いのかもしれない。

と霖之助は考えた。

出来れば今日は、誰も来ないでのんびり過ごしたい物だ。

そう考えながら、霖之助は椅子に腰掛けた

『おい!!香霖!!』

すぐに霖之助の望みは絶たれた。

唐突なる平和の別れに、霖之助は溜息を吐いた。

『やぁ君らか…。今日は何の用だ?』

霖之助がそう言うと、魔理沙はモジモジしながら言葉を出した

『ゴニョゴニョゴニョ……』

小さくて聞き取れなかった

『え?何だって?』

聞き返すと、魔理沙は栄養剤が入っている……と書かれているペットボトルを取り出し、机に置いた。

『差し入れだ!』

『は?』

余りの唐突さに、霖之助は余り理解できなかった。

『その……慧音の手伝いをしてたら……その……要らねぇのにいっぱい貰っちゃってさー!!だから香霖にもおすそ分けしようかとー…』

どこか様子がおかしいと感じた。

その水も、どこも見たことがないラベルが貼られている。

霖之助は少し警戒しながらも、微笑みながら感謝の言葉を出した

『ありがとう。それじゃぁまた疲れたときに飲ませてもらおうかな。』

霖之助がそう言ったら、魔理沙は机を大きく叩いて叫んだ

『そ……そんな事言わずに今飲まねぇか!?ほら!!蓋は私が開けてやるからよ!』

やはり、どこか三人がおかしい。

アリスも、僕の事をチラチラと見ているし

パチュリーに関しては、完全に顔が真っ赤だ。

一体、何が起こっていると言うのだろうか

『いや、結構だよ。』

『そんな事言うなって!』

『結構だ』

冷たいように言い捨てると、真っ赤な顔で半無きな顔で魔理沙は僕を見つめた。

そんな顔しても無駄だ。

あからさまに怪しいのだからな。

『ぅぅぅ……』

泣き言を言いながら、魔理沙は二人の元へと戻って行った。






三人は焦っていた。

最初、パチュリーが飲んだ時に言った

『あれ?……なんだか身体の芯からポカポカと……』

そう言って、パチュリーの身体がみるみる赤くなっていく。

『マジで!?』

魔理沙はそう言って、そのビンから水を溶かして飲み始めた。

アリスも、成功していたという歓喜に溺れて、一緒にその水を飲んでしまった。







そしてこの有様だ。

『どうすんだよぉ……股間がムズムズするよぉぉ……』

恥ずかしく、もどかしい感じがする魔理沙は、モジモジしながら股間を押さえ、座り込んだ。

『迂闊だった……。こんなもの……勢いに混じって飲むんじゃ無かった……』

だが、それだけじゃない。

近くに霖之助が居るという状況で、更に欲求が増してしまったのだ。

だから、少女三人は今までに無い感覚にまで陥っている。

『……はぁ……はぁ……はぁ……』

パチュリーが、獲物を見る目で霖之助を睨みつけていた。

それに気付いた霖之助が、少女の三人の方を見て

『ん?どうかしたのか?』

と声をかけると、慌ててアリスが弁論した

『あ……!ちょっとパチュリーがゲームで徹夜したみたいで……眠いみたいなんです!!』

力むように、裏声で喋ったアリスの声が、店中に響き渡った。

その声に呆然とした霖之助は、じぃっと三人の少女の方を見た。

見られてくると、益々欲求が増してくる

どうしよう。見ないで。

でも……本心ではもっと見て欲しい……

という欲求が膨れ上がっていった。

『おはよー霖之助さん。……ん?』

そして、店には霊夢が入ってきた。

机の上にあったペットボトルを見つけて、爛々とした表情でそのペットボトルを手にとった。

『おお。丁度良かったわ。私、さっき掃除やっと終わって喉カラカラなのよね』

そう言って、ペットボトルの蓋を開けた。

『あ』

三人の少女が声を出したと同時に、霊夢はそれを飲み始めた。

『店主!今日こそ借りてた本を返して……』

そして同時に、朱鷺子が店の中へと入って来た。

『おっ。いっぱいな桃ジュースじゃん。私、大好物なの。』

そう言って、朱鷺子もそのペットボトルの中身を飲み始めた。

『あ』

また三人の少女が声を出した。

霊夢と朱鷺子がペットボトルの中身を飲み干すと、大きく息を吐いた。

『ぷはー!生き返ったわっ・・・』

と同時に、しばらく黙り込んでしまった。

飲み終えたと同時に、行動を停止したその光景は想像以上に不気味だった。

『ん?どうしたんだ霊夢。朱鷺子』

霖之助がそう質問をした瞬間、頬を赤らめた霊夢と朱鷺子が振り向いた。

『り……霖之助さん……なんだか……』

フルフルと震えて、内から湧き出る欲求を露にした表情をしている。

『て……店主……』

朱鷺子も、同じく物欲しそうな目で僕を見つめていた。

それで、完全に理解をした。

『……魔理沙、このジュース……何かを入れたな』

そして、振り向いて言葉を付け加えた

『そして飲んだな』

『ご……ごめんなさい……』

魔理沙がそう言った瞬間、霖之助は頭に手を置いた。

そして霊夢が、また言葉を出した

『霖之助さーん!股間がムズムズするよぉおお!!なんとかしてぇええ!!』

『なんとか……と言われてもね。』

霖之助は、そう冷たく言い放った。

『お願い……今、頼れるのは貴方しか居ないの……。』

アリスが、顔を真っ赤にさせながら恥ずかしそうに言った。

『そうか。で、僕は何をすれば良いのかな?』

霖之助は腰に手を当てて、物を聞く態度になっている。

すると、アリスと魔理沙。さらに霊夢と朱鷺子は恥ずかしそうな表情をしていた。

パチュリーは、獲物を狙う目になっている。

『その……えと……。媚薬を……押さえるには……。』

そして、霊夢が必死にお願いをする顔で霖之助にしがみついた。

『霖之助さん!お願い!!あれ!!あれしかないでしょ!!あれをするのよ!!』

『断る』

霖之助は、あっさりと答えた

『お……お願い……店主……。もう……本返さなくて……も……良いからぁ……』

半泣きの顔で、朱鷺子が股間を押さえながら言った。

『悪いけど、お引取りをお願いしたい』

店主は、どこか面倒ごとから逃げようとしている様子だった。

『どちらにしても、これは魔理沙達の自業自得だ。責任は魔理沙達の方にあると思うが?』

『うぅ……香霖……』

魔理沙がそう言った瞬間、霖之助は三人の少女の方を見た。

霖之助がパチュリーに目をやった時、パチュリーの何かが弾け出した。

『もう……限界……』

『え?』

霖之助が声を出した瞬間、パチュリーは立ち上がり、もうスピードで突進をしてきた。

『店主さぁぁぁぁん!!好きぃぃぃいいいいいいい!!!』

『うぉお!!』

霖之助は間一髪で交わし、抱きつかれずに済んだが、

第二、第三の敵が現れた

『香霖ぃぃぃいいいん!!観念せいやぁぁあああああああ!!!』

『霖之助さぁぁぁあああん!!いただきまぁぁぁぁあああす!!!』

『ごめんなさい霖之助さん!!もう……限界ぁぁぁああああああい!!!』

『店主ぅぅぅうぅううううううううう!!!!』










店から飛び出して、商店街から抜けて霖之助は逃げるように走り出した。

実際に、追いかけてきているのが5人程居るのだ。

霖之助は、この時何故か”死”を想像した。

後ろから、少女達の追いかける足音と猛り声が聞こえた。

どうする。どこへ逃げ込む。

霖之助は、この追いかけている間、3秒間に300の事が頭によぎった。

その内、297個は走馬灯だった。

残りの三つは、これから先の事を考えていた。

・幽香の店に匿ってもらうか。
いや、何故だか僕の想像の中で少女達と一緒に襲ってきそうだ。

・慧音の家に匿ってもらうか。
いや、彼女には余り迷惑を掛けたくない上に、どこか嫌な予感がする

・魔理沙の実家に匿ってもらうか。
確実に魔理沙は家を知っている為、捕まるのも時間の問題じゃないのか?

『ぉぉぉおおおおおおりぃぃぃいいいいんんんん!!!!』

もう対して時間が無い。

しょうがない。一番安全な選択肢を選ぼう。

そうと決まれば、もう少しだけ時間を取る必要がある

『すまん!ちょっと貸してくれ!』

『あら?……どこぞの店主さん』

まず、幽香が開いている花屋から自転車を借りた。

『今日はちょっと珍しい銘菓を貰ったの。ちょっとおすそ分けしようと店主さんのお店に向かおうとしていた所なのよ。ちょっと上がっていかないかしら?』

『すまない。今はそれ所じゃないんだ!』

霖之助はそう言って自転車をこき始めた。

スピードが出てきたと共に、霖之助さんの姿はすぐ見えなくなった。

少しガッカリした幽香が見えた先は、こちらへ向かって突進してくる少女達の姿だった。

『ん?』

何か猛りながら走り去って行った。

随分、何かを求める目をしていたけれども、何が起こっているのかしら。

少しだけ幽香は面白そうな顔をしていた。









ようやく霧雨店へと辿り着いた霖之助は、自転車を捨てるように降りて、店の中へと入って行った。

『すみません!!』

大声で挨拶をして、霖之助は扉を閉めた。

『おお?どうした霖之助?』

親父さんが店から姿を現し、僕に質問の言葉を送った。

僕はその瞬間、安堵した空気に包まれた気分になった。

そして、溜息を吐きながら、今起こっている現状を親父さんに語りだした。

『実は……。』








『………ほう、成るほどねぇ。媚薬……なるほど』

親父さんは納得した顔で頷いた。

だが、それ以外は何も考えて居なさそうな表情だった。

『それで……しばらくここで匿らせてくれませんかね。』

親父さんは、渋い顔で霖之助に言葉を送った

『だけどよぉ、時間も余り掛からねぇで捕まっちまうんじゃねえか?ここに隠れても、結局は同じ運命……』

そこで、親父さんの口が止まった。

分かっている。それは分かっている。

だが、今は待つしかないのだ。

『お?』

媚薬の効力が切れるまで、逃げ切る

それ以外、何も方法が無い。

『おいちょっと待て、良い事考えたぞ』

親父さんは、少し楽しそうな顔になって霖之助に提案を出した。











『ここかぁ!!』

少女達は、霧雨店の扉を乱暴に開けた。

その瞬間、霧雨店の店主が店の奥から現れた

『いらっしゃ……なんだ。魔理沙か』

親父さんが、どうでも良いような顔で実の娘を睨みつけた。

だが、魔理沙は得に気にしては居なかった。

『親父!!ここで香霖見なかったか!!』

そう叫ぶように質問した瞬間、親父さんは考え出した。

『………いや、ここには来てねぇな』

『もう良いです。親父さん』

親父さんが言い掛ける前に、霖之助が店の奥から現れた。

『霖之助?』

親父さんが、霖之助の名前を呼んだ。

霖之助を見た少女達は、一瞬で顔を真っ赤にさせ、また少し恥ずかしそうになった。

ウズウズと、落ち着かない様子の者も居た。

それらを見ながら、霖之助は言葉を出した

『……これ以上、親父さんに迷惑を掛けられない。この問題は、大いに関係のある僕が責任を取ります。』

霖之助は、決心がついた様に答えを出した。

その瞬間、少女達は呆然となった。

そして、笑顔のような、恥ずかしくて悶えるような表情になり、震えた声で言葉を出した

『え……?じゃ……じゃぁ霖之助……さん?』

霊夢がそう言うと、霖之助は軽く笑顔になり、大きく息を吐いた。

『負けたよ。君たちには』

そう言った瞬間、全員の目が輝き、嬉しそうな表情になる。

涙がとてつもなく溢れ出している者も居る。

『ほっ……ほほほ……本当に……良いんだな香霖!!』

『ああ。降参だ』

そう言うと、魔理沙はかなり嬉々とした表情をしていた。

今にも抱きつきそうに、目が血走っていた。

『さて、皆走り続けて疲れただろう?』

霖之助はそう言って、部屋の奥からダンボールを取り出した。

『まずは喉を潤して、体力をつける方が良いんじゃないのか?』

ダンボールの中には、沢山のミネラルウォーターが入っていた。

『は……はい!!!』

少女達は一斉にダンボールの中から一人一個ずつペットボトルを取り出した。

そして一斉に、飲みだした。
















『いやー、本当に助かりましたよ。ありがとうございます。親父さん。』

『なぁに、困ったときはお互い様よ。』

霖之助と親父さんは二人で笑いあいながら店の仕事をしていた。

『まぁ、その代償としてお前は俺の店を手伝ってるんだけどな。はっはっは!!』

思えば、この店の手伝いをするのも久しぶりだ。

自立した時、もうこの店には来ないだろうと思っていたが、

そう思うと、懐かしくて自然と笑みがこぼれた




その頃、霧雨店のトイレでは

『ア……アリス……!!てめ……いい加減にぃぃい……!!!』

腹を押さえながら、魔理沙は悶えていた。

さらに後ろに、パチュリーが腹を押さえながら泡を噴いている。

霊夢が、仰向けになりながら腹を押さえてバタバタと暴れている

朱鷺子は、右手で腹を押さえ、左手で床を引っかいていた。

『早くしろぉぉおお!!こっちだって限界なんだよぉぉおおおお!!』

『駄目よ!!私だってまだお腹痛いんだから!!』

魔理沙が、力任せに扉を一生懸命叩いている。

まさか、あのペットボトルに下剤が入っているとは……。不覚を取った。

『駄目……も……漏れ………』

『げ……限界………』

少女4人は、トイレの目の前で暴れるようにガタガタ震えていた。






『思えば、もう二度とこの店で働く事は無いのだろうな。とは考えていました。』

『はっはっは。見事にその考えが打ち砕かれたな。』

親父さんが、可笑しく笑うように霖之助に言った。

『で、お前の店も上手く行ってんのか?』

『お世辞にも……儲かっては無いですね。』

霖之助がそう言うと、親父さんは冗談交じりの声で霖之助に向けて言葉を放った

『だったら、もうここに戻って来い。そしてまた、一緒に店やろうぜ』

『いえ……。私の店にも、着々と常連さんだって居ますから。常連が一人も居なくなるまでは辞める訳には行きませんよ』

『お前……前よりも生意気言うようになったな』

親父さんは変わっていない。

最初に出会った時から、良く笑い、本気で起こった姿を、僕は滅多に見たことが無い。

だからと言って温厚では無いのだが、気前の良いおじさんだ

『ま、辞める辞めないにしても、たまにはここで働いて欲しいもんだかねぇ。娘も勝手に出てって使えねえしよ。』

親父さんの言葉に、霖之助は少しだけムッとした

『実の娘に対して、そんな言い方は無いでしょう。』

『はっはっは!年食うと娘がちょっと離れだけで親子の絆がちっちゃく見えるもんだ!まぁ気にすんな!』

親父さんがそう言って、霖之助は少しだけ溜息を吐いた。

『……変わりませんね。霧雨さんも』

『そりゃぁこっちのセリフだ。』










親父さんがトイレの行列を見た。

僕も見たが、凄まじい事になっていた

『もう限界……。外行って来る!!』

『待て!パチュリー!早まるなぁぁあああああ!!!』

そう言って、魔理沙がパチュリーを抑え付けた

『離してぇええ!!いや、離してくださぁぁああああい!!』

暴れるパチュリーを抑え付ける魔理沙を見て、親父さんが語った

『おう良いぞ魔理沙。押さえとけ。家の周り汚したら、罰金2万円だ』

『鬼ぃぃぃぃい!!悪魔ぁぁぁああ!!』

全員が講義の声を出すと、霊夢の声も漏れ出した

『漏れ……漏れる……!!げ……げげ……んか…!!』

『家の中汚したら、10万円な』

親父さんがそう言った瞬間、霊夢は魔理沙に言葉をぶつけた

『魔理沙!!アンタの親父さん、最低ね!!!!』

『店主!!助けて店主ぅうう!!!』

同時に朱鷺子が霖之助に助けを求めてきた。

ごめんよ、僕にはどうする事も出来ない。

そう想いながら、霖之助は去って行った。










全てが終わった時、僕は五人をトラックの荷台置きに置いて、それぞれの家まで送ることにした。

『痛いよぉ……肛門が……肛門がぁぁぁぁ……』

下剤を飲んだ彼女達は、想像以上に過酷な体験をしたらしい。

その際に、肛門を痛めてしまったらしい。

誰かが痔になる可能性もあるだろう。思えば酷いことをした。

尻を押さえながら、霊夢が言葉を出した

『ぅぅ……霖之助さん……良いじゃないのよ……。どうせなら肛門じゃなくて……ち』

『そこから先は聞かない事にするよ』

霖之助がそう言ったと共に、荷台置きが静かになった。

全員、尻を押さえながら泣いているのだろうか。やけに静かだ。

その時、運転席と荷台置きへと繋がる窓に向かって、魔理沙は言葉を出した

『なぁ、香霖……。………私たちじゃ嫌なのか?』

それは、真剣であり本気の言葉だった。

随分と困る質問をされてしまった。

だが、それを返す答えは決まっている。

『………僕は、媚薬なんかで生まれる恋愛というのは、偽者な感じがする上に不純だと想う。少なくとも僕は、そんな恋愛はしたくないね』

そう言うと、また黙り込んだ。

しょんぼりしているのだろう。

バックミラーから、顔を隠している魔理沙の様子が窺えた。

『君たちが望むのは、もう少しだけ大人になってからでも出来るだろう。その時に……考えてやっても良いかもしれないな』

ちょっとした冗談のつもりだった。

冗談だと笑い出そうとした瞬間、少女達は声を揃えて言った。

『『『『『その約束、忘れんなよ!!!!』』』』』

『………ちょっとした、冗談のつもりだったんだが』

僕がそう言った瞬間、魔理沙達はいじける仕草をした。

媚薬…僕は、このような卑怯な物は嫌いだ。

だが、そこまでするのは……一体なんなのだろうか。

どうして媚薬を作り出したのか……どうせ、ただの興味本位なのだろう。

これからも、そのような薬を作ることが無い事を願おう。

『うーん……肛門がぁ……』

今は、ちょっとだけ心配だが

きっと、彼女達は着実に成長していくのだろう。

これも、立派な教訓としては、丁度良いのかもしれないな。











〜蛇足1〜

霖之助とは、奴が若いときからの友達だった。

一緒に悪いこともしたし、酒も飲んだ。

妖怪が襲ってきたときだって、一緒に逃げたりもした。

店を継ぐ時になった時も、お前は手伝った。

好きな奴が出来たと言えば、恋の手伝いをしてくれたし。

そして、結婚までかぎつけてしまった。

思えば、師弟とか言っていたけど、俺の方がお前におんぶさせられている気がするな。

自分が情けなくなる。

こんな俺が、娘に手を出すなと言える立場なのだろうか。

……いや、もしそうじゃなかっとしても、アイツは手を出さないだろうな。

そもそも、アイツは枯れている感じがしやがるし……。

俺は今、結婚して娘も居る。し、妻を今でも愛している。

だが、あいつはまだだろう。

俺だけが、こんなに幸せな気持ちになっても良いのだろうか。

そんな事だって考えるようになった。

『………ああ。お前も結構大変なんだな』

だがな、お前がどうしようと、俺がなんだろうと

『あ、そうそう。娘には手を出すなよ』

娘に手を出そうと、結婚しようと、子供を産もうと

『ああ、そうだな。そっちの方が良いんじゃねえの?』

盗みを働いても、人を殺そうと、自殺しようとも

『また、俺の店で働きに来いよ』





一生、お前は俺の親友だからな







逃げられると思うなよ。絶対に縁は切らねぇからな。











〜蛇足2〜

店主さんが電話をしている時に、一人の花屋が赤い花を持って店の中に入ってきた。

花屋の店主は、花のような微笑をかけながら花束を沢山持ってきた。

『花が咲きましたので、届けに参ったわ。』

『へぇ……こんなに咲くものなのか』

霖之助が関心すると同時に、幽香は嬉しそうな笑顔になった。

『ええ。……ところで、今誰と話をしていましたの?』

質問されると、霖之助は何の疑問を持たずに間髪を入れずに答えた

『ああ。古くからの親友なのだが……今は、元師と言えば良いかな』

霖之助の言葉に、幽香はふぅんと頷いた。別に興味が無いそうだ。

『そうそう。あの子達はまだ居るかしら?』

幽香がそう言うと、霖之助は意外そうな顔をした。

そんなに仲が良かっただろうか?そう考えながらも霖之助は指を上に指した

『ああ。あの子達なら上だよ。何か、肛門が痛むらしくてね』

『あら。それは大変ね。うふふ……』

そう微笑みながら、幽香は上の階へと登る為に、外の階段を使った。









扉を開けると、布団にもぐりこみながら尻を盛り上がらせている三人の少女が居た。

どうやら、相当痛いらしい。

『………誰よ』

一人の少女が、三人の代弁をするように言葉を発した。

すると、幽香が微笑みながら言葉を出した

『……噂によれば、ここには媚薬がある……と聞いたのだけれど』

媚薬という言葉を聴いた瞬間、三人とも顔を上げた。

『………それがどうかしたのよ』

魔理沙がそう言うと、幽香がまた微笑みながら言葉を発した。

『私も、その媚薬の作戦に力を貸そうかと思いましてね』

相当不気味な笑顔をしていた。

『………は?』

当然、三人の少女はこのような反応になる。

『前の敗因は、三人とも店主さんに飲ませる前に飲んでしまった事が大きいんじゃ無いかしら?』

幽香がそう言うと、三人は考え出した。

『………まぁ、そりゃぁ……』

アリスがそう言った瞬間、さらに不気味な笑顔の声で幽香が言葉を連ねた

『それに、不自然にペットボトルを持ってきた物だから。余計に怪しがって店主さんは飲めなかった。つまり、もっと自然な方法で行かないと駄目なのよ。あの店主さんの事だから、そこまでの警戒心という物は無いかもしれないわ。』

幽香の言葉に、興味を持つように三人はベッドから起き上がり、近づいた

『………例えば?』

『今から言うのは、4人が揃えば成功が確実と言えるほどに起こりうる作戦よ』

さっきまで目が死んでいるようにも見えたが、今の幽香の言葉で完全に生き返った。

『どう?私に身を預けてみない?』

そう言って、幽香は手を出してきた。

その上に魔理沙が手を乗せ、

さらにその上にアリスが乗せ、

最後にパチュリーが手を乗せた。

そして掛け声と共に、新しい作戦へと意気込んだ。




三人は、昨日の教訓で全く懲りていなかった。

【バレンタイン編】


バレンタインから一日経った後の出来事

辺りに散らばる花

商品が散らばっている店の中

割れた窓ガラス

ボロボロの歯ブラシの散乱

死屍累々な少女達

その悲惨な店の中で、僕は体育座りで本を読んでいる。

どうしてこうなった

少女を片付けようにも、恥ずかしい格好、半裸な格好をしている少女が居る為、迂闊に手を出せない。

だから今は、事が過ぎる為に本を読んで黙っている事しか出来ないのだ。

『香霖……ムニャ』

半裸の少女の一人、魔理沙が僕の服を掴んでいる。

帰りたい

ここが僕の家なのだが、この家から出て行きたい。どこか帰りたい。

本当に、どうしてこうなった。

事の発端は、2月14日

バレンタインシーズンで僕も店でバレンタイン用品を売ってた後の時期だった。







2月14日

今日はバレンタインデーだ。

商売上手になる為に、バレンタイン用品のチョコ型を販売したり、ヘラを売ったりしている。

包み紙等も、いろいろ回って作ってきた。

昨日は、シーズンもあってか売り上げはいつもよりも上場だった。

女子高生から幼女まで、他には男子高校生や40代の男性も買いに来ていた。

チョコを貰う側のはずの男性も買いに来ていたので、これは成功してたのではないかと確信したのだ。

忙しかったが、バイトの筈の霊夢はバイトオフを求めたので、ほとんど僕一人の働きなのだが。

今日のバイト代は、当然省く事にしよう。

そして今日、バレンタインデーだが

今日ギリギリにチョコを作る輩も居ると言う事で、一応バレンタイン用品をまだ売っている。

昨日ほどの売り上げは無いが、いつもよりは売り上げは上がっていた。

こういうシーズン物は大好きだ。店の売り上げに関わるからな。

おかげで、クリスマスとバレンタインとホワイトデーとの区別がつかなくなったが、

商売人の僕にとっては店の売り上げが上がる季節に過ぎないだろう。そこまで興味も無い。

そう言えば最近、魔理沙とアリスとパチュリーの姿が見えないな。

学校で好きな男子生徒に渡す為に、チョコ作りに励んでいるのだろう。微笑ましい。

彼女達が、どんな彼氏を連れてくるのか楽しみだ。

売り上げが上がったりで上機嫌なのか、今の僕は陽気な気がした。

『200円ね。』

今日も、一応客は来る。

店の利益を上げる為に、僕も一段と頑張っておこう。

『霖之助さーん!バイトに来たわよー!!』

元気一杯に霊夢が扉を開けて入ってきた。

『……しばらくオフにしたんじゃ無かったのかい?』

『どうせ今日はバレンタインで忙しいんでしょ?今日は私も頑張ってあげるから!』

『悪いけれど、一人で間に合ってるよ。今日は昨日ほど多忙では無いのでね。』

僕がそう言うと、霊夢は膨れっ面をした。

『今日はバレンタインよ!こんな日に女の子が押しかけてきたら、ワクテカするのが男子って物でしょ!?』

『どうせ君は貰いに来たのだろう?』

『うん!!』

即答かよ

『話が分かったなら霖之助さん。チョコ頂戴!』

『無い』

『それじゃぁお金で良いから!』

『帰れ』

僕も即答で返し、手を振ってさよならの合図を出すと、霊夢は益々膨れっ面をした。

『うぅ…分かったわよ。霖之助さんの歯ブラシで我慢する……』

霊夢は洗面台から歯ブラシを抜き取った

『待て待て待て待て、どういう事だそれは。しかもそれはまだ現役だ』

霊夢が歯ブラシをカバンに入れようとした瞬間、僕は見逃さず、霊夢の手を掴んだ。

『離してぇ!もう私にはこれしか無いのぉ!!』

『分かった!今日一日分の給料は出す!その代わり働いてもらうが、弾んでやるから。それで良いだろ!』

僕がそう言うと、霊夢は精一杯の笑顔になって僕を見た。

『えへへ。さすが霖之助さん。ありがとう!』

霊夢はそう言って、僕の歯ブラシをカバンに入れた。

『歯ブラシは戻すように』

『むぅ〜〜〜っ』

霊夢は、何故か渋々と言った感じで歯ブラシを元の場所に戻した。

そんな誰かが使っている歯ブラシを何に使うのだ。意味が分からん


『ごきげんよう。店主さん』

次に入ってきたのは、お得意のメイドとお嬢様さまだった。

『いらっしゃい。今日はどのようなご用件で?』

『今日はバレンタインだからね。貴方にチョコを渡しに来たのよ。』

レミリアがそう言うと、チョコを僕に投げてきた。

僕はスルーした為、チョコは机にバウンドし、床に落ちた。

『………取りなさいよ』

『君がやっているのは、渡してるのでは無い。捨ててるんだ。捨てた物を拾う程、僕は落ちぶれていないよ。』

『拾い物を商品にしている貴方が言うの?』

落ちたチョコは、霊夢が拾って包容を開けてチョコを食べている。床で

それを見たレミリアが、ワナワナと震え、涙目になっていた。

『ちょっと貴方何してるのよ!貴方に渡すチョコは無いわ!!』

『でもこれ、捨ててるんでしょ?』

『うるさい!これがカリスマ的な私の渡し方なの!!』

レミリアはそう言って、もう三つのチョコを僕に投げてきた。

『あぁー!私のチョコが!』

『ちょっとお嬢様!私のも投げないで下さいよー!!』

『お姉さまぁ―――!!!』

どうやら、別の人のチョコのようだ。

小悪魔と美鈴とフランドールが涙目で投げられたチョコを見ている。

僕は首を動かして投げられたチョコから避けた。

更に後ろから、霊夢がチョコをキャッチしている。

一つのチョコは、僕の胸に当たって机に落ちた。

『あぁー…私のチョコがぁ…』

小悪魔が四つん這いになって、涙の雫を床に落としている。

『お姉さま嫌い!!』

フランドールが、涙目で腕を組んでむくれているレミリアを睨みつけている。

その中で一人、飛び跳ねて喜んでいる少女が居た。

『キャー!見てください!私のはちゃんと店主さんに届きましたよ!キャーキャー!』

どうやらこのチョコは美鈴のチョコのようだ。

僕が手を伸ばす前に、そのチョコにナイフが刺さった。

鈍い音と共に、美鈴のハシャギは無へと帰った。

『……あの、私からのチョコを……』

咲夜は、少しだけ顔を赤くさせながら恥ずかしそうにチョコを僕に差し出した。

その後ろで、両手で顔を隠すように泣いている美鈴の姿があった。

『酷い……咲夜さん…』

取り合えず、このチョコは普通に渡された為、貰うことにした。





『霖之助ー!!居るかー!!』

店の壁の端で小さくなって泣いている四人を無視するように。二人程の少女が店に入ってきた。

僕の後ろでは霊夢がチョコを食べているが、まぁ別に関係ない

『あ…あの…店主さん……こんにちは…』

青い髪の少女と緑色の髪の少女

背は低い。

一人は無邪気にいつも通りだが、もう一人は顔を真っ赤にさせて湯気が上がっている。

『やぁ、今日はどう言ったご用件で?』

とりあえず、接客の笑顔をすると、大妖精は顔を赤くさせてギコチナイ動きをした。

『?』

風邪でも引いたのだろうか。

そう思った矢先、大妖精は僕の方を見た。

『ぼぼぼ…ぼぼぼ………ぼぼぼぼぼぼぼ…』

目の焦点が合っていない。

これは風邪では無いな。目の焦点が合わなくなる病気はなんだったか考えてみた。

考えている間に、大妖精は小さな箱を僕に差し出した。

『これ…これ!渡し……渡します!!』

恐らく、これはバレンタインチョコなのだろう。

客で無い事に少し残念に思ったが、喜んで貰っておこう。

『ありがとう。喜んでいただくよ。』

僕がそう言うと、大妖精は僕の顔を見た。次に泣きそうな顔になった。

何か変な事を言っただろうか。先程言った言葉を考えてみる。

だが、特に変な事を言った覚えは無かった。

『次にこの私からチョコを渡すから!感謝しなさい!!』

次に、チルノから大きな箱を貰った。

でかいな。でかければ良い物では無いが。

『開けてみて!』

そう言われたので、僕は開けて見る事にした。

『………これは、なんだ?』

物凄く汚い色をした確実にチョコでは無い”何か”があった。

『霖之助の為に、すっごいチョコを作ったんだよ!』

『材料は?』

『えーとねー。おりーぶおいるでしょー。ビー玉でしょー。ミミズでしょー。後ねー、珍しい石!!』

これは丁重に埋めておく事にしよう。

『ありがとう。貰っておくよ』

『感謝しなさい!!』

埋めた土が腐らないか心配だが



『お早うございます。店主さん。』

『もう昼なのだがな。』

次に、取引相手である花屋の幽香が現れる。

手に持っている箱を見る限り、どうやら彼女もチョコを持ってきたのだろう。

まぁ、仮にも相手は取引相手なのだから義理チョコが妥当なのだがな。

『で、今日はどのようなご用件で?』

『分かってるくせに。今日はバレンタインデーよ。』

そう言って、彼女はバレンタインチョコを僕に渡した。

『まぁ、いつもお世話になっていますので、粗末な物ですが』

『ありがとう。そう言う事なら貰っておくよ』

そう言って僕は、チョコを後ろのカゴに入れた。

『食べて』

『え?』

『私の手作りなので、食べている姿を眺めたくてねぇ。どうか口に運んで頂けません?』

迫力のある笑顔で、彼女は僕に迫ってきた。

断ったら殺される。そんな感じがしたのだ。

『……そう言う事なら…分かりました。』

本当は営業中の飲食は無礼の為、禁止しているのだが

僕は取り合えず、箱を開けてチョコを眺めた。

『………』

何かがおかしい

いや、見た目は普通のチョコなのだが

僕がチョコを食べる様を、彼女は凛々と良い笑顔で眺めようとしているのだ。

それにこのチョコ、見たからには分からないが、嫌な予感がする

『霖之助さーん。埋め終わったわよー。』

例の物を埋め終えた霊夢は、店の中に戻ってきた。

『ああ霊夢か。ご苦労だった。ほらアーン』

僕は、戻ってきた霊夢に向けて、チョコを向けた。

『あっ!?やだ霖之助さんたら!そんな大胆な…』

何故そんな声で言うのだ。意味が分からん。

『でも、そこまで言うのなら……』

そう言って、霊夢は僕の持っているチョコを取らず、口で食べた。

『うわぁ…』

おかげで霊夢の唾液が指についた。後で洗わなければ。

そして、食べている霊夢の方を観察する。

最初の方は、ただモグモグしているだけだったが、しばらくして様子が変わった。

『ん?』

顔が赤くなり、モジモジし始めたのだ。寒いというのに汗も流れ出ている。

『ひやっあっああん…!』

なにやら、変な掛け声までも出しているようだ。

『おい、どうした霊夢…』

『ひやんっ!!』

ちょっと髪に触れただけで、霊夢は身をよじらせて反応した。

瞬間、霊夢が獲物を見る獣の目をした。

その目にどこか見覚えがある。

恐怖を覚えた僕は、そのまま霊夢から離れた。

『お…おい霊夢?』

『シャァァァア!』

霊夢は僕の所まで突っ込み、抱きついた。

『うわぁぁぁああ!?』

瞬間、

『ピャッピャッピャ!!やあああああああああ!!』

変な掛け声と共に、先程の力は無くなった。

ヘナヘナと腰が砕けたように地面に落ちるように崩れ去り、地面にべたりついた。

その時の霊夢の顔は、幸せそうな寝顔だった。

『……………』

僕は、幽香の方を睨んだ。

『あらら…バレちゃったのならしょうがないわねぇ。』

そう言い終えた瞬間、軽い身の腰でこちらに向かって突撃し、僕の肩に手を回し、首を絞めるようにして

もう片方の手で何かが入っているチョコを僕の口の前に出した。

『こうなったら力ずくでも食べてもらう必要がありますわねぇ。さぁ店主さん、召・し・上・が・れ♪』

目が…目がマジだ!!

ヤバイ、このままでは殺される。

こうしている間にも、チョコが力強く僕の口に押し付けられる。

助けて…誰か助けて……

『店主さーん』

その間に、早苗さんが店の中に入ってきた。

『おお助かった!早苗さん、助けてくれ!』

僕は助けを乞うと、早苗さんは少し驚いた表情でこちらを見ていた。

『チョコレート…うわぁ!何をしてるんですか店主さん!』

『その言葉、この花屋の店主に言ってやりたいね。とにかく助けてはくれませんか』

僕がそう言うと、幽香は更に黒い笑顔となって早苗さんに睨みつけた。

『早苗さん…?と言ったかしら。ちょっと取引しません?』

『店主さんを困らせる人の取引なんて、受けません!』

さすがは早苗さん。良く出来た子だ

『私が今、食べさせようとしているのは媚薬…。これを店主さんに食べさせれば、貴方も楽しませてあげますよ?』

瞬間、この空間に沈黙が流れた。

しばらく長い時間の間、誰一人喋らなかった。

『あ……あの?』

僕は、早苗さんに問いかけた。

霊夢は使い物にならなくなった為、頼れるのが目の前の人しか居なかったのだ。

『…………ん―――…』

『ど、どうして悩んでいるんだ!』

『そりゃぁ悩みますけれどもねぇ。言っておくけれど、この店主さん。鈍いわよ〜…』

幽香も、何を訳の分からない事を言っているんだ

『ええと…あの……チョコレート……』

早苗さんは、少し申し訳なさそうにチョコを僕に差し出した。

そして、机の上に置いた。

『ごめんなさい!!』

そう言って、早苗さんは逃げた

『えええええええええええええええええ!?』

僕は思わず叫んでしまった。

『うふふ……まぁ、確かにあの子にとっては逃げ出したくなる程の選択だったかもねぇ…。』

何故だ、一体どう言う事なんだ。

くっ…あそこで部屋の隅で泣いている四人も使い物にならなそうだし…

というか一人、完全に興味津々でこっち見てるし…

『さぁ、観念してくださいな……』

ここまでか…

そう思っていた矢先、謎の衝撃波で店の扉が吹っ飛んだ。

『!?』

先程の爆風で扉と部屋の隅で泣いている四人のうち二人が吹っ飛んだが、

幽香の気もなんとか引けた。

『あっ!』

その隙に、幽香の手からなんとか逃れられた。

良かった。あの未知なる物質を食せずに行ける。

『り……り――んの―――すけ――――――!!』

半分裏返っている声で、ガチガチになっていた慧音が店の前で立っていた。

扉を壊された事は許せないが、この状況を作ってくれた彼女に僕は感謝した。

『おお慧音!良く来てくれた!』

『えっ!?えぇっ!?』

僕が感謝の言葉を送ると、ヤカンの様に慧音の顔は真っ赤になり、湯気が出た。

『頼む!この状況をなんとかしてくれ!』

僕がそう叫ぶと、幽香は更に黒い笑顔で慧音を睨みつけた

『……貴方、霖之助に何をしようとしていた?』

『いいえ?私はこの媚薬入りのチョコを食べてもらおうとしていただけ…よ?』

そう言って、幽香はチョコを慧音に見せた。

すると、慧音の顔は更に真っ赤になり、また声が裏返った。

『びぃぃぃ!?媚薬?!そそそ…そんな物使うなぁ!!不純だぁ!!汚いぞぉ!!』

『でも、これを使わないと店主さんは思い通りに行かないのは確か。どうする?』

一体何の話をしているのか分からないが、幽香が更に慧音を纏め入れようとしている。

『これを使って皆でランデヴーするか、私とデスマッチをするか…?』

『断る!そんな汚いチョコを霖之助の口に入れるな!!』

慧音……ありがとう。お前は最高の幼馴染だ。

『そう、残念ね』

幽香はそう言って、チョコを慧音の口に押し込んだ。

『もがっ!?』

チョコは慧音の口に入り、ゴクリとチョコは慧音の喉に通った。

『も……もごごぉ!!』

慧音は身をよじり、悶えて床を転げまわった。

『元々貴方に選択権なんて無かったのよ。元からこれを食べさせれば、全て丸く収まるはずだったんだから…ふふ』

幽香は黒い笑顔で慧音を見下すように見下ろす。

なんて卑怯な奴だ

次に慧音の痙攣がピタリと止まり、ゆらりと立ち上がった。

『!?』

慧音の顔が、こちらに振り向かれる。

獲物を見る目だ

『捕まえなさい。』

幽香がそう言った瞬間、獣のような声で慧音は僕に襲い掛かってきた。

『うぉおお!!』

僕は逃げた。

この店の中、必死に逃げた。

『ほーほっほっほ!!無駄よ!彼女は教師!毎日の様に悪ガキの生徒を追いかける生活をしてる彼女なら、貴方を捕まえる事等些細も無い!!』

くっ……確かにこのままでは捕まってしまうのだろう。

どうすれば良い…どうすれば……




一方、美鈴と小悪魔

『痛たたたた……見事に吹っ飛ばされました〜……』

先ほどの慧音の爆風に飛ばされた二人は、店の奥の部屋へと飛ばされていた。

強く腰を打ったようで、二人は痛む場所を手で摩っていた。

『うぅ〜…ここはどこですか〜…?』

美鈴がキョロキョロと、辺りを見渡した。

すると、そこにはタンスがあり、いくつもの衣服が落ちていた。

『………これ、店主さんが良く着てる服だよね……?』

『……………ゴクリ……』

二人は、禁断の果実を見るような目で霖之助の衣服を眺めていた。

『……ちょっとだけなら、良いよね?』

『ううう、うん!!ちょっとだけなら、ね!!』

そう言って、二人は霖之助の衣服に手を伸ばした。

自分の服を脱ぎ、その服を着てみようとして…





『時間の無駄よ!捕まえてしまいなさい!!』

『シャァァァァ!!』

怖い

今まで以上に、幼馴染が恐ろしく感じた。

くそっ、ここからだと確かに捕まってしまうだろう。

どうすれば良い…どうすれば…

『!』

そう言えば、あそこは外側から鍵を掛けられる部屋だった気がする…。

そうだ!

『こっちだ!!』

僕はそう言って、ある部屋へと向かった。

『どこへ向かおうと無駄、いずれ捕まる!!』

『ふん!!』

僕は、とある部屋を開けた。

『へ?』

そこに、二人の少女が居た気がするが、そんなの問題じゃない。

慧音は、勢いにまかせて部屋の中へと突っ込んだ。

その隙に、僕は扉を閉めて鍵を閉めた。

これで、慧音は部屋の中に閉じ込められたままだろう。

『うっうわぁぁぁぁああああああああああああああ!!!!違う!!私は店主さんじゃ無いぃぃぃいいいい!!!!』

『嫌ぁぁぁあああああああ!!止めて!!助けてぇぇぇええええええええええええええ!!!!』

二人の悲鳴が聞こえたが、今の僕にはどうでも良い事だった。

『………なる程、考えたわね。店主さん』

幽香は、無難に拍手をした。

部屋の隅で泣いていた者は、いつの間にか二人になっていて、舌打ちしていた。

一体、何に舌打ちをしたと言うのか

『香霖ー!!邪魔するぜー!!』

いつの間にか、魔理沙が入ってきていた。

ああそうか。もう下校の時間か

『良い所に来てくれた魔理沙。この状況をなんとかしてくれ』

『状況?』

魔理沙は、扉が無い状況から受け入れて、辺りを見渡した。

『うわー…これは酷いな……』

『あの人が張本人だ』

そう言って僕は、幽香に指を指した。

すると魔理沙は

『幽香…?あーあー。なる程な』

何か納得したようだ。

『というわけだ。今から掃除を始めようと思う。』

そう言って箒のある場所まで向かったが、

『悪いが香霖、まだ掃除は早いぜ』

後ろで魔理沙が悪い笑顔で笑っているのが分かった。

何だ?

後ろを振り向くと、魔理沙は幽香の近くで腕を組んで笑っていた。

『………裏切ったな魔理沙』

『裏切られる方が悪いんだぜ?』

『そう言うわけよ店主さん。私達は手を組んでるの。結構前からね』

何と言う事だ

一番近くに居た人が……敵だと?

『というわけだ香霖。大人しくお縄についてもらうぜ!!』

『じゃぁ、よろしくお願いね。魔理沙』

幽香はそう言って、魔理沙の口にチョコを押し込んだ。

『!?』

チョコが、魔理沙の口の中で踊り、喉を通る

『味方じゃ……無かったのか?』

『勘違いしないで。私達は味方じゃない。あくまで仲間よ』

仲間

つまり、味方程の友情は無いと言う事か

『そう言う事。』

幽香が、更に黒い笑顔となった。

魔理沙も、獲物を見る目と化している。

『今度こそ終わりよ……店主さん……』

本当に、終わりかもしれん。

慧音を閉じ込めた部屋も、未だに悲鳴が止まっていない。

中で何が起こっているかなんて、想像もしたくない

『そこの貴方達?』

幽香は、部屋の隅に居る二人の所まで歩み寄った。

『ん?……ムグッ!』

両手で二人の口にチョコを押し込んだ。

『貴方達も頑張りなさい。大事な彼が、捕まるわよ?』

また二人、媚薬チョコの餌食になってしまった。

一体いくつチョコを持っていると言うのだ。

しかし、これで4対1

絶対絶命だ。

『店主さん!!』

入り口で、また声がした。

バットを持った早苗さんが、戻ってきたのだ。

『私は……やっぱり私は、店主さんの味方です!!』

『早苗……』

これで、4対2

光の希望が見えた。そう思えた。

『ヒュン』

『うぷっ!』

次に、正確な位置にチョコを投げて、早苗さんの口にチョコを入れたのだ。

しばらく時間が経った後、早苗さんの目は獲物を見る目となる。

これで5対1だ。

もう本当にお終いかもしれない。

『もう良いじゃありませんか店主さん。貴方もこのチョコを食べれば万事解決……終わりなんですよ。』

『ふざけないで下さい。一体どうして、こんな事をするんですか』

僕がそう質問すると、幽香は呆れた溜息を吐いた。

『……まだ分からないんですか?それは……媚薬使うのもいい加減当たり前に感じて来ましたよ。』

『なんだと?』

媚薬を使うのが当たり前…?前回の事を聞いてたはずなのに、理解していないのか?

『ん……むぅ…』

次に、また霊夢が気がついたようだ。

起き上がり、欠伸をした。

『ふぁ〜あ……』

その瞬間を、幽香は見逃さなかった。

チョコを投げ、霊夢の口に入れた。

『ん?』

しばらくすれば、またこいつらの様になるだろう。

『…ふしゅー…』

そして成った。

これで6対1だ

『………これで本当に、お終いですよ。』

……何か、何か手は無いのか?

僕は頭の中で必死にめぐらせ、考えている。

この状況から脱出する方法……その為にはまず、幽香を動けなくする必要がある。

その為には………どうすれば良い。

彼女達の動きも封じて、幽香の動きも封じる

そんな方法が…………





≪うぅ…分かったわよ。霖之助さんの歯ブラシで我慢する……≫

≪離してぇ!もう私にはこれしか無いのぉ!!≫

≪むぅ〜〜〜っ≫




……そう言えば、何故か霊夢は僕の歯ブラシを欲しがっていたような。

もしかしたら、歯ブラシは女性に刺激する何かがあるのかもしれない。

………確信は無いが

しかし、僕は男性だ

女性の事など、良く分からない。だから

『行きなさい。』

これに、賭けるしか無い

『させるか!』

僕は、洗面台まで走り、自分の歯ブラシを取り出した。

襲い掛かって来る少女達を潜り抜け、僕は幽香の元へと走った。

『何……むぅ!?』

その歯ブラシを幽香の口に突っ込み、僕は逃げた。

幽香は訳が分からず、顔を赤くしてうろたえている。

『えっ!?えっ!?』

そう、顔を赤くしてうろたえるのも今の内だ。

思った通り、少女達は幽香に興味を持っている。

今の内に、吹っ飛んだ玄関に鉄板を貼り付け、急いで電動ドライバーで打ちつけた。

『ちょっ!?』

なんとか、一人も少女が外に出ていない状態で、出られない状態を作れた。

もう誰一人、外には出られないだろう。

『ギャァァァアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』

今日一日は、部屋の中に入らない方が良いだろうな。




2月15日

ようやく騒がしくなくなり、眠っていたようだ。

僕は起きて、玄関に打ち付けられたボコボコに成っている鉄板を取り外した。

外で待機している時も、色んな人からチョコを貰った。

ほとんど常連、客でも無い人だが、

顔見知りなのは確かだった。

烏天狗の少女

朱鷺の少女

更に女らしくなった少年のような少女

孤児院に居る、初めて会った時よりも元気になった少女も、恥ずかしながらもチョコをくれた。

そう言えば、色んな出会いが会った。

この店を構える前は、霧雨の親父さんの下で働かせて貰っていて、

男二人でむさ苦しい店をしていた物だ。

だけども今は、店には女の人の来客が多い。

今では、そのむさ苦しさが少し恋しい。

ようやく玄関のボコボコに成っている鉄板を取り外し、中を見るとかなり凄まじかった。

辺りに散らばる花

商品が散らばっている店の中

割れた窓ガラス

ボロボロの歯ブラシの散乱

死屍累々な少女達

……中で何が合ったのか、ほとんど想像が出来なかった。

慧音が扉を破ってこちらに来ていたらしい。今は下着姿で気絶しているが。

鍵を閉めていた向こうでは、ビリビリの僕の服を着ていた美鈴と小悪魔が泡を吹いて痙攣を起こしながら気絶していた。

相当なダメージを負っていたようだ。

取り合えず、休業中という看板を外に建て、

変な状態となっている少女達を、店の奥へと運んだ。

紅魔館の四人は、しばらくすれば帰った咲夜が持って帰るだろう。

……今日一日は、掃除する必要がありそうだ。

霊夢はもっと凄い状況になっている。帰らせた方が良さそうだな。

『…………はぁ。』

僕は溜息を吐いて、体育すわりをして本を読んだ。

いつの間にか半裸になっている魔理沙が眠っていた。

気付かなかった。机の影になっていたからか。

『香霖……ムニャ』

幸せそうな寝顔で、僕の服を掴んだ。

困った。これでは動けそうに無い。

手が緩むのを待つまで、ここでしばらく大人しく本を読もう。

今年のバレンタインは、散々な結果だった。

『……バレンタインなんて、嫌いだ』






〜蛇足1〜

ボロボロになっていた幽香が、泣きながら僕の元へと歩み寄ってきた。

こうして見ると、小さな子供が泣いているようだった。

『ひぐ……ぐす…』

この様子だと、酷い目に会ったようだな。自業自得だ。

『………店主さん…。私の事、嫌いですか…?』

『少なくとも今回の事件で、好きでは無くなったな。』

『あう……』

更に傷を深くしたか。だが、反省してもらわなければ困る。

これは、僕のエゴなのだから。

『…それに、媚薬なんかで生まれる恋愛というのは、偽者な感じがする上に不純だと想う。少なくとも僕は、そんな恋愛は認めない』

『……ちょっとした出来心だったのよ。』

そもそもその媚薬は、どこから手に入れたのだ。

魔理沙達が作ったのは、処分させた筈だが。

『……まぁ、今回は散々な目に会い、君の事は好きでは無いが、嫌いでも無いよ。』

そう言うと、幽香は静かに僕の方へと向いた。

『………え?』

『だから、次の年は変な物を入れずに普通に美味しいチョコを貰いたい物だ。勿論君のもね。』

僕がそう言うと、再び幽香は俯いた。

そして身だしなみを整え、自分の荷物と日傘を持った。

『……それは嫌よ。』

『何?』

まだ懲りていない……のか?

『普通に美味しいチョコなんて、そんな物作らない。普通じゃ有り得ない位、美味しいチョコを作ってきてあげるわ。来年はね』

悪戯のような笑顔で、幽香はそう言った。

少なくとも、昨日の黒い笑顔はどこにも見当たらない。

『ああ。来年が楽しみだ』

僕はそう言って、彼女に手を振った。

幽香も手を振り替えして、店の入り口まで歩いて行った。

『ん………香霖……?』

丁度、魔理沙が、起きたようだ。

そして直に、自分の格好に気付いた。

『うん?……ええ!?』

急に顔を真っ赤にさせて、肌の露出を両手で隠した。

僕は自分で羽織っていた上着を脱いで、魔理沙に渡した。

『あ』

魔理沙は、その上着を取ると、すぐさま僕の上着を来た。

ちょっとだけ照れながら。

『さて、今日はここに居る全員、働いて貰おうか』

僕は、黒い目で魔理沙を睨みつけた。

『こ……香霖…?』

僕はまだ、魔理沙を許していない。

それに、店の中を派手に壊した全員、帰すつもりは無い。

元通りになるまで、タダ働きしてもらおうか。

僕は無言で、先ず掃除を行い、全員が起き上がるまで監視した。





〜蛇足2〜

『霖之助さん!』

『霖之助!!』

全員で店の掃除とリフォームを行っていると、アリスとパチュリーが店の中へと来ていた。

『どうしたんだ?今日は見ての通り、休業だけど…』

僕がそう言うと、二人は一斉に小箱を僕の前に差し出した。

『こっ…これ!』

『昨日……渡し損ねちゃったけど……』

バレンタインのチョコだった。

渡し方からして、分かった。

『ああ……ありがとう。』

しばらく、バレンタインの事は思い出したくないのだが

これはこれで、ありがたく頂いておこう。

『じゃ……それじゃぁ!!』

『あっ!おい待てアリス!パチュリー!!手伝え!!』

魔理沙が何か言っていたが、僕は無視したし、当然二人も無視していた。

『…ふーん。モテモテだな、霖之助』

慧音が、睨みつけるように僕を見ていた。

そう言えば彼女のチョコは余り美味しくなかった。というかチョコに鶏肉を入れるな

取り合えず、僕はチョコの包容を開けて、中身を確認した。

見た目的には普通のチョコだ。それは認める。

臭いも、今の所何も無い。

昨日の事もあってか、このような事は過剰になっていた。

何の変哲も無い、普通のチョコだと思っているのだが、一つ疑問がある。

どうして二人は、店の外から期待するような眼差しでこちらを見ているのだろう。

僕の自意識過剰なのか、それとも策略なのか

疑問を感じ、僕はチョコを一つ摘んだ。

『ほら、霊夢。アーン』

『えっ!?良いの!?霖之助さん!!!』

霊夢が、また輝いた目で僕を見つめる。

そして、また僕の指ごと口に入れて、チョコを食べた。この食べ方はなんとかならないのか。

最初の方は、ただモグモグしているだけだったが、しばらくして様子が変わった。

顔が赤くなり、モジモジし始めたのだ。寒いというのに汗も流れ出ている。

『ひやっあっああん…!』

なにやら、変な掛け声までも出しているようだ。

ガシっと僕は、彼女の手を繋いだ。

『ヒャッ!!』

彼女は悲鳴のような声をあげて、ヘナヘナと地面に落ちるように倒れた。

『お…おい!大丈夫か霊夢!』

慧音と魔理沙が心配するように霊夢に近づく。

……やはり、これも媚薬入りだったか。

先程居た二人の方をもう一度見ると、もう既に二人は居なかった。

逃げたようだ

…………とりあえずこのチョコは、金庫にしまっておこう。

『…………はぁ』

そう思い、僕は掃除を続けた。







これが、僕のバレンタインデーでの出来事だった。
pixivの某さんたすいっちを元にした三次創作です。
ピクシブからの転載ですが、加筆、修正をある程度しました。
楽しんでいただけたら幸いです。
ND
作品情報
作品集:
8
投稿日時:
2013/06/30 04:02:11
更新日時:
2013/07/01 00:28:47
評価:
3/4
POINT:
330
Rate:
14.20
分類
森近霖之助
霧雨魔理沙
アリス・マーガトロイド
パチュリー・ノーレッジ
現代入り
媚薬
簡易匿名評価
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POINT
0. 30点 匿名評価
1. 100 名無し ■2013/06/30 19:02:27
元ネタの方のバレンタイン話も面白かったけど、こちらもなかなか。
モテ方が尋常じゃない、さすが一級フラグ建築士だ。
2. 100 NutsIn先任曹長 ■2013/07/03 22:07:14
原作の二次創作(って言うのか?)の、ニブチン霖之助を台風の目としたラブコメの大惨事、いや三次創作、堪能致しました。
この作品に登場する東方少女達は、頭と心を病んでいるとしか思えん積極的なラブラブ攻撃を霖之助にしますね……。
もう、彼女達が差し入れる飲食物は口に出来ん……。

あなたの執筆される、ダークなおとぎ話風英雄譚も良いですが、こういった暴走恋愛物も期待させていただきます。
4. 100 名無し ■2013/10/30 20:49:21
ガツガツしないからかな。何かこの霖之助のモテ方が納得できる。
何か、グロも何も無かったが、普通にドタバタコメディで面白かった。
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