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『被食者の慟哭』 作者: NutsIn先任曹長
死にたくない。
死にたくないよぉ。
「や……ッ、やぁぁ……ッ!! 死ぬぅ……、死んじゃうぅぅぅ……ッ!!」
助けて。
誰か、助けてぇ。
「アヒィッ!! ガァァ……ッ!! あ゛……、だずげでぇぇぇ……」
死にたくない。
誰か、助けて。
ああ。
気持ち、良い。
「ぎんぼぢ、イ゛イ゛イイイイィィィィィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!!!」
私に、勇気を。
勇気を、ください。
妖夢。
「うどんさあぁぁぁぁあんんんっっっ!!!!!」
その日の恋人達。
鈴仙・優曇華院・イナバと、
魂魄 妖夢の逢瀬は、
いつになく激しいものだった。
死の恐怖に怯える者は、子孫を残そうとする動物の本能ゆえか、異常に欲情するという。
それが、人間同様に万年発情期の『兎』だったら――。
鈴仙は、死に怯えていた。
怯えは性欲の暴走を招き、
恋人の妖夢を『全身全霊』の崖っぷちまで追い込む、苛烈な陵辱劇を巻き起こした。
鈴仙が永琳より賜った、月の軍で使用している物と同等の気付け薬――複数回投与すると確実に死ねる劇薬――を使用したおかげで、妖夢は生還した。
二人は風呂に入り、かりそめの精液を洗い流した後、、バスタオルを腰に巻いただけの格好で壁に凭れ掛かっていた。
ぐしょぐしょに粘液に塗れた褥に戻る気は、二人には無かった。
妖夢は、あれほどの暴虐を働いた恋人の玉兎に寄りかかった。
鈴仙の股間はユルユルと勃起し、バスタオルを持ち上げたが、今は妖夢を愛おしいという気持ちのほうが勝っていた。
鈴仙は劣情を捨て、初心に帰り、恋人にするソフトな口づけを、妖夢にした。
妖夢の半霊は宙をたゆたい、一人と半人前の甘い一時を見守った。
鈴仙は妖夢に無体を働いた事を詫び、妖夢はそれを赦した。
慈母の笑みを湛える妖夢に懺悔するように、鈴仙は自身の恐怖を語った。
鈴仙が語り終えると、妖夢は半霊に愛用の二刀を持ってきてもらった。
妖夢は、すらりと抜き払った短刀――白楼剣の切っ先を鈴仙に向けた。
鈴仙は、目を閉じた。
一刀の元に、
妖夢は鈴仙を、斬った。
鈴仙の迷いを、絶ち斬った。
迷いの竹林。
突如現れた辻斬りが振るった長刀によって、
因幡兎の一人は、右足を切断された。
幻想郷で重鎮達を集めて執り行われる会合。
スペシャルゲストとして、月の都より綿月姉妹が招かれた。
表向きは、永遠亭に遊びに来る時の口実と同じ、流罪にした『罪人』と『亡命者』の視察のついでであるが、
これは、幻想郷は月にお茶目はしても『本当の敵対関係』にはないとの意思表示の意味もあった。
会合前日に幻想入りした綿月姉妹は、永遠亭に滞在した。
「幻想郷にようこそ、豊姫、依姫」
「永琳様もご機嫌麗しゅう」
「『公式』に幻想郷に招かれたのは、初めてですね」
綿月姉妹を永遠亭の敷地の一角に案内した永琳。
「だから、今宵は特別な晩餐と余興を用意したわ」
そこには、広大なプールがあった。
「これは……」
「『海』、ですか……?」
「御名答♪」
永琳は、かつての教え子の察しの良さに満足した。
「月にある水溜りなどではなく、正真正銘、穢れ――生命溢れる海水を満たした『海』よ」
いや〜、これだけの海水を八雲に頼んで調達するのに、月の技術を幾らか提供することになったわ〜。
などと愚痴る永琳。
「あら、あれは?」
「あれが、貴女達の『晩餐』よ」
プールの上で漂うゴムボート。
その上で震える全裸の因幡兎。
なんでこんな事になったのか?
因幡 てゐは、疑問と恐怖と失った右足の痛みに苛まれていた。
最初、永琳は月からの客人用の『晩餐』に、鈴仙を考えていた。
輝夜と永遠亭で平穏に暮らすことを至福としている永琳にとって、綿月姉妹を裏切ったペットである脱走兵の鈴仙は、癌であった。
永琳としても愛弟子を生贄兎にするのは心苦しかったが、綿月姉妹が献立に希望したこともあった。
永遠亭が、幻想郷が月と平和的な不干渉の関係を続けられるかが、今回の会合にかかっていた。
永琳は、生贄はほぼ鈴仙に決定している事を公言していたが、処置室に重症を負って運ばれてきたてゐを見た時、気が変わった。
死ぬ前に、筍ご飯が食べたい。
死刑宣告間近の鈴仙の願いを叶える為に、てゐは竹林の筍が採れる場所に向かい、そこに『待ち伏せていた』何者かに斬られた。
その時から、てゐのツキが堕ちた。
右足切断の重傷を負ったてゐ。
切り離された足があるなら接合は出来ただろうが、てゐの足は襲撃犯に持ち去られてしまった。
てゐを治療した永琳は、クローン培養で足を復元するよりも、彼女を生贄にしたほうが価値があると判断した。
確か依姫は以前、てゐの掘った落とし穴に嵌るという屈辱を受けて、それを恨んでいたっけ。
突発的に、永琳がその事を思い出した事も、生贄を変更した一因である。
幸運のお守り『兎の足』を失ったてゐは、幸運兎の神通力を失った。
海水プールの縁に立つ綿月姉妹。
世話係の因幡に武器や衣服を渡し、二人は美しい裸体を晒した。
二人は鏡写しのように揃ってプールに飛び込んだ。
水中に没した綿月姉妹は浮上しなかった。
代わりに、
黒い三角の背びれと、
無数の吸盤が付いた触手が水面に現れ、
ゴムボート目指して進んでいった。
「や、ああ……、いやぁぁぁ……」
今のてゐは、ふてぶてしい悪戯兎ではなく、水面に落ちたハエである。
水中の魚にパクリとやられる運命しか待っていない。
「助けてぇぇぇ……。お師さん……、姫様……、鈴仙……」
猛スピードで泳いできた鮫の背びれがゴムボートを跳ね上げ、
海上に姿を現した大王イカが、触手で片足のてゐを絡め取った。
血に飢えた鮫の顎とイカの目を見て、数秒後の己の運命を悟ったてゐ。
「嫌ああああああああああァァァァァァァァァァッッッ!!!!!
たずげてえええええええェェェェェェェェェェッッッ!!!!!
ダイコクさまあああああァァァァァァァァァァッッッ!!!!!」
かつて鮫に怪我を負わされたてゐを助けてくれた大国主命は、
神話の登場人物である淑女達の食事を邪魔するような無粋をしない、紳士だったようだ。
幻想郷内某所の料亭。
幻想郷の重要人物達の会合は、午前中で無事に終了した。
月からの客の登場に、レミリアあたりがイチャモンをつけるかと思われたが、特にトラブルは無かった。
「あらぁ、もう帰ってしまいますの?」
幻想郷の管理人、八雲 紫はわざとらしく、帰り支度を始めた綿月姉妹を引きとめようとした。
「ええ、幻想郷には平和を愛する方ばかりだと分かりましたので、速急に上に報告せねばなりませんから」
「霊夢、中途半端な神降ろしなどせずに、精進なさい」
「はいはい。依姫様のお説教、ありがたく頂戴いたしましたわ」
依姫の言葉に、ヒラヒラと手を振って答える楽園の素敵な巫女、博麗 霊夢。
「せめてお昼ご飯を食べていってくださいな。」
なおも、形ばかりの引止めを行なう紫。
「今日は土用丑の日ですから、精のつくお料理を用意いたしましたわ」
紫の言葉に怪訝そうな顔をする豊姫。
「えっ……?」
「お姉様、地上の風習ですよ」
「あ、あぁあぁ、思い出したわ」
「だいたい、それを私に教えたのはお姉様じゃないですか……」
内輪で何か話している綿月姉妹。
「ごめんなさい。やっぱり遠慮させていただきます」
申し訳なさそうに頭を下げる豊姫。
「もう、『う』の字がつくモノを食べましたから♪」
綿月姉妹が月に帰った後、
幻想郷では、内紛が勃発した。
豊姫と依姫に饗する予定だった、
ミスティア・ローレライが丹精込めて調理した、
特上うな重二人前。
だれがこの余剰の御馳走を食べるかを決めるため、
公正なる淑女の遊戯である弾幕ごっこが、バトルロイヤル形式で執り行われた。
実戦まがいの弾幕ごっこの果て、
最後に立っていた二名の勝者が見たものは――、
「「ごちそうさま☆」」
うな重を完食して両手を合わせる、
古明地 こいしと封獣 ぬえの、満足そうな笑顔だった。
土用丑の日ということで、急遽思いついたネタをば。
ちなみに依姫の獣化形態は、単なるシャレですから♪
2013年8月24日(土):コメントへの返事追加。
>県警巡査長殿
玉兎二人のハンディキャップマッチで負けたならまだしも、落とし穴を仕掛けたのが汚れた地上の因幡兎だとしった依姫の腸は煮えくり返ったでしょうね……。
争い事には、良くも悪くもちゃっかり者が得をするというのは、普遍の理です。
よっちゃん食品工業株式会社というイカの駄菓子を作っている会社がありましてね……。
>ギョウヘルインニ様
幻想郷の美少女達は、いろいろな意味で食われる食料娘(こ)♪
>海様
『あちら』では海は不浄のものとして扱われますから、このもてなしで綿月姉妹は存分に羽(というか鰭とか触手とか)を伸ばせたでしょうね♪
困った時の神頼み。だが、奇跡は二度は起きなかった……。
>まいん様
最後に縋ったのは、てゐが心からお慕い申し上げている神(オトコ)であったが……。
『う』そつき兎を屠ったうどみょんに幸多かれ!!
>5様
Yes,sir!!
>6様
兎美味し、かの海〜♪
NutsIn先任曹長
http://twitter.com/McpoNutsin
作品情報
作品集:
8
投稿日時:
2013/07/21 16:22:21
更新日時:
2013/08/24 17:16:16
評価:
6/6
POINT:
600
Rate:
17.86
分類
鈴仙・優曇華院・イナバ
魂魄妖夢
うどみょん
因幡てゐ
八意永琳
綿月豊姫
綿月依姫
八雲紫
博麗霊夢
土用丑の日
ほんでもって、ぬえとこいしちゃんは極上のうな重にありつけてよかったね♪
・・・ただ、あとがきで仰った「シャレ」というものが何なのか読み終わった後もどうしても気になって仕方がありません。
ダイコク様に助けを求めるてゐちゃんも可愛い。
そして、幸運の兎の足を手に入れた二人に幸あれ。