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『ヤギさんは紙を食べるんですよメーメー』 作者: ギョウヘルインニ
ある日、魔理沙が悪魔にとりつかれてしまって寝込んでしまったんですよ。
と、霊夢が暢気な射命丸から聞いたのはもう手遅れの時になってからだった。
これは情報通である射命丸が独自のルートで調べ上げた事実だから信用できる情報だと本人はそういいう。
「魔理沙さんは、悪魔と昼夜問わず戦って憔悴して弱りきって居るみたいですよ。あやややや、その命は、もう長くないです」
「ねえ、だったら。なんで、もっと、早い段階で言わなかったの? 助けられたかもしれないのに」
「あややややや、それだと、魔理沙さんが助かってしまいます」
「ずいぶんうれしそうね。アンタは魔理沙のこと嫌いでしょう」
「まあ、そうですが。霊夢さんも話を聞いたからには巫女として助けに行かないといけないかなと思いまして。面倒ですよね」
「あら、ありがとう。私の立場を察してくれたのね」
結論から言うと、魔理沙のことを二人とも嫌いだったのかもしれない。
「それで、今日は魔理沙さんの死に顔でも拝みに行きませんか?」
「まだ死んでないんじゃ無かったの?」
「さあ? どうでしょう」
「まあ、いいわ。丁度暇だったの」
こうして、魔理沙の家にお見舞いに行くことになったのだった。
遠足気分程に楽しい気分では無いが、暇な霊夢にとっては良い暇つぶしではある。
程なくして、魔理沙の家に着いてみると玄関には鍵がかかっていた。
これは、悪魔にとりつかれいるせいで魔理沙がかけてしまったのだと、射命丸がいい加減に推理したときはもう霊夢が鍵を開けていた。手際が良くて感動すら覚えてしまうとうわけでもない。
「まさか、霊夢さんが魔理沙さんの家の合鍵を持っているなんて」
「アンタ何か勘違いしてない? 合鍵なんてないわ。鍵は壊してしまったの」
「それだと、魔理沙さんが後で困りませんか?」
「アンタの話だと、魔理沙には鍵なんてもう必要無くなると思うけど」
「それもそうですね」
家の鍵を壊されているのに、魔理沙が怒って出てくる気配もない。これはおかしい。
もう、死んでしまったのかもしれない。霊夢は腐敗していないかとハラハラドキドキと書いてウキウキしながら家の奥へと進んでいった。
さて、進んでいくと苦しくて辛そうな呻き声が聞こえてくるから魔理沙の生存が確認されてなんだか拍子抜けしてしまったが、腐乱死体を愛でる趣味は二人には無いのでそれはそれで問題ない。
呻き声のする部屋は魔理沙の部屋だ。入ってみると汚れているが、想像していた饐えた悪臭は無く部屋は花の匂いがして女の子部屋と大差無い魔理沙だって女の子ってことが証明されている。
まあ多分、悪魔と戦って居るせいで風呂にも入れない魔理沙が気にして香水を体につけているのだろう。
「魔理沙? 大丈夫? 魔理沙が悪魔にとりつかれたって聞いて私心配して来たの」
しゃあしゃと、心配そうな声で霊夢が言ったものだから隣にいた射命丸は思わず噴出してしまいそうになったの堪えた。
これだから、巫女は侮れないし敵に回したくない。
「れ、霊夢? 来てくれたのか? ごめんな、わた、ん! ん! ……私は大丈夫だぜ!」
話かけられ訪問に気付いたのだろう。ベットで、呻いていた魔理沙は起き上がり血の気の引いた顔で、気丈に振舞って居るが死期が近いことは悪魔にとりつかれているという予備知識が無くても察することが出来た。
それと、様子がおかしい。眼を瞑ったままだった。
「あやや、私も居るんですが?」
「ごめんな、眼が見えなくて気付かなかったんだ」
魔理沙の眼球は、霊夢の足元にどす黒く干からびて落ちているのだが暗がりで誰も気付かない。
靴を履いたまま家に入っているのでそのうち蹴り飛ばしてしまうだろう。
「悪魔にとりつかれているって聞いたけど。元気そうね。もう、心配して損しちゃった」
分かっているのに、霊夢はそう言ったのだった。
笑いそうな気持ちになりながら、わざとそういう風に言ったほうが悲劇的だと思ったからだ他意は今のところ無い。
「そうですよ。魔理沙さんが大変だって聞いて急いできたんですから。ぜんぜん、元気そうじゃないですか」
これに乗っかる形で、射命丸もわざとそういう風に言った。
「そうだぜ。悪魔なんて、私が追い払ってやるんだぜ! ごほぉ、ぐぅ」
励まされていると思った魔理沙は、胸を張ったら咳き込んで血を吐いた。血は魔理沙の服に染み込んでいくが、同じような跡に同化して分かりにくくなった。魔理沙が元気なら、へへっと笑いながらレミリアのまねしてるんだぜとか言いそうな感じになってるだけのこと。
これで、魔理沙は悲劇的なヒロインを演じることが出来る。だが、それは死期を早めさらに苦しむことになる。
霊夢は、台所をかり米が少々あったのでお粥を作り始めた。
魔理沙の体のことを考慮すると、台所洗剤とトイレ洗剤があるから霊夢はそれを暫く見つめてお約束を守ることが寛容だということは分かっている。
任せておいて損はある。
「魔理沙、お粥よ。食べて」
「ありがとうだぜ。霊夢、ありがとう」
魔理沙は暫く何も食べていなかったのだろう。それに、誰かに優しくしてもらうなんて多分、揺り籠以来だから眼球の無い眼からは涙が流れている。
「あやや、おいしそうですね。魔理沙早く元気になってくださいね」
射命丸はコバルトブルーのお粥を見ながら魔理沙を励ました。
霊夢はレンゲに似た骨のような何かで、お粥をしゃくるとふうふうと、息を吹きかけて冷まし魔理沙の口元に持っていった。
弱った魔理沙でも、口元にお粥をもってこられて何とか啜った。
「どう? 美味しい?」
「へへ、まっずいな!」
魔理沙の舌はどういう原理なのか分からないが既に裏返っているから、味を感じることは出来なかった。
だから、想像するしかない。信用している霊夢が作ったのだからきっと押ししいのだろう。だけど、あえて不味いと答えたのだった。
「何? 不味いの? もういらない?」
「いいや、全部食べさせてくれ、最近何も食べて無くてな。こんなに不味いお粥でも。不味い……その、ありがとうな」
味を感じられなくても、魔理沙は霊夢にお粥を食べさせてもらい。心の底からうれしかった。
それがなんだか、恥ずかしく感じてそういう風に天邪鬼に答えてしまった。でも、霊夢なら分かってくれると思う。
「しかたないわね。ほら、食べなさいよ」
霊夢は魔理沙の言おうとしていることが分かった。良い巫女を演じることを辞めようかなと思ったが、まだ遊びは始まったばかりこんなところで終わらせるのは忍びない。
魔理沙の部屋から見える外はまだ明るい。これから、帰っても暇すぎる。
「あやや、魔理沙さんは素直じゃないですね」
「霊夢、すまない。霊夢、すまないな」
いつのまにか、さっきまでコバルトブルーだったそれが空気に触れて赤茶色になっていた。
まるで、魔理沙の口から流れ出るそれのような色だった。
魔理沙はまた吐血していた。悪魔のせいだ。
お粥は食道を穢して降りていった。
まだ、お粥は残っていたがどんなに魔理沙が嬉しくても、もう食べられそうに無かった。悪魔のせいで弱った体がそれ以上受け付けなかった。
霊夢はその様子を見て、ベチャベチャに溶けて残ったお粥を床に捨てた。
「最近はどうなんだ? まだ、花は咲いているか?」
「花って何?」
「あれだぜ、朝顔を植えたんだ。見たかったんぜ、赤い花のやつだ」
魔理沙は頭が少しおかしくなっているようで意味不明なことを言い始めた。お腹が見たされて少し余裕が出来たせいかもしれない。
霊夢には全く身に覚えの無い話だった。
「朝顔? いったい、なんのこと?」
「あれ? 朝顔は橙と植えたんだったかな? 橙と私が? なんの冗談だ。おかしいぜ。やっぱり霊夢だった気がするぜ」
「魔理沙さん。霊夢さんが困ってますよ」
魔理沙は朝顔を植えた相手が思い出せない。それよりも、本当に朝顔を植えたのかすら怪しい。
「そうだぜ。思い出した。妹と植えたんだ」
「ねえ、魔理沙には妹は居ないわ」
「そうだったな」
ちょっと、飽きてきた。特に直接話に関与していない射命丸は飽き始めていた。
そして、無性にいじめたくなって来た。
霊夢に目配せした射命丸は、思いつくままなんか言ってることにし、行き当たりばったりで楽しむことにした。
「……ん! 霊夢さんの後ろに居るのは、悪魔じゃないですか!」
「あ! この悪魔! よくも魔理沙にとりついてくれたわね」
霊夢は、魔理沙を抱き寄せて守るような体制をとって大きな声を出した。
急なことで魔理沙は驚いてしまった。
「おいおいおい! 悪魔が出てきたって言うのか? また出てきたのか? 大きいのか白いのか黒いのか? 甘いのか苦いのか? やめてくれ、もう私にかまわないでくれ! ください」
さっきまでは苦しいのに、強がったり世間話していた魔理沙はそこにはもういない。
眼が見えない魔理沙は本当に悪魔が来たと思ってベットから半分落ちるように霊夢にしがみついて震え始めた。いままで、どんな酷い目にあってきたのだろう。
「不味いです。霊夢さんが悪魔にとりつかれてしまいます」
「嫌だ。悪魔になんてとりつかれたくない」
「れれれいむ? 霊夢に悪魔がとりつきそうなのか?」
「そうです。このままでは、霊夢さんに悪魔がとりついてしまう」
魔理沙は基本的に卑怯でずる賢いやつだから、この後は自分が助かると思って喜ぶんだろうなと射命丸は思っていた。
同じく、霊夢も少しでも喜ぶそぶりを見せたらその場で悪魔のせいにして耳でも引っ張ってやろうと思っていた。
いつでも、それが出来る距離に居るし、もっと酷いことだって出来そうだ。
「こいつが、魔理沙に酷い目にあわせてきた悪魔なの?」
「そうです。そうなんです」
「や、めろ。霊夢を巻き込むな。私だけでいいだろ! 私だけ地獄に連れて行けよ。私だけで良いだろ?」
しかし、魔理沙は良い奴だった。さっきまで霊夢にしがみついて震えていたが今度は、両手を広げて悪魔が居そうな方で身構えている。そもそも、悪魔にとりつかれた理由だって、にとりの身代わりだった。
ちょっと、ちょっとだけそんな魔理沙に好感を霊夢は持つことができた。
「あややや!」
「悪魔はあっちに行きなさい」
「あややや!」
魔理沙には見えていないのに、霊夢は御札を何枚か投げて悪魔に攻撃してみたのだった。
悪魔は一時的に去って行ったことにすることにしてこの場は治めることにする方針に基づいての行動だ。
「大丈夫、魔理沙のおかげで、悪魔は去ったわ」
「霊夢がな、何かしたのか?」
両手を広げて構えていた魔理沙はその場で倒れそうになったから霊夢は咄嗟に支えたのだった。
魔理沙は暫く息をぜぇぜぇと苦しそうにしていた。口の端は血の泡が出来ている。
「魔理沙大丈夫?」
「……もう、疲れたんだ。他のやつにこんなことは頼めないし、頼みたくない。……私を楽にしてくれないか?」
「魔理沙」
「あやややや、魔理沙さんは可哀想ですね。霊夢さん、魔理沙さんの望みどおりにしてあげたらどうです?」
「汚れ仕事頼んでごめんな」
霊夢は、魔理沙をつつみこむように抱いて首を絞めた。
死に掛けの体にどんな力が残っていたのか知らないが、生存本能で霊夢の手を引っかいて抵抗したが動かなくなった。
それでも、霊夢は魔理沙の体温が少し冷たくなるまで首を絞め続けていた。
魔理沙は死んだ。死んでしまった。全部悪魔にとりつかれたせいだ。
ただ霊夢は魔理沙が弱っていたのでお粥を作った。楽にしてくれと言ったから楽にしてあげた。
霊夢は魔理沙を殺してしまった。手には引っかき傷とあの感触が残って不快だった。
そもそも、なんで胃が溶けてしまいそうなお粥を作ったり、悪魔が出てきたと言って魔理沙を怯えさせたのだろう。
そんなことする必要性がまったく無い。魔理沙は良い奴だった。では、何故してしまったのか?
疑問だけが残り、霊夢は射命丸を見て問いかけた。
「ねえ、魔理沙にとりついた悪魔って、もしかして」
「あやややや、あやややや、ようやく分かりましたか。まあ、思ったよりも早かったですね」
その羽は黒かった。
作品情報
作品集:
9
投稿日時:
2014/02/01 17:29:21
更新日時:
2014/02/02 02:29:21
評価:
11/12
POINT:
1130
Rate:
17.77
分類
霊夢
魔理沙
悪魔は紙をゴミにする。
ずっと霊夢と話してる。
悪意を操作されるってシチュは怖い
悪魔に憑りつかれているんだから仕方がないよね。