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『本居小鈴のこいばなし』 作者: NutsIn先任曹長
貸し本屋『鈴奈庵』の看板娘、本居 小鈴は恋をした。
「恋ね」「恋だわ」
人里でお忍びデートをしていた博麗 霊夢と八雲 紫は、ウキウキとした足取りで歩く小鈴を見て、微笑んだ。
ある日、小鈴は激怒した。
仄かな恋心を冒涜されたのだ。
小鈴は、我を忘れた。
幼さの残る少女であるが、その荒ぶり方は尋常じゃなかった。
ある日、小鈴の恋は終わりを告げた。
小鈴の死を以って、悲恋となった。
「恋だったわね」「ええ、恋だったわ……」
鈴奈庵を訪れた弔問客に紛れ込んでいた霊夢と紫は、そう呟いた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「うん……、ここは……」
黴臭い空気の中、化け狸の二ッ岩 マミゾウは目を覚ました。
掛けている眼鏡のずれを直そうとして、初めて自分が縛り上げられ床に転がされている事に気が付いた。
マミゾウは辺りを見渡し、薄暗い空間の一角に明かりを発見した。
ぱたん。
小さな机の電気スタンドの明かりで本を読んでいた小鈴は、しおりを挟んで本を閉じた。
「小鈴……? のう、これはいったい何の冗談じゃ?」
「……冗談は――」
早歩きでマミゾウに近づいた小鈴は――、
「お前のほうだろうがあッ!!!!!」
ドスゥゥゥッ!!
「ぐぉっ!? 〜〜〜〜〜っっっ」
――マミゾウの腹を蹴り上げた。
「ガハッ……、こ……小鈴……、なに、を……」
「――くも」
「……ぁあ?」
「よくも」
「小鈴……?」
「よくも、私を騙したなァァァァァッッッ!!!!!」
ガッッッ!!!!!
「ぎゃがっ!!」
ブーツを履いた小鈴の足は、今度はマミゾウの顔面を捉えた。
マミゾウから、眼鏡、頭上の葉っぱ、口と鼻から流れた血が飛んだ。
呪い(まじない)の篭った葉を失い、マミゾウは粋な姐さんから通常の妖の姿――神霊廟異変で霊夢達と遊んだ(勝負した)姿――になった。
「はっはーっ!! 化けの皮が剥がれたな!! このクソ狸がぁっ!!」
「っ!!」
マミゾウは自覚せざるを得なかった。
妖魔本――ヒトならざる存在がしたためた人外の言語と呪術が込められた書物――を読解できる能力を持つ小鈴を誑かして手駒にする陰謀は挫けたと。
「の、のう。おぬしを騙したのは悪かった。じゃ、じゃからの、落ち着いてくれんか――」
ガッ!!
「ぁがっ!?」
「黙れよ、狸ババア!!」
ブーツ履きのつま先を口に捻じ込まれたマミゾウ。
苦しさと吐き気から逃れようと身体を動かそうとしたが、人間の小娘ごときに縛られた手足は自由にならず、戒めの紐は切れることは無かった。
「無駄よ。ここには霊夢さんから貰ったお札で妖力封じの結界が張ってあるから」
「はが!?」
「さすが博麗の巫女。勘でこうなる事が分かってたのかしら?」
霊夢は、マミゾウの小鈴への接近を快く思っていなかった。
だから、予め妖怪対策の札を小鈴に渡しておいたのだろう。
(ちと、霊夢をおちょくり過ぎたか……)
マミゾウは、今更ながら調子付いた己を迂闊だと思った。
「ぷは――」
ようやくマミゾウの口から小鈴は足を退け――、
バンッ!!
「ぎゃ!!」
――足の裏全体を使って、マミゾウの顔面に蹴りを入れた。
所詮小娘のけたぐり。大した威力は無いが、マミゾウは後頭部を壁にしたたかに打ち付けてしまった。
「っ痛ぅ……」
頭の痛みに顔をしかめながらも、老獪なマミゾウは窮地を話術で切り抜ける算段を脳内でしていた。
(ひとまずこの場は小鈴を殺してでも切り抜けて……、寺でほとぼりが冷めるのを待ってから『外』に出るかいのう……)
マミゾウは幻想郷と外界を繋ぐ『抜け道』を知っていた。
博麗の巫女や彼女の恋人でもある賢者でも追っては来れまい。
パーフェクトなプランが出来上がり、いざ実践しようとマミゾウは口を開いた。
ズボッ!!
「はがっ!?」
また口に何か突っ込まれた。
今度は硬く、細く、鉄と硝煙の味がした。
「悪い狸はねぇ……、猟師さんが鉄砲で射殺して、ジビエ料理のフルコースにして食べられるシキタリなのよ♪」
「ぎひぃぃぃ……っ!?」
ダブルアクションオンリーで中折れ式の回転式拳銃を手にした小鈴の目は、ギラついていた。
小鈴が人間に化けたマミゾウに、妖怪にだけ効果覿面の睡眠薬を盛った茶を振舞った、鈴奈庵。
そのすぐ裏手にある倉庫。
くぐもった破裂音は近隣住民の生活騒音にかき消され、倉庫の側の木に止まった小鳥ですら小首をかしげただけだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
小鈴は、屠ったマミゾウの一部を食べ、残りは近所の野良犬におすそ分けした。
死んだマミゾウは畜生の姿に戻っていたので、喰らうのには抵抗は無かった。
マミゾウの残骸はあえてそのままにして、野良犬が獣の死骸を倉庫に引きずり込んだ事にした。
小鈴が家族にその作り話を報告すると、後の処理をしてくれた。
マミゾウを撃ち殺すのに使った拳銃は、鈴奈庵のカウンター裏に忍ばせている護身用の物だ。
足りなくなった拳銃の銃弾は、あれから数日後、自警団と婦人会が協同で主催した銃の講習会の射撃訓練で得た弾で帳尻を合わせた。
厄介事は一ヶ月ほどで恙無く解決した。
マミゾウが殺されてから一ヶ月と一日後。
小鈴は、封獣ぬえに殺された。
小鈴がマミゾウを殺し食った倉庫。
おびき出された小鈴は、一人の女性に首を絞められていた。
女性は店の常連だった。
女性は、マミゾウが人間に化けた姿だった。
今は、ぬえがこの姿に化けていた。
マミゾウの敵を討つには、この姿が一番だからだ。
この姿で店内の小鈴を手招きしたら、簡単に釣れた。
ぬえはマミゾウの死臭漂う倉庫で、小鈴がマミゾウを殺した事を本人の口から聞き出した。
小娘の首なぞ、片手でポキリとヤれるが、敬愛するマミゾウの敵だ。たっぷり楽しませてもらうことにした。
じわじわ。じわじわ。
血の気が失せていく小鈴の顔。
涎を垂れ流す小鈴の口。
糞尿を垂れ流す小鈴のシモ。
小鈴が死んでも、ぬえは両手で首を絞め続け、ついに頭が胴体から千切れてしまった。
どさり、べちゃ、と小鈴の胴体が床に落下した音を聞き、ぬえの下半身から硬く太く長い、滾る剛直がショーツとスカートを跳ね除けて生えてきた。
ぬえは手にしていた憎き小鈴の生首の、舌をだらんと垂らした口に逸物をぶち込んだ。
にちゃにちゃ、ぐちゃぐちゃ。
殺った、ヤッたよ。マミゾウ!!
精液を小鈴の口と首の断面から噴出させながら達したぬえは、刹那見えた花園でマミゾウに報告した。
敵を討ち、満足したぬえは倉庫を出た。
目の前に、臨戦態勢の霊夢がいた。
退治されたぬえの死体は、本居家の人々が憎悪をぶつける対象として乱暴に扱われ、
御近所の方々の鬱憤晴らしの対象として粗雑に扱われ、
子供達の玩具として滅茶苦茶に扱われ、
回収に来た自警団にテキトーに扱われ、
命蓮寺の者達に丁重に扱われた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
小鈴と人間態のマミゾウが手なぞ繋いでデートする様を、同様の事をしながらにこやかに見た霊夢と紫。
紫御用達だという料亭に入り、霊夢と紫は酒と料理を楽しんだ。
「まずいわね」
食後のお茶を飲みながら、表情の消えた顔で紫は呟いた。
酒食の事ではなく、小鈴とマミゾウの件である。
「消す?」
同じく無表情で、霊夢は紫に尋ねた。
「そうね――」
二人はしばらく幻想郷を護る者として打ち合わせをした。
「――ということで、頼んだわよ」
「分かったわ」
打ち合わせ終了。
紫は立ち上がり、隣の布団が敷いてある部屋に霊夢を誘った。
「邪魔するわよ」
「いらっしゃい、霊夢さん」
次の日、鈴奈庵を訪れた霊夢は、しばらく立ち読みをして他の客がいないことを確認すると、こっそり人払いの結界を張った。
「小鈴、ちょっといいかしら」
「何ですか? いきなり改まって?」
霊夢は二人分のお茶を淹れた小鈴の目を見て言った。
「昨日、あんたがデートしていた女。あいつは二ッ岩 マミゾウって狸が化けたものよ」
「は、はい!?」
きょとんとする小鈴に詰め寄る霊夢。
「だから……、『狸があんたの恋人に化けていた』のよ!!」
「え!? ど、どうゆう……」
「私、昨日、別な場所であの女に会ったのよ」
「は……、はぁ!?」
「何でも、今日予定していたデートをあんたにドタキャンされたってぼやいていたわよ」
「へ!?」
「あんた……、狸に化かされているわよ」
「!!」
霊夢は、マミゾウが化けた人間の女が別に存在するよう、小鈴を騙した。
「そこで、これよ」
霊夢は永遠亭のロゴが入った瓶から錠剤を二粒取り出し、自分と小鈴のお茶に入れた。
「何を――」
「飲みなさい」
霊夢はそう言うとお茶を飲んだ。
小鈴も恐る恐る、薬入りのお茶を飲んだ。
数分経過したが、二人とも、何とも無かった。
「何です、この薬?」
「妖怪にだけ効く睡眠薬よ。これをあんたのいいヒトが来たら飲ませなさい」
「つまり――」
「寝たら、そいつは妖怪狸が化けた『偽者』というわけよ」
霊夢はさらに駄目を押した。
「最近、恋人同士を破局させてから食い殺す、悪ぅい狸が出没するそうよ……」
「まさかっ!!」
「そのまさか、かもね……」
「……」
「あっそうそう。あんたの好いているヒト、しばらく仕事で鈴奈庵に来れないって言ってたわ」
「そうなんですか?」
「ええ。だから近日中に現れたら、そいつは……」
ごくりと唾を飲む小鈴。
「念のために、コレも渡しとくわ」
霊夢は呪符を一枚、小鈴に握らせた。
「コレを貼った部屋では、数時間、妖怪は妖力を封じられるわ」
「……何故、これを私に?」
「妖怪は、人間の敵よ」
札ごと小鈴の手を握ったまま、霊夢は冷たく告げた。
「殺らないと、あんたとあんたの恋人が、殺られるわよ」
一羽の小鳥が紫の差し伸べた手に止まった。
ぴーぴー♪
「そう……。ご苦労様。ボーナスを楽しみにしてね☆」
ぴーっ♪
小鳥――紫の式神は嬉しそうに一鳴きすると、空に舞い上がった。
「何だって?」
「小鈴ちゃん、マミゾウを仕留めたそうよ」
「良かった……」
「それじゃ、霊夢。一月ほど、あの辺を妖怪の目から隠しておいてね」
「分かったわ」
霊夢は鈴奈庵に出向き、嬉しそうに『妖怪退治』をした事を告げる小鈴に、その事を黙っているように告げた。
仲間の妖怪が仕返しに来るかもよ。
小鈴は青い顔をして頷いた。
霊夢は帰る時に、有効期限一ヶ月の妖怪払いの結界を張っておいた。
マミゾウの死から一ヵ月後。
「マミゾウ……。どこ行っちゃったんだよ……」
ぬえはマミゾウを探して、幻想郷中を飛び回っていたが、成果は無かった。
「外界に行っちゃったのかな……?」
「それはありませんわ」
「おわっ!?」
ぬえのすぐ隣に、ぬえを上回る正体不明な大妖怪、八雲 紫がスキマから現れた。
「あなたの探し人は、是非曲直庁でお見かけしましたわ……」
「え、ま、まさか……、マミゾウは……」
「殺された、そうですわ」
へなへなと崩れ落ちるぬえ。
「だ、だれがそんな事を……」
「鈴奈庵という貸し本屋の娘、と言っていたわ」
「!!」
そうだ!! マミゾウが入れ込んでいる小娘がいた!!
どうして、そいつの事を思い出さなかったのか!!
ぬえは、霊夢の妖怪払いの結界で認識を狂わされた事に気付いていないようだ。
「マミゾウさんが言いますに、まだ人間に化けた姿が自分だと知られていないそうですわ」
「え!?」
「あのガキ、最近姿を見せない恋人を待ち焦がれているのではなくて?」
紫はそれとなく、ぬえに策を授けた。
「……」
「では、ごきげんよう♪」
紫は笑みを扇子で隠しながらスキマに没した。
次に紫が現れたのは博麗神社である。
「霊夢、行ってちょうだい」
「じゃ、人殺しの妖怪退治、してくるわね」
追尾護符や退魔針――弾幕ごっこ用ではなく、殺傷能力のある『仕事用』だ――を両袖や懐にびっしり装備した霊夢はお払い棒を手にすると、人里目指して飛び去った。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
恋に生き、恋に死んだ少女、本居 小鈴。
だが、彼女は危険物である妖魔本を読み解ける能力者であるために、幻想郷の平和を護る者達からは危険分子と見なされていた。
霊夢の友人であり、相方であり、情報収集担当である霧雨 魔理沙の報告では、霊夢の生命を危機に至らしめた邪竜の封印を解いたとか。
さらに霊夢に対して恫喝まがいのことも平然と行ない、裏社会とも繋がりのある命蓮寺の客分、二ッ岩 マミゾウが小鈴の能力に目を付けた。
最早、本居 小鈴と二ッ岩 マミゾウは、幻想郷にとって害悪でしかなくなった。
直接両名を抹殺しても良いのだが、そうすると小鈴と友人である現代の阿礼乙女――稗田 阿求に少なからず悪影響を与える恐れがあった。
なので、小鈴の恋心を利用した、えげつない策を用いる事になってしまった。
紫と霊夢が小鈴の葬儀から立ち去った後、鈴奈庵は線香か蝋燭の火の不始末で火事になった。
火を消そうとした葬儀の参列者達の奮闘空しく、建物と商売道具の貸本は全て灰と化してしまった。
小鈴は幻想郷の危険分子だから、早々に始末しないと……。
てな妄想から、今作が誕生しました。
2014年7月7日(月):お待たせしました。コメントへのお返事を追加しました。
>県警巡査長殿
食わせ者共がハメられたと知ったら……。くくく……♪
ぬえのナニと小鈴の生首は寺子屋の理科室にでも置いときましょう。
御名答♪ 小鈴が使った拳銃は、二十六年式拳銃です。
幻想郷は何かと物騒ですからね。
>2様
ハボック!!
>3様
まさかグータラな博麗の巫女サマが恐ろしい事を企んでいるなんて、霊夢の外面しか知らない者は思いも
しないでしょうねぇ。
>ギョウヘルインニ様
幻想郷の管理も楽じゃない。
>5様
蛇足ですが私の脳内では、魔理沙は仕掛人をやっていたりします。
>まいん様
マミゾウはいざ知らず、小鈴は恋に恋するお年頃で書物の知識しか無さそうだから、結婚詐欺とかに結構
コロッと騙されそう♪
霊夢「紫は特別よ♪」
紫「特別な存在にあげる飴ちゃんをどうぞ♪」
>ラビィ・ソー様
マミゾウ・カムバァァァァァック!!!!!
>ふすま様
でも、博麗の巫女サマに対する不敬はいただけないな。
NutsIn先任曹長
http://twitter.com/McpoNutsin
作品情報
作品集:
10
投稿日時:
2014/05/06 19:05:53
更新日時:
2014/07/07 02:54:42
評価:
8/8
POINT:
780
Rate:
17.89
分類
本居小鈴
二ッ岩マミゾウ
封獣ぬえ
博麗霊夢
八雲紫
ゆかれいむ
殺された連中はこの事実を知った時の顔が見てみたいものです。
ぬえが小鈴を死姦する場面に思わす高ぶりました。彼女のナニはホルマリン漬けとして保管したかったですねぇ。
小鈴が護身用として持っていたのは二十六年式拳銃でしょうか。
自警団と婦人会はそんな素敵な講習会を開いているなんて!!自分もニューナンブを持って参加したいです。
でも霊夢の言う事欠片も疑わない辺りあんまり賢くなさそうなのに、
事後処理も巧みに済ませているのは、そこもやはり入れ知恵なのか。
誰かがしなくてはならない。
芝居だとは思いますが、霊夢の妖怪は人間の敵の台詞に、あんたのフィアンセは!?とツッコミをいれてしまいました。