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『文ちゃん寒いです〜』 作者: ギョウヘルインニ
「あ、お世話になってます。素敵天狗の文ちゃんですよ〜」
「ねえ、誰? これを館に入れたのは?」
「レミリアお嬢様、私ですが?」
「咲夜、今までの恩義を忘れたの?」
レミリアが、夕飯を食べに食堂に来たらそこに射命丸がいた。そう、餓えた烏天狗の新聞記者だ。
レミリアが怒るのはしょうがないことだった。こいつの羽には、いつも変な虫が付いているし、関われば変なうわさが立つ。
ついでに言うと、今、射命丸がすすっているのは、レミリアが楽しみにしていた。豚の血で出来たスープだった。
「お、お嬢様、でも、外で凍えていたんですよ」
「そうですよ〜、もうすぐで文ちゃんは死んでしまうところでした〜」
「嘘つかないで、蚤天狗のお前がそう簡単にくたばるわけないわ」
レミリアは知っている。射命丸はマイナス50℃の状態で真空状態になった場所で水も餌も与えず生きていることが出来る。
そういう状態でレティに拘束されていたが、チルノがレティの所に遊びに隙を突いて脱出し逆に惨殺したのだった。
あの後、そのことを書いた新聞を無理やり買わされたので良く覚えていた。
ちょっと、羽が少なかった危なかったと記事には書かれていた。が、それは可愛さをアピールしているだけだとレミリアは思ったことを今でも思いだす。
「咲夜、今すぐこのゴミ天狗を追い出しなさい。あと、見えないところに連れてって無駄に殴りなさい」
「はい、わかりました。お嬢様」
「あやややや?」
「申し訳ありません。射命丸さん、話は聞いて居ましたね。出ていってもらえますか?」
「あやややや、私は出て行かなくてはならないのですか〜。そうですか〜」
射命丸はショックを受けているようで、嫌な薄ら笑いを浮かべている。
それから、小刻みに震えだしてスープをすくっていたスプーンを握り締めた。
スプーンはすぐに曲がってしまい永遠にスプーンとして使われる機会を失ってしまったが、次の仕事はすぐに出来たのだった。
グチュリと嫌な音がしたときには、もう、スプーンは咲夜の腹に刺さっていた。
「え? スプーンが私のお腹に? 何で、これじゃ私は赤ちゃんの産めない。赤ちゃんのじゃないがでした」
「咲夜! それどころじゃないでしょ!」
「私は、招かれたんですよ。凍えていたから、可哀想に思われて! なのに、出てってくれって? 馬鹿じゃないですか、そんなの許されません」
そんなことを言いながら、何度も何度もスプーンが咲夜の腹とお外を往復した。
咲夜はレミリアに最期の言葉もかけれずその場で倒れてそれきり動かなくなってしまった。まるで、糸の切れた人形のようで、一種の芸術のようで。出来た血溜まりはレミリアの食欲をそそるには残酷で。
「クズ天狗! 咲くになんてことするの?」
「ええ〜。大変申しあげにくいのですが〜。レミリアさんのお気に入りの、メードさんは、もう只の肉塊になってしまいました〜。ああ〜。何て悲劇でしょうか〜。明日の一面は紅魔館で起きた悲劇ですね〜」
「何が悲劇よ。ふざけないで、殺す」
「あやややや、レミリアお嬢さんも一緒に惨殺が良いですかね〜? いやいや、後追いの方がより悲劇ですかね〜。いつも、私の新聞はいつもいつもいつも悲劇〜ああ〜悲劇ききききいいい」
「……何言っているの? お前は殺すからもう2度と新聞なんて書くことは出来ない」
既に騒ぎを聞きつけた妖精メイドが集まってきている。特にこの時間に勤務しているのは精鋭だ。こうなれば、レミリアの有利のはずだ。
咲夜の仇をとろうと、レミリアは間合いをつめて射命丸の首に噛み付くため飛び掛った。その表情は普段感じられない、カリスマの塊といったところだ。
「あややや、レミリアさんキャッチ〜。軽いですね〜」
だが残念ながらそれは、無駄な動作だった。簡単にレミリアは捕まってしまった。
射命丸は高い高いの姿勢でレミリアを持ち上げて手遊びしはじめた。小さくて可愛いから、遊びたくなってしまうのは動物さんも吸血鬼さんも一緒仕方のないこと諦めたほうがいい。
「やめろ、離せ! お前の汚い蚤がうつる」
「あのですね。私についている蚤はそんなに汚くないですよ。すりすりしてあげますよ〜」
「痒い! 痒い! やめろ」
レミリアの体には大量の蚤が移ってきて、まだ何もされていないのに既に痒がっている。先入観というやつで、実際に痒く感じている。
その様子を見ていた妖精メイドの1人が勇気を出して指示を出そうと声をあげた。
「レミリア様の危機だ、あたしがパチュリー様を呼んで来る。それまで、レミリア様を守るんだ」
「そう言って、あなただけ逃げる気でしょう? あたしは騙されないよ」
しかし、所詮は妖精だった。精鋭でも、統率が全く取れていない。
「あたしは嘘なんかついてないよ。本当だよ。なんで、そういうこというの? 酷い」
「ああ、泣かせた。酷い」
「そんな、あたしが悪いのそんな、ヒック」
「もうね。全員でパチュリー様を呼びに行こうよ。そうしたら、皆で逃げられるよ」
「そうだね。中々大妖精は下衆だねヒック」
どうやら、精鋭の妖精メイドの中に大妖精が混じっていたせいでそうなってしまった。らしい。
全員連れ立って、逃げ出してしまったのである。戦えば、武装したとある軍隊のSSにも匹敵する能力を有しながら撤退してしまった。
「あやややや、わらわら出て来て誰も居なくなりましたね。……そうして誰も居なくなるのか?」
「何を言ってるのそれは、フランのセリフよ」
「へえそうですか。それは知りませんでした。教えてくれたお礼に、このままレミリアさんをキュッとして差し上げましょうか〜? ドカーンとは行きませんが。きっと、楽しいですよ〜」
「クソ、離せ! この、ゴミガラス離せ!」
レミリアはこの持ち上げられた体勢から、何とか脱出しようとし体を捻ったり足をバタバタさせた。
まるで効果がないように思えたその動きだったが予想外の展開が起きた。
「って! あややややや! 私の整った鼻になんてことするんですか〜」
「お似合いね。もっと喰らえ!」
レミリアは思ったよりも効果がえられたことを確信して、二撃三撃を狙いさらに足をバタバタさせた。
確かにそれは、何度か射命丸の顔に当たったが、今度はその確認が取れなかった。
急に天井が近くなったからだった。レミリアは、石造りの天井に高速で激突したのだった。
「あややや、大事私の歯が〜。歯〜。欠けてしまいました〜。差し歯なんですけど〜。高いんですよ〜。っぺ!」
射命丸は落下してきたレミリアの背中に、唾と血が混りの歯を吐いたのだった。
さっきまで元気だった咲夜が洗ってくれたドレスが汚れてレミリアは泣きたかった。淋しかった。咲夜ともう一度お話したかった。
でも、もう咲夜とは何も出来ない。
「っ絶対、殺す。もう、許さないんだカラ? 痛!」
「あ、すみませんね〜。レミリアさんの小さな手を踏んじゃいました。小さくて見えなかったんです。ふざけてないです〜」
ふざけてないんです。そうです。悪いのは、そこに小さな手があったせいなんです。もしも、裁判にかけられたら射命丸はそう言って誤魔化すつもりだ。
「私の手が」
「おっと、両方じゃないと、右手さんばっかりかわいそうでしたね」
もう一回、踏んでしまったのも間違いだ。左手が丁度いいところにあったせいでこうなった。正当防衛なんだと思う仕方のないことだ。
ただ、ちょっと、ちょっとだけね。レミリアが可愛そうなだけなんだ。そう思うことが正しい。
天狗の靴は、ハイヒールのようになっているから。一点に力がかかってとても痛い。両方の手は壊れてもう使えない。
「っひぐぅ。助けて、咲く、助けて咲くぅ」
「あ〜あ、レミリアさん。どうしました〜? 怖いことでもありましたか? もし、私で良ければ相談に乗りますよ。私は瀟洒な天狗の文ちゃんですから〜」
もうレミリアは精神は折れてしまっていた。まだ、蝙蝠になって逃げたり、頑強な吸血鬼なのだから体を再生さえたり出来たはずだった。
しかし、瀟洒と言う言葉を聴いて見上げた上には烏天狗が笑顔を振りまいていた。レミリアはその姿に慄いて、屈服してしまったのだった。
「しゃ、しゃめいまりゅ? さく居ないです。どうして?」
「あややややややや! あややややややや! ややややっややっやややや」
射命丸はこんなところで小さな勝利しても余りいいことはないのだが、それでも自分の強さに酔いしれていた。
石造りの紅魔館は音がよく響き、歪なあやややややややややっやという奇声は地下に居るフランの所まで響き渡った。
フランはそれに怯え、まだ元気だった咲夜が干してくれたお布団の中で震えるしか出来なかった。
翌日、大量に刷られた新聞には、とある館の主がメイドと共に駆け落ちしたと一面に載っていた。
扇情的に煽られかかれた文章に誰もが顔を赤らめた。
真実を知っているのは、とある烏天狗だけだった。
パチンコ屋も、レンタルビデオショップも続く不況には適わなかった。
妹紅は商売に失敗したのだった。負債は分かって居るだけでも500万位。
昔みたいに筍を売ろうとしたが、竹林は駐車場になっている。
"もう、迷わない。私はここに止める"というキャッチフレーズで輝夜がCMで出演していたから駐車場は満車状態だった。
慧音に助けを求めて見たけれど、会ってくれない。もう、妹紅は駄目だった。
「だからと言って、私のところに来ても一銭も貸さないわ。一戦位だったら付き合ってもいいけど」
「く、ちっとも、面白くないんだからね。輝夜の言葉遊びなんか」
「別に妹紅に面白がって貰わなくて結構よ」
ただ、輝夜だけは今までどおりに妹紅に接してくれた。元々お互いを忌み嫌い見下しているからそれ以上に評価が下がることはない。
「貸すじゃなくて、くれるってことはない?」
「甘い、甘すぎる。蜂蜜みたいな甘さね」
「輝夜に頼った私が馬鹿だった」
「ようやく気付いたの?」
敵に頭を下げる愚かしさを妹紅は知った。
そして、火をつけようと、妹紅は決心したのだった。犯罪者の考えだった。
火をつけても何も解決にならない。
最近灯油も高いから幻想郷では貴重品だった。だから永遠亭を後にした後に、妹紅はガソリンスタンドに灯油を盗みに行った。
危険物取り扱いの心得がある妹紅は、ガソリンスタンドの主人である亜求が外で新鮮な空気を吸いに外出した時にポリタンク持って勝手に灯油を盗み出した。
借金を返済するかわりに火の海を見せようと思ったのだった。
「それで? 今日はフランドールファイナンス紅魔館支店まで来て何の用なの?」
「フランドール」
「なあに? もう、あなたには鐚一問貸さないわ。後はただ死ぬまで返済し続ければ良いの」
妹紅は服の下に灯油の入った袋を仕込んでいた。
「これも、記事になりますね。紅魔館の人々はどうしてこんなにも話題になってくれるんでしょう?」
ギョウヘルインニ
作品情報
作品集:
9
投稿日時:
2014/02/07 19:32:12
更新日時:
2014/02/09 22:32:01
評価:
6/6
POINT:
600
Rate:
17.86
分類
射命丸
レミリア
咲夜
+妹紅・輝夜・フランドールファイナンス
その新聞いくらで買えますか?
いつから紅魔館はヘタレの集まりになったんだか……。
そして、また悪魔は紙屑を大量生産するのだった。