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『悪魔』 作者: ひねもす
「小悪魔、おまえはなんで人間を堕落させないんだ」
「いきなりなんですか魔理沙さん」
「悪魔は神の永遠の敵対者なんだから神に似せて作られた被造物たる人間を穢し堕落させないと悪魔としての本分を果たしているとは言えないじゃないか」
「は、はぁ」
「おまえはなっていない、なっていないよ」
また魔理沙さんの発作が始まってしまった
魔理沙さんは人間なのに悪魔とはなんたるかという事を時々私に説きにくるのだった
正直うっとうしい
「悪魔がやらなかったら一体だれが人間を堕落させるっていうんだ」
「魔理沙さんがやればいいじゃないですか、ちょうど名前に魔がついてますし」
「悪魔がやらないといけない、これはこの世の始まりから終わりまでの永遠の決まりなんだ」
「魔理沙さん、お薬出しておきますね」
「私は病人じゃない!」
「目の焦点があってないし手が震えてますよ」
「私はヤク中じゃない!」
声を荒げて机を激しく拳で殴りつける魔理沙さんは明らかに気が触れていた
キチガイがキチガイであることを認識している事は有り得ないので魔理沙さんは本物のキチガイだと確信した
自己認識の欠如は奈落への道であると悪魔の私はよく知っている
故に悪魔は外的感覚である味覚、触覚、視覚、嗅覚、聴覚から人間をそそのかす、つまり外側の物に注目させて己の心から目をそらさせるわけだ
こうして己の過ちを正せなくなった人間達が堕落していくのを私達悪魔はにこやかに見送り地獄へと送り出すのだった
「何でもいいですけどもう絡むのやめてもらえますか、マイタケ臭いんです魔理沙さん」
「覚えておけよ、子悪魔!人間を堕落させない悪魔なんて何の価値も無いってな!」
そういって魔理沙さんはきのこの森に帰って行った
しかし、悪魔の本分か、魔理沙さんの言う事にも一理はあるだろう
私は随分この幸福に溢れた生活に慣れてしまったのかもしれない
生活というのは思想、信条、本分というものさえ変えてしまうのだろう
悪魔としては怠惰、なのだろうな、まぁ悪魔だし怠惰でも別にいいか
本の整理をしながらそんなことを考えていた
そうこうするうちに日もすっかり落ちて我らが悪魔の時間がやってくる
その悪魔全盛の時間に私は床につくのだった、やはり、怠惰である
朝、目をこすりこすり起きると隣にパチュリー様が座っていた
頬をかすかに染めながら柔和な眼差しをこちらに向けている、私の一日で一番好きな時間だった
「おはよう小悪魔」
「おはようございます、パチュリー様」
「今日も、可愛いわ、小悪魔」
目を潤ませうっとりとした表情で毎日これを言うので私は幸福感に包まれざるを得ないのだった
これが私を変えた一因、いやおもな理由だろう
いつからこうなったかはもう忘れてしまった、時間感覚など寿命の短い人間にとっては重要なものだが私たちにとってはさして重要なものではない
余るほどあるものを有難がるなどあり得ない、それが希少だから価値を持つのだろう
価値が相対的であることを忘れさせ人間に自身の無価値さを信じ込ませて精神を破壊する日々は甘美であったが遠い昔のことだ
今は一人の少女の心を独占しているだけで私は十分だった、有象無象の人間達をたぶらかすのは別の悪魔がやればいい
破壊は作る者がいなければ出来ないのだ、悪魔の得意とする破壊は存在を前提としている
そしてその存在を作り出すのは神なのだから、私達は一から百まで神の手のひらで踊っていると気づいた時もう悪魔であることを半ばやめたのかもしれない
悪魔で在れるのも自己欺瞞をしている間だけだと私は気づいたのだ
「小悪魔、あーん」
「あーん」
「おいしい?」
「とってもおいしいです」
「良かった」
心から嬉しそうに笑う少女、いつまでも変わらない
夢の中にいるようでとてもふわふわとした現実、やわらかなパンケーキ、ワインにとける朝日、揺らめく髪
永遠は今ここにある、ここに
おわり
虚無感を埋めるのは永遠への夢想だった
永遠への夢想こそ虚無感の根源だった
ひねもす
- 作品情報
- 作品集:
- 8
- 投稿日時:
- 2013/09/22 16:07:56
- 更新日時:
- 2013/09/23 01:07:56
- 評価:
- 4/4
- POINT:
- 380
- Rate:
- 16.20
- 分類
- 小悪魔
- 魔理沙
- パチュリー
あと魔理沙、ウザい。
舞茸臭いって……。
パチュリーを堕落させて満たされているのなら。
コアちゃんどうやってパチュリー様堕したんだろう。