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『臨死体験』 作者: ギデオン・ニル
僕は森近霖之助、香霖堂の店主をしている。
確か、僕の記憶が定かであれば、僕はたまたま霊夢に呼ばれ、宴会に付き合っていたはずだ。
あまり酒は浴びる程飲まないが、魔理沙や霊夢に是非にと言われてしまうとこちらも弱い。仕方なく、僕は店の戸締りをして宴会先である博麗神社へと足を運んだと思う。
だが、今僕の目の前に広がっているのは違う風景だ。確かに目の前にあるのは博麗神社の境内でもなんでもない。狭くもなく広くもない石造りの薄汚い部屋だ。そして僕は丁度真ん中にある木のテーブルに着いて、今にも壊れそうな椅子に座って思考を巡らせていたのだ。
僕の視線はすぐ近くのテーブルの木目を注視していて、どうしてこうなったかを考えていたのが、やはり検討がつかない。
実際何も危害は加えられてもないし、そこまで困窮した状況ではないのだろうが、やはり何故こうなってしまったのかは気になるところではある。しかし情報があまりにも少ないし、僕は1分前に目を覚ましたのだ。
分からない事だらけだし、これからも分からないのかもしれない。もしかしたら僕は酔いつぶれてしまって同席していた誰かの家で寝かされていたのかもしれない、それならすまない事ではあるが、椅子にそのまま突っ伏させるのもどうかと思う。
いや、この場合は僕があまりにも酔っていて突っ伏してしまったという可能性もある。
それならこのぼやけた視界と思考の説明がつく、それ程まで僕は酔っていたということなのだろうか、久しぶりの酒席でついつい自制がきかなかったのか、それとも魔理沙か誰かから浴びる程飲まされたのか、しかし記憶が無い為にそれについてはこれ以上追求出来ないだろう。
僕の視線がようやく他の方向へと向いた。意識が戻った時は周りしか見ずにすぐに木目しか見ていなかったが目の前に視線を動かすとそこには人が居た。テーブルは四角い作りになっていて、自ずと4人しか椅子は座れない。そして僕の他に3人きっかり座っていた。
声を出そうとしたが、何故か声が出ない。酔いすぎで言葉を発する事すら出来ない自分を頭の中で苦笑したが、他の3人も無言のままテーブルを見ている。1人1人の顔を見ると、それは見知った顔だった。1人は霊夢、もう1人は魔理沙、もう1人は東風谷早苗とかいう最近こちらに来た巫女だったと記憶している。
彼女たちをくまなく観察しているとある事を発見する。彼女たちはテーブルを見ているのではなく、テーブルで組んでいる腕の片方で何かを握り締めているのだ。それは1人1人枚数が違い、霊夢が2枚、魔理沙が3枚、早苗が4枚各々握ってそれをじっと見ていた。
考えてみれば自分もそれを握っている事に今になって気づく。僕は右手で3枚の少々ボロい紙束を握っていてそれらには独特の絵が描かれていてそれらには規則性のある数字を示しているようだ。
頭の中にその紙束が何であるか入ってくる。これば僕の能力で道具の名前と用途が判るというもので、それによるとこの紙束は「トランプ」というもので、用途は「多種多様な遊戯用の玩具」らしい。つまりは、この「トランプ」というもので何らかのゲームをするという事だろう。だが、僕はこれを初めて見るし、やりかたも分からない。そして他の3人も何故握っているのだろうかも分からない。
何か鐘のような音が鳴った。僕はその音で向かい側にいる魔理沙の後ろにある石の壁に何かが描かれている事に気づいた。幸い眼鏡は壊れていないし視力は万全だ。壁に描かれたそれは握っているトランプでやる一種の遊びについての簡単なルールと遊び方に関するものであった。
進行中か分からないが、今行なっているものは「ブラックジャック」というものらしく、何でも手に持っている紙束の数が"21"に近ければ近い者が勝者になるというものらしい。絵柄が描いてあるものと10という数字は同じに等しく、他のものはその描かれているマークの数がその数に等しいという事もそこで理解が出来た。
真ん中にあるのがトランプを集めた「デッキ」というもので、絵によればここから引くか引かないかを選択出来るそうである。なお"21"を超えた場合は、ダメらしい。誰もが考えそうな遊びであるが、中々奥深そうな遊びのようだ。僕には弾幕ごっこなんてものは出来ないし、こういうスマートな遊びの方が楽しそうに見える。
そうこう考えていると若干ながら思考も視界も安定してきた。いつもの僕に戻りつつある。
未だ誰も喋らないまま時が過ぎていく。誰も時が止まったかのように動かない為、僕だけがゆっくりと周りを見たり手札を見たりあれこれ考えているようになっている。
試しにこのゲームをやってみるとしよう。という気に僕はなった。どうにも退屈であるし、この遊びを覚えておけば後々皆に教える事も出来るからだ。と、僕は手札の合計が13である事を確認して、手札を補充する為にデッキに手を伸ばし、一番上の1枚に触れる。手が少し震え、中々取るのが難しかったが、苦闘の末にそれを手札に入れた。
新しく引いたカードは"4"で合計すれば17になる。中々深い遊びだと関心無く思っていたが、やはり難しい。この場合17であり21まで4足りない。17でも充分であると思うが、この4の差が勝敗を分けるのではないかと僕は思考を巡らせる。そして21を目指そうと新しく追加のカードを得ようとするが失敗して21を超えるという事もありえるし、その判断をどうするかがこのゲームをゲームとしての重要な要素なのだろう。
そうこう考えていると、僕の右に座っていた霊夢がいきなり手を伸ばし出した。それに僕はひどくびっくりした。人形のように止まっていたのだからそれもそうのだが、普通は生き物なのだから動いているのが当然で、今まで何故止まっていた方がおかしいのである。
そして次に対面の魔理沙が続くように霊夢と同じように手を伸ばした。そして早苗も後に続く。こうやって一巡し、僕の出番がやってきた。この場合どうするべきかかなり悩む。しかしこれ以上数字を引き上げてもリスクの方が高い。そもそも僕は何でこんな事をやっているのだろう。不思議になりながらもこの初めてやるゲームを僕は楽しんでいるのだろうと思っていた。誰も声を発しないし、誰もが無表情だ。
思考をそこで止めて、取り敢えず僕は現状の手札で止める事にした。絵によれば決まれば手札を公開しても良いらしい。それに従い僕は手札を公開する。しかし誰もがそれに対してどうも思ってないように表情が変わらない。この場合は次は霊夢の手番だ。
今の霊夢は何を考えているか分からないが、少しだけ時間が経った後、手札を公開した。テーブルに置かれた手札の数字の合計は"20"だ。この場合は21に近い方が勝ちであるので僕の負けである。しかし絵には続きが書いてある。なんでも複数人である場合は最下位が敗者であるという事らしい。だから現状では最下位であるが、後の2人の手札次第では最下位ではなくなるのだ。
他人の出方を期待するのはあまり好きではないが、僕はこういう勝負事であまり負けてたくはない。まぁ男の意地というよりは単に性格なのだろう。
対面の魔理沙も手札を公開する。その数字を見て僕は落胆する。魔理沙が並べた数字群の総数は"18"であった。1足りない訳である。僕は最後の相手である早苗の手札の数に賭けるしかない訳だ。
早苗が手札を公開する。テーブルにぱさりと落ちたばらついたその手札の総数をよく確認すると21を超えていた。辛くもという感じではあるが、僕は一応3位という立ち位置で勝利を収めた。
着順が決まったと同時に早苗がいきなり立ち上がった。僕はびくりとし、立ち上がった早苗を見た。無表情でああったがその目には涙のようなものが見えた気がした。しかしそれを確認する前に早苗は背を向き霊夢の方へと歩き出した。視線を移すと霊夢の後ろには赤く塗られた扉があった。その色は赤というよりも黒に近い部類の赤であった。どう形容していいか言葉には表現出来ないが、ともあれ早苗はその扉を開け、中へと入っていった。
早苗が消えて、部屋は3人になった。早苗が消えた後1分程の静寂に包まれ、霊夢がテーブルに置いてある紙束を集めだし、デッキを切り直し、1枚づつ皆に配った。
ゲームを再開するらしい。僕は自分に配られたカードを手札にし、数字を確認した。赤のそれは"10"を表していた。次の手札次第では21にぐっと近づく事が出来る中々の初手だと思う。霊夢と魔理沙が1枚追加で引いた後、僕は同じ様に引いた。引いたカードは"8"で、前回と比べれば1増えた18となった。21まで残り3しかない訳だからこの手札でも充分に勝負出来るだろう。僕はこれで行くことにする。その決心を霊夢は察したのか霊夢は追加でカードを引いた。魔理沙は引かなかった。
僕がカード公開する。
霊夢が公開する。
魔理沙が公開する。
僕は急ぐように2人の数字を確認する。霊夢が立ち上がった。
重くドアを閉めた音が聞こえた後、部屋は魔理沙と僕の二人となった。
座る者が居なくなったテーブルの数字は21をゆうに超えていた。最後にカードを1枚引かなければギリギリ大丈夫だったのだろうが、それでも僕の18には勝てずに魔理沙の20には勝てない。霊夢も悩んだのだろうが判断に悩む事は僕にもあるし当然だと思う。
霊夢が居なくなって魔理沙が霊夢がやったようにデッキを集めて切り直し、僕と自分へと1枚づつ配った。
手札を確認する。
なんとも微妙な数字であった。配られたカードは"4"で次のカードでどう頑張っても14にしかならない。しかし引かなければ次には進めない。魔理沙が引いて、僕が続くように引いた。
次に引いたカードは"2"だ。合わせて6である。まだ余裕があり、次も引く。今度は"8"だ。これで14になった訳なのだが、これはかなり難しい。次に引いたカードが8以上であった場合、必然的に僕は負けるのだ。だが魔理沙はもうカードを引かなかった。つまりはそれなりの手札になった訳だ。
決意して、僕は引いた。
確認するまでもなくカードを公開する。
魔理沙も公開した。
――――――
―――
―
きおくをかいそうする
宴会は行われた。
僕は霊夢と魔理沙に呼ばれて博麗神社に来た。
丁度その時空いていたのは早苗だけであった。
確かに僕は勧められるまま酒を飲んでいた。
4人しかいなかった為に、趣向を変えて博麗神社の中で飲むこととなった。
それからは覚えていない。
僕は目を覚ました。
「霖之助さん、大丈夫ですか?師匠、森近霖之助さんが目を覚ましました。」
「あら」
「大丈夫ですか?何処か痛んだりはしませんか?」
「いや、鈴仙、話しかけても無駄よ。」
「ですが…」
「聞こえているか分からないでしょうけれど、森近霖之助さん。事情を説明しましょう。貴方は確かに宴会をやっていた。ですが、夜中にやっていて霖之助さんを含めた4人は酔っていて思考能力が低下していたのでしょう。アルコールが一定量達すると酩酊状態に陥り、人は正常な判断をする事が出来なくなります。不幸な事にそこに居たのは人間ばかりで、貴方は半妖で若干ながら人間よりもアルコールに対して耐性があった。それが今貴方がそこに居る理由です。皆酔っていて台所の火事に気づかなかった。そして酩酊状態と一酸化炭素中毒になり………半妖である貴方だけは火災による火事には耐えれましたが一酸化炭素中毒による後遺症は………」
ぼやけた声を聞きながら、僕は一滴の涙を流した。
- 作品情報
- 作品集:
- 8
- 投稿日時:
- 2013/07/09 08:01:51
- 更新日時:
- 2013/07/09 17:01:51
- 評価:
- 4/6
- POINT:
- 430
- Rate:
- 13.00
- 分類
- ブラックジャック
生還するのに必要な何かが少なかった。
彼は、他の三人より、チョビットばかし、ツイていた。
ただ、それだけ。
遅刻もある程度はOKみたいですから、今からでもタイトルとタグにアレを付けたらどうですか?
勿体無い。