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『新年だよ産廃創想話』 作者: まいん
注意、このお話は東方projectの二次創作です。
オリ設定が存在します。
1、財宝の妖精
ドスッ!
「うげぇぇぇ」
「だからさぁ、言ってるだろ。 言葉理解できる? この馬鹿妖怪が!」
霧の湖の森林、そのとある木の周りに妖精達が怯えながら隠れている。
霧雨魔理沙はえらく機嫌が悪い。
その矛先になっているのが、妖精の中でも一際強い力を持っている大妖精であった。
「……だ、だから、そんな妖精いないんだ……げぇあっ!」
「嘘を吐くな! 金貨から羽ばたいていく妖精を見たんだって言ってるだろ!」
先程から蹲っている大妖精は魔理沙に良い様に蹴られている。
初めは妖精を虐めるつもりは無く、
財宝の妖精を見たから同じ妖精ならば知っていると思って聞きに来ただけであったが
知らない、居ない、の一点張りに腹を立てて今の状況に至った訳だ。
「そんなになってまで、どうして隠したがるんだ? あぁ?」
「何度も言うけど、そんな妖精は……ぎぁっ!」
げぇぇ、うげぇぇぇ、ビシャ、ビシャァァァァ……。
形容しがたい、大きな何かが潰れるとか、砕ける音が辺りに響く。
様子を心配そうに窺っていた妖精達が目を背け、いやぁ、と小さいうめき声が聞こえた。
魔理沙の硬い靴先が脇腹にめり込み、肋骨を何本か折られた大妖精は
押し出される空気と共に胃の内容物を吐き戻した。
当の魔理沙は大妖精の吐瀉物の臭いに眉を顰めるも特に罪悪感は無かった。
どうせ、死んだ所でまた復活する。 その程度の考えだ。
「あのさ、私も暇じゃない訳、お前が知らないならそこらの妖精を虱潰しにしても良いんだぜ? ほら、お前を見捨てて逃げる奴もいるしな」
「……はぁ、はぁ、うげぇぇぇぇぇ」
ここにチルノはおらず、魔理沙に対抗できる者は居ない。
それが、彼女を更に増長させている。
元より頭の幼い妖精達でまともに話の通じる者も大妖精以外には居ない。
それを解っていて魔理沙は言っているのだ。
「……はぁはぁ、どうして、その妖精の事を知りたいの?」
「んあ? 漸く話す気になったか? お宝が欲しいんだよ、それだけで欲しくなるのは当然だろ?」
大妖精の中で何かが切れた。
この人間は捻くれているが努力家で素晴らしい人物と聞いていた。
だからこそ相応の理由があると思っていた。
切れた音を聞いた頭は、考えた事も無い様な吐き気を催させた。
げぇぇぇええええ、うげぇ、げろろろろろ。
ビシャ、ビシャ、オロロロロ、ゴトン!!!
「うわっ、汚ねえな、服にかけんなよ糞が……んっ? 何だ今の音は?」
大妖精は息が切れ朦朧とする頭で吐瀉物の塊を何の躊躇も無く掴み上げた。
その塊は、チッチッと何かの時を刻んでいる。
なぜ、それが自分から出て来たとか、そういう事はどうでも良かった。
ただ、これが人間を殺すのには過ぎた力を持っている事だけは直感で理解できた。
「……そんなに財宝が欲しいなら、努力して地道に探せ! 穴を掘るとかなぁぁぁぁぁあああああああ!」
大妖精は魔理沙に、吐瀉物に沈んでいた物体を投げつけた。
円筒状の物体が三つ、時計と共に括り付けられている物体。
時計のメモリはほぼゼロである。
魔理沙は香霖堂で見た事があった、平和利用に開発された発破用爆薬の集合体。
ダイナマイトの存在を……。
「糞が……」
それが魔理沙の残した最後の言葉であった。
爆発、爆風、辺りに慌ただしい力を与え、
至近距離で爆発を受けた魔理沙は瞬く間に複数の肉片に変貌を遂げた。
勿論、同じ距離に居た大妖精も爆風を受けて
四肢は千切れ、目は飛び出し、臓器を辺りに散らばせながら消滅した。
爆風は辺りに二次的な被害を起こし、近い者は衝撃波で体がバラバラに千切れ、
少し離れた者は飛んできた枝や小石が体を突き抜けて消滅し、
離れた者は倒木などに押し潰されて消滅していった。
霧の湖の脇に大きなクレーターが出現した。
爆発がいかに大きかったかを物語っている。
その周辺から数日間、妖精が姿を消した。
だが、一日一日と妖精はその場所に戻って来る。
爆発ではげた草花も日に日に回復していく。
爆発でも物ともしなかった大きな岩に大妖精は腰を掛けて、友人の到着を待っている。
その脇にある小高い木の枝には今日も白黒の帽子がかかっており、帰って来るはずのない、主人を今日も待っていた。
2、アリス爆発
薄暗い室内に四肢を縛られた少女が居る。
人里で、人形劇を演じている、アリス・マーガトロイドだ。
白く透き通った肌、食い込む縄は白に赤みを持たせている。
右足首、右太腿。
左膝、左鼠蹊部。
右手首、右肘、右肩。
左上腕、そして左の二の腕。
首には服従の証、革の首輪が付けられ、両脇にも固定用の縄が掛けられている。
辺りが見られれば状況を理解する事も出来よう。
彼女の目には当然の事の様に目隠しがされていた。
体は涼しさを感じ、恐らくは衣服さえ纏っていないのであろう。
突然の事に驚きは隠せないものの、誰かに誘拐、監禁され、恐らくは事件に巻き込まれたのでは?
という結論に至る事は出来た。
身動きは取れぬものの、指先の自由は利く。
彼女は普段人形を操る為の魔法の糸を指先から伸ばした。
それを、触角の様に使い、辺りを探り始めた。
とその時である。
ドゴム!
繋がれている、右手首が爆発した。
「きゃあああああ!!!」
あまりの事に咄嗟に悲鳴を上げる。
痛みから逃避する為に、だらしない悲鳴を上げ続けた。
幾分かして、妖怪特有の頑丈さからか痛みが和らいでいく。
ドゴム!
今度は同時に二か所が爆発した。 肘と右肩が吹き飛んだ。
悲鳴は上がらなかった。
近くで見ているかもしれない犯人が愉悦に浸っていると思うと楽しませたくないと思ったからだ。
この状況で冷静な事を考えられると思うと、おかしな気分である。
彼女の予測は当たっていたのかもしれない。
痛いものは痛く、流れる血の暖かさを不快に思う事は間違いないが、可愛らしい悲鳴を上げなかった事が不満だったのだろう。
彼女の左腕が次々と爆発する。
左上腕に左の二の腕。
人形の様な透き通る絹の様な白い腕は両方とも失われた。
糸を紡ぐ指も新たな人形を生み出す素晴らしき腕も失われた事になる。
悲しい筈だ。 悲しい筈だった。 虚無感から絞り出される様な悲壮な声が出る筈だ。
彼女から声は出なかった。 口を真一文字に結び、痛みと哀しみに耐えていた。
犯人が居れば、これは面白くない。
彼女の声が心情が何かしらの表現が聞けなかったからだ。
爆発は続いた。
左の足先から、右の足先から、胴体に爆発は昇って来た。
右足首、右太腿。 左膝、左鼠蹊部。
合計四回に渡る爆発。
鉄面皮と言われても仕方が無い。 傍から見れば、そう思うだろう。
だが、目隠しの下から一雫が落ちた。
冷徹とも思われた魔法少女は、妖怪だが確かに血の通った人でもあった。
それを見て安心したか、それとも満足したか。
犯人と思わしき人物が足音を上げて近づいて来る。
失血から顔は血の気を失い。 脳内麻薬から涎は駄々漏れ、弛緩と恐怖から小水も漏らしている。
そのアリスの目隠しに手が掛けられた。
は、と犯人の顔を見たアリスは驚愕する。
本来、目のある位置には目よりも大きな縦の割れ目があるだけで左右に縫い付けられている。
口も、左右に大きく切り広げられ、耳まで達しようとしていた。
笑顔を作っているにも関わらず、与えられた印象は異形としか思えなかった。
「うふふふ、あははは、ひひひひひ、ははははは」
目の前の人物が唐突に笑い始めた。 どことなく知っている声が余計に不快感を与える。
耳を塞ぎたくとも、両手の無い状況では塞ぎようが無かった。
痛みに失神出来ればどんなに幸せだったか。 ねっとりと耳に絡みつく様な声を聞き続けるしかなかった。
〜〜〜〜〜
「……はっ!!!」
いつもの天井、いつものベッド、そしていつもの身体。
すべては夢であった。
飛び起きたアリスは自分の身体を抱き締め、四肢が無事である事に安堵の溜息を吐いた。
安心からか、彼女の目からは一雫の涙が流れ落ちた。
それからの彼女は手際良く朝の準備を行った。
魔法の糸を指先から伸ばし、待機させている人形に繋いだ。
五十とも百とも謂われる人形が手際良く、すべての準備を行った。
暖炉に火を灯し、湯を沸かし、調理をし、茶を煎れ……。
いつもの衣服に着替え、髪も整えた彼女は純白のクロスの掛けられたテーブルに着席した。
そこには湯気の上がる紅茶が用意されていた。
その香りに漸く夢での緊張が解かれる。
思えば、あの景色は無味無臭乾燥であった。 冷静に考えればどうと言う事はないはずであったのだ。
紅茶を一啜り。 目を瞑るのは恐ろしいが、今は多数の人形たちもいる。
安心の中で彼女は椅子の背もたれに背中を預けた。
ガタン……。
彼女の背中の方向から唐突に音が上がった。
音の種類は松葉杖か義足の様な木製の器具が木製の床に着く音であった。
すぐさま人形を展開し、臨戦態勢に移行する。
夢の影響か、彼女は普段の冷静さからは、あり得ない程の背汗を掻いていた。
ゴトン、ともう一歩、音が聴こえた。
ギギギ、とでも聞こえそうな程、重々しく後ろを向いたアリスは驚愕すべき光景を目の当たりにする。
「ア、アリス……わ、私は一体どうなってしまったんだ?」
そこに居たのは、一糸纏わぬ姿をした魔理沙であった。
だが、問題はその姿だ。
右肘より先が無い、先端はぬいぐるみの様に荒い糸で紡がれていた。
左はそのまま指先まで残っている。
両足は足首で切られ、右肘と同じく荒い糸でぬいぐるみの様に紡がれている。
よちよち、と幼児の如く歩む魔理沙の顔は、これまた酷い有様であった。
片瞼は糸で縫い付けられ、耳まで切り裂かれた口元は元の位置で縫われている。
口元の糸の隙間からは涎が流れている。
だが、この程度は序の口だ。
アリスの白絹の様な肌と同じ、魔理沙の下腹部。
丁度、子宮のある位置にも真一文字に開かれた傷があった。
血は出ていない。 肘や両足首にある糸と同じものを見るに、止血は完璧に行われたのであろう。
開かれた傷からは、外に極太の導火線が伸びていた。
膣口からも同じく、導火線が伸びている。
両導火線は先端から魔理沙に向かって火が進んでいる。
その姿は受精を求めて進む、精子の醜い姿そのものであった。
「痛い、痛いよ。 アリス、助け、助けてくれ」
そう言われ、どうしようとも訪れる結末は同じだ。
見た目に普通と思われる火源は魔法の炎だ。
たとえ導火線を断とうが、炎の進む事に干渉する事は出来ないのだ。
だが、アリスは椅子を倒し魔理沙に向かって走った。
「あ、アリスぅ……」
無情にも火源は魔理沙の子宮に吸い込まれた。
人間爆弾。 その表現が最も相応しい。 魔理沙の胎内に納められた爆薬、火薬は一斉に爆発した。
その衝撃を止められる者はおらず、その事象を収められる者は、この場にいなかった。
ドゴム、ゴガーン、ドドーン!!!
連続する爆発は魔理沙の四肢を吹き飛ばし、内臓や筋肉を挽肉に変えていった。
幸せだった事は彼女が苦しみを感じる前に絶命をさせてくれた事だ。
だが、アリスはそうではない。 魔理沙の爆発を肌で感じ、同じく四肢や筋肉を挽肉に変えられていった。
魔法使いという脆弱な肉体といえども、人間よりは遥かに強固な肉体を持つ。
彼女の四肢は夢と同じく爆風を受けて千切れていった。
絶命する、その時まで痛みを感じ、苦しみの中に沈み、四肢の千切れる感覚を受けていた。
魔理沙は爆死。 アリスも爆死。
アリスの家は爆発で全壊した。
残ったものは、大量の瓦礫と目視では判別の付かない肉塊だけであった。
3、哲学者の実験、君は果たして本当に君だったのか?
白塗りの壁に天井。 部屋には小奇麗で簡素なベッドが一つあった。
清潔な純白の布を掛けられ、安息の寝息を立てているのは、外見相応の少女。
部屋の明るい雰囲気と相まって、非常に健康的な顔をしている。
と静かに目を覚ました彼女は天井を見るなり時が止まった様に驚愕した。
「な、なんだ? ここは?」
見た事も無いと言いたげな言葉。 それもそうだ、ここは彼女の家でも部屋でもない。
顔を横に向け、体を起こして辺りを見回しても見知った物は無い。 むしろ物自体が無い。
ベッドから下り立ち、再び辺りを見回すと壁の一部が上に持ち上がり、そこから画面が現れる。
「おはようマリサ。 気分はどうかしら? ああ、これはねマジックアイテムのちょっとした応用で外部の情報を画面に投影すると……」
「下らん薀蓄はいい。 それより、この悪趣味な真似は何だ? いつから他人を監禁する趣味を持った、パチュリー」
画面に映るパチュリーと呼ばれた紫髪の少女は溜息を一つ吐くと、先程の薀蓄と同じ口調で説明を続けた。
「そこはね……隔離病棟よ」
は? と素っ頓狂な声が上がる。 当然と言えば当然かもしれない。
先までの状況もそうだが、余りに突飛な事が起きているからだ。
おいおい、と逃避に近い言葉を差す。 これが現実であってたまるかという願望も含まれていた事であろう。
「いいえ、冗談ではないわ。 貴女は奇病に冒されたが為にここに居るの、覚えていないと思うけど、連れて来るのに苦労したわ」
「い、言われてみれば、そんな事があったような……」
頭を抱え、襲い来る眩暈と吐き気を必死で耐えていた。
頭を左右に振らし、そのままベッドに座り込む。
「でもね、幸いにも病状は安定しているし、特効薬もある。 すぐにでも命を落とす事はないわ」
「……ほ、本当か? 本当に死ぬ訳ではないのか?」
ええ、と言うパチュリーの口元が僅かに笑っているかの様である。
一目では判らぬ程僅かな変化だ。
「ただ、精製に時間が掛かるわ。 五年……いえ、二年は待って貰わないといけないの」
「二年……二年もか……」
長い。 彼女がそう思うのも無理はないだろう。 青春真っ只中に二年を失いたいとは誰も思わない。
ただ、今の状況を考えるに、断ろうとも元の生活に戻してくれる保証は無かった。
病気研究の為のサンプル。 最悪、伝染防止に殺される可能性もある。
眩暈の起こる頭と歯が噛み合わぬ状況で冷静に答えを求めたのは、生きたいという本能が働いていたのかもしれない。
「ああ、分かったよ。 二年、待つよ。 だがな……」
「心配しなくても良いわ。 ちゃんと治してあげるから」
それから、治療の間の説明を受ける。
部屋の掃除の徹底を言われた。 これは厳命だそうだ。
次に彼女の部屋にあった私物は、この治療部屋に運ばれる。
欲しい物は要望があれば用意される。 部屋の中、限定であるが治療中も外に居た時と同じ生活が出来る。
勿論、すべては抗菌、殺菌魔法にて消毒された物が送られるそうだ。
多少の不満はあったが、命あっての物種。 彼女は先と同じく承諾した。
試しに本を一冊と軽食を頼んだ所、記憶にあるものが手元に届けられた。
パチュリー曰く、転送魔法が云々だそうだ。
届いた物は要望通りの本、それと珈琲とサンドイッチ。
何の変哲も無く、嫌な臭いも無い。 当然、無味無臭でも無い。
病院食が出てくると身構えていた彼女はさぞ拍子抜けした事であろう。
「食事は多少マシだな」
「そうね、何せ、二年も缶詰ですもの。 咲夜に頼んでマシな食事をお願いしたわ」
それから、彼女は研究に没頭した。
元より面白そうな事があれば、後先考えずに首を突っ込む性格だ。
途中で止まった研究と言えば、山の様に積まれていた。
荷物を転送して貰い、治療部屋は瞬く間に彼女の元の部屋と同じ様相を呈した。
一つ終わり、二つ終わり、更に新たな研究に手を付けた。
魔法百家に通ずるパチュリーからすれば、児戯にも等しかったかもしれない。
だが、見習いの頃の気持ちを思い出しては、初心を大切にしなければと感慨に浸っていたのは間違いの無い事実だ。
二年の空白は浦島太郎の様な事を起こしかねない。
外に出るという楽しみと共に積極的に外の様子を尋ねた。
普段は三流ゴシップ記事と敬遠していた文々。新聞も定期購読する様にした。
一か月が過ぎ、半年が過ぎ、一年が過ぎた。
彼女の生活は変わらない。
食事を楽しみにし、研究に没頭し、時に書を読んだ。
体に不調は無く、まったく健勝であった。 本当に奇病に冒されているのか疑問に思う程に。
それから同じ生活は続き、更に一年が過ぎていった。
「なぁ、パチュリー。 いつになったら治療が始まるんだ?」
「せっかちね。 もう精製は終わっているわ。 もうそろそろ言うつもりだったのよ?」
「ああ、悪い悪い。 流石に二年も缶詰だからな。 こちらの心情も考えて欲しいぜ」
バツ悪く、頭を掻き愛想笑いを浮かべる。 その日は、特に何も無く眠る事となった。
明日、明後日にも手術が行われ、家に戻れると思うと、歳相応の可愛らしさの笑顔を浮かべ、心をときめかせては床に就くのであった。
眠っていた彼女であったが、不意にむず痒さが込み上げて来る。 特に右の腕だ。
「うっおぁっ!」
彼女が驚くのも無理は無い、右腕がまるで腐り落ちる様に千切れそうだったのだ。
なのに、痛みはまったく感じていない。
「な、なんだよこれは、一体何なんだよ?」
「騒がしいわね……遂に始まってしまったのね」
「おい、パチュリー。 私は一体どうしてしまったんだ?」
慌てる彼女を余所に極めて冷静な表情をしている。
肩の力を抜き、冷徹とも取れる声色で説明を始めた。
「それが、貴女の病気よ。 四肢のすべては腐り落ち、やがて命を落とす。 安定していたから大丈夫だと思っていたのよ」
「わ、私は……死、死ぬのか?」
「安心しなさい。 特効薬の精製は終わっているの。 それを投与して移植をするだけ、貴女は死なないわ」
そうパチュリーが言うと、ベッドの上からホースに接続されたマスクが伸び落ちた。
恐らくは全身麻酔を行う吸入器であろう。
「マリサ、そのマスクから麻酔を吸入して頂戴。 後はこちらで処置を行うわ」
「ほ、本当だな? 大丈夫なんだろうな?」
「私を信じて頂戴」
千切れ落ちそうな腕を、もう片方の手で支えベッドに向かう。
その間にも四肢にむず痒さが発生してくる。
唐突な事もあり、彼女の心は大いに掻き乱された。
パニック寸前の中、パチュリーの声を聞き、操り人形の様に指示に従った。
「良い? マスクを装着して、そう……落ち着いて、大丈夫よ。 それじゃあ、麻酔を出すわ。 安心して……目が……覚める頃……」
〜〜〜〜〜
「……マリサ? マリサ……聞こえる?」
「う? う〜ん、もう少し寝かせてくれよ……はっ!」
パチュリーの声を聞き、飛び起きた。
言葉に表し様の無い、不快なむず痒さは無い。
ただ、四肢を失うという恐ろしさから、顔は画面を注視し周りを見れなかった。
「安心しなさい。 手足を見て」
それでも、怖かった。 もし、手や足が無いと思うと気が気では無い。
幻肢という症状もある。 感覚があろうとも、そこに四肢があるとは限らないのだ。
「大丈夫よ。 見てみなさい」
意を決して千切れそうであった腕を見る。
「あ、ある。 腕がある!」
手も足もあった。 パチュリーの言った事は正しかったのだ。
歓喜に震え、目からは涙が溢れていた。
治療は終わった。 近い内に彼女は元の生活に戻る。
二年という長い治療期間の終わった事から来る安堵感から、生の実感と喜びから気の済むまで笑い声を上げるのであった。
〜〜〜〜〜
「良かったですね、パチュリー様」
「ええ、良かったわ、小悪魔」
「実験は成功ですね。 いや、本当に長かったです」
感慨に耽るパチュリーの腕には魔道書では無い本が握られていた。
人間の生理学と思われる本だ。 そこに張ってある大量の付箋。 そこの一つには人間の新陳代謝についての事が書かれていた。
「これで、肉体が違おうとも人間というものは同一の個体である事が証明されましたね」
「安易に結果を求める事は間違いよ。 ここから正しいかどうかを話し合わなければいけないわ」
そこにはこう書かれていた。 人間の新陳代謝はおよそ二年ですべてを入れ替える。
そこで疑問に思った事はこうだ。
二年前の人間と現在の人間は同一人物であるか?
そこで、パチュリーは霧雨魔理沙のクローンを用意し、奇病と偽り監禁し観察したのだ。
日々の掃除の徹底と衛生状況の管理は現在では無い細胞の獲得の為であった。
そして、古い細胞から培養した臓器、四肢等を移植しどうなるかを観察したのだ。
結果は今の通り、拒否反応も無くマリサは生きながらえている。
「パチュリー様、コレに愛着はありますか? 情は移りましたか?」
「まさか、コレはただの実験動物よ。 早々に処分しなくちゃ」
「いえ、それは勿体ないです。 限りある実験動物は大切にしなくては」
「……何かあるのかしら?」
「そうですね。 例えば、コレに正体を教えて痛みを伴う実験を繰り返すのはどうでしょう?」
「ふふ、それはとても面白そうね」
「所で小悪魔。 何処か交換したい部位はあるかしら?」
「今の段階で身体に356箇所の改造、交換箇所があります。 6本脚も非常に稼働状況が良いです」
「そう、良かったわ。 ……ゴホゴホ」
「パチュリー様こそ、喉の部位の交換を行っては如何です? もう、28年程同じものを使っているではありませんか」
ツギハギだらけの小悪魔に諭されて、パチュリーは喘息症状の苦しい中、クスクスと笑い、その音は喘息の咳の中に消えて行った。
未だパチュリーの正面の画面からは、明日の我が身を知らぬマリサが歓喜に震えていた。
昨年はお世話になりました。
本年もよろしくお願いします。
おはようございます。コメント返信は心のオアシスです。
>1様
あけましておめでとうございます。
>ギョウヘルインニ様
良いですよね。咲夜の料理なら是非味わいたいですね。
対価は体で支払ってもらいますが。
>3様
パチュリーは体が丈夫じゃないから、こうなりますよね。お約束です。
>NutsIn先任曹長様
僕だけじゃなく、産廃作者様に見初められた。
その時からその娘たちは地雷原のど真ん中に立たされる事でしょう。
うふふ、魔理沙ちゃんの爆殺楽しいです。
>5様
あけましておめでとうごっざいま〜す。
>県警巡査長様
あ、すみません。それ、魔理沙に届ける筈だったんです。
どこかで、手違いがあった様です。
戻って来れる様にお祈り申しあげます。摩訶般若……。
皆様、改めまして今年もよろしくお願いします。
まいん
- 作品情報
- 作品集:
- 9
- 投稿日時:
- 2014/01/01 16:37:15
- 更新日時:
- 2014/01/11 21:17:11
- 評価:
- 6/6
- POINT:
- 600
- Rate:
- 17.86
- 分類
- 魔理沙
- 大妖精
- アリス
- パチュリー
- 小悪魔
- 短編集
- 1/11コメント返信
まいん
アリスは、魔理沙への相ゆえに殉爆死!!
モルモットマリサは、篭の中で偽りの平穏を得、パチュリーはどう実験しよう(遊ぼう)か思案中。
作者様の名の如く、魔理沙の周りは地雷だらけ……。それも時限装置やリモコンの起爆装置つきの♪
まあ、産廃セカイじゃ当たり前ですけどね☆
…あれ?何だこの小包は。頼んだ覚えはないけど…(ドカーン!!)
『・・・というわけで私も爆散したところで、今年も素敵なSSを楽しみにしていますね。』