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『冷蔵庫の中は空っぽだった』 作者: ギョウヘルインニ
蓄えていた食糧をきらせてしまった霊夢は紫を誘ってファミレスで昼食を食べることにした。
もちろん。全部、紫におごらせる算段だった。霊夢に誘われて紫はおめかししてやってきた。
「ねえ。私は、普通に和食を食べるけど、紫はやっぱり人間食べるの?」
「え?」
霊夢は店員に渡された、メニュー読みながらきいたから。紫がそのとき、ギクっとした表情になったのに気付かなかった。
自分で作り上げた幻想郷はいつのまにか人食い妖怪には住み難い世界になっていた。
「だって、紫って人喰い妖怪なんでしょ」
「そ、そうだけど」
「ねえ。紫はネアンデルタール人の刺身とか食べるの?」
刺身、馬刺し感覚の料理だ。無垢の頑強な人たちは、知らず知らずのうちに巻き込まれてそうなってしまう。
「え? 刺身? あったら食べるわ。でも絶滅種よ」
でも、やっぱり好物だから紫は食べるのだった。肉片を持参している漆塗りの箸でつまんで、口を手で隠しながら咀嚼し食べるに違いない。
お上品に食べるが、紫が食べるのは人肉だ。
「今日はね。メニューには書いてないけどあそこの壁に、ネアンデルタール人入荷しましたって書いてあるわ」
霊夢はファミレスに入ったときにそれを見つけていたのだった。
壁には、申し訳程度に小さくそう書かれている。
「……本当ね」
「生息地とか無視して、氷河が溶けて凍りつけのネアンデルタール人が出てきたんじゃない? ……幻想郷だし良くあることよ」
「マンモスじゃあるまいし」
感覚的にアイスマンのような状態になって、凍り付けになっていた感じの旧人類。
ただ、それは刺身なのでドライじゃない。みずみずしい状態で保たれている。
まるで、さっきまで生きていたように脈打っているかもしれない。
わかっていることは、眼から入ってくる情報のみ。それから、憶測するしか術はない。
「でも、食べるんでしょ? 一人前780円でお手ごろ価格よ」
「確かにお手ごろね。滅多に食べられるものじゃないし」
肉の味を想像すると紫は嬉しい気持ちになれた。紫は幸せだった。
こうして、公然と人肉を食べられるのいつ以来だろうかと思い出そうとした。が、思い出せたのは砂の大地が広がっていた位の時期しか思い出せなかった。
「じゃあ、注文するのね」
「そうね。注文するわ」
ピンポン!と注文しますよという意思表在するボタンを押すと、店員の、にとり、もしくは雛が迅速に現れて注文を聞きに来た。
最初は、紫が注文を言うのだろうと思った、にとり、もしくは雛は、紫の方を向いて注文を聞いたが紫は、なかなか答えなかった。
暫く紫は答えなかった。人肉を注文することを恥らっているのだった。
仕方なく、霊夢はにとり、もしくは雛に注文を伝えたのだった。
他に紫が注文した品より少し控えめに注文したのだった。
「ねえ、紫。私は感謝しているわ。お腹が空いて大変な私にご飯を奢ってくれるなんて」
「こんなこと大したことないわ。霊夢になら毎日奢ってあげても良いくらいよ。それに、今日だって私に遠慮して控えめに注文したでしょ」
「あら、紫はなんでもお見通しね」
「ありがとう」
「その、笑顔が見れた私も霊夢にありがとう」
注文が終わって、品物が来るまで二人は雑談を始めた。たわいも無い雑談、霊夢は計算どおりに紫が言うので始めは面白かったがだんだん飽きてきた。
そんな会話をしていると、注文の品をにとり、もしくは雛が持ってきた。
ネアンデルタール人の刺身は予想よりも新鮮に見えた。5切れで780円だったからとうぜんかもしれないが。
「さあ、霊夢。食べて」
全部の料理がそろうと紫は霊夢に食事の開始を促した。
「今日はありがとう。いただきます」
そして、霊夢はそれに答えてお礼を言った。この気持ちは本物だ。
「はい、どういたしまして、いただきます」
二人はそれぞれ注文した食事を食べ始めたのだった。
霊夢はありきたりな食事を注文しているから、ありきたりな気持ちで食べてる居ると正面に座る紫は出されたネアンデルタール人の刺身を食べ始めた。
”お上品な動作で”
「やっぱり、人肉は美味しい」
これは久しぶりの感覚、人食い妖い特有の快感が口の中を覆っている。
「良かったわね」
「本当に美味しい」
漏れる吐息が何故か無性に色っぽく。怖い。
「本当に美味しそうね」
「霊夢も一口食べる? きっと、好きになれるわ」
「……遠慮しておくわ。肉は。ダイエットしているの」
「もったいないわね。まあ、ダイエットなら仕方ない」
ダイエットなんて嘘だ。だが、霊夢は人肉なんて食べないし。食べたくなかった。
それから、二人は少し話ながらそれぞれの食事を食べたのだった。
「ご馳走さま。おいしかったわ」
「おいしかったのね。よかった」
紫は霊夢が満たされていることに満足しているらしい。
「……食べ終わった霊夢には悪いけど、私はおかわり食べるわ。ネアンデルタール人がおいしくて癖になりそう」
しかし、紫の食欲は満たされることは無かった。いつしか、お上品に口を隠すこともやめて紫は刺身を夢中にほうばって居る。
口の端からは、少し油に混じった血液が垂れているが気にしていないのか。気付いていないのか分からない。
「え? まだ、食べるの?」
「もちろんよ。じゃんじゃん食べるわ」
紫の眼には人食い妖怪のそれと同じ以上の肉食を好む色が宿ってた。
それにとっくに悟っていら霊夢がドン引きしていることに紫は気付くことなく、その後出されたネアンデルタール人の刺身をおなかいっぱい食べたのだった。
ファミレスの厨房で聞いた覚えの有る声が、悲鳴を上げている気がしたが霊夢は心の中で耳を塞いだのだった。
今日は、ファミレスで紫にご飯を奢ってもらった。それで、お腹いっぱいになった。それで良いと霊夢は思うことにした。
たとえ、明日に友人の1人がいなくなっても。
今回は、モンゴルの大草原に、魔理沙はほのぼのが有るのではないかと思いやってきました。
何処までも続く草原には家畜たちが無限に放牧されています。きっと、十重二十重に家畜達が並ぶ様はほのぼのしているに違いありません。
そのほのぼのは、空気に混じり、草原を漂っていると思ったのです。
今回も、旅には霊夢と早苗さん。そして、先頭から10馬身はなれたところに輝夜がいます。
10馬身という表記から分かるように今回は、4人とも馬に乗っています。やっぱり、モンゴルといったら馬だろうという魔理沙の考えが現実になったのです。
魔理沙は、ほのぼのしているからという理由でポニーに乗っていて、早苗さんは黒い大きな馬で霊夢は凱旋門某に優勝した馬です。
なお、輝夜が乗っているのはこれといったひねりも無く、普通に現地で借り受けた馬です。勝手に輝夜は尻尾の毛を手入れしてしまって後で弁償金求められるかもしれません。
それぞれ、馬に乗れるようになるまで結構頑張りましたが、その辺は割愛です。
「魔理沙さん、レアメタルがモンゴルにたくさんあるって本当ですか?」
「そうだぜ、早苗が欲しがっている、富がモンゴルにはあるぜ」
早苗さんが魔理沙に同行する理由、それはモンゴルの地下資源です。この辺りの地権者を騙して、土地を買いつくしそれで利権を得ようとしています。
魔理沙の思うところ、ほのぼのは空中を雲霞のように漂っている物ですから、お互いの利害が一致しました。
「頼むから、無駄なイザコザは起こさないでね」
霊夢は諦めていました。昨日の夜は確かに、神社の布団の中で寝たはずなのに朝起きたら大草原でした。全部、魔理沙の陰謀だとすぐに察し、冷めた気持ちでとにかく被害が少しでも減ることを願ってやまない少女ごっこなる状態です。
来たからには、お金は欲しいと思います。
社会科見学って、大人になったら何に役に立つのだろうか?
それは、人それぞれだと思います。輝夜は永琳に社会科見学に行って来るようにように言われてモンゴルの文化について見学中です。
「で、どうするんですか? ゲルでも襲いますか? 人質でもとっておけばその後の交渉で有利ですよ」
不平等ってすばらしい言葉を早苗さんは知っています。常に有利な側にいれば、1で10を得ることが出来るんです。
これほど、優雅なことって無いと思ってます。
「早苗はどうしてそんなに残酷なんだ。そんなことしたら、後味悪いだろ」
ようは後味の問題です。早苗さんは気にならない問題ですが、魔理沙にとっては後味が悪いのです。
「良いじゃないですか。後味とかそういう気持ちの問題ですよ。実益を取りましょう」
「これだから、現実主義の優雅は駄目なんだぜ。人々の絆のほうが、莫大な富よりも重要なときだってあるだぜ」
「結局それって、敗北主義者の遠吠えなんじゃないですか? ほのぼのでお腹は膨れますか?」
「馬鹿だな、ほのぼので腹は膨れることも知らないのか?」
「馬鹿は魔理沙さんじゃないですか」
ほのぼのと優雅は、交わることはやはりありません。お話が始まってすぐに仲間割れしそうです。
「あなた達は、そうやってすぐに喧嘩するのね。仲良くしろとまで言わないけれどもう少し何とかならないの?」
「霊夢、悪かったぜ。早苗、今回は私が身を引いてやる。ゲル襲って、お前の好きなようにやれ」
「……なんか、私が我侭みたいに扱われるのは心外なんで襲うのやめます」
私が我侭みたいには語弊があります。この話の登場人物はみんな我侭なんです。かわいそうなことかも知れませんがそれが事実、真実なのです。
「ねえ、不味いんじゃない? このまま、草原を放浪しても見つかるのは疲労だけなんじゃないの?」
もう、霊夢は、疲労という負の財産を懐にしまいかけていますが、まだそれほどではないので我慢していました。
ただ、草原の空気は埃っぽくて、お風呂に入りたい気持ちがいっぱいでした。でも、モンゴルには、水資源が余り無いのでお風呂には期待できません。
すこしでも、慰み物が必要だったのです。
「ごめんな、霊夢。私がほのぼの見つけられないばっかりに。そうだ。これ、ウランバートルで拾った現金だぜ。ほのぼのしてないから、全額霊夢にやるぜ」
魔理沙がウランバートルで現金を拾ったというのはうそで、実家のお金を死ぬまで借りてきていたのです。健気な少女なのですが話には全く関係ありません。
霊夢はそれを受け取ると、銀行券の一枚を御札のように持って、魔理沙に向かって”にひひー”と笑いました。
「霊夢が、現人神様が笑っている。もしかして、現金でほのぼのしたのか? 現金はほのぼのなのか?」
違います。これは、霊夢による。魔理沙に対してのサービスであり、こうしておけば金釣るが満足するのです。
「そうね。現金は、わたしが持っていればほのぼのになるわ。だから、魔理沙は私にお金をくれればいいの」
「分かったぜ。私がんばるから。霊夢はほのぼのしていてくれ」
「頑張ってね。期待してるから」
「あの、で? どうするんですか?」
早苗さんは二人のわけの分からない会話にはついていけません。辛抱出来ず、話を進めるために話かけてしまいました。
「よし、私は決めたぜ。ゲルを襲って、人質とって現金をふんだくるんだ」
魔理沙はお金がほのぼのになると分かってしまいました。もう、誰にも止めることはできません。
余りにも、理不尽なことでも、霊夢さえほのぼのしていればそれでいいのです。
「あれ? それさっきの私より悪化してませんか?」
「さっきとは、状況が変ったんだ。私がゲルの正面から、奇声をあげて中の奴等を誘き出す。そのうちに早苗は奴等の家族である羊を1頭残らず人質にするんだぜ」
とっても、簡単な陽動作戦です。それでも、勝ちを確信していた魔理沙でした。
こうして、作戦が始まったのです。後にこの作戦はインパール作戦といわれ後世に伝わるわけはありません。
「おい、ドルジ! 私が相手してやるぜ、その汚いマワシを付けてさっさとかかってこい!」
魔理沙はそう大声をあげました。基本的に、モンゴル人は皆相撲をたしなんでいるのです。これは、日本人が武道を会得していると勘違いされて居るのと一緒です。
「おい、出て来いよ! ドルジしてることはわかってるんだぜ」
しかし、まったく返事はありません。それどころか、人のけはいがありません。
「ねえ、もしかして、放牧にみんな出かけてるんじゃない?」
魔理沙の後を追って霊夢が来ました。正直のところ、ゲルを襲うとかそういう厄介なことはしないで欲しかったのです。
もっと、早苗さんを使って結婚詐欺とか偽薬の訪問販売等の穏便な方法で現金を獲得したかったのです。だから、止めに来たのでした。
「出かけてる? 確かに、そんな感じがするな。霊夢の勘は当たるから、そうなのかもしれない」
あっという間に、作戦は終了です。魔理沙の完全敗北でしたが、何かすがすがしい気持ちになりました。
霊夢の言ったことが全て正しいと思っているので、救われた気持ちになったのです。
まるで、神の啓示を受けた気持ちになりました。
「なあ、
ギョウヘルインニ
作品情報
作品集:
9
投稿日時:
2013/12/19 17:01:21
更新日時:
2013/12/20 02:09:41
評価:
7/7
POINT:
700
Rate:
18.13
分類
霊夢
紫
あとがきはぼつぼの
命を奪って自らの命とする。
だから皆さん、食事の時には感謝を込めて『いただきます』、『ごちそうさま』を言いましょう。
モンゴルの大草原で馬に跨り、モーゼルミリタリーを横撃ちする事。
これが私のほのぼのです。
神の掲示は、魔理沙の最後の言葉は……?
縁もゆかりも無い「ネアンデルタール人」なら尚の事自身の心象を誤魔化し易いです。
コメントすることはないはずだったのです
"にひひー"と笑ったってとこがなんか好き
相変わらずのあとがきの長さw