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『ねえ、コア。赤城山の紅葉が見たいわ』 作者: ギョウヘルインニ

ねえ、コア。赤城山の紅葉が見たいわ

作品集: 9 投稿日時: 2013/10/13 10:02:23 更新日時: 2013/10/13 19:02:23 評価: 7/10 POINT: 760 Rate: 15.70
「酔った」

「パチュリー様、どうしました?」

「コア、酔った」

「頂上まであと少しです。窓、開けますから。我慢してください」

「無理、吐きそう。気持ち悪い」

「ちょっと、待って下さい」

「待てない。出そう。さっき、食べた物産展の焼きソバ吐きそう。戻ってきそうソバが」

「だから、言ったのに。これからはカーブが多くて車に弱い人は大変だって」

「……コア、後悔後に立たずよ」

「いや、そんなこと、言われても」

「コアのせい。全部コアが悪い」

「わかりましたから、吐かないで下さい」

「儚い? 今の私そんなに儚い?」

「ああ、駄目だ。この人」

「吐かないって言いたいんでしょ? 私そんなに耄碌してないわ」

「じゃあ、儚いって言ったのですか?」

「さあ、ああ、さああ、気持ち悪いから、気を紛らわそうってうっぷ」

「待って、待って下さい。今は、9合目、頂上まであと少しですよ」

「9合目? そんな、こんな責め苦を後一合も味わえって言うの、コア、貴女は鬼よ」

「いえ、私は小悪魔です。……思い起こせばとても前のこと、、、」

「コア! 前を見て!」

「いや、見てますよ。うん、見てます」

「……うっぷ。もう我慢できない」

「ああ、分かりました。見ます。前見ます。前方不注意、事故の元。私の馬鹿! ありがとうございます。パチュリー様」

「……うぅ。ありがとうございます。パチュリー様に気がこもってない。吐きそう」

「ありがとうございます! パチュリー様!」

「うぁ! ああ、よかった。少し気持ちが楽になった」

「それは良かったですねえ」

「! だめええ。今の駄目! 気持ちがこもってない! そんなんじゃ、戻ってくるわ」

「ええ? 駄目っていわれても」

「吐きそう。ちがあう。ちょっと、出た。奥からちょっとすっぱいのでた」

「……ははは、なんていえば良いんでしょう?」

「何? その乾いた笑い? そんなにニヘラニヘラしてそんなに私が苦しむの見たいの? ……これ、凄く苦しいの。気持ち悪いのに」

「え? そんな」

「コアは知らないかもしれないけれど、車酔いの苦しさは尋常じゃないのよ。お産に似ているそれは、地獄の釜をひっくり返したような苦しさとねっとり感があるの」

「うえ? 地獄の釜ですか?」

「そうよ、この感覚、コアの後頭部に吐くまでなくならない」

「やめて下さいよ。そんなことされたら、今日の営業できなくなります」

「コアは、私よりも営業が大事なの? そんなに、私に吐いて欲しくないの? 車酔いで苦しむ私にそんな苦行を要求するの?」

「あの〜、車一回止めて。外で新鮮な空気吸いましょうか?」

「駄目よ、外は赤城の吹きさらしよ。こんなところで外に出たら。喘息の発作が出るわ」

「っち」

「今、舌打ちした?」

「してませんよ。そうですよね。外は、埃雑じり秋風。身体に良くありませんね」

「そうよ。わかってるなら。ちゃんと、考えてから言いなさい」

「申し訳ありません」

「分かったなら、いいのよ。少し、吐き気もおさまってきた」

「よかったですね。それに、頂上につきましたよ」

「ん、ありがとう」

「料金は6000円ですがパチュリー様からそんなに取れません。5000円でいいですよ」

「もう、そんなサービスしなくてもいいのに、5000円ね」

「昔からお世話になってますから」

「……どうしよう。コア、また吐きそう。うっぷ」

「え? 何ですか? せっかく、山頂まで来たのに。紅葉がとっても綺麗ですよ。そんなカバンの中ばかり見ているから吐きそうになるんですよ。さあ、顔を上げて外を見て下さい。吐き気なんて、きっとおさまりますから」

「……物産展会場でお財布落としたみたい」

「はは、もう一回物産展に戻りましょうね」

「嫌だ。くだりのカーブはもっと苦しいの。このままじゃ私はどうなってしまうか分からない」

「…………っち」

「やめて、発進しないで、もう駄目、このままじゃ」
 自慢の赤い髪に、焼きソバとすっぱいのが絡み付いて小悪魔は髪を早く洗わなくてはならない。車も掃除しなくてはならない。でも、嫌な気分ではなかった。後部座席で嗚咽を漏らす、パチュリーを介抱することに何かしらの快感を感じているのだろう。




 証拠に本当はエチケット袋が備えつけてあるのだが最後までパチュリーには秘密だった。
ギョウヘルインニ
作品情報
作品集:
9
投稿日時:
2013/10/13 10:02:23
更新日時:
2013/10/13 19:02:23
評価:
7/10
POINT:
760
Rate:
15.70
分類
小悪魔タクシー
パチュリー
物産展の焼きソバには棘がある
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0. 60点 匿名評価 投稿数: 2
1. 100 名無し ■2013/10/13 19:28:31
舌打ちする小悪魔可愛い
2. 100 NutsIn先任曹長 ■2013/10/13 19:57:31
赤城山って、自動車で頂上まで行けるのか……。
赤木の山も今宵限り……。
パチュリー弁護士、小悪魔助ける必要無いじゃね?
焼きそばと聞くと、厚木に住んでいた頃、B−1の富士宮焼きそばを食べようと、一時間ほど炎天下を並んだ事を思い出しました。
3. 100 名無し ■2013/10/13 20:07:38
なぜ赤城なのか?
なぜ関東?
なぜタクシーは山に登るのか?
物産展に行くには今しかないでしょ!
4. 100 名無し ■2013/10/13 21:18:59
酔い止めを忘れてはいけない(戒め)
5. 100 名無し ■2013/10/13 22:15:31
ソバ・アゲイン
6. 100 名無し ■2013/10/13 22:40:52
私もついさっきまで山道で酔い、目的地ついてから
断念して帰って来ました! このパチュリー 見てたら私もまたヤバくなってきました! !わーい!
8. フリーレス 名無し ■2013/10/22 21:48:12
ソバがかかったコア、パチュリーはどう思うのか
いやあギョウヘルインニさんの作品は最高ですな
10. 100 ふすま ■2014/06/10 18:15:28
まぁ、確かに山道を車で行くのは車酔いしなくてもキツいです
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