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『おねえちゃん。お水お水!喉が乾いた〜お水!』 作者: 戸隠
さとり!
あなたは、キスメ? え? 桶は? 桶はどうしたの?
アンタの妹に火つけられて燃やされたよ
また、あの子ったら
キスメはこいしを怒らせた。だから、桶に油をかけられ燃やされた。
喉が渇いたこいしが井戸の水をくみ上げたら偶々それがキスメ入りだったことが原因だ。
二人は眼が合った。合った瞬間にキスメは顔を殴られた。
「私は水を飲みたかったのにな〜」
「待って」
「どうして、邪魔するのかな〜???」
「怒らないで、話を聞いて」
「話なんて無いな〜」
命乞いをしようとするキスメだが、まるきり話を聞いてくれる様子の無い、こいしは怒っている。
「臥薪嘗胆って知っている?? 尖った枝で、嫌いなやつを突き刺して出てきた血を飲んで悔しさを忘れないようにするんだよ〜」
「それって、臥薪嘗胆の段階になる前に相手を制圧しているんじゃない?」
今の二人のように、実際、こいしはたいして強い妖怪では無いがキスメよりかは圧倒的に強かった。
「ふ〜ん、で? 臥薪嘗胆って知っているのか聞いているんだけど〜???」
「し、知ってる。……ごめんなさい。許して」
キスメがそういうと、家の桶が揺れだした。桶の上についているヒモを持っていたこいしが振り出した。
「別に、キスメが臥薪嘗胆を知ってようが知ってまいが関係ないんだけどね〜」
「やめて、振らないで! 桶酔いするからやめて!」
何年、釣瓶落とししてまいが、この横揺れにはキスメは慣れなかった。立て揺れ基本設計のキスメの桶は横揺れするようには出来ていない。
「臥薪嘗胆って知っている〜?」
「知ってる。知っているっていってるのに」
ちゃんと答えているのにこいしはさらに、ヒモを強く振り始めた。
「臥薪嘗胆って知っている〜??」
「何で、お願いもうやめて」
酔いがかなり回ってきたキスメは懇願するが、振りの勢いはますばかりだった。
「うるさいな〜。そんなことは聞いてない〜。臥薪嘗胆だよ〜」
「うええれ」
ついに桶酔いしたキスメは胃液交じりの井戸水を吐き出した。
「……キスメ。臥薪嘗胆しよっか」
「ごめんなさい。別にこいしにかけるつもりじゃなかったの」
こいしは、トゲトゲの多い枝を引いてキスメを桶ごとそこに連れて行った。
トゲトゲの上に寝るとね。肌が荒れるから、油で肌のケアをしないとね。
おっと、ヤニが切れたタバコ吸おう。マッチ箱から一本マッチを取り出した。
「手が滑って、油をかけた枝に落ちるよ〜。どうなると思う?」
「臥薪嘗胆?」
「残念はずれ〜。濡れた私の服を乾かすために火がつくのでした〜」
こいしは、燃え上がる、キスメの桶と枝で濡れた服を乾かして風邪を引かないですんだ。
するとどうだろう。やさしい気持ちになれて、キスメを開放してあげたのだった。
そういうわけで、さとりの妹のせいで家を失ったの。助けて。
よくそんなんで、キスメは火傷しなかったわね
桶から急いで抜け出したから
カタツムリみたいにくっついているわけではなかったのね
実はそうなの
……だったら、ナメクジみたいに家が無くても生きていけるのかと思うけど
何を言っているの?
キスメはヤドカリさんだったのね
ヤドカリって
ヤドカリをペットにする気は無いから
そんな、助けて
あんまりしつこいと、私もキスメに臥薪嘗胆しちゃうかもね
そんな、あんまりだ
おねえちゃん、キスメ見なかった〜?
あ、こいし
ヒィ!
キスメめっけ! 臥薪嘗胆の続きしよっか〜!
戸隠
作品情報
作品集:
8
投稿日時:
2013/08/30 13:21:41
更新日時:
2013/08/30 22:26:30
評価:
7/9
POINT:
730
Rate:
16.78
分類
さとり
こいし
キスメ
戸隠?
本当に戸隠?
ただでさえキスメの作品は珍しいのによく出来ていて面白い。
さぁ、臥薪嘗胆しようか。
この話は良かったよ。