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『産廃創想話例大祭B『心壊し人形』』 作者: 仙人掌うなぎ

産廃創想話例大祭B『心壊し人形』

作品集: 10 投稿日時: 2014/05/23 17:24:49 更新日時: 2014/05/24 02:25:28 評価: 14/19 POINT: 1500 Rate: 15.25
 アリスが爆発した。


 レミリアとこころと燐も爆発した。



 アリス・マーガトロイド、爆発。
 それだけならば、まあアリスも爆発することくらいあるだろう、程度にしか思われない。アリス・マーガトロイドには作った人形に火薬や剣や槍やなんかを混ぜる趣味がある。人形ばかり爆破させるのもなんだからたまには自分も爆破させてみたとか、そういうこともあるかもしれない。
 そもそも、幻想郷において爆発というのは、あまり珍しいものと捉えられていなかった。純粋な爆発はそんなに転がっているものではなかったのだが、負けた者が弾けて消えるような幻想郷だ。弾幕だって破裂する。爆発らしいことが多すぎるので、多少の爆発など日常茶飯事だと思い込んでいる者がほとんどだったのである。霊烏路空や伊吹萃香のような、強烈な爆発物感を醸し出しているのが、ちらほらいるせいでもある。
 だから、十六夜咲夜からアリスが爆発したらしいという噂を聞いても、レミリア・スカーレットは特に興味を示さず、「ふうん」と適当な返事をした。それよりも、四日後に紅魔館に迷い込んだ藤原妹紅がフランドール・スカーレットにメイド服を着せられてしまうという破滅的な運命を如何にして回避するかを考えなければならなかった。
 レミリアにとって運命というのはうすぼけたものなので、というより暇なときくらいしか能力を意識しないので、基本的にはっきりした未来を予測できるものではない。それでも調子のいいときはかなり正確に予知できるし、都合の悪そうな運命ならねじ曲げて変えている。誰にも信じてもらえてないが。
 しかし、ちょっと運命を動かしてみても、藤原妹紅が四日後の午前中に蓬莱山輝夜に殺された後、ふらふらして道に迷った末に紅魔館へ向かって歩き出してしまう運命は変わらなかった。不思議に思ってレミリアも真面目に能力を使ってみたが、妹紅の奇天烈な思考回路はレミリアの予測を明後日の方向に押しやってしまうのだ。
 さすがは不老不死、無駄に長生きしてるだけある。レミリアは感心した。たった五百年生きただけの自分では対応できない発想力の持ち主だったようだ。

「これはどうしようもないかもしれんな」とレミリアは思い始めていた。藤原妹紅がメイド服を着たら、瞬く間に時間操作を習得して、時をかける焼死しない危険な蓬莱の人の形という奇怪な生命体が誕生し、いたずらに死亡と復活を高速で繰り返し、最終的に生きているのか死んでいるのか判然としない状態のまま幻想郷を徘徊するモンスターになってしまうに違いない。そうなると、エネルギーだかエントロピーだか、そういうことはレミリアは詳しくないのだが、とにかく世界の法則か何かがおかしくなると思っていた。
 実際には、藤原妹紅は時間に関してはとりわけ鈍い人間なので、メイド服を着てもせいぜい焼き鳥が数秒早く焼き上がるくらいが限界だし、一度死んで生き返ると服装が元のもんぺ姿に戻ってしまうので、完全に杞憂だった。しかし運命でもそこまでは知りようがないので、レミリアが妙な危機感を覚えてしまったのも仕方のないことだったと言える。

「むむう、むうん」
 レミリアは唸っていた。本格的に能力を使うため、人払いをして自室に閉じこもって、早数時間。運命操作は行き詰まっていた。
「やはりどうにもならん」
 部屋に持ち込んだお菓子も全て食べてしまった。
 どうしたもんかと悩んでいると、突如としてレミリアの頭部が爆発した。

 あまり大きい爆発ではなかった。それでもレミリアの小さな身体の、鎖骨から上を木っ端微塵にするには十分だった。粉々になった頭蓋骨や脳や肉やいろいろなものが部屋中にまき散らされた。眼球が壁にぶつかって潰れた。歯がティーカップを砕いた。何カ所も折れ曲がった翼が付け根から千切れて皮膚の一部とともに床に落ちた。
 レミリアははじめ、何が起こったのかわからなかった。眼も耳も吹き飛んでしまったからだ。爆音も聞こえなかったから、唐突に暗闇に包まれたように感じられた。それでもすぐに頭がなくなっていることに気づくことができたのは、やけに身体が軽く、バランスが取りづらかったからだ。
 レミリアは過去に何度か、主に加減を弁えない妹の仕業で、頭をなくしたことがあったので、たいして慌てなかった。幸い、腕はとれていなかった。頭がどこかにいってしまったのなら、まずはどこかその辺に落ちていないかと、手探りで探した。すると柔らかい、生暖かいものが掌に広がり、指と指の隙間に粘っこい何かが伝わってきた。それで頭だったものは散乱してしまったらしいとレミリアは察した。
 自分の頭部の残骸の感触は気色悪かったが、放っておくのも嫌なので、できるだけかき集めることにした。ほとんどがドロドロの何かになってしまったが、それでも脳や骨や肉や血管らしきもののそれなりに大きい破片が幾らかあった。集めた残骸を、上部がなくなってむき出しになった胸の中に、次々とねじ込んでいった。掴んではねじ込み、掴んではねじ込み、しかし大部分はこぼれ落ちてしまうので、やや手こずった。
 妖怪は、特に血が足りている時の吸血鬼は、身体の大半がなくなってもそのうち治る。ただ、もともと自分の身体だったのだから、新しく生えてくるとしても、もとのものをそのまま使えるならばできるだけ長く使いたいというのが、一般的な妖怪の心情である。レミリアも、自分の腕が切り落とされたらちゃんとくっつけるし、バラバラにされた後すり潰されても、拾えそうなものは拾っておく。これは一種のマナーだ。自分の身体は自分が責任を持つという常識を、レミリアは心得ていた。
 だからレミリアは、集めた残骸を体内に詰め込んだ。後は身体が勝手に治してくれる。身体の中で何かが膨れたり潰れたりするような音がして、詰め込まれたものが蠢き、足りない骨や肉などが生え、なくなった部位を作っていった。痛くはないが、身体の内側から押されるような感覚が断続的に響いてくるのがこそばゆかった。
 爆発からわずか一時間ほどで完全に治ったのは、吸血鬼の回復力によるところが大きいだろう。
 はて、いったいなんだったのかしら、とレミリアは首をかしげた。かしげたものの、そんなことより、今は藤原妹紅のほうが問題なのだと思い直した。これくらいのことで取り乱すのはよろしくないのではないかと判断した。部屋が散らかっただけだ。後で咲夜に掃除させればいい。

 レミリアはそれからまたしばらく、妹紅の運命を突っつき回してみたが、全く歯が立たなかった。自分では藤原妹紅には一歩及ばなかったか。あと五百年あればまた違った結果になっていたかもしれない。残念なことだ、とレミリアは完全に諦めてしまった。
 諦めて、絶望や無力感に打ちひしがれた美少女らしく振る舞う練習をすることにした。あまりそういった方面の感情を抱いたことのなかったので、いざというときのために準備が必要だった。へなへなと座り込んでみたり、手に持ったものを取り落としてみたりしているうちに、レミリアは自分の頭が消し飛んだことなど忘れてしまっていた。


 レミリア・スカーレットの爆発とほぼ同時刻、秦こころと火焔猫燐の頭部も吹き飛んでいた。この二人はレミリアとは違い、頭部がなくなる事態に慣れていなかったので、回復に半日を要した。こころは爆発の拍子に手持ちの面のほとんどが飛んでいってしまったので、面を探す旅に出た。火焔猫燐は、手に入れたばかりの若くて生きのいい新鮮な死体を、爆音を聞きつけた人に見つかり、頭がなくて右往左往しているうちに奪われてしまったので、なんとしても取り返さなければならなかった。そんなわけで、各々差し迫った事情を抱えていたので、そのときは誰も爆発なんかには構っていられなかった。


 四日後。
 いよいよ藤原妹紅が紅魔館に襲来するであろう日がやってきてしまった。この四日で、運命が変わった様子はない。
 レミリア・スカーレットは無駄な足掻きというものをしない。破滅的な未来を前にして、妹紅を返り討ちにしてやろうだとか、月ロケットを飛ばして逃走しようだとか、やけになってええじゃないかと叫んでやろうだとかは考えなかった。
 だからレミリアは平凡な日常らしい雰囲気を演出することにした。具体的には朝早く起きてパンを食べ、紅茶を三杯飲みながら新聞を広げ、現代社会や最近の若い妖怪についての愚痴をこぼしてみたりなどした。もちろん普段のレミリアは新聞など読まないし、朝はまず寝ている。
 何とかいう難しい名前の天狗から取り寄せた新聞をぼうっと眺めていると、隅っこのほうに「吸血鬼レミリア・スカーレット爆発」の記事があった。
「そういえば爆発したっけなぁ」とレミリアは思い出した。
 しかしいつの間にか記事にされるとは。インタビューを受けた覚えもない。適当な記事を書くヤツが増えたと聞くが、全くけしからん。
 釈然としない気持ちで読んでみると、レミリアの他に秦こころと火焔猫燐も爆発したと書かれていたが、肝心の爆発については原因不明、詳細不明で何とも不明瞭な内容だった。しかも一緒に載せられていた写真が、少し前に神社の宴会に行った時の酔っぱらったレミリアの姿だった。
「むむ、むむう」レミリアは唸った。やはり三下天狗の新聞などロクなものではない。
「だが、天狗に抗議するほどのことじゃないしなぁ」
 それに、新聞の名前も記者の名前も読めなかった。レミリアは幻想郷に来る以前から日本語の読み書きを習得していた。日本語だけでなく十六カ国語ペラペラだった。しかし天狗のネーミングセンスはなんだかややこしい捻くれた字面を使いたがるので、レミリアでも読めなかった。唯一まともな付き合いのある射命丸文くらいしか、天狗の名前を知らなかった。かといって、咲夜に訊くのもプライドが許さなかった。
 レミリアはお金持ちでお嬢様で吸血鬼で美少女なので、何かあったら記事にされるのは仕方がないことだと思っていた。特に美少女だから仕方がないと思っていた。射命丸文なんてあることないこと書いてばかりだ。今更気にすることはない。普段のレミリアならそう思っていたはずだ。
 しかし、その日のレミリアは、朝早く起きすぎたのか、紅茶を飲み過ぎたのか、少し落ち着きがなかった。何となく焦りを感じはじめていた。
「なんだろうなぁ」得体の知れないやり切れなさのようなものがあった。平凡な日常を謳歌する美少女レミリアとして振る舞っているはずなのだが、どうも納得がいかない。
「そうだ、爆発だ」
 レミリアは違和感の正体に思い当たった。
 そういえば、あれだけ運命をごちゃごちゃにしていたというのに、自分の頭が消し飛ぶ予兆は全く見えなかったではないか。レミリアは自分の能力が酷く不安定で曖昧なものであるという自覚を持っていたが、それにしても、直接自分の身体に傷を負わせる事態をほんの少しも予感できないなんてことが、あり得るだろうか。能力を抜きにしても気づけそうなものだ。ごく爆発然とした爆発だったからすっかり見逃していたが、ただ爆散しただけではなさそうだ。
「気に入らんな」レミリアは呟いた。「うむ、気に入らん」
 何だか出し抜かれたような気分だった。自分の前にアリス・マーガトロイドが爆発。それから自分と面霊気と化け猫が爆発。美少女吸血鬼たるレミリア・スカーレットがそいつらと同等に扱われているふうなのが、気に食わなかった。
 気持ちを落ち着かせようと、パチュリー・ノーレッジに借りた本を読んだりしてみたが、しだいに苛立ちを抑えられなくなり、数ページも読まずに本を閉じた。
 じっとしているのはよろしくないことだ。
 衝動的な、しかし確信だ。
 思ったときには動き出していた。レミリアは走った。そのまま手近な窓を体当たりでぶち破り、外に飛び出した。怒りに身を任せるべきだと感じた。
 紅魔館を出て、レミリア・スカーレットは、雲一つない晴れ渡った空を飛んだ。
 できるだけ速く、できるだけ高く飛びたかった。

「いやいやいやいや。ちょっと待て」
 しばらく飛んで、レミリアは空中で静止した。
「灰になってなきゃダメだろ」
 何と言っても吸血鬼なのだ。まだ午前中だ。日傘も忘れて空を飛んでいた。よく考えたら自殺行為だった。それなのに、髪の毛一本焦げてすらいなかった。
「おかしい。絶対におかしい」
 もしや既に死んでいるのでは、と思ったが幽霊になったわけでもなかった。
 日光を浴びて灰にならない吸血鬼はいない。
 本当は少しくらいなら平気だ。個人差も大きい。レミリアは日傘一本でしのげる。しかし吸血鬼が日光に弱いという事実は絶対だ。空中で太陽をぽけーっと眺めて無事でいられる吸血鬼などいないのだ。
「これはまずい。尊厳に関わるぞ」
 圧倒的な戦闘力と大量の弱点を併せ持つ己の肉体は、レミリアの誇りだった。
「いったい私はどうなってしまったのだろう?」
 レミリアは考え込んだ。命蓮寺上空あたりでくるくる回転しながら考え込んだ。
「やはり怪しいのはあの爆発だな」
 心当たりは四日前の爆発しかなかった。もしかして手当たり次第に頭の破片を集めたときに、何か変なものでも混ざってしまったか。
 しかし何か引っかかる。それがわからず、レミリアは頭を抱えた。
 するとかすかに妹紅の運命が見えた。

 命蓮寺の者たちが空中でくるくる回るレミリアを目撃するが、晴れの日に吸血鬼が空で回転するわけがないので、どうせ正体不明がコウモリか何かを正体不明にしたのだろうという話になる。正体不明なので正体は不明だが、正体不明は一人しかいないので、封獣ぬえのせいだと推測される。とばっちりだと憤慨したぬえが復讐を誓い、紅魔館へ乗り込む。そこで先にフランドール・スカーレットに捕まっていた妹紅はぬえを囮にして逃げ出す。結果としてぬえがメイド服を着て、妹紅は二回フランドールに殺されながらも無事に紅魔館を脱出する。

 図らずも自分の行動が妹紅とついでにぬえの運命を変えたレミリアだったが、自分の身体が心配で、喜ぶ余裕はなかった。
 だからレミリアは回転した。
 回り続けていると、突然声をかけられた。
「やあやあ」と呼ばれて振り向くと、狐の面を被った少女が空に浮かんでいた。
 狐面で顔が見えないが、穴の空いた斬新な柄のスカート、ピンク色の長い髪、周囲に浮かんでいる様々な面。
 秦こころだ。
「貴様、レミリア・スカーレットだな?」
「ぅえ? あ、はい。そうですけど」
 いきなり偉そうな口調で言われてつい変な声が出てしまった。
 こころはいつの間に持っていたのか水色の槍を構えた。
「え、なんで? え?」
 混乱するレミリアに、こころが叫んだ。
「我こそは秦こころ! 最強のアリスの人形の称号を賭けて、私と戦え!」

 その言葉でレミリアは知った。
 爆発。
 アリスが人形を爆発させるところを、何度も目にしたことがあった。

 レミリア・スカーレットは、アリスの人形になってしまったのだ。








 秦こころが爆発したのは、博麗神社での能の演目をつつがなく終えた矢先のことだった。
 こころがいると神社が儲かるので、博麗霊夢は感情の勉強だの弾幕の勉強だの常識の勉強だのと理由をつけてなるべくこころを神社に置こうとした。そして時々能楽をやらせているのであった。こころとしてもそういう場が用意されているのはありがたかった。
 以前、どれも似たり寄ったりの演目ばかりで面白くない、と霊夢に指摘されたので、練りに練ったストーリーを作ってきた。なぜかじろじろ見つめてくる少し怖い貸本屋の娘から資料を借りて、化け狸の協力もあって完成した力作だ。演技力の向上のために、思い切って使う面の数も大幅に増やした。普段は喜怒哀楽に数枚足す程度しか面を持ち歩かないこころだが、今回は六十六枚中二十四枚を持参した。そんな努力の甲斐あって、その日は大盛況だった。
 そんなときに爆発したものだから、二十四枚の面のほとんどが爆風で吹き飛ばされ、どこかにいってしまった。
 こころは首が粉々になった経験がなかったので、激しく混乱してしまった。混乱したので、とりあえず驚愕の面か困惑の面を被ろうとしたが、面を被る顔がなかった。顔がないので感情を表せない。感情を表さないことには何もはじまらない。こころはそういう生き物だった。
 こころは自分が何を感じているのかすらわからなくなってしまった。
 幸い、霊夢と小人の助けもあって、頭はなんとか元に戻ったのだが、そのころには二十四の面のうち実に十六枚の行方がかわからなくなっていた。
 紫マント仙人に新しい面を作ってもらうことを一瞬だけ考えたが、希望の面の壊滅的なデザインが頭をよぎった。ヘッドホン仙人を模したあの金色の顔が、しかも様々な表情で自分の周りを取り囲んでいる様子を想像した。まさに絶望の仮面舞踏会である。
 やはり面を探しに行かねばならぬ。こころはなくした面を回収する旅に出た。四日間、天界から地底まで、あちこち探して回った。それはもう、語るも涙、聞くも涙の波瀾万丈だった。ポーカーフェイスを我慢強いのだと勘違いした天人に耐久力勝負を挑まれ、河童にボッタクリ価格をふっかけられ、銀髪仙人の船に撥ねられ、高速回転する狐に轢かれ、虫に蹴り飛ばされ、アイテムをばらまく正体不明の光源にも衝突した。面霊気の長いのか短いのかよくわからない生涯で間違いなく最悪の四日間だった。だからこころはこの日々の出来事を、あまり思い出さないようにした。振り返ってみても、どんな顔をすればいいかさっぱりだったので、速やかに忘れることにした。

 数々の苦難を乗り越えた末に、全ての面を取り戻した。
 しかし大変なのはそれからだった。
 そうほいほい面をなくしてばかりのヤツに任せてられん、と面たちが被られてくれなくなってしまったのだ。面がないと能楽もできない。こころはすっかりまいってしまった。

 こころにとって六十六の面は自分自身だ。もし面がこころに従属するものだったならば、簡単に制御できたはずだ。しかしこれら全てこころそのものだから困難なのだ。自分が自分の言うことを聞くわけがない。自分だから自分を見限ることもある。
 面霊気の自覚が足りない、と面たちは代わる代わるこころを罵倒した。だんだん台詞が間抜けになってる、仕草があざとい、ヘソ出すな、髪が面の内側に当たって痒いから髪を切れ、などなど、いい機会だとばかりに散々にこころを責めた。
 そこまでバカにされる謂れはない、とこころも激高した。勝手に吹き飛んだのは面のほうだ。やっぱり全部破棄してミミズク仙人に新しいのを作らせようかと本気で悩んだが、せっかく頑張って集めたのにそれではもったいない。かといってコケにされたままではいられなかった。
 こういうときは戦えばいいことをこころは知っていた。幻想郷は戦いの世界なのだ。
 こころは面と戦った。一対六十六。だが面は単体ではまるで戦えないので、こころが一方的に面を攻撃し続けた。自分で自分を攻撃していることになってしまうが、構わなかった。逃げ惑う面たちを一つずつ捕まえて殴った。卑怯だと文句を言ってきたり、悲鳴を上げたりする面たちをひたすら叩いて叩いて叩いた。
 こころは面をやっつけた。

 暴力と恐怖によって面を支配したこころは、そこでようやく自分がアリスの人形になっていることに気づいた。面が四枚ほどまた何か罵ってきたが、ヒビを入れてやったらおとなしくなった。
 アリスの人形になったと言っても、なにも肉体が本当に人形になってしまったわけではない。しかしこころには自分が今アリスの人形になっているという実感があった。精神か魂か、そんなものがアリスの人形になっていたのだ。
 ただの面から妖怪になった。さらに今度はアリスの人形になるとは、なんたる摩訶不思議か。しかし付喪神はそもそも人形のようなものではなかったか。だとすればたいした差はないのかもしれない。
 だが、アリスの人形になったのだから、自分のこのガチガチに硬い面構えは、多少なりとも改善されるのではないかと期待した。
 アリスの人形は一般的な人形と比べると、やたら生き生きとしていることでよく知られていた。こころも以前、アリスの人形劇を見物したことがあった。人形なのに表情豊かで、感心したものだ。今更自分の無表情に不満はなかったが、付喪神ですらないのに多彩な感情を表す人形たちに、若干の憧れを抱いていたのも事実だった。
 こころは面を使わずに喜怒哀楽を表現しようとした。しかしこころに張り付いた能面のような顔は依然としてぴくりとも動かなかった。まさに人形のように、頬が動かないのだ。
 アリスの人形になっても、こころの表情は変わらなかった。
 だからどうしたと言われればそれまでだ。しかしこころは、どういうわけか、無性に恥ずかしくなった。恥ずかしくてたまらなかった。アリスの人形は表情を変えることができなければならないのだ。アリスの人形になったくせに、表情が全く変わらない自分は、これからアリスの人形業界でやっていけないのではないだろうか。人形以下の自分が付喪神としてどれほどのことができるだろう。こころは由緒正しい面霊気だ。だからこころは、唐傘や楽器の付喪神と比べれば、自分はずっと格上の存在だと思っていた。いや、妖怪全体の中でも、特に優れた部類に入ると自負していた。
 それがこのザマである。

 顔を隠さねばならぬと感じた。この顔を人に見られてはならぬ。自分の顔は面のほうが本体のようなものだったが、今は肌を見せてはいけないと感じた。アリスの人形なのに表情がないだなんて、誰かにバレてしまったらと思うと、恐ろしくて震えが止まらなかった。
 こころは面を被った。いつものように側頭部に乗せておくのではなく、しっかりと被って顔を隠した。たまたま手に取った、狐の面だ。感情を表すためではなく、顔を隠すために面を被るのは初めてのことだったから、今の感情をどの面で表現すればいいのかわからなかったのだ。
 だが、面で隠したところで、所詮は応急処置でしかない。このままではいけない。アリスの人形として、このままではいけないのだ。ならば何とするか。
 戦わねばならぬ。
 その思いがわき上がってきた。希望を求めて宗教家たちと戦った希望なき日々の記憶が蘇った。
「アリスの人形なのに表情がない! それは何故か!」
 こころは叫んだ。
「それはアリスの人形を知らぬからだ! 妖怪と人間の感情は学んできたが、アリスの人形の感情とは盲点だった。アリスの人形を学べというのだな!」
 無意味に三回ガッツポーズした。
「学ぶ手段と言ったら一つしかない!」
 決闘だ。
 アリスの人形になったのだから、アリスの人形を極めるべきだとこころは考えた。アリスの人形たちに勝ち続け、最強のアリスの人形の称号を手に入れれば、感情も必ず理解できるようになる。
 アリスの人形になったのは爆発のせいだとこころは感づいていた。つまり最強のアリスの人形候補は爆発している。聞くところによるとレミリア・スカーレット、火焔猫燐、アリス・マーガトロイドの三名。現時点でもっとも最強の称号を持つのはアリスだろう。アリス本人がどれだけ優秀なアリスの人形になれるかは未知数だが、長年人形遣いをやっているのだ、知識やなんかが桁違いだ。
 こういうものは弱い順に戦って行くに限る、とこころは考えた。アリスは後回しだ。レミリアと燐、どちらだろうか。どちらも人形らしいと言えば人形らしい。感情も豊かそうだ。
 どちらかというとレミリアだろう、とこころは思った。小さくて肌が白くて、どことなく人形っぽい。だから火焔猫燐から倒すことにした。

 火焔猫燐を見つけるのは、とても簡単だった。燐はときどき鳴く癖があった。この鳴き声がまたよく響く。にゃーん、と聞こえてきたら、近くに燐がいる。
 燐は人里にいた。黒猫の姿だった。どうやら人間の死体を求めてきたらしい。妖怪ならば爆発しても死なないが、人間ならばまず間違いなく即死だ。燐は自分が爆発したのだから、人間もいつかは爆発するだろうと考えたようだ。爆発死体は貴重なので、人里に忍び込んで爆発を待っていたのだろう。だが、人間が人形になれるわけがなかった。
 こころはさっそく燐に戦いを挑んだ。
 ちゃんと「最強のアリスの人形の称号を賭けて戦え!」と宣言したが、燐のほうはイマイチよくわかっていない様子だった。
 構わずやっつけることにした。
 戸惑う燐に問答無用で攻撃をしかけた。燐も慌てて応戦したが、こころのほうが幾らか燐よりはアリスの人形的だったので、こころが勝った。
 人里で戦ったせいで、変に目立ってしまった。注目を浴びている状態で死体を盗むのは不可能だ、と言い残し、燐は早々に地底へと帰ってしまった。
 こころは喜び勇んだ。あっさり最強のアリスの人形の称号が一つ手に入ったのだ。幸先のいいスタートだ。
 こころはさらに、それから程なくしてレミリアを見つけた。どういうわけか、凄まじい勢いで空を飛んでいた。
「なんだかよくわからんが、ついてるぞ!」
 調子づいて、レミリアを追いかけて飛んだ。
 戦わねばならぬ。
 こころは意気込んだ。
 戦わねばならぬ。








 アリス・マーガトロイドにとって、人形とは武器である。武器なので、極力武装させなければならない。ただ武装させるだけではなく、強くしなければならない。
 強い人形というのは、難しいものだ。作るのも難しいが、操るのはそれに輪をかけて難しい。
 人形遣いは人形しか操れない。運命や感情や怨霊は操れない。つまり、人形ならばなんでも操れるというわけではない。人形の運命、人形の感情、人形の怨霊。人形でも操れないものは幾らでもあった。人形の武器もそうだ。どれだけ人形が武器だったとしても、武器を操れるわけではないのだ。武器である前に、人形でなければならない。
 武装した人形は重い。それにあまり賢くなってくれない。賢くない人形は、操られているということを理解してくれないので、糸を引っぱってもぶつくさごねるばかりで動こうとしない。
 だから、強い人形は難しい。
 うっかり頭の悪い人形を作ってしまうと、爆発させようとしてもなかなか指示通りに爆発しない。
 何度も試しているうちに、アリスは自分自身に爆発を飛ばしてしまった。
 アリスは爆発した。
 爆発した拍子に、アリスはさらなるうっかりをしでかした。爆発をデタラメに射出してしまったのだ。
 アリスからアリスの人形に向けて打ち出された爆発は、見当違いの方向に飛んで行った。
 無数に、あらゆる方向に。
 ほとんどはどこにも辿り着かず、あるいは幻想郷の果てのどこかにぶつかり、雲散霧消した。
 だが、偶然誰かに衝突する爆発もあった。レミリア・スカーレットや、秦こころや、火焔猫燐に。そしておそらく、他の多くの人々に。もっとも、大多数の者は、爆発がぶつかっても、ちょっと目眩がする程度にしか、アリスの人形的ではなかった。爆発できるほどにアリスの人形的な妖怪だったのは、どうやら三人しかいなかったようだ。他の誰かが人知れず爆発していたかもしれないが。
 アリスが爆発させられるのは人形だけだ。爆発するには大なり小なり人形でなければならない。
 それも、アリスの人形でなければならない。
 人形とは、精神だ。
 誰にだって精神はある。人形の精神を一つ二つ持っている者がいても不思議ではない。体内にアリスの人形の精神が埋まっていることもあるだろう。
 そして、精神は肉体を変える。
 アリスが飛ばした爆発に反応し、アリスの人形になってしまうこともある。
 そしていまだに誰にもぶつかっていない爆発が、幻想郷のどこかを飛んでいる。それがまた誰かをアリスの人形にし、吹き飛ばすかもしれない。あるいは、永遠に、幻想郷を彷徨い続けるかもしれない。

 アリスは自分が爆発し、そしてアリスの人形になっていることを知った。
 アリスにとって、アリスの人形のままで居続けるのは、望ましくないことだった。人形に命令を出す度に自分の身体が反応してしまっていてはやってられない。
 アリスは自分の体内に巣食っているアリスの人形の精神を取り出すことにした。至極当然のことながら、人形の精神がなくなれば、人形ではなくなる。
 爆発したのは頭部だ。人形の精神は、妖怪の頭部にあるらしい。
 つまり頭の中から引きずり出さなければならない。
 アリスは覚悟を決めた。

 アリスはまず、手を魔法で念入りに洗浄、消毒した。
 そして自らの左眼に、眼窩の隙間から人差し指を入れた。奥まで入れて、ゆっくりと指を曲げた。ぎぎいいいんと頭の中に圧迫される音が響いた。神経が千切れる音がした。ぐちゅりと左眼がこぼれ落ちた。身体まで人形だったら眼なんてもっと楽にとれるのにとアリスは思った。自分の体内から血の臭いがするときの独特の倦怠感が重苦しかった。
 アリスは眼を抜き取った左の眼孔に指を入れた。左手の親指と人差し指……ではアリスの細長い指でも入らなかったので、人差し指と中指を突っ込んだ。思ったより柔らかく、ずぐずぐと指が埋まった。脳をあまり傷つけたくはないが、だが人形の精神はどの辺りにあるのかわからない。二本の指で頭の中を突っつき回した。頭が揺れた。血と脳漿にまみれた指がぐりぐりと頭の中を押していった。首筋や背中のあたりを浮遊感が撫で、ふ、ふう、ふはーと息が漏れた。
 それでも人形の精神が見つからないので、もっと強く指を押し込んでいった。喉の奥がざらざらした。脳が潰され、かき回された。眼球が入っている右眼も見えなくなった。自分を壊していく指先が熱い。頭が焼かれているようだった。意識が遠のきそうになるのに、アリスは必死に耐えた。指の動きだけが激しくなる。ほとんど無意識のうちに、ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅと脳をかき混ぜた。やがて指先が人形の精神に触れた。
 アリスは中指と人差し指を重ねるようにして、指で人形の精神を挟み、そのまま一気に引き抜いた。人形の精神がずるずる出てくるが、眼孔で引っかかってしまった。ぐわわわわんと響く振動に吐き気を催したが、なんとかこらえた。思いっきり引っぱると人形の精神は眼孔からすぽーんと飛び出し、空中でバラバラになって消えた。
 抜き取った眼球を眼の中に戻し、汚れた指を洗った。脳がやられたからか、しばらくはぼんやりした感覚が残っていた。


「へえ、そりゃ大変だったな」
 と言うのはレミリア・スカーレットだ。
「大変だったわよ」
 アリスは紅茶のおかわりを渡しながら答えた。
 人形になってしまったらしいレミリア、こころ、燐からも人形の精神を取り除かねばならないと思っていたが、そんな矢先にレミリアのほうからアリスを訪ねてやってきた。しかもこころを連れてきたのだから驚きだ。レミリア・スカーレットと秦こころとは、奇妙な取り合わせではないか。
 レミリアは紅茶にたっぷり砂糖を入れながら、
「で、私の眼にも指を突っ込みたいってことか?」
「嫌なら頭を切り開いてあげるわ」
「なんなら首を切り落として断面から腕を入れたっていいよ」
「いやよ、気持ち悪い」
「たいして変わらんと思うがなぁ」
 レミリアがクスクスと笑った。
「まあ、私は眼でもなんでも構わないよ。でもそいつはどうだかわからんぞ」
 そいつ、というのは秦こころのことだ。
「そいつ、面を取りたがらないんだよ」
「へえ……?」
 こころはソファに寝かされていた。
 狐面を被ったまま、眠っていた。
 面で顔が見えないが、かすかに寝息が聞こえてきた。
 こころは両手両脚を肘と膝のところで服ごと切り取られていた。
 奪われた手足は、テーブルの上、レミリアのティーカップの横に無造作に置かれている。
「とにかくさ、こいつ直してやってくれよ。できるだろ、お前」
 こころはいきなりレミリアに戦いを挑んできたらしい。勝負はレミリアの圧勝だった。レミリアによると、こころは面を頑に付け替えようとしなかったそうだ。様々な面を被り多種多様な戦法を可能にするのがこころの本来の戦い方だった。それができなかったため、本来の実力を発揮できなかったのだろう。
 だがそれだけではない、とアリスは思う。単純に、レミリアのほうがアリスの人形的だったのだ。
 負けたこころは、それでも戦いをやめようとせず、がむしゃらに暴れ続けたらしい。力ずくでも抑えられなかったレミリアは、こころの四肢を落とした。それからすぐこころは意識を失い、レミリアはそんなこころをアリスの下まで運んできたのだった。
「なんか頑張ってたみたいでな。最強のアリスの人形になるって。あ、お菓子ない?」
 先ほどもケーキを出したのだが、もう食べ終わってしまったらしい。こころと戦ったばかりで、空腹だったのだろう。
 最強のアリスの人形というのが何を意味するのかは、アリスも知らない。
 人形にクッキーを持ってこさせた。レミリアが一つ取って口に放り込んだ。すぐに顔をしかめて、
「んー、これナッツ入ってる?」
「あ、苦手だったっけ。ごめん」
「いや、いいよ。大丈夫だ。あはは」
 そう言ってレミリアは紅茶を飲み干した。
「でも、意外だわ」アリスはこころの手足を確かめながら言った。異様に丁寧に切断されていた。
「意外って?」
「貴女がこの娘を連れてきて、直してくれだなんて。優しいじゃない」
「はっ!」レミリアが鼻で笑った。「優しくはないさ」
 アリスは思わず微笑んでしまう。
「照れなくてもいいのに」
「いや、違うって。手足ぶった切ったの私だし」
「貴女ならそのまま放っておくかと思ったわ」
「そうだけど、まあ、なんだ。運命だよ」
 アリスには運命はわからない。

「ああ、そういやもう一つあった」レミリアが思い出したように言った。
「何?」
「こないだもらったゴーレム。あれ妹が握り潰しちゃった。直してくれ」
「また? 何度目よ……」
 かつてレミリアにゴーレム製作を依頼され、とびきりかわいいのを一体プレゼントしたのだが、即座にフランドールに壊された。それから何度も直している。初期のものよりずっと頑丈にしたはずだったのだが、フランドールの破壊力を見誤っていたようだ。
「それは気が向いたらでいいよ。それよりそのお面娘早く直してよ」
「はいはい」
 なんだかんだ言ってもこころのことが気になるらしい。

「じゃあまず、この娘の手足を直して、人形の精神を取るわ。終わったらレミリアの人形の精神を取るから」
 それから燐にも会わなければ。地底まで行くのは一苦労だが。
 アリスは眠るこころの手足の断面を調べた。傷の様子からして、すぐにくっつきそうだ。もちろん、今のこころがアリスの人形で、アリスが直すから、だ。


 手足を直す前に、アリスはこころの面を外しておいてやろうとしたが、狐面はどうやっても剥がれなかった。

 壊れていたのだ。
アリスの眼球は、なかなかとれないものだと思っています。
仙人掌うなぎ
作品情報
作品集:
10
投稿日時:
2014/05/23 17:24:49
更新日時:
2014/05/24 02:25:28
評価:
14/19
POINT:
1500
Rate:
15.25
分類
産廃創想話例大祭B
レミリア
こころ
アリス
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POINT
0. 150点 匿名評価 投稿数: 5
1. 80 NutsIn先任曹長 ■2014/05/24 06:18:25
それは手駒ではなく、概念ですか。
それはあたかも感情のあるように振舞い、冷酷に戦い、そして主同様に爆発する。
下手に紛い物の感情がある人形に固執したあまり、『心』が壊れるってオチ、最高☆
修理には骨が折れそうだが、脅威の治癒能力を誇る妖怪だから、どうにかなるでしょうね。
4. 100 名無し ■2014/05/24 20:18:40
チャーミングな不条理と条理。素敵です。
5. 100 名無し ■2014/05/25 06:45:16
kokoro
6. 100 ad ■2014/05/25 06:45:31
kokoro
8. 100 名無し ■2014/05/25 21:54:59
かわいいゴーレムが多分に気になりもし
万物の根源は爆発ですね
9. 100 名無し ■2014/05/25 22:48:05
良かったです。爆発せずに何をするというのですか。
10. 100 名無し ■2014/05/26 00:14:29
出だしでネタかと思ったが……
おもしろかったわ
12. 100 名無し ■2014/06/02 00:10:02
同じく冒頭でギャグかと思った
13. 100 名無し ■2014/06/08 16:41:00
最初の一行とのギャップが
14. 100 名無し ■2014/06/17 20:38:15
何点でも差し上げる
16. 100 んh ■2014/06/20 20:07:26
なかなか目玉が出てこないのでハラハラしました。
不条理だけど読みやすいのが好きです
17. 100 まいん ■2014/06/20 20:13:30
出落ち、ギャグ、かと思ったら、ちゃんとグロもあって良かった。
でも、やっぱギャグだよなぁ。読み易くて面白かったです。
18. 80 名無し ■2014/06/21 19:13:53
繊細かつ詳細な描写で語られるグロ
19. 90 県警巡査長 ■2014/06/21 22:05:39
アリスの爆発する運命からは逃れられない!
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