≪ 第一話 非公式だと色々と美味しいらしい ≫
【モコモコ王国 国内(慧音宅)】
「くそう! 今回もオリンピック招致できなかったモコ!」
「その自信はどこから来るんだ?」
「そもそもこの国の知名度が低すぎるのが原因モコ!」
「里でも10人くらいしか知らないもんな」
「輝夜抹殺のためにも、モコモコ王国の国力増強は必須。今回は輝夜抹殺は後回しにして知名度アップを図るモコ!」
「ひっそりやってた方がいいんじゃないか?」
「というわけで、手っ取り早くゆるキャラで一山あてることにしたモコ。これが原案モコ」
―――――――【 モコモコ王国 非公式ゆるキャラ モコッシー 】―――――――
モコモコ王国の非公式ゆるキャラ。
輝夜への怨念が膨れ上がって生まれた魑魅魍魎。
輝夜を見つけると観客との交流も忘れて暴れ狂う。
右手の毒手は、昔忍者稼業を営んでいた時の名残。
幻想郷に来る前は、カブトガニを密輸して生計を立てていた。
座右の銘:世界を喰い潰す
―――――――【 モコモコ王国 非公式ゆるキャラ モコッシー 】―――――――
「国王が中に入ってるのに非公式なのか?」
「その方が色々と動き易いモコ」
「他にもいろいろと聞きたいことがあるが良いか?」
「どーんとコイモコ」
「なぜモノアイなんだ?」
「産廃読者は単眼フェチが多いからその層を狙ったモコ。口から出る触手も同様モコ」
「あと、中の人の頭がこの位置だと、腕はどうやって動かすんだ?」
「うるせぇ! もう作っちまったんだからゴチャゴチャ言うなモコ!!」
押入れから着ぐるみを引っ張り出す妹紅。
「どうやって作ったんだ?」
「河童に一晩で作らせたモコ」
「変な機能とかついてないよな? というか本当に出るのか触手?」
「それじゃあ早速巡業してくるモコ」
「ちょっと待て!? 本当にそれで行く気か!?」
「邪魔すんじゃねぇモコ! 瞬着!」
「うわっ!!」
着ぐるみの目から強い光がストロボ状に発射され、慧音の視覚と三半規管を一時的に狂わせた。
「うっお、この着ぐるみ、腕がまったく動かせねぇモコ。まぁ良いモコ。とっとと王国の知名度アップさせるモコ」
慧音が立ち直った時、家から妹紅と着ぐるみが消えていた。
「まぁいいか。どうせ死なないし」
【人里 大通り】
「それでは私達はこれで」
「失礼します」
命蓮寺の聖白蓮と寅丸星は、檀家の者達に深く頭を下げてからその家を後にした。
「聖がこころさんの異変解決に貢献したせいか、最近は我々の評判も良いみたいですね」
「私達の考え方に賛同してくれる方がもっと増えれば嬉しいのですが」
「檀家になってくださる方も増えていますし、この調子でいけば…ん?」
「どうしました星?」
「あれを」
星が指差す先、得体の知れない不気味な物体が里を徘徊していた。
「てめぇも輝夜を抹殺するコマンドーなりやがれモッコー!」
「う゛わ゛ーーーん!」
里の子供をアグレッシブな動きをしながら恫喝するモコッシー。
しかし。
「はいはい。妹紅ちゃん。まだ買い物の途中だから終わってからウチの子と遊んであげてね」
「も、妹紅じゃねーモコ。モコッシーモコ! 押すんじゃねーモコ」
子供の母親に身体を掴まれ、向いていた方向を変えられる。
「舐めたマネすんじゃねーモコ!」
早くも語尾が通常のものに戻る妹紅。
「またウチのお婆ちゃんを竹林の診療所に連れていく時はよろしくお願いするわね」
「待ちやがれモコ!」
追いかけるため、小さな足をよちよちと動かして方向転換した頃には、親子は遠くに行ってしまっていた。
「ちくしょおおお! この足が40ノットくらい速度の出るキャタピラだったらモコォォォ!」
「あの、もし。そこの妖怪さん」
「モコ?」
モノアイがすぐ目の前に立つ聖と星の姿を捉えた。
「うわあああああああ! 寺フォーマーズ!?」
「 ? 」
妹紅は仏教に(勝手な)因縁があり敵対していた。
「この姿じゃぁ退路はねぇモコ! 弱い奴から順番に掛かってきやがれモコ!!」
着ぐるみの中でボクシングのピーカブースタイルをとる妹紅。
「聖さがって。どうやら危険な妖怪のようです」
殺気を感じた星、武器は持って来ていないため、無手の彼女は虎爪の構えを取った。
「やめなさい星」
「しかしっ!」
「この子はただ怯えているだけ。必死に身を守ろうとしている。私にはそれがわかります」
白蓮は星に静止を促すと自らが前に出た。
「大丈夫。私は味方よ。辛かったでしょう? 貴方もきっとその姿のせいで沢山迫害されたのね」
「近づくんじゃねーモコ!」
「怖くない。怖くない。るーるるー♪」
着ぐるみを抱きかかえる白蓮。
「ぎゃああああああ! 捕まったモコー! 怪しい魔法でなんか違う生物に改造されるモコー!」
「怖がらなくて大丈夫ですよ。何もしませんから安心してください」
「バッタ系への改造だけは勘弁してくれモコ! あれはもう死亡フラグでしかないモコ! リオックはぁ! リオックだけはモコォォォ!」
パニックを起す妹紅は咄嗟に腕を振るう。
「聖危ない!」
「へ?」
「エメラルド・スマッシュ(毒手)!!」
間一髪、モコッシーの毒手が触れる前に、星が白蓮を引き剥がす。
「モッコーモッコーモッコー!!」
「ああっ! 待ってください!」
恐怖による限界を超えた動きで、モコッシーは大通りを駆け抜けた。
その姿はもの凄く気持ち悪かった。
【里の外】
「ここまでくればまぁなんとかなるモコよ」
「ぬおおおおおお貴様は!!」
「モコ?」
素っ頓狂な声を挙げた方を見る。
焼け焦げた妖怪の首を両手に引っさげた物部布都だった。
「そのおぞましい姿! 人々に厄災を撒き散らす悪鬼! そうであろう!? なぁ!?」
「…」
「…」
「続けろモコ」
「続きなど無い! 貴様をここで誅してくれようぞ!」
「待ってください!」
妹紅に追いついた白蓮と星。
「うおおお! 道教と仏教に挟撃されたモコ!」
「出たな生臭坊主よ」
「貴女、また罪の無い妖怪をッ!?」
「妖怪など総じて人間を害す存在! 罪無き者などおらん! 全て滅するが人の世の理!」
そう啖呵を切り、持っていた首を地面に捨てた布都はぐちゃりとそれを踏み砕いた。
「星、下がっていてください」
「殺したら駄目ですよ」
「殺すなんて物騒なことしません。ちょっと輪廻の輪に還すだけです」
【慧音宅】
夕方。慧音が買物から帰ってくると満身創痍の妹紅が横たわっていた。
「モコッシーとやらはどうなったんだ?」
「死んだモコ」
その後、争いの現場に駆けつけた神霊廟勢と加勢に来た命蓮寺勢が加わったことで状態は泥沼化。
妹紅は見事に巻き添えを受けた。
「お墓くらいはちゃんと作ってやれよ」
「そうするモコ」
≪ 第二話 実録! 今明かされる岩笠の死!(過去話) ≫
【富士山 5合目あたり】
「おらぁ死ねモコ!」
「危ねぇ!」
崖側を歩く岩笠目掛けて振るった妹紅の蹴りは虚しく空を切った。
「…」
「…」
「さて、先を急ぐモコ」
「おい」
「ちゃっちゃと蓬莱の薬を山頂で処分するモコ」
「待てよ」
「モコ?」
「今、俺のこと殺そうとしたろ?」
「 ? 」
左右を見渡す妹紅。
「お前だよお前。他の連中は全員死んだだろうが」
「どうしたモコ突然?」
「俺を蹴り落とそうとしたよな?」
「言ってる意味がわかりかねるモコ」
「惚けんじゃねーよ。威勢の良い『死ね』って声に咄嗟に反応してなきゃとっくに谷底だったぞ」
「幻聴モコ。きっと高山病による幻覚を見たモコ」
「高さ的にまだ発症しねーよ! 5合目だぞここ!」
「プラシーボ効果ってヤツモコ」
「次また怪しい動きしたら刺すからな」
「キモに命じておくモコ」
【富士山 8合目あたり】
「モッコいしょぉぉぉ!!」
「危ねぇぇ!」
崖側を歩く岩笠目掛けて振るった妹紅の蹴りは虚しく空を切った。
「…」
「…」
「さて、先を急ぐモコ」
「おい」
「あー腹へったモコ」
「オイ!」
「どうしたモコ? 雪男の足跡でも見つけたモコか?」
「今度は言い逃れできないぞ。今、間違いなく俺のこと亡き者にしようとしたな?」
「 ? 」
怪訝な顔をして自身を指差す妹紅。
「『え? 私がですか?』みたいな顔してじゃねぇ!!」
「妹紅が岩笠を蹴り落とす? これは異な事を申しやがるモコ」
「じゃあなんで両手を前に突き出してにじり寄ってきてんだよ」
「きっとそれは高山病で見た幻覚モコ。これだからもやしっ子の宮仕えは」
「コッチはバリバリの野外活動者だよ馬鹿野郎。三度目は無いからな」
「三度って仏気取るとかマジウケるモコ」
「あ゛?」
「なんでもねーモコ」
【富士山 10合目あたり】
「くたばれや岩笠ぁぁぁぁぁ!!」
「危っねぇっ!!」
崖側を歩く岩笠目掛けて振るった妹紅の蹴りは虚しく空を切った。
「…」
「…」
「さて、先を急ぐモコ」
「おい」
「あーなんか妹紅の勘だけど、この山あと1400年くらいしたら世界遺産に登録されそうな気がするモコ」
「オイ!!」
「何もモコか? ブロッケン現象にでも遭遇したモコか?」
「もう無理だ。本当に限界だ」
「それも幻覚モコ」
「さっきから執拗にスネばっかり狙ってきやがって。一撃で落とせなくってもこっちの機動を確実に奪うとか。綿密すぎるだろ」
「知らねーモコ」
「一人でいるところを拾ってやったていうのに、その恩を仇で返しやがって」
「うっせえ! 被害妄想もたいがいにしやがれモコ!!」
「ほー、とうとう開き直ったか」
「法廷で『レイプされそうになったから正当防衛です』って主張して逆にテメェを豚箱にぶちこんでヤルから覚悟しとけモコ!!」
「誰がお前みたいなガキ犯すか!」
「ナマ言ってんじゃねぇモコ! どうせ後から他の連中と妹紅を輪姦する魂胆だったに違いねぇモコ!!」
「俺は熟女派だ! 俺にとって女児なんざ犬っころと変わんねぇよ!!」
「JSと合法的に結婚できて、なおかつハメられるこのご時世に熟女好きとか生まれてくる時代間違え過ぎじゃねぇかモコ!?」
「お前にとやかく言われる筋合いは無い!」
「本当はロリコンなんだろモコ!」
「違うっていってんだろ! ああもうっ! 今回は特別に見逃してやるからここから先はお前が前を歩けよ!」
「そうやって妹紅を油断させる魂胆じゃねぇかモコ! 後ろから襲うつもりモコか!」
「いいから歩け! 殺すぞ!!」
その後、山頂付近で油断した岩笠は、
妹紅の 右フック → 左フック → ドロップキック のコンボによってその短い生を全うした。
・第1話の感想
ついにモコモコ王国にもゆるキャラが!?
毒手は原案では左手だったのですか?
喪骨子ー、短い生涯であった……。
・第二話の感想
モコたん、人間の頃から性格変わって無ぇ……。
岩笠さん、可哀想に……。
散々人間性を貶められて、最終的にそこに油断が生じたんでしょうね。
って単眼いやああああああああ
トガ
この勢い、モコモコである。
それはそうと、なぜかモコモコの妹紅は二頭身キャラなイメージがあったので、モコッシーの姿に納得してしまいました。
妹紅は赤子の時分からモコモコ言ってた可能性が存在する…? 微粒子レベルで。
2:もう、最初から右、左、ドロップで良かったんじゃないかなぁ?
モコモコ王国よ永遠なれ。