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『おねえちゃんからのプレゼント』 作者: 戸隠
おねえちゃんプレゼントって何?
ん?こいし、それはね。ネックレスよ
ネックレス?私にくれるの?
そう、ネックレス。それも大きいネックレスよ
本当に本当に?
ええそうよ。首にかけてあげるから眼をつぶって
こいしが眼をつぶると、背後に回ったさとりがネックレスをかけてくれた。
想像よりも重いネックレスだった。それに、なんだかゴム臭い。
「ねえ、おねえちゃん?」
「うん? な〜に? こいし」
「眼を開けて良い?」
「いいよ」
こいしは眼を開けてみた。
タイヤだ。黒光りするタイヤだった。
「これ。おねえちゃん。子供用自転車の小さいタイヤ?」
「そうよ。最近はタイヤをネックレスにするのが流行っているから、こいしにもあげようと思って」
「本当?」
「ええ、本当よ。……もしかして、私からのプレゼント嬉しくなかった?」
「そんなこと無いよ。うれしい」
つとめて、笑顔で言った、こいしだが、ちっとも嬉しくなかった。こいしだって、最近の流行を知っているからタイヤをネックレスにするのは知っている。
しかし、これはその流行に乗ったバッタ物だった。
それでも、大好きなさとりからの贈り物だ。少しは大切にしたいという気持ちはある。
「うれしい? 良かった。本当はね。自動車のタイヤを使うんだけどね。こいしには、ちょっと、大きすぎたみたいだから子供用自転車のタイヤにしたの」
「そういうことだったのね。おねえちゃん。おねえちゃんの気持ちはとっても嬉しい」
そういうことだったのかと、合点がいって、こいしは本当に嬉しい気持ちになった。
この、タイヤを本当に大切にしたい気持ちになった。
「そうだ。まだ、ガソリンを流し込んでなかったわね。ちょっと、気化熱で冷たいかもしれないけれど、後で暖かくなるから、がまんして」
「うん、我慢するね。おねえちゃん」
そういうと、さとりはガソリン臭いガソリンをタイヤの内側に流し込んだ。言われたとおり、ひんやりした感触が背中の辺りでぞわぞわしてなんだか不安になる。
でも、さとりは暖かくなると言った。こいしは信じていた。
「じゃあ、着火するよ。これで暖かくなるから」
「ありがとう、おねえちゃん」
さとりは取り出したマッチを適当にその辺で擦り火をつけた。その火で、ガソリンが漏れてるタイヤの端に着火した。
火はすぐに燃え上がり、辺りにゴムとガソリンが燃える臭いが黒煙と共に広がった。
「ぁつ? ぁぃねえちゃん。つい」
「こいし、どうしたの? そんな、こいしは暴れて、ちょっと熱すぎた? 顔色が黒煙で見えないからもっと、はっきり言ってくれないとわからない」
覚り妖怪のさとりは普段なら、思考が読めるから簡単に気持ちが分かる。しかし、こいしは残念なことに特別製だから思考が読めない。
姉妹に流れる覚り妖怪の血をさとりは呪った。なんとなく雰囲気から嬉しいのではと読み取る感じだけだ。
「ぁゅけて! ぉえ! たしゅえ」
「こいし? こいし? おかしいな?」
そんな、思考にさとりがふけっていると火の勢いはさらに増した。
辺りに漂う悪臭に何故か髪や肉の燃える悪臭が加わった。
そして、さっきまで元気だった、こしはその場で倒れてしまった。いまだに、顔が見えないからどういう状態なのかわからない。
火勢は強まる一方だったが、それに反比例して、こいしは動かなくなった。いや、服に引火してこいしは胸の辺りから居なくなり始めた。
「こいし? あれ? おかしいな。もしかして、気配を少しずつけしているの? こういうことは初めてね」
消えていく、こいしはもう言葉さえ発しない。
そうして、こいしは居なくなった。後には、焼け焦げた死体が一つとそれを見守っていた、さとりが1人が残った。
「あれ? おかしいな? さっきまで、こいしが居たのに、居なくなった。そんなに、私のプレゼントが嬉しかったのかな?」
さとりは、思うところ。こいしは嬉しくて隠れてしまったと思った。思考を閉じて気配をけしてだれにもさとられぬよう。嬉しすぎる気持ちを隠すために照れてしまったと思った。
喜んでくれて、さとりは嬉しい。こいしもお夕飯の時間になったら何処からとも無く顔を出すだろうから心配ない。
それよりも、眼の前には焼けているけどいつのまにか死体があるから嬉しい。とは言っても、さとりは死体を愛でる趣味は無い。これは多分、こいしからのお礼だろう。はにかんで、黙っておいていったに違いない。お燐にこれをあげれば喜ぶに違いない。
お燐の喜ぶ顔を想像すると、さとりは嬉しい気持ちになれた。早速、持って行くことにしよう。
ピギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
戸隠
作品情報
作品集:
9
投稿日時:
2013/12/03 12:25:52
更新日時:
2013/12/03 21:25:52
評価:
8/11
POINT:
800
Rate:
15.00
分類
さとり
こいし
これ、いつもの調子ならさとりとこいしの立ち位置が逆ですね。
戸隠はやはり二人居るか忍者なんだろう。
でもそれ、好きな人ではなく、殺したいほど憎い人に真心を込めて送る物ですよ。
さとりお姉ちゃん、うっかりさん♪
だからこいしちゃん、お礼にコロンビアネクタイをおねえちゃんにプレゼントしてあげよう。
「わーかったわぁーかったから、ハイッ、プレゼント!」
…なんか某映画のフレーズ思い出したわ。